BABYMETAL 海外 Good Things 2018 メルボルン ライブレポート

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1.

数日前、久しぶりに元同僚(後輩)のK山くんと飲みに行ったときのこと。
居酒屋の席に着くなり、開口一番、彼は言った。

 

「あっ、先輩! 随分とオジンくさくなりましたね!」

 

僕はおしぼりを手にしたまま目を見開いて後輩の顔をしげしげと窺う。
失礼な。いきなり「オジンくさい」はないだろう。
しかし、少し考えたところで僕は視線を落とした。
久々の再会だし、疲れが顔に出ているし、
おそらく「顔が老けた」と言いたかったのを言い間違えたのだろう。
「実はニコラス・ケイジとモト冬樹は兄弟なんだぜ」と言えば素直に信じるほど、
昔からK山くんはかなり天然なところがあった。
今回も天然ぶりを発揮しているだけだと思い、僕はだんまりを決め込んだ。

 

「見るからに疲れたオジンって感じですよね」

 

ところがすぐに、K山くんが繰り返し蔑んできたものだから、
僕はおしぼりをテーブルに戻すと、再度後輩の顔を窺った。
だけど「上沼恵美子とつんく♂は親子なんだぜ」と言えば素直に信じるほど、
昔からK山くんはかなり天然なところが……、というかアホな子だ。
だからやはり彼の発言はスルーすることにした。
だいたい、後輩の言うことにいちいち目くじらを立てても仕方がない。
僕は引き続き沈黙を守った。

 

だけど内心では煮えくり返っていた。
天然かどうかなどは関係なかった。
まだ会社に在籍していた頃のK山くんのセリフがふと、脳裏をよぎる。
彼は、当時伸び切っていた僕の長髪パーマをしげしげと眺めながら、
「先輩ってまるで渋谷のモアイ像みたいですね」と言い放ったことがあったのだ。
「髪型だけじゃなく、老け具合もそっくりですよ」

 

 

 

グギギギギッ……。
くっそー、昔からいつも僕のことをオヤジ扱いしやがって!
居酒屋でのことを思い出して腹が立った僕は考える。
この怒りを鎮めるにはどうすればいいのだろうかと。
どこかに旅行にでも行けば心は落ち着くのだろうか――。

 

「よし。週末、旅に出よう」
早速僕は内心で意を決める。
思い立ったが吉日。すぐに実行だ。
さてと、場所はどこがいい? 心を落ち着かせるにはやはり古都だろうか。
となると、行く先は京都・奈良あたりか……。

 

旅行先を考えている最中だった。
先ほどのK山くんのセリフがふと頭に浮かんだ。

 

オジンだとっ!?
くそっ、いったい僕のどこがオジ…ン………?
オジンオジン
オジンオバン
オバンオバン
オトンオカン
オカンオトン
オカンオカン
オバンオジン
オジンオジン、んん!?
オジンオージン、
オージンオージン
オージンオージー……、オージー!
行く先はオージーに決定!

 

 

 

 

 

というわけでオーストラリアである。

 

広大なオーストラリアを旅行すれば心も落ち着くだろう。
それにここメルボルンでは本日、ロックフェス「Good Things」が開催される。
野外ライブで爆音を浴びればさらに心は満たされるはずだ。
僕はウキウキ気分でメルボルン空港を後にした。

 

 

 

フェス会場であるフレミントン競馬場までは電車で移動。
1861年に創設された歴史あるレース「メルボルンカップ」が開催される場所だ。
最寄り駅から10分歩ほど歩くと、やがて入場口へ到着した。
すでに開場しているのでどこもかしこもお祭りムード。
なにやら旨そうな匂いがあちこちから漂ってくる。

 

 

 

BABYMETALの出演は、Stage1で、午後15:15分から45分間の予定。
登場までにはまだ少し時間がある。
シドニー出身のメタルコアバンド、NORTHLANEがライブを行うと場内は盛り上がった。
海外フェスに来た実感が少しずつ湧いてくると、否応なく気分は高まっていった。

周囲にいる年齢層は青年から熟年の方まで幅広い。
18歳未満は大人と同伴じゃないと入場できないから随分と少ない印象を受ける。
若い女性客もそれなりにいるようだ。あちこちで目につく。
僕の網膜はカップルは認識できない仕様だから、残念ながらそれらの数は分からない。

 

 

 

果たしてBABYMETALの順番となると、周囲からBABYMETALコールが沸き起こった。
振り返れば後方まで人がぎっしりと入っている。
今日のフェスでは、いったいどんなステージングを披露してくれるだろうか。
ライブに対する期待感が大きく膨らむと、次第に胸が高鳴っていった。

 

やがて開演すると、会場のあちこちから怒号のような歓声が沸いた。
武者震いをしながら僕も大声を張る。
さあ、オージーのデカいキツネたちよ。首の準備はできているか?
人種を超えて一緒くたになって、今日はともに大いに盛り上がろうではないか!

