BABYMETAL 海外 ユトレヒト ライブレポート

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1.

緊急の一時帰国を経て、僕は一路、オランダへ向かう。
アムステルダムのスキポール空港に着いたのは午後15時頃。
その後はインターシティ(特急列車)でユトレヒト中央駅へ向かった。
ホテルのチェックインと着替えを済ませるや、すぐに近くのライブ会場へ。
開場まではあと1時間半。一般チケットの列には100人ほどが並んでいた。

 

 

 

今回のライブ会場である TivoliVredenburg Ronda はどうも複合施設のようだ。
複数の飲食店があり、コンサートホールは Ronda 以外他にもあった。
列に並んでいる人たちのほとんどは外国人だが、みな笑顔で談笑している。
2年前にBABYMETALが出演した FORTA ROCK のフェスTを着た人が随分いる。
平日の2日間が瞬く間にソールドアウトになるほどオランダのファンベースは大きいが、
やはり2年前に出演したフェスの影響が大きいのかもしれなかった。

 

 

 

果たして開場時刻となりホールに入る。
小箱なので、フロアの中央後方でもステージまでは随分と近く感じる。
箱の形状は横に広く、スタンドもワイドで、両サイドからの眺めは良さそうだ。
昨夜の情報では、音響バランスは良いということだったので、僕は中央に位置を得た。
だいたいいつも考えなしに陣取っている場所ではあるのだけれど。

 

周りを見渡してみると、観客の年齢層は今日も幅広いようだ。
年配な男性もいればティーンの女の子の姿もある。
コスプレ女性もいれば、長髪タトゥーのガチメタラーもたくさんいる。
僕の網膜はカップルは認識できない仕様だから、残念ながらそれらの(ry。

 

わくわくしながら開演を待ちわびていると、真横から日本語が聞こえてきた。
振り向くと隣は外国人イケメン男性で、彼は友人と日本語をチェックしていた。
声援を送るつもりなのだろう、「MOAちゃん、愛してるよー」と何度も練習している。
僕が「パーフェクト!」と言って親指を立てると彼はうれしそうにはにかんだ。
すると友人の方が、他にも日本語を知っていると言わんばかりに、
僕に向かって「こんにちは」「日本大好き」などの言葉を発してきた。
褒めてほしいのだろう、僕が「パーフェクト」と言うと彼もうれしそうに笑った。
名前を聞くとイケメン男がディック、東南アジア人風の友人はアーベと名乗った。
2人ともユトレヒトに住んでいて、今日のライブを楽しみにしていたのだという。

 

 

 

ほどなくして開演となり、Dream State がライブを始める。
楽しみにしていたライブなので、僕は最初からテンションMAXで臨む。
「WhiteLize」「In This Hell」では、ジャンプしながら一緒に大声で歌った。
曲間、女性ボーカルが何度かMCをしていたが、僕は横の2人に向かって
MC中のボーカルのCJにも「愛してるよー!」と叫ぼうぜと提案した。
するとアーベが日本語で「じゃんけーん」と始めたので、僕はすぐに準備する。
そして3人でじゃんけんをした結果、負けたのは僕だった。
だから僕はすぐにステージに向かって「シャーロット、愛してるよー!」と叫んだ。
だいたい負けるのは言いだしっぺだよなぁという思いに駆られたのは言うまでもない。

 

個人的には大満足だった Dream State のライブが終わる。
その後約30分のインターバルを挟み、BABYMETALのライブショーが始まった。
ひっきりなしに沸く歓声がすごい。声に圧されてしまう。
そしてその熱気は数分後、幕が下りた瞬間、大いなる熱狂を生み出した。
ピットでは早くも後方からの圧縮地獄が始まっている。
デカいオランダのキツネたちよ、モッシュする準備は整っているか?
さあ、今宵もともに肩を並べて時間の限り踊り狂おうではないか。

 

 

 

 

2.

セットリスト

01.IN THE NAME OF
02.Distortion
03.Elevator girl
04.TATTOO
05.GJ!
06.紅月-アカツキ-
07.メギツネ
08.ギミチョコ!!
09.KARATE
10.Road of Resistance
11.THE ONE(Unfinished ver.)

