BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE – 幕張メッセ 2日目 ライブレポート

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1.

朝起きると、体のあちこちに若干の痛みを感じた。
昨晩、久しぶりにスタンディングのライブに参加したからだろう。
どうしよう、体のメンテをしてから今宵のライブに臨むとするか。
逡巡したのち、僕は隣のマンションの1階に構えている整骨院に寄ることにした。
数年前に何度か通ったことのあるところだ。
しばらくしてから整骨院へ出向き、おもむろに中に入る。

 

訊いてみると、予約なしですぐに施術は受けられるとのことだった。
問診表に記入している際、受付の人から鍼やお灸コースなどの説明を受ける。
以前通っていた頃は、むち打ちのケアばかりだったので知らなかったが、
鍼灸施術をはじめ、いろんな症状に応じた豊富なメニューがあるようだ。
僕は話に耳を傾けながら「なるほどぉ」と相槌を打った。

 

だけど内心ではよくわかっていなかった。
でも大丈夫。
とりあえずこういうときはわかったように装えばいい。
小さい時もわかったようにしていたら、「頭の良さそうなボクだねぇ」と
知らないオバさんに声をかけられたことがある。
カルーセル麻紀とカルメン・マキの違いがすぐにはわからない僕なりの処世術だ。

 

マッサージをしてくれたのは20代の男性だった。
見た感じ、とてもさわやかな好青年だ。
この人なら、どこぞのものともわからない無駄に大きなマスコットの置物を
お土産として渡しても素直に喜んでくれそうな気がする。

 

施術してもらっている最中に会話をすると、
彼の年齢は26で、先月結婚したばかりだそうだ。
僕は施術台にうつぶせの状態のまま「おめでとうございます」と声をかける。
僕にも脳内嫁がいるので、とくにうらやむことはない。

 

その後はしばらく静かな施術が続いたが、
ふと彼が、最近妻と野沢温泉に行って楽しかったという話をしてくれた。
僕はうつぶせのまま「それは良い思い出ができましたね」と返答する。
僕だって毎日脳内嫁と楽しい思い出を作っているからハッピーだ。

 

程なくしてマッサージは終了。
受付にて会計を行う。
特に意図はなかったのだが、会話の流れの中で、
横にいる整体師に奥さんとの馴れ初めについて訊いてみた。
すると出会いのきっかけは、婚活アプリとのことだった。
僕は笑顔で「そうなんですねぇ」と言葉を返し、整骨院を後にする。
毎日脳内嫁と楽しく過ごしているから、僕には婚活アプリは不要だ。
というより、一生婚活アプリには縁がないだろう。

 

 

 

 

2.

 

電車に揺られ、開場1時間前くらいに現地に到着。
さすがにコインロッカーはすべて埋まっていたので、
クロークに荷物と上着を預けてから、僕は待機場所に移動した。
そのホール1では、複数の係員がスピーカー片手に熱心に
クロークの利用方法や入場案内等を行っていたが、
僕はその都度「わかった」というように何度も小さく首肯した。

 

だけど内心ではよくわかっていなかった。
でも大丈夫。
とりあえずこういうときはわかったような仕草をしておけばいい。
小さい時もわかったように頷いていたら、「お、賢そうな僕やないか」と
知らないオジさんに笑顔で頭をなでられたことがある。
ルー大柴とニコラス・ケイジとモト冬樹の区別がすぐにはわからない僕なりの処世術だ。

 

 

 

その後、待機列は屋外へ移動。
今日のチケットは南Eの200番台。
やがて、ドレスコードのSavior Maskを着用してから指定のブロックに入場。
最前2列目を確保することもできたが、逡巡したのち、僕は中央へ向かった。
ちょうど会場の真ん中付近、南Fよりのブロック角付近に陣取る。
昨日のライブを見た限りでは、この位置が一番良いように思えた。

 

 

 

