BABYMETAL 海外 セントポール ライブレポート

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1.

昨夜のシカゴでのライブの余韻に浸りつつ、僕は次なる観戦の地へ向かう。
目指すはミネソタ州東部に位置する州都、セントポール。
人口は30万人弱で、アメリカ最大の河川であるミシシッピ川に面している街。
ちなみに、このセントポールと西に隣接するミネアポリスとをあわせて
一般的に ‟Twin Cities(双子の都市)” と呼ばれている。

 

 

 

ミネアポリス・セントポール国際空港からセントポールへは、
バスやタクシーなどの交通機関で移動するのが最短ルート。
だから当初は車(Uber)での移動(20分ほど)を予定していた。
しかしながら、ライブの開場時刻まではまだだいぶ時間があったので、
僕はミネソタ大のあるミネアポリス経由でないとセントポールへは着かない
ライトレール(トラム)で移動することにした。
駅の自販機で2時間半有効の切符(2ドル)を買い、ブルーラインを走る車両に乗り込む。

 

 

 

しばらくトラムに揺られた後、ミネアポリスのUSバンク・スタジアム駅で降車。
ここでグリーンラインを走るトラムへ乗り換え、一路、セントポールへ向かう。
途中、ミネソタ州会議事堂の横を通過
やがてトラムはセントポールのダウンタウンへ進入した。
空港からここまでの所要時間1時間15分ほどだった。

 

 

 

時刻は13時半を過ぎたあたり。
ランチのために少し市内を歩き回るが、飲食店はまったく見当たらなかった。
ミネアポリスが州の経済・文化の中心であるのに対し、
セントポールは州の政治の中心地、いわゆる‟行政都市”であることは知ってはいたが、
まさかこんなにもビルしかない場所だとは思ってもいなかった。
仕方なく、電子タバコのショップで売っていたスナック菓子を購入し、
それから、ミシシッピ川を初めて眺めた後、宿泊先のホテルへ向かった。
フロントの女性はBABYMETALのファンらしく、僕が着ているTシャツを見て笑みを溢した。

 

 

 

2時間ほど仮眠した後、17時半にホテルを出て会場へ向かう。
ダウンタウンと違い、郊外にはたくさん飲食店があった。
金髪美女が運転するUberで、やがて会場であるMyth Liveheへ到着した。
‟誰のライブ?”と訊かれたので、僕は嬉々として‟BABYMETAL”と答えるも、
残念ながら彼女は知らないようだった。

 

 

 

開場1時間前だが、VIP列には50人、一般列には200人ほどが並んでいた。
僕は最前には行かないので、チケットはいつもGA。
一般列の最後尾に並び、しばらく待つ。
今日の観客も老若男女、いろんな人が集まっていた。
若い女性や子供に加え、AVATARのTシャツを着た人も随分と目についた。

 

 

 

定刻となり、入場を果たす。
フロアへ進み、館内をぐるりと見回す。
昨日のシカゴの会場と比べるとこじんまりとしているが、それでもキャパは3000人。
内装はモダンな感じで、どこからでも見やすそうな四角い形状をした箱だ。
フロアの中央あたりに留まろうと思ったが、まだ前方が空いていたので、
せっかくだからいつもより前目の位置でAVATARのライブを楽しもうと意に決める。
人が増えて密集してくると自然と気持ちは高ぶっていった。

 

 

 

やがて開演となり、定番の「Hail the Apocalypse」でAVATARがライブを始める。
と同時に、ピットでは早くも激しいモッシュが発生。熱狂しているファンも多い。
昨日のシカゴでも彼らは人気があったが、今日はもっとたくさんのファンが集っているようだ。
メロイックサインを掲げて一緒になって大声で歌う観客の姿が視界を覆う。

 

 

 

