さくら学院 2017年度 卒業式 ライブレポート

 

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さくら学院が、3月24日(土)に東京・中野サンプラザホールにて “ 2017年度卒業公演 ” 〈The Road to Graduation 2017 Final~さくら学院 2017年度 卒業~〉を開催。中等部3年の山出愛子、岡田愛、岡崎百々子が本公演をもってグループを卒業した。4日前のライヴでそれぞれの進路について語った3人が、最後に見せてくれた熱いステージと想いをレポートする。

 

 

 

会場前は “ 父兄 ” (さくら学院のファンの総称)たちの行列で賑わっている。普段はオフィシャルTシャツなどラフな格好で観戦する者が多いが、この日ばかりはスーツや制服に身を包んだ人たちが多く、和服で着飾った女性父兄の姿もちらほら散見された。まるで本当の卒業式のような空気に包まれている。さくら学院のメンバーは中学3年の3月をもって必ず卒業するわけだが、明確に期限がわかっているからこそ、生徒たちは卒業式で完全燃焼できるように力を蓄えながら成長していくし、父兄たちも転入から卒業までの過程を追いかけ、温かい目で成長していく姿を見守っていく。卒業式は、大きく成長したメンバーたちが巣立っていく姿を見届ける、大切な儀式なのだ。

 

 

 

開場時刻となり入場を果たす。随分と多くの花が入口に飾られている。ふと「博多華丸・大吉」の名前を見て懐かしく思う。その昔、僕がまだ地元の福岡にいた頃、バイト先のテーマパークに2人(その頃はまだコンビ名が鶴屋華丸、亀屋大吉だった)が営業でやって来たことがあったが、2人とも人柄が良く、特に華丸氏は随分と腰が低かったことを覚えている。……と話は逸れてしまったが、こうやって公に身内としてライブ会場に祝花を贈呈してきたのは今回が初めてではないだろうか。というより、なにかと周りに影響が出るとまずいのでこれまでは遠慮していたのだろう。確か奥さんからも生徒の父親だと名乗らないようにと口止めされていたはずだ。だけど門出となる最後の卒業式くらいはいいじゃないかということで祝花を用意したのかもしれない。

 

 

 

 

ホールに入り、ゆっくりと前方へ向かう。ステージを眺めたまま5列目の席に座る。さくら学院の卒業式は2014年度から観ているが、1階席も初めてなら、こんなに近い席(公開授業は除く)で観るのも初めてだった。スタンディング・ライブではいつも後方で観ていたからこの距離感は嬉しい。TK from 凛として時雨、シェール、クリスティーナ・アゲリラとSEの曲が流れ、開演時刻を迎えたところで卒業生3人による影ナレが始まる。途端に沸く場内。3人それぞれの下の名を呼ぶ声がホール内に響いている。そうして17時5分過ぎ、定番の「Kiss Me Again」が流れてきて大きな手拍子が沸き起こると、ついにその時が訪れる。卒業生にとっては一生に一度の、泣いても笑っても最後となる記念すべきステージの幕が上がる。

 

 

 

 

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セットリスト

01.目指せ!スーパーレディー -2017年度-
02. School days
03. Planet Episode 008
04. スリープワンダー
05. Jump Up~ちいさな勇気~
~さくら学院2017年度 歩みの映像~
06. 3代目ミニパティメドレー(ダバダ♪サラダ de セボン☆アベニュー~ジャカパラ Goo Goo ♡ オムライス) / クッキング部 ミニパティ(山出愛子、岡崎百々子、日高麻鈴)
07. あきんど☆魂 / 購買部(吉田爽葉香、有友緒心)
08. I・J・I
09. Let’s Dance
~中等部3年 歩みの映像~
10. ひらり ひらり / 山出愛子
11. 未来時計 / 中等部3年(山出愛子、岡田愛、岡崎百々子)
12. 未完成シルエット
13. My Graduation Toss
14. FRIENDS
15. My Road
~さくら学院 2017年度 卒業式~
16. 旅立ちの日に ~J-MIX 2017~
17. 夢に向かって

 

※画像:音楽ナタリー様(以下同)

 