SEでBloodywood、サバトン、ゴースト、アーチエネミーなどの曲が流れているが、
昨夜以上にブリング・ミー・ザ・ホライズンの曲が流れているので気分が上がった。
そして今宵も「Kingslayer」が流れたのだが、SU-METALが歌唱するパートでは、
昨日よりも大きくて小気味よい手拍子が沸き起こった。

 

周りには中年男性が多かったが、若い男性や女性の姿もちらほらと目についた。
僕の網膜はカップルは認識しない仕様だけど、
仮にカップルがいたとしてもとくにうらやむことはない。
なぜならば僕には愛する脳内嫁がいるからだ。
開演時刻が迫ってくると、SEの曲が終わるたびに拍手が沸き起こった。
観客たちは今か今かと首を長くして待っている。

 

果たして定刻を10分ほど過ぎたあたりで、
Bloodywoodの「Dana-Dan」がクライマックスを迎えたところで客電が落ちた。
途端に沸く場内。
大勢のメイトが歓喜の声を発している。
僕は大きく深呼吸をし、ビジョンに視線を集中する。
待望の『RETURNS – THE OTHER ONE -』公演2日目の幕が切って落とされる。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01. METAL KINGDOM
02. Divine Attack – 神撃 –
03. Distortion
04. PA PA YA!!
05. ギミチョコ!!
06. メギツネ
07. ド・キ・ド・キ☆モーニング
08. Light and Darkness
09. Monochrome
10. ヘドバンギャー!!
11. イジメ、ダメ、ゼッタイ
12. Road of Resistance
13. THE LEGEND

 

冒頭のストーリームービーの内容は昨日と同じ。
もう一つのBABYMETALを復元させる計画“THE OTHER ONE”についてだ。
10のパラレルワールドから、10人の使徒がBABYMETALの封印を解くために
召喚されると語られると、メイトたちの間から大きな歓声が沸いた。
ムービーが終わると、“THE OTHER ONE”のロゴを象った杖を持った
10人の黒装束の女性が登場したのだが、その厳かな雰囲気から、
場内は一気に非現実の世界へと変わっていった。
このホールだけがまるで別世界のようだ。
メイトたちは固唾を呑んで、これから行われる儀式の成り行きを見守っている。

 

黒装束姿の10人の女性がメインステージから中央の花道を通り、
巨大なキツネが刻まれた石造りの門に近づいていく。
そして杖を掲げると、光と煙に包まれながら巨大なゲートが開いた。
そこにあるのは、「THE OTHER ONE – DIGITAL GALLERY」の「THRONE」の玉座。
小さな爆発音を合図に、その玉座にスポットライトが当たると、
SU-METALとMOAMETALが玉座に座った状態で姿を現した。
この神秘的な演出とド派手な登場に館内は早くも大盛り上がり。
あちこちで大きな声援が飛び交っている。

 

※画像:音楽ナタリー(以下同)  Photo by Taku Fujii / Takeshi Yao

 

 

ライブの1曲目は昨日と同じく「METAL KINGDOM」。
イントロが始まると場内には大きな手拍子が響き渡った。
そしてメイトたちによる“オーオーオーオオーオ”の大合唱からスタート。
ややあってSU-METALが台座に腰かけたまま歌い始める。
彼女の美しい歌声が倍音の響きを伴って場内に響き渡っていく。

 

 

 

昨夜は冒頭あたりで若干不安定なところがあったが、
今宵のSU-METALの唄い出しは完ぺきだった。
透き通ったクリアボイスがどこまでも真っすぐに伸びていくから、
いきなりわなわなと鳥肌が立つほどの感動を覚えた。
今夜のSU-METALはかなりヤバいぞという予感を抱く。

 

 

 