 

 

“METAL RESISTANCE EPISODE VII – THE REVELATION -”
THE CHOSEN SEVEN のオープニング・ストーリー・ムービーが流れる。
その間、怒号のような叫び声がひっきりなしに飛んでいた。
どうやら開始前から興奮状態にいる男性が複数いるようだ。
果たして幕が落ち、「IN THE NAME OF」が始まると、爆発的な歓声が沸き起こった。
まるで儀式のようなステージングを、多くの観客が目を凝らして見つめ続けている。

 

続いて「Distortion」が始まるや、イントロから大いに騒ぐキツネたち。
そして曲が始まった途端、すさまじい圧縮のうねりに襲われた。
中央付近にいた僕の体は自然と下手の方へ流れていった。
今日は随分と女性客がフロアにいるが、みな必死に激流に耐えているようだった。

 

これほどの強い圧縮は久々だった。
後方ではかなり激しいモッシュも起こっている。
ふと視界の端に、ハーコーモッシュをしている体格の良い黒人男性の姿を捉える。
こりゃ堪らんと、僕はさらに下手の方へ避難した。

 

「Elevator girl」が始まると、ここでも広い範囲で強い圧縮が起こった。
僕の体は左右に大きく振られるが、なんといっても生で観るのが初めての曲だから、
僕はモッシュの渦を回避しつつ、なんとかステージ上を凝視する。
そこでは、得も言われぬ素晴らしいダンスルーティンが繰り広げられていた。
この曲は今後もモッシュやヘドバンはせずにじっくりと観賞しようと思う。

 

ライブはその後、SU-METALのソロ曲「TATTOO」へ。
ここでも強い圧縮が続き、大きなうねりに身を任せながら僕はステージを眺める。
SU-METALの歌唱は今宵も安定している。クリアな伸びのある声が心地良い。
ゆらゆらゆれると彼女が歌うのを、激しくゆらゆらゆられながら僕は聴く。

 

続けざまに「GJ!」が始まる。
フロアの観客の盛り上がりはずっと異常なままだ。
とりわけフロア中央のモッシュの嵐はほとんど止めることなく続いていた。
多くいる女性たちも絶叫しながらステージに向けて声援を送っている。

 

一呼吸間をおいて「紅月-アカツキ-」が始まる。
暗闇に浮かぶSU-METALは幻想的で、唄い出せば即、ディーヴァに変貌する。
ふだんはヘドバンをするこの曲だが、首を痛めているので今回ばかりは自重する。
その分、ステージ上を凝視した。
マッスル姉さん2人による格闘シーンは間近でみるとものすごい迫力があった。
まるで肉と肉とがぶつかり合う声が聞こえてきそうなほどに。

 

ライブは後半戦に突入。「メギツネ」が始まる。
観客たちの熱狂具合がすさまじい。最初からずっとフロアは大盛り上がり。
間奏では、自発的に座り込んでからのメギツネジャンプも発生。
この後、圧縮のうねりで僕の体はまた中央に戻される。
自然とモッシュピットの中に放り込まれ、キツネたちと激しく体をぶつけ合う。
お祭り騒ぎといった喧噪を終始生み出しながら、やがて同曲は終了した。

 

 

 

続けざまに「ギミチョコ!!」が始まると、さらなる歓声が場内で沸いた。
ベビメタといえばこの曲、というのが海外では一般的な認識なのかもしれない。
曲が始まった後の盛り上がりも半端なかった。
誰もが小刻みにリズムを取り、おのおのが自由に体を揺らしている。
大サビに入ると強い圧縮がまた発生。
僕はもみくちゃになりながら、この心底楽しい瞬間を味わう。

 

 

 

続く「KARATE」が始まると再び大きな歓声が沸いた。
モッシュの渦に巻き込まれながらも僕は大きく体を揺らし続ける。
間奏に入ったところで後方を向き、“シットダウン!”と声を張る。
意味を理解した者たちから順番にしゃがみこみ、
その後に起こる、座り込んでからの一斉のKARATEジャンプへとつながった。
その場で誰もが嬉々として大きくジャンプを繰り返している。
たとえようがないほどの熱狂がホール全体を呑みこんでいる。

 

 

 