 

 

 

 

2.

セットリスト

01. メギツネ
02. ギミチョコ!!
03. Elevator Girl
04. META!メタ太郎
05. Distortion
06. KARATE
07. Road of Resistance

 

 

初っ端は「メギツネ」。
3人が入場してくると再び大きな歓声が沸く。
オーストラリアへやって来るのを心底待っていたのだろう。
観客たちのBABYMETALのライブにに対する期待感が半端ない。

 

 

間奏ではお馴染みの煽りが入る。
SU-METALの若々しい声が大空に響く。
初見と思しき人たちも周囲のファンに感化されて弾けている。
こうして「メギツネ」は大盛り上がりのもと終了したのだった。

 

 

続いては「ギミチョコ!!」。
イントロが始まるなり大歓声が沸く。
代表曲なので一番認知されているのだろう。
それにしても、この反応には思わずウルっときてしまった。
こんなにもBABYMETALを待っていてくれたのかと思うと嬉しくて仕方がなかった。

 

 

間奏では、僕がいる場所の前後で大きなモッシュが発生。
とくに後方の観客たちの暴れっぷりはすさまじかった。
誰もが笑みを浮かべて喜びを表現している。
僕も彼らと笑顔で体をぶつけあう。

 

 

曲が終わっても大歓声。
ピットは異常な熱気に包まれている。
そしてライブはそのまま「Elevator Girl」へ。
新しい曲だからだろう、ここでは観客は静観してステージを見つめている。

 

 

SU-METALの声の調子は良さそうだった。
クリアな歌声が会場中に響き渡っている。
MOAMETALも、サポートのSAYAさんも素晴らしいダンスのキレ。
3人の同曲は生で初めて観たが大変見ごたえがあった。

 

 

続く曲は「META!メタ太郎」
3人が可愛らしく踊る。
日本ほどではないが、シンガロングでは大きな声が出ている。
見よう見まねで、振付をマネする観客の姿が幾分目に付いた。

 

 

間奏でもシンガロングが発生。
見渡す限りにキツネサインが掲げられている。
ビジョンに映るSU-METALの表情は満足げだ。
これだけ盛り上がっているのだから、
ステージから眺める景色もさぞや格別だろう。

 

 

続いては「Distortion」。
イントロのダンスのキレは圧巻だった。
新曲だが、観客のノリも上々。
多くの者が体を揺らしてライブを楽しんでいる。

 

 

間奏に入ると再びSU-METALが煽りを入れる。
WOW WOW の大きな声がそこら中に響き渡る。
曲が始まれば、それを合図に激しいモッシュが発生。
ピットは興奮の坩堝と化している。

 

 

そして次は「KARATE」が始まるが、
ここでの観客の反応も凄まじかった。
イントロが始まるだけで大勢がジャンプを始める。
曲が次始まれば多くが一緒に歌い始める。

 

 

間奏の間の歓声もすごい。
そしてサビに入ると、再び激しいモッシュが始まった。
デカい奴らが満面の笑みで狂うように体をぶつけ合っている。
これこそがBABYMETALのライブなんだと思い知る。

 

 

そして最後は「Road of Resistance」。
初っ端のWODは激しかった。

 

 

間奏のシンガロングも圧巻。
多くのキツネサインが掲げられいる。

 

 

そして終盤ではローイングモッシュも発生。
大勢が笑顔で参加していた。

 

 

暑さのせいか、終盤のSU-METALはかなりきつそうだったが、
予想以上の大成功を収めてBABYMETALのライブはすべて終了したのだった。

 

 

 

 

3.

その後はSTONE SOURのライブを見てから帰途につく。
今日のライブは、オーストラリアのファンに尽きた。
ある程度人気なのは知っていたけど、ここまで歓迎されるとは思ってもいなかった。
予想外の驚き、そして予想以上の感動を味わった。

 

 

やがてホテルまで戻った。
部屋に入るなり、疲れがドッと出て、なんとか椅子に腰かける。
気温が30度を超えていたのも体に影響したのかもしれない。
僕は大きく息を吐くと、立ち上がり、洗面所へ向かう。

 

さらに疲れることが起きたのはその直後のことだった。
鏡を覗いた瞬間に、ああ、と思った。
ああ……この顔は……。
鏡に映る、くたびれたオヤジそのものの僕の顔は、
あの渋谷のモアイ像にそっくりだった。

 

 

 

これは認めざるを得ない。
K山くんは実に的を射ていた。
いくらまだ若いんだと思い込んでも、やはり僕はもう年なのだ。
ふと先日のある場面が脳裏を過ぎった。

 

居酒屋で、K山くんとテーブルについたときのことだ。
席に着くなり、僕は無意識におしぼりで顔をごしごしと拭いていた。
確かにあのとき、K山くんはまじまじと僕の様子を眺めていた。
あれでは、不躾に「オジン」と言われても仕方がない。

 

 

 

 

 

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