反対側のステージ側からはMOAMETALが登場。
2人は、二股の鉾のような杖を持ちながら歩み寄っていき、
中央の可動式のセンターステージにて合流。
2人だけで極上の世界観を構築していく。
SU-METALもMOAMETALも、近くで見ると美しさが際立っている。
中盤はメイトたちの“オーオーオーオオーオ”の大合唱が続いたが、
その際SU-METALは四方八方へ鋭い視線を向け、館内の状況を把握していた。
そしてフッと微かに口角を上げてから反対方向へ振り返ったのだけれど、
これまでに何度か見たことのある仕草に、ああ、これこそSU-METALだと感嘆する。
彼女は会場全体のリアルな状況を常に把握している。

 

終盤に入り、SU-METALの渾身のハイトーンが炸裂する。
彼女の“アー!”という高音の叫びに再び鳥肌が立つ。
全員の視線が中央に注がれ、再びメイトたちの合唱が続いた。
まるで宗教のような雰囲気で、演者と観客の一体感は急速に高まっていった。
曲が終わると大歓声が起き、中には「すぅちゃん!」と叫ぶメイトもいた。

 

続く曲は「Divine Attack – 神撃 -」。
メインステージ側へ移動したセンターステージの3人にスポットライトが当たる。
今日のサポートダンサーも昨日に続き、岡崎百々子だった。
彼女とMOAMETALによるシメントリーなダンスが美しく目に映る。
SU-METALが“切り開け 道 この手で”と力強く歌い上げていく。
サビの部分では、MOAMETALと岡崎百々子が扇動するように何度も右手を突き上げた。
メイトたちがそれに倣い、“オーーオオー”と声を上げ拳を振り上げる。
曲が終わると、大歓声と大きな拍手が沸き起こった。
パフォーマンスを終えた3人の自信に満ちた表情が印象的だった。

 

 

 

次に披露された曲は「Distortion」。
昨日と同じ流れでライブが続く。
メイトたちが大声で“ギバーッ ギバーッ”と叫ぶ。
張りのある歌声による、SU-METALの渾身の歌唱が続く。
3人のダンスのキレが素晴らしい。完成されている。
そして大きな手拍子が沸き起こった後の間奏では、
SU-METALが満面の笑みで「幕張ー!」と叫んだ。
「みんな、声出す準備できてるかー?」「もっと出せるよねー?」
大勢のメイトが大歓声と拍手で応える。
それから“ウォーウォーウォーウォ”の大合唱。
館内の熱気が一気に高まっていくのを肌で感じる。

 

そしてその熱は次曲「PA PA YA!!」でさらに上昇。
曲が始まるなり、所狭しとメイトたちが一斉にタオルを掲げて振り回す。
花道のサイドから噴き出す火花が、館内の熱気をさらに高めていく。
3人は中央に戻り、巨大なルンバのようなセンターステージの上で楽しげに踊る。
アッパーな曲だからノリやすいという側面もあるが、
SU-METALの力強くも楽しげに歌う雰囲気に感化され、
盛り上がりは一気にオーバーヒート。
会場全体で“パッパパパヤ!”の大合唱。
メイトたちは終始タオルを振り回して騒ぎ続けている。
どうにも堪らない愉快で楽しい時間が続く。

 

間髪入れずに「ギミチョコ」が始まると大きな歓声が沸いた。
軽快なイントロのリズムに乗せて僕は小刻みに頭を振る。
ピットではなく柵に近いエリアに居たが、この場所でもモッシュが発生。
曲中は何度も小気味よい手拍子が沸き起こり、
メイトたちの“ズッキュン”“ドッキュン”の声が大きく響き渡った。
間奏に入ると、3人ともが満面の笑みを浮かべて観客に手拍子を促した。
それから、SU-METALが再び観客に向けて“みんなに会えて嬉しいよ!”と叫んだ。
“今日は最後まで楽しんでいってね!”
観客たちが大きな歓声と拍手でそれに応える。大変な盛り上がりだ。
ライブは活況を呈する中、次曲「メギツネ」へと続いた。

 