その後は「A Statue of the King」「Bloody Angel」
「The Eagle Has Landed」「Puppet Show」などが披露されたが、
ライブ中は圧縮や激しいモッシュが頻繁に発生。何人かがサーフで流れていくことも。
そうして最後に「Smells Like a Freakshow」を披露してAVATARのライブは終了した。
しばらくの間続いた拍手や歓声が心地良かったのだろう、
ヴォーカルのヨハネスは最後の挨拶で、セントポールへ戻ってくると高らかに宣言した。
続けて発した‟BABYMETAL”のアナウンスに沸く観客。
ゲストアクト・AVATARの存在は、今回のツアーの集客において多分に貢献しているに違いない。

 

気持ちよくヘドバンを繰り出すことができて、大満足のライブだった。
音響も抜群で、会場中に重低音を響かせていた。
僕は喜びに浸りながら、少しばかり位置を後退させる。
そして海外のライブハウスではお決まりとなっている中央付近に佇む。
周りがたとえ大男ばかりだとしても、
外国人たちと一緒になってピットで騒ぐ行為は何ものにも代え難い経験だ。
僕は口元に笑みを湛えたままその時が来るのを待ち続けた。
今宵のピットは昨夜よりも確実に激しいものになるという憶測を胸に。

 

 

 

 

2.

セットリスト

01. メギツネ
02. Elevator girl (English ver.)
03. Shanti Shanti Shanti
※神バンドソロ
04. Kagerou
05. Starlight
06. FUTURE METAL
07. ギミチョコ !!
08. PA PA YA!!
09. Distortion
10. KARATE
11. ヘドバンギャー!!
12. THE ONE
13. Road of Resistance

 

 

1曲目の「メギツネ」が始まると、場内は早くも興奮の坩堝と化した。
絶叫に近い歓声があちこちでひっきりなしに沸き、
ピットでは初っ端から激しいモッシュが発生。すぐさま揉みくちゃの状態となる。
ステージを確認すると、今日のサポート・ダンサーは岡崎百々子だった。
ライブで彼女の姿を見るのは、さくら学院の‟2017年度卒業公演”以来のこと。
間奏で楽し気に観客を煽る岡崎百々子の姿を眺めていると自然と笑みが零れた。

 

続けざまに「Elevator girl」が始まる。
周囲にいる女性たちは時折声を上げながらつま先立ちでステージを眺めている。
すぐ横では引き続きモッシュが起こっている。
大男たちが無邪気な笑みを浮かべてリズムに乗り飛び跳ねている。
ノリのよいメロディと洗練されたダンス・ルーティンに耳目を集中させたからだろう、
曲が終わるや否や一斉に大きな歓声が沸き起こった。

 

次に披露されたのは新曲の「Shanti Shanti Shanti」。
待ってましたとばかりに、僕は首を伸ばしてステージを凝視する。
インド音階を用いた独特なリズムがクセになる同曲。
指先の動きまで意識したエレガントなダンスに魅了されずにはいられない。
サビでは縦ノリ不可避。リズムに合わせて心地よく首を振る。
やはりこの曲は率先してモッシュをしようという気にはならない。
SU-METALの力強い歌唱に耳を傾け、美しくシンクロされたダンスに見入る。

 

ノリのよいビートに合わせて騒ぐ行為が快感なのだろう。
ある者は奇声を上げ続け、ある者は‟BABYMETAL”と快活に叫んでいる。
その後ライブは「Kagerou」へと続いていくが、場内の熱気はどんどん上昇するばかり。
イントロが始まるなり、ピットの観客が嬉々として一斉にジャンプを始める。
ブルージーな楽曲を全身で堪能するかのように、多くの者が激しく体を揺らしている。
間奏でのクールなダンスを経て、やがて同曲は大盛り上がりのもと終了した。

 

少しの間を置いて「Starlight」が始まる。
SU-METALのクリアで伸びやかな高音ヴォイスがホール内に響き渡る。
キツネサインを掲げている多くの者は、バンドが演奏を始めると、
堪らないといった具合に体を動かして騒ぎ出した。
本当に1曲1曲が大好きで、曲ごとにとことん楽しもうという姿勢が伝わってくる。
僕は唇をギュッと噛み、ジェントのリズムに合わせて心地よく首を揺らす。
曲が終わった後は大歓声。満足げな叫びが場内にこだまする。

