BABYMETAL 海外 ダウンロードフェス UK 2018 ライブレポート

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1.

オランダ・アムステルダムのスキポール空港から飛行機で約1時間半。
僕は静かにイングランド・バーミンガム空港に降り立つ。
その後はバーミンガム・ニューストリート駅へ移動し、
CrossCountry に乗って、いざイングランド中部ダービーシャーへ。
のどかな田舎の景色を眺めていると、次第にダービーへやって来たことを実感した。

 

 

 

やがて列車はダービー駅に到着した。
駅舎を出て周囲を見渡すと、2年ぶりの記憶が鮮明に蘇ってきた。
Download Festival を観るために、僕はこの地へ舞い戻ってきた。
一握りの感慨がスッと胸中を駆け抜ける。
長旅に出た巡礼が、ようやくまた故郷の土を踏んだような、
さびしくも自由な、なつかしさにとかしてくれると言ったら大袈裟だろうか――。

 

 

 

見覚えのある景色を眺めながら市内のホテルにチェックイン。
入室後、僕は BABYMETAL が出演しない明日のフェスへ向かう準備をする。
ドイツの Rock im Park もそうだったが、僕は2日分のチケットを取ってあった。
BABYMETAL のツアー日程の空いている日はフェス三昧で楽しもうという魂胆だ。

 

キツネ(外国人のファンの呼称)たちの熱狂具合を肌で感じることができるから、
海外の BABYMETAL の単独ライブに参戦することは極上の愉悦である。
が、BABYMETAL も出演する海外のロックフェスに足を運ぶことは、
ある意味、人生の目的であるように感じている。
若かりし日より思いを馳せ、憧れを抱いた海外のロックフェス。
いつかは行ってみたいと思いつつも、時間だけが刻々と過ぎ去っていった。
しかしながら、BABYMETAL が海外のフェスに出演するようになってからは、
もちろん BABYMETAL のライブを生で観るのが一番の目的ではあるのだけれど、
それにかこつけて渡航し、海外のロックフェス自体を心底満喫している。
その晩、僕は逸る気持ちを抑えながら眠りについた。
そして翌日、早速 Download Festival の会場であるドニントン・パークへ向かった。

 

 

 

ダービー駅の西口にはフェス会場へ向かうタクシー乗り場がある。片道30£。
シャトルバスは反対側、駅の東口。運賃は2年前と変わらずに往復10£。
料金を支払い、2階席に乗り込むと、先客から ‟ Oh,BABYMETAL ” の声が。
どうも僕が着ている BABYMETAL のTシャツに反応を示したようだった。
僕は嬉し恥ずかしい気持ちを抱いたままバスに揺られ続ける。

 

 

 

約30分後、バスはドニントン・パークに到着した。
早速エントランスに並ぶが、キャンプをしない人の列は左側の1列のみ。
それ以外はすべてキャンプチケット所有者専用のゲート。
交通の便があまりよくないからキャンプをする人は多いだろうと前から思ってはいたが、
なるほど Download Festival の観客のほとんどはキャンプをするのが前提のようだ。

 

 

 

チケットとリストバンドを交換し、早速場内へ入場を果たす。
遥か前方に巨大なメインステージが見える。
マスコットキャラクターのオブジェを見ながら、まずは下見のため2ndステージへ。
現場に着き、まだ人もまばらな場内を見渡す。
メインステージの6分の1くらいのキャパだが、それでも2~3万は入るだろうか。

 

 

 

Download Festival 2018への BABYMETAL の出演が発表されたとき、黒枠で囲った
Zippo Encore Stage(2ndステージ)のトリ前での出演をファンは総じて歓迎したが、
10万人近く集まったメインステージに登場した2年前のライブを生で観ていてるので、
順番は関係なく、今年もメインステージで演ってほしかったというのが正直な感想。
もっとも決まったことは仕方がないので、明日の BABYMETAL のライブでは、
キャパ以上の観客が押し寄せ、メインステージを食うほど盛り上がってほしいと願う。

 

 

 

 

 

午後1時となり、メインステージで Boston Manor のライブを観る。
そのまま立て続けに Avatar の様式美ライブを観る。意外と面白いステージだった。

 

 

 

続いてメインステージに登場してきたのは、メイトにはお馴染みの DragonForce。
代表曲「Through The Fire and Flames」では観客が大合唱をして大盛り上がり。
その後の Marmozets のライブでは、最後に「Major System Error」を披露。
ベッカ・マッキンタイヤによるエネルギッシュなボーカルが胸をすく。
この舞台に立てて感極まっているのだろう、途中のMCで彼女は何度も涙ぐんでいた。

 

 

 

その後は少しフェス会場を歩いて回る。
いろんな恰好をした観客の姿を目にする。

 