メイトたちが大声で“おいおいコール”を送る。
やがて曲が始まると、爆発的な大歓声が起こった。
大勢が“ソレッ!”“ソレッ!”の掛け声とともに何度もジャンプする。
統率された動きにより、観客の間に強固な一体感が生まれる。
SU-METALの歌唱が素晴らしい。力強く、それでいて艶やかな声色だ。
MOAMETALも岡崎百々子も笑顔で楽しく踊り続けている。
間奏に入る前、SU-METALがキツネのお面をゆっくり掲げた後の恒例のシーンでは、
MOAMETALがギリギリのタイミングで頬をぷくっと膨らませてSU-METALを笑わせにかかった。
SU-METALが笑顔のまま“幕張ー!”と叫び、いわゆるメギツネジャンプを促す。
メイトたちは何度も大きくジャンプし、大盛り上がりのもと同曲は終了した。

 

心地よい空気が流れる中、ストーリームービーが始まる。
それは昨夜と同じ内容、“METALVERSE OF MADNESS”についてだったのだが、
よく見ると、マーベルと同じフォントだったので思わずくすっとした。
新世界への扉が開き、我々の知らなかった新たな生命体の存在を知ることになると続き、
その新たな生命体がまさに今、新世界から現れようとしているとアナウンスされた。
そして「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のイントロが流れてくると、
ドッと沸いた後に大きな手拍子が沸き起こった。
3人が豊かな表情とキレのある動きで観客たちを魅了する。

 

 

 

長めの間奏に入ると、バックステージ側から別の3人組が登場。
ポーズを決めたままの2組を乗せた可動式のセンターステージが
少しずつ中央に移動していく。
遅まきながら、この巨大なルンバは2つあったことに気づく。
そしてこの可動式のステージは上にリフトすることもでき、
その状況では、他の者が下の花道を通過することも可能だった。
そしてルンバの側面はぐるりと360度、絶えず映像が映し出されている。
花道の脇からは、定期的にスモークも上がっている。
照明もたくさん、花道やルンバに備え付けられてる。
近くで見ると、いろいろな発見があって、
今夜のライブの演出はこのようにして形作られているのかと感嘆する。

 

やがて2組のBABYMETALが中央で対峙する。
その後は交互にスポットライトが当たったのだが、
別のBABYMETALのボーカルもSU-METALと一緒になって歌っているようだった。
それにしても、“リンリンリン”と踊るダンスのシンクロ具合がヤバい。
視界が2組のBABYMETALを同時に捉えているので、その様子はより鮮明に瞳に映った。
上手側にいる岡崎百々子が、まるで親が子を見守るような優しい笑顔で、
向かい合っている別のBABYMETALの3人に何度も視線を送っていたのが印象的だった。

 

興奮が冷めやらぬ中、新曲の「Light and Darkness」が始まる。
僕はカッと刮目し、目の前の巨大なルンバを凝視する。
SU-METALの唄い出し、そして2人のダンスに一気に引き込まれる。
繊細かつリズムカルなダンスがかなりの高度であることは、素人目に見てもわかる。
2人のダンサーを前に、情感あふれるSU-METALの歌唱が続く。
そして溜めてからの唄い出し、“毒されてく”の場面では鳥肌が立った。
この曲は、歌にしろダンスにしろ目を見張るものばかり。
絶好調のSU-METALの力強い歌唱に圧倒され、
僕は微動だにせずにただただステージを眺め続けた。
両の眼にうっすらと涙を浮かべながら。

 

ライブは「Monochrome」と続いたが、
僕はこの曲でも心底魅了されることになる。
SU-METALの情感豊かな歌唱だけでなく、
MOAMETALと岡崎百々子のダンスも美しくて素晴らしかった。
2人のダンスだけをフォーカスした映像があってもいいよなと思えるほどに。

 

 

 