 

 

 

魂が浄化されるようなSU-METALのロングトーンの余韻に浸りつつ、
インストゥルメンタルの「FUTURE METAL」を堪能。
ライブはそのままキラー・チューン「ギミチョコ !!」へと続いていく。
やはり人気曲なだけあって、イントロから歓声が多く沸き、激しいモッシュも発生。
この揉みくちゃになって騒ぐ行為が堪らなく楽しい。
同曲は終始、大盛り上がりで進行し、
間奏での大量のクラップを挟んだのち、賑やかな空気を醸し出したまま終了した。

 

場内の興奮が最高潮に達しようとしている、まさにその時、
続けざまにパーティ・チューンの「PA PA YA!!」が投下される。
曲が始まるなり、観客たちは一息吐く間もなく手を上げて騒ぎ出す。
タイミングの良いSU-METALの煽り方も随分と板についてきている。
楽し気な彼女の声に乗せられて多くの者がジャンプしている。
同曲でも終始、ピットはお祭り騒ぎ。まさに狂乱といった按配だった。
陽気な掛け声や歓声が充満し、幸せな空間を形成している。

 

ライブはそのまま「Distortion」へと続いていった。
イントロの冒頭では激しいWODが発生した。
観客の興奮はずっとピークを持続している。
伸びのあるSU-METALの歌唱や、俊敏な動きとクールなダンスはもちろんのこと、
アップ・テンポな楽曲とタイトな演奏が、それを可能なものにしている。
激しい圧縮やモッシュに加え、サーフもひっきりなしに発生。
爆発的な盛り上がりを見せてやがて同曲は終了した。

 

狂乱の状況が続く中、さらなるキラー・チューンが投下される。
KARATE」だ。冒頭、フロントの3人がお決まりのポージングを決める。
イントロが始まるだけで観客は大熱狂。自然とモッシュが発生する。
僕は全身を揺らして、一音も漏らさないようにヘヴィな音を貪り続ける。
ギターの刻み音、それにベースの低音の響きが堪らなく心地よい。
そして間奏では、観客が自発的に座り込んでからのKARATEジャンプを発動。
SU-METALのロングトーンが胸中を貫くと自然と涙が零れ落ちていった。

 

次に披露された曲は「ヘドバンギャー!!」。
イントロが流れてくるとフロア中に大歓声が響き渡った。
「こいや!」と掛け声を張る人は少ないが、
疲れ知らずの観客は、ここでもずっとモッシュを繰り返して騒いでいる。
やがて同曲も大盛り上がりのもと終了。
小柄な女性が一心不乱に髪を振り乱してヘドバンをしているのが印象的だった。

 

 

 

少しの間をおいて、「THE ONE」が披露される。
SU-METALの美しくてクリアな高音ヴォイスがホール内に響き渡る。
多くの観客はSU-METALの美声にうっとりしている様子だった。
数人がライターの炎を揺らしていたので、僕はスマホのライトを照らして左右に振った。
揺さぶられた感情を吐き出すにはこれしか方法がなかったのだろう、
途中からピットでは緩やかなモッシュが発生した。
マントを身に纏ったステージ上の3人は眩いばかりの輝きを放っている。

 

ラストの曲は今宵も「Road of Resistance」。
冒頭、SU-METALの指図のもと、激しいWODが起こる。
その後は何度もサークルモッシュが発生。
キツネたちが最後の力を振り絞って笑顔で駆け回る。
やがて同曲は終了し、恒例のコール&レスポンスでライブは幕を閉じた。
終わった直後の大歓声が、今宵のライブに対する満足度を示している。

 

 

 

 

 

3.