場内が興奮の坩堝と化す中、「Road of Resistance」が始まる。
冒頭のWODは大きく、その中に身を投じた僕はなんとか倒れないように踏ん張る。
コール&レスポンスでは、振り絞るようにして高音を出し続けた。
終盤ではMOAMETALに合わせて “ シャウト! ” と叫び、少しだけヘドバンをする。
その後はピッチの安定したSU-METALの美声に酔いしれる。
大盛り上がりのもと同曲が終了すると、この日一番の大きな拍手が沸き起こった。

 

 

 

少しの間を挟み、「THE ONE」が始まる。
SU-METALが「- Unfinished ver. -」をしっとりと力強く、そして伸びやかに歌う。
それにしてもSU-METALの倍音の響きが心地良い。
それはたとえるなら、極上の精神安定剤を享受されたかのよう。
感覚的な話ではなく、実際に穢れがすべて消え、心が浄化していくのがわかる。
僕は微動だにせずに歌姫を眺め続け、ただただその美しい歌声に耳を傾けた。

 

最後にかけこみサーフが多発して、やがて同曲が終了する。
場内に沸く大歓声。
ベビーメタルコールも続いている。
あっという間の1時間だったが、すべてが濃密だったので終演後はくたくただった。
僕はBARでビールを注文し、それを一気飲みしてからホールを出る。
知らずに肩を痛めたようで、左腕があまり上がらないが、
すさまじかった今宵のライブの勲章ということにしよう。
僕は左肩をさすりつつ、口元に笑みを湛えたまま階段を下りて場外に出た。

 

 

 

 

3.

22時を過ぎているというのにはまだ明るい。
偶然ディックと再会したのは、会場の外に出てからすぐのことだった。
アーベはどうしたと訊ねると、クロークに寄っているので先に出てきたとのこと。
彼は興奮混じりに「BABYMETALサイコー!」といったようなことを何度も口にした。
僕はそうだろう、そうだろうと頷く。
それにしてもディックはイケメンだ。
僕は思わず、「ユー、アー、クールガイネー」と声をかける。
意味が通じたのだろう、ディックは再びはにかんだ。
そして社交辞令ふうに、僕を指さしながら「あなたもクールガイ」と言った。
そう言われた僕は、苦笑せざるを得ない。
そしてすぐさま「アイ アム プアボーイ」と答えた。

 

ディックが必死になってそんなことないと言ってくるが、明らかに僕はプアボーイ。
3日前に参戦したドイツのロックフェス、Rock im Park で財布をスられたがために、
ドイツから隣国オランダに向かうのに、トランジットが成田だったのだ。
何を言ってるんだい、ディックくん。僕は本当に惨めで憐れな男なんだよ。
理由までは言葉にはしなかったが、僕は悲しげな目で彼の綺麗な瞳を見返した。

 

そのまま帰ってもよかったが、連れのアーベがやってくるまでディックと話をする。
彼はいくつかの日本語を喋り、その都度、僕は褒める。
ふとディックが眉根を寄せ、「日本語だとなんて言うんだ?」と訊ねてきた。
どうやら先ほどの「クールガイ」のことを言っているらしい。

 

えっ? と小さな声が出た。
クールガイを日本語で言うと何が適切だろうか。
すぐには何も思い浮かばなかった。
ええっと、イケメン?
うーん、やっぱり「カッコいい男」かな。

 

そう答えようとした矢先、ふと閃いた。
僕はおもむろに口を動かし、“ ヒヤヤッコ ” と伝える。
刹那、ディックが表情をパッと輝かせる。
一度口にし、僕からの訂正を経て、彼は何度もそれを繰り返し叫んだ。
「ヒヤヤコッ! ジャパニーズヒヤヤッコ! ヒヤヤコーーーッ!」

 

僕は彼に合わせて悪ノリする。
「イエァァア! ユーアーヒヤヤッコ! ベリーベリークールなヒヤヤッコーッ!」

 

「クールガイ」に「冷奴」
漢字で書くと、うむ、これでもいいのかもしれない。
というか、これが一番しっくりくる。
喜びを爆発させる彼とハイタッチを交わすと、
僕も少しだけ冷奴、もとい、クールガイになった気がした。
ユトレヒトの白夜にいつまでも響き渡るディックの声。
僕は満足げな笑みを残し、アーベが来るのを待ってから会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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