メイトたちによる“オッオッオー、オーオッオオー”の大合唱の後の間奏では、
昨日と同じように、SU-METALが観客に向かって語りだした。
「この暗い世界を、皆んなの光で照らして欲しい」。
続けて“Take your phone up”と訴えると、
メイトたちは昨夜の経験からわかっていたのだろう、
すぐさまスマホのライトが点き始め、場内はあっという間に幻想的な世界に包まれた。
笑顔で四方に目配せしてから、SU-METALが目を閉じてハミングを繰り返す。
“オッオッオー、オーオッオオー”の大合唱がそれに追随する。
無数の小さな光の玉がたゆたう空間をバックに歌うSU-METALの姿がビジョンに映る。
その光景はあまりに神秘的で、まるでプラネタリウムライブを観ているような錯覚に陥った。
なんという感動的なシーンだろう、えも言わぬ得難い時間が続く。
SU-METALの絶唱ののち、同曲は大歓声のもと終了した。

 

 

 

余韻に浸っている中、次に披露されたのは「ヘドバンギャー!!」。
ここでもSU-METALの渾身の歌唱が続く。気合が乗っている。
メイトたちの合いの手が館内にこだまする“こいや!”。
そして間奏に入ると、もはや恒例となった土下座ヘドバンが始まった。
SU-METALが眼光鋭く四方を睨みつける。
反対に、MOAMETALと岡崎百々子は笑顔でヘドバンコールを誘導している。
僕も床に膝をつき、諸手を挙げ、女王然とした振る舞いのSU-METALを崇拝する。
BABYMETALのライブにおける様式美はいつだって楽しい。

 

曲が終わった後のインターバルでは、MOAMETALがSU-METALの髪型を直していた。
手前側の岡崎百々子は給水をとっている。
そして次曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が始まり、
ビジョンに映像が流れると、ところところで大きな歓声が沸いた。
刹那、ピットでモッシュしたい衝動に駆られるが、
今日はこの位置で最後までじっくりステージを見ると決めていたのでグッと堪える。
SU-METALの咆哮の後、背後でウォールオブデスが始まる。
3人による力強いパフォーマンスが続く。
僕は何度もダメジャンプを繰り返す。
間奏の部分では、ステージの3人に倣って親指を突き出した。

 

 

 

バトルシーンは見応え十分。
ツインギターの音色が美しい。
僕は目を閉じてヘドバンを繰り返す。
SU-METALが力強く歌い上げていく。
終盤の畳みかけ、間奏からの大サビで思わず感極まる。
目じりに涙をためた状態で僕は最後のダメジャンプを飛んだ。
握りしめた両手を天に向け、パフォーマンスをクールに締めると、
場内のあちこちから割れんばかりの歓声が沸いた。
続けて起こった万雷の拍手は、しばらくの間止むことはなかった。

 

ライブは「Road of Resistance」と続いたが、
ここでも僕はピットに行きたい衝動をグッと堪えた。
始まりのギターオーケストレーションに合わせ、
メイトたちが一斉に“オーオーオ、オーオーオ”と合唱する。
凛としたSU-METALが目の前でフラッグを掲げる。
その堂々とした立ち振る舞いに僕はうっとりと見惚れ、
そして、彼女がフラッグを思い切り投げ捨てたシーンでは思わず笑みをこぼした。
あまりにもカッコよすぎる。
ウォールオブデスをするように促す仕草が、これまたクールでカッコいい。
ワンツースリーフォーのカウント後は、後方で大歓声が沸き起こった。

 

怒涛のツーバスが脳を刺激する。
嬉々として“Is the time!”と叫ぶ。
頭の中ではドーパミンがどんどん溢れているようだ。
リズム隊も、ツインギターも、そしてSU-METALの歌唱すべてが心地よい。
SU-METALが“シンギン!”と叫んだ後は、
メイトたちによる“オーオーオオ”の大合唱が続いた。
そして“On the way”に被せて、SU-METALが“かかってこいよー!”と咆哮すると、
フロアは爆発的な盛り上がりを見せた。
曲が終わると恒例のコール&レスポンスへ。
“We are!” “BABYMETAL!”のコールが館内中に響き渡る。
最後は花道で花火が爆発し、ライブの本編は終了となった。
僕は満足げに微笑み、額の汗をタオルで拭う。
これだから止められない。
やはりBABYMETALのライブは最新が最高だ。