 

興奮状態のまま外に出ると、多くの者が笑みを浮かべ、
仲間うちと今夜のライブについて語り合っている光景が目に留まった。
僕は微笑みを湛えたままスマホを操作する。
混んでいるせいでレートが行きの2倍の料金になっているが、
他に交通手段はないので迷うことなくUberを手配。
車を待つ間、たった今終わったばかりのライブについて回想する。

 

まず一番印象的だったのが、ゲストのAVATARのライブも含め、
観客がとても熱狂的だったということ。
正直なところ、アメリカ中西部の地方都市で果たして3000人が埋まるのか、
はたまたライブは盛り上がるのか、といった懸念がまったくなかったと言えば嘘になる。
なぜならば、過去にこのあたりの地域では、
キャパ1500人のシカゴのHouse of Bluesでライブを行ったくらいのはずで、
それが昨日のシカゴで3倍強の5000人、そしてここセントポールで+3000人、
計8000人を集客するのはさすがに無理があるのではないか、と思っていたのだった。
しかしそれはまったくの杞憂に終わった。
せめてこのあたりでライブをやるなら娯楽施設の多いミネアポリスで、
とも思っていたけど無用な心配だった。
会場のフロア後方まで、人はぎっしりと入っていた。
今日集まった観客は見事なまでに熱狂的で一体感のあるライブを作り上げた。

 

次に感心したのがセットリスト。
まず1発目の「メギツネ」でフロアの熱量を一気に上げると、
その後は「Elevator girl」「Shanti Shanti Shanti」「Kagerou」「Starlight」と、
どちらかと言えば魅せる・聞かせる曲を続けて行い、
観客の耳目をステージに釘付けにさせて興奮を促す。
そして「FUTURE METAL」をターニングポイントに、
後半は「ギミチョコ !!」「PA PA YA!!」「Distortion」「KARATE」
「ヘドバンギャー!!」とキラー・チューン、パーティ・チューンを惜しみなく投下。
その連続披露は効果てきめん、爆発的な熱狂を生み出した。
それから、「THE ONE」で会場全体を感動的な空間に変えた後は、
アンセム的な「Road of Resistance」でピークを迎えてクロージング。
昨夜のシカゴでも思ったが、見事な流れだったように思う。
もっとも、今日の観客はステージに釘付けというばかりではなく、
最初から最後まで楽しくモッシュを続けていたのだけれど。

 

バックバンドの演奏について思い返す。
今宵も非常に演奏はタイトで、ソリッドなメタル・サウンドを奏でていた。
音響バランスもかなりよく、気持ちよくヘドバンすることができた。
また、ドラムが代わるのではないかいう憶測もあったが、
今宵もどうもアンソニーがそのまま継続していたようだ。
彼のパワフルなドラム・テクニックは注目に値する。

 

フロントの3人はというと、3人ともがとても楽しそうだったのが印象的だった。
特に岡崎百々子は目を丸くして何度もモッシュピットを眺めていた。
日本人による日本語をメインにしたライブで、外国人があれほど熱狂する姿は、
BABYMETALのライブ以外では、なかなかそうはお目にかかれない。
今回のツアーで、彼女は‟音楽に国境はない”というのを肌で感じていることだろう。

 

MOAMETALは、今宵も優雅だった。
観客に向かって時折優しい微笑みは見せてはいたが、
クールにエレガントに踊る様子からは余裕が垣間見れた。
これまでの数多の経験が彼女にあれほどの落ち着きをもたらしているのだろう。

 

そして最後にSU-METAL。
改めて思うが、なぜあそこまで彼女は完璧なのだろう。
今夜もそうだったが、踊りながら歌っても息は弾まないし、
息継ぎの音も聞こえないし、なにより音程を外さない。
しかもピッチは常に安定していて、MCでは観客をうまくコントロールする。
彼女はどの会場であっても、圧倒的にすべてを支配する。
そもそも歌唱自体に強い説得力がある。
そして熱狂している観客の姿を眺めては満足げな笑みを溢す。

 

 

 

SU-METALの類い稀な歌声を聴けるのは、人生において最大の喜びである。
その思いを改めて深く胸に刻み、やがて僕は宿泊先のホテルへ戻った。
仕事がなかなか休めないので、週末を利用して弾丸でやって来て鑑賞した2夜連続のライブ。
明日の便で日本へ戻るが、この楽しいBABYMETALのライブ体験はいつだってプライスレスだ。

 

 

 

 

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