 

 

2ndステージでは Andrew W.K. がライブを行っているが、後方まで人でいっぱい。
入りきれない人たちが左右に大きく広がっている。
おそらく明日の BABYMETAL のライブ時も同じ光景となるだろう。

 

 

 

それからは少しばかり NXT の試合を観て、再びメインステージへ移動。
VolbeatBullet For My Valentine、Avenged Sevenfold と続けて観る。
途中に少し後方から眺めたが、観客でぎっしり埋まった絵は何度見ても壮観だ。
そして午後22時半頃、僕はTシャツを買ってから満足げに会場を後にした。
時間の許す限り観て回り、Download Festival 初日を心ゆくまで堪能することができた。

 

 

 

 

2.

 

翌日。この日は BABYMETAL が出演する日。
僕は準備を整えると、早速ドニントン・パークへ向かう。
着ていくTシャツは My Little God Tee。
藤岡さんと共に Download Festival で BABYMETAL を観るのは最初から決めてあった。

 

 

 

会場に着き、周囲を見渡す。
昨日と同じような曇り空だが、今のところ小雨は降ってきていない。
このままもってくれと願う。
予定よりも早く着いたので、2ndステージの最初のアクトを観ようと移動。
機材トラブルでもあったのだろうか、
15分ほど遅れてから POWERFLO のパワフルなライブはスタートした。

 

 

 

その後はメインステージに移動して Whiskey myersMonster Truck と続けて観る。
そして楽しみにしていた The Struts の登場を待ちわびる。
地元がダービーというだけあって、開演前には大量の観客が押し寄せてきている。

 

 

 

やがて黒と金の衣装を纏い、目映いばかりのフロントマンのルーク・スピラーが登場すると、
巨大なメインステージは大歓声に包まれた。
彼はミック・ジャガーのように気取って歩き、フレディ・マーキュリーのように振舞った。
新曲「One Night Only」を披露しなかったことだけが残念だったが、
それでも最初の「Put your hands up」から場内は大盛り上がり。
その後も「Kiss This」、「Put your money on me」、「Could Have Been Me」と続き、
最後は「Where Did She Go」を披露して、大盛況のもと、彼らのライブは終了したのだった。

 

 

 

小腹が空いたので、味付けの薄いヌードルを食べてから2ndステージへ移動。
今は Bury Tomorrow がライブを行っているが、人はそれなりに集まっている。

 

 

 

次の L7 がライブを始めたのは予定よりも10分以上経ってからだった。
だけどその後の Asking Alexandria は6分遅れでスタートした。
1組目から開演は遅れていたが、徐々に調整はしているようだ。
それにしても Asking Alexandria のライブは相変わらず重くて激しい。

 

Asking Alexandria のライブが終了すると、次はいよいよBABYMETALの出番となった。
開演15分前には最後方のフードテントまで埋まり、人は左右に横長に広がっていた。
大きな期待を抱いているのだろう、周囲のざわつき具合がすごい。
タトゥーを入れたメタラーがたくさんいるが、女性客の姿も随分と多く目に付いた。

 

 

 

日輪のような絵柄のバックドロップが掲げられたからではないだろうが、
2日間をとおして初めて日が照ってきた。
僕は口元に微笑を湛えたままステージを眺め続ける。
1週間前のドイツの Rocm im Park であれだけ盛り上がったのだから、
半ばホームであるイギリスのフェスで盛り上がらないはずがない。
プラスの賑やかな感情が2ndステージのフロアいっぱいに渦巻く中、
僕はにこやかな表情を浮かべてライブの開演を今か今かと待ち続けた。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01. IN THE NAME OF
02. メギツネ
03. ギミチョコ!!
04. TATTOO
05. Distortion
06. KARATE
07. Road of Resistance

 

 

「IN THE NAME OF」でライブが始まると、場内からは大きな歓声が沸き起こった。
イギリスでのライブをずっと待ちわびていたのだろう、
頭を揺らしてリズムをとる人たちはみな笑みを浮かべている。
早くも数人がモッシュを始めているが、ほとんどはステージを注視している。
中盤より後方に陣取っている、BABYMETALのライブ初見の人たちは、
モニターに映る演者の姿を興味津々といった具合に眺めているようだった。
やがて同曲が終了すると場内には多くのキツネサインが掲げられた。

 

 

 

続いては「メギツネ」。
観客のハートに一気に火をつける、必殺のキラー・チューン。
曲が始まった途端だった。僕がいる場所はすぐさまモッシュピットと化した。
多くの人が笑顔で体をぶつけあっている。
間奏で SU-METAL が煽ると、場内のボルテージはさらに上がった。
まさにお祭りといった具合に、ピットは終始活況を呈している。