 

 

 

暗転するとすぐに大きなBABYMETALコールが起こった。
体感5分ほどで、アンコールが始まった。
ライブ冒頭で黒衣装だった使途の10人が、今度は白装束で花道に登場。
最後の曲は昨夜と同じく「THE LEGEND」だった。
メインステージ側にSU-METALが登場し、しっとりと歌い始める。
反対側のステージでは、MOAMETALが繊細な動きで舞うように踊っている。
2人を乗せた巨大なルンバのステージが、引き寄せ合うようにして中央に移動し、
そして巨大なルンバが2つに並んだ。
真上から見ると、“THE OTHER ONE”のシンボルマーク“∞”のように
見えていたかもしれない。
僕は交互に視線を這わせながら、2人の美しい姿を目に焼き付ける。

 

「THE LEGEND」の世界観はまた特別だった。
観客のほとんどは、まるで神のお告げでも聞くように、
ジッとしたままステージを凝視している。
最後はSU-METALが高音で「LEGEND」と歌い上げると、ややあって暗転。
その後はストーリームービーが始まった。
その間にメインステージには2つの棺桶がセットされ、
SU-METALとMOAMETALが揃って階段を上っていった。
そして棺桶の前に立ったとことで再び暗転するのは昨日と同じ流れだったが、
今夜はそれに続きがあった。
光の光線によって3つ目の棺桶が不意に現れると、
SU-METALでもMOAMETALでもない、
3人目のBABYMETALの衣装を着た人物が後ろ姿で登場した。
その光景を見つめていたメイトたちの間から、多くの沸き立つ声が上がる。
誰もが“あの後ろ姿は誰なんだ”と気にかけているに違いなかった。

 

 

 

ライブが終了すると、エンディングムービーが流れ始めた。
ナレーションは染谷歩ではなくSU-METALのように思えたがどうだろうか。
映像の中で、『BABYMETAL RETURNS – THE OTHER ONE -』と題した今回の2DAYS公演は、
序章に過ぎず、次のライヴ『BABYMETAL BEGINS – THE OTHER ONE』が、
4月1日、2日にぴあアリーナMMで2DAYS開催されることが発表された。
どうやらこの2日間公演で、「THE OTHER ONE」の復元計画が最終段階へと進むようだ。
そして最後に、BABYMETALの新世界への旅立ちの時とともに
新しいメタルが誕生することが告げられてムービーは終了となった。
周りのメイトたちはみな一様に喜びの声を上げていたが、
やはりまだ気になるのだろう、
中には3人目のBABYMETALは誰なんだと推察を続けている人もいるようだった。
館内に溢れている歓喜の声の中に一寸のどよめきが未だ潜んでいる。

 

 

 

 

 

4.

大満足のライブが終わり、ホールの外に出る。
クロークで荷物を受け取って着替えると、足早に海浜幕張駅へ向かった。
道すがら、今宵のライブを振り返る。
パッと脳裏に浮かんだのは、フロアの中央で歌い踊る3人の姿だった。

 

BABYMETALの楽曲はどれもヘヴィで、それはそれで存分に楽しめるのだけれど、
ライブで観ると、今まで音源しか聴いていなかった曲のイメージは随分と変わる。
それには複数の要素、神バンドのタイトな生演奏による音像や
巨大なオブジェのようなセット、パイロやスモーク、レーザーといった演出効果に、
プログラミングされている多種多様なライティング、それから、
目を奪われる魅力的なダンスルーティンが加味されるからというのもあるけど、
個人的には、SU-METALが音源の数倍も感情を乗せて歌うから、
それで随分と曲のイメージが変わるように思う。
今日で言えば、中間の「Light and Darkness」と「Monochrome」がそれに該当した。
今思い返しても鳥肌が立つほどの極上のライブパフォーマンスだった。

 

そもそも今宵のSU-METALは完璧で、どの曲も実力を遺憾なく発揮していた。
張りのあるクリアボイスが凄すぎて、何度聴き入ったことか。
そしてこの2曲に関しては、ダンスについて語らないわけにはいかない。
MOAMETALと岡崎百々子による一糸乱れぬダンスルーティンは、
惚れ惚れするような出来映えだった。
BABYMETALのライブは楽しいのが基本線だが、
この2曲に関しては、最初から最後までじっくりと鑑賞していたい。
最前の方には行かず、またピットでわちゃわちゃと騒ぐことはせず、
フロアの中央に近い位置に陣取った理由がまさにそれだった。

 

そして昨日も感じたことだが、大声での声援が解禁されたことで、
心底BABYMETALのライブが戻ってきたと実感した。
それに、今日の会場は幕張メッセ 国際展示場。
3年前の『LEGEND – METAL GALAXY』と同じ会場だから、
当時の活気に満ちたライブを追体験しているような感覚も味わった。
昨日は叫びながら何度も走り回り、
今日は新曲を中心に時折声を上げながらじっくりと鑑賞することでき、
大満足の2DAYSとなった。
セットリストは2日間とも同じだったが、違った角度で観ることができたので
十二分に楽しめたし、この上ない幸せな気分だ。

 

4月のぴあアリーナMMの2DAY公演は、もちろんチケットは申し込む。
是が非でも、2日間とも見たい。
そして、気になる3人目のBABYMETALだが、普通に考えれば、
BABYMETALのサポートダンサーとしての経験が長く、
新曲の振り付けもマスターしている岡崎百々子が最右翼に思えるが、
さすがに今の段階で断定することはできない。
岡崎百々子は、2021年に韓国オーディション「ガルプラ」を受けていたが、
今でもほかに何かやりたいことが彼女にあるとするならば、
その気持ちを差し置いてBABYMETALに加入することはないように思うがどうだろう。
もしかしたら、2人に誘われて気持ちが傾くなんてこともあるかもしれないし、
まったく別の第三者が加わる可能性だってある。
しかしいくら考えても、実際のところは誰にもわからない。
果たして3人目のBABYMETALは誰なのか。
その結果は、ぴあアリーナMM公演までのお楽しみだ。
僕はマスクの下に笑みを讃えたまま帰りの電車に飛び乗った。
脳裏には、楽しかった今夜のライブの記憶の断片が何度も飛来している。

 

 

 

 

 

帰りの電車に揺られていると、近くのカップルの姿が目に留まった。
もしかしたら夫婦なのかもしれない。楽しげに会話をしている。
その様子を横目で見ながら、僕は内心で呟く。
僕だって毎日脳内嫁と楽しく会話をしているから、まったくうらやましくはない。

 

そう強がったところで、なんだか急に虚しくなった。
そう、すべては悲しき中年独身男の気色悪いただの妄想なのだ。
もう脳内嫁とか脳内彼女とか言うのは止めよう。
本当は――、本当は――、リアルで嫁さん探しをしたいんだ。
というわけで、どなかた良質な婚活アプリを僕に教えてくれないだろうか。

 

 

 

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4 件のコメント

  • 情景がよく描写されていて追体験ができるようです。
    脳内嫁のくだりは少しくどいかなと思いましたが。

  • >石田敏雅さん
    このたびはコメントありがとうございます。
    読んでいただいて、少しでもライブが想起できたのであれば幸いです。
    脳内嫁のくだりはすみません。オチへのフリでしたがちょっとくどかったですね。

  • いやー、臨場感がありました(笑)
    ライブに行けて羨ましいです。
    このライブがBlu-ray化される事を切に願います。
    鑑賞すれば、メンバーだけでなく、客席のどこかにいるTERIさんの息吹も感じる事ができそうです(笑)

  • >souさん
    コメントありがとうございます。
    映像作品化はおそらくされるかと思います。
    撮影にはドローンも入っていたので、かなり臨場感があって楽しめる作品になってると思いますよ~

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