 

 

 

場内の熱量が急激に上がっていく中、「ギミチョコ!!」を畳みかけてくる。
イントロが始まるなり、ピットは再びモッシュの嵐といった按配だ。
曲が進むにつれ、クラウド・サーフィングをする者も増えてきた。
別の場所ではサークルピットも発生しているようだ。モニターがその絵を捉えている。
その後も「ギミチョコ!!」の狂騒は続き、間奏でも勢いは衰えることはなかった。
終始大盛り上がりのもと同曲が終了すると、場内からは大きな歓声と拍手が沸き起こった。

 

 

 

ノリのよいビートに合わせて騒ぎまくる行為が心底楽しのだろう。
ある者は快活な声を上げ続け、ある者は堪らないといった具合に叫んでいる。
その後ライブは SU-METAL のソロ曲「TATTOO」へと続いていくが、
観客はライブにどんどんのめり込んでいっているようだ。
モッシュは減ったが、多くの者がステージを凝視してリズムを取っている。
言葉は分からない SU-METAL の歌唱もまた、心地良いと思っているのかもしれない。
そして曲が終わるとここでも大歓声に包まれた。

 

 

 

下手の大村神がギターを藤岡幹大シグネイチャーモデルへ変える。
彼の師匠にして盟友、藤岡幹大が再びダウンロードフェスの舞台に降臨する。
ややあってその後に披露された曲は「Distortion」。
イントロで歓声が沸き、曲が始まるとピットでは手拍子が始まった。
それからサビに入るとさらなるモッシュが発生。
間奏のコール&レスポンスでは大声を張り上げる観客たち。
やがて大盛り上がりのもと同曲は終了する。
最後のSU-METALの伸びのある澄んだ声がいつまでも耳にこだまする。

 

 

 

ライブは続き、次曲は「KARATE」。
イントロが始まるなり、各々がヘヴィーなリフに合わせて上体をグラインドさせる。
サビに入ればピットではモッシュが加速。
MOAMETALに合わせて ‟ Wow Wow Wow ” と声を張る観客は多い。
間奏での大きな手拍子を経たサビでは、自発的にジャンプする人や、
クラウド・サーフィングをする人が続出。場内は興奮の坩堝と化した。
上手の方ではローイング・モッシュも発生するほどの盛り上がりを見せている。

 

 

 

ライブはいよいよ最後の曲「Road of Resistance」を残すのみとなった。
4人がステージ上でポーズを決めてからフラッグを広げる。
曲の開始と同時に眼前で繰り広げられる Wall of Death。
その後はビートに合わせて激しいモッシュへと発展していく。
モニターには複数のサークルピットの絵が映っている。
サーフする人もひっきりなしだ。中には日本人の姿もある。
途中のシンガロングでは、多くのキツネサインがピットに掲げられた。
そうして大盛況のもと同曲が終了すると、場内は大きな歓声と拍手に包まれた。
モニターにエンディングムービーが流れ始めると、順番に演者がステージを去っていく。
SU-METALが退場する際にはひときわ多くのキツネサインが掲げられた。

 

 

 

ムービーが終わってもなお続く、アンコールを意味する“ワン・モア・ソング”の大合唱。
やがて狂騒は終息し、人々は移動を始めるが、多くが満足げな笑みを浮かべている。
こうしてBABYMETALは、メインステージを通じても今日一番の大きな熱狂を生み、
まるでミュージカル・ショーのように、クールに振舞ってステージを後にした。
後方に陣取っていたライヴ初見の観客も、おそらくは満足したことだろう。
“ ここに戻ってきてくれてありがとう!” と叫ぶ隣のイギリス人青年の屈託のない笑みが
今日のライヴの成功を如実に物語っている。

 

 

 

 

4.

 

その後は少し休憩した後のち、 Parkway Drive のライブを観る。
BABYMETALの設営時に準備された幕が最後に垂れ下がったが、
内容は来年のツアー日程だった。

 

 

 

それからは Guns N’ Roses のライブを観るべく、メインステージへ移動。
It’s So Easy」を聴きながら人ごみをかき分け、前の方へ進んでいく。
場内は超満員。ゆうに十万人は超えているだろう。
僕は中間あたりに留まると、久しぶりのガンズのライブに没頭した。
Welcome to the Jungle」、「You Could Be Mine」、スラッシュのソロを堪能。
Sweet Child O’ Mine」で合唱し、「November Rain」では美しいメロディに没入する。
Knockin’ on Heaven’s Door」でライブは佳境に入り、「Paradise City」で終了となった。
3時間を超える長丁場のライブだったが、飽きることなく、僕は全曲を楽しんだ。
スムーズに退場するため、最後の数曲は後方から眺めたが、
巨大な群衆の人々が興奮して弾む光景は目を見張るものがあった。
そうして僕は大満足のもと、23時頃に帰路に着いたのだった。

 

 

 

 

 

帰りのシャトルバスに乗車する。
前の席に座っている小さな男の子がこちらを向き、
僕の隣に座っている中年男性と会話をしている。
男の子はしきりに BABYMETAL の名をあげながら
おぼつかない動きでキツネサインを繰り返していた。
僕は柔軟な笑みを湛えたまま、今日のフェスについて思いを馳せる。

 

昨日の内容も良かったが、今日はそれ以上に大満足だった。
大好きな The Struts と BABYMETAL と Guns N’ Roses を同じ日に観たのだから、
こんな最高な日はないというのが素直な思いだ。
中でも BABYMETAL は、今日も最高クラスのライブショーを披露した。
特に SU-METAL の声量あるクリアヴォイスはイギリスの空に響き渡っていて、
誇張なしに、同じヴォーカリストであるルーク・スピラーやアクセル・ローズを上回った。
2人は偉大なヴォーカリストだが、SU-METALのように、
スタジオ盤のアルバムレベルの歌唱は披露できずにいた。
特に高音部分は何箇所か声を出すのが苦しそうに見受けられた。
それでもライブでは会場を大いに盛り上げ、抜群の存在感を示してはいた。
おそらくはその点がSU-METALの凄みなのだろう。
彼女は毎回、スタジオ音源と同等レベル、
いや、ライブではそれ以上にパワフルな歌唱を披露する。

 

2ndステージには4つの巨大なラインアレイスピーカーが備わっていたので、
音量&音圧も十分だった。
それでいて神バンドは今日もソリッドなメタルサウンドをタイトに奏で、
ピットの熱狂具合を一段上へと引き上げた。
また照明がセットになった3段式の舞台装置の効果はフェスでも抜群で、
立体的な4人のダンスルーティンを、視覚で十分に堪能することができた。

 

 

 

最後に、これは触れずにはいられないことだから触れるが、
YUIMETAL 不在の BABYMETAL は BABYMETAL に非ず。
3人が揃ってこそのBABYMETAL。
今でもその考えは変わらない。
もっとも今年度のツアー(METAL RESISTANCE 第7章)は、
ダークサイドの選ばれし7つのメタルの魂 “ THE CHOSEN SEVEN ” をテーマにした
内容に沿ってライブを披露しているから、ハナからBABYMETALではないのだけれど。

 

しかしながら、BABYMETALのライブの本質が、
SU-METALのパワフルな歌唱、それとキレイに揃ったダンスルーティン、
それから神バンドのラウドなのにタイトな演奏パフォーマンスによる、
生バンドのサウンドに裏打ちされた劇場型のスペクタクルなショーならば、
エンターテインメント性に富んだ、見惚れてしまうようなショーであるならば、
ツアー全体で見せてくれた、Dark Side のミュージカルふうなショーは、
これまでの次元を超えた、BABYMETALの生粋のライブショーに他ならない。
2年前の雨中のライブも観たが、今回のライブは2年前の狂騒を凌駕した。
彼女たちと神バンドはさらに洗練されたパフォーマンスを披露し、
演者と観客が大きくシンクロした、一体感の伴った極上のライブを作り上げた。

 

 

これに YUIMETAL が加わったら、いったいどれほどすごいショーを見せてくれるのか。
きっと想像がつかないほどの、魅惑的なショーを披露してくれるに違いない。

 

 

YUIMETAL の復帰を心待ちにし、僕は夜のダービーの街を闊歩した。
‟ 人の考えを本当に理解したいなら、彼らの言葉ではなく、行動に注意を払え ”
フランス人哲学者であるデカルトの名言がふと、脳裏を過ぎる。
何も語らずにプロのアーティストに徹している SU-METAL と MOAMETAL。
二人の熱くて真摯な思いは、情熱を燃やす鉄壁のパフォーマンスに表われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※本レポの簡易版です。こちらも合わせてどうぞ。

BABYMETALが2年ぶりに英〈ダウンロード・フェスティバル〉で熱演、ヨーロッパ・ツアー完結 – CDJournal ニュース
 BABYMETALが6月9日(現地時間)、イギリス・ダービーのドニントン・パーク・サーキットで開催された音楽ロック・フェスティバル〈ダウンロード・フェスティバ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2 件のコメント

  • 素晴らしいレポートありがとうございました。電車の中で泣きながら読みました。

  • ARUPYーMETALさん
    コメントありがとうございます。
    そう言っていただけると書いた甲斐があったと思えますね。
    不定期ですが、また書くと思いますので、宜しくお願いします。

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