担任の森ハヤシ先生のかけ声から始まる自己紹介ソング「目指せ!スーパーレディー -2017年度-」でライヴが始まる。開演前は、これだけステージが近いと生徒一人ひとりの表情が肉眼でよく見えるから間違いなく目移りするだろうなと思っていたが、実際にライブが始まると、僕の視線は生徒たちの背後で小刻みにおどけた様子で踊り続けている森先生にばかり釘付けとなった。おそらくはこの曲でしか彼の雄姿は観ることができないのだからと咄嗟に脳が判断したからなんだと思う。途中、日髙麻鈴のパートから吉田爽葉香のパートのところにかけて大きなノイズが入り、少しばかり楽曲が聴き取れなくなってしまうシーンがあったが、彼はそこでも「なんだ? なんだ?」といった具合に上を見上げる仕草をしてコミカルな演技とダンスを続けていた。そうして彼はずっと僕の心を鷲掴みにしたまま、やがて同曲は終了したのだった。

 

続く「School days」では、12人全員が元気いっぱいにパフォーマンスを披露した。若さが躍動する彼女たちのステージはただただ眩い。その後は1回目のMCが入り、生徒たちが簡単な自己紹介を始める。順番にあいさつをする度に父兄たちが大声で名前をコール。森萌々穂のときにはちゃんと間違えずに「姫」とコールしている。そしてひととおりあいさつが終わると、本日の主役である卒業生の3人が今日のライブについての意気込みを語った。岡崎百々子は「今日が最後のライブ。絶対に悔いを残さないようなライブにしていきたい」と笑顔で宣言し、岡田愛は「最後まで楽しむ。この景色を目に焼き付けたい」と瞳を輝かせて微笑んだ。生徒会長の山出愛子はあまり実感が沸かない様子で、「卒業の実感はあったけど、今日になって急になくなった。『まだ卒業しないから』みたいな感じです。複雑な気持ちだけど、温かい目で見守ってください」と父兄たちに呼び掛けた。その後は藤平華乃のタイトルコールでライブは再開。次に披露された楽曲は「Planet Episode 008」。山出愛子の透き通った歌声が心地良い。岡崎百々子と岡田愛の2人が輪の真ん中で踊っていると生徒全員のダンスがキュッと引き締まっていくようなような感覚を抱いた。

 

4曲目の「スリープワンダー」ではステージセットを大きく使ってパフォーマンスを披露。ミュージカル風な世界観、間奏のセリフからサビへ向かって盛り上がっていく展開はいつ観ても最高だ。曲が終わると暗転し、美しい星空がステージ上を覆う。次曲は「Jump Up~ちいさな勇気~」。5曲目にして早くも卒業ソングを披露。生徒たちの合唱は今宵も美しく、ずっと聴いていたい衝動に駆られ、気が付けば今日初めての涙を溢していた。純粋でキレイなものを目にすると、人は琴線に触れ、自然と涙するが、さくら学院全体を覆うこの洗練されたオーラはいつだって清らかで、形容するならば深窓のアイドル。指先で触れることさえできないほどの純真さ、尊さを纏っている。僕は微動だにせずに美しいカノンのメロディ、それと紡ぎ合う無垢で清純な合唱に身を深く委ね続けた。

 

 

 

“ ~さくら学院2017年度 歩みの映像~ ” を挟み、ライブは “ 部活動ユニット ” の曲へ。山出愛子、岡崎百々子、日高麻鈴の3人からなる3代目ミニパティは、2曲のメドレーでキレのあるダンスを披露した。続く吉田爽葉香と有友緒心による購買部は、まず、仕込んでおいたネタを披露。グラスや下じき、メンコの物販紹介での面白おかしい2人の掛け合いで、場内は大きな笑い声に包まれた。個人的には、メンコの物販紹介の際に、吉田爽葉香が「愛子ちゃんは射手座」と振ると有友緒心が即座に「イテッ」と腕を抑え、おそらくは名前の漢字も引っ掛けていたのだろう、「最後まで愛のムチをありがとう!」と返したところがお気に入りだった。そして大盛り上がりのMCの後は購買部の新曲「あきんど☆魂」をノリノリで披露。間奏中には恒例のバズーカ砲も発射して場内を大いに盛り上げた。

 

その後は2度目のMCを開始。ミニパティのメドレーはずっと職員室の先生に懇願していたらしく、「ようやく夢が叶った」と日髙麻鈴が嬉しそうに語ると、「ミニパティの衣装を最後に着れて嬉しかった」と岡崎百々子は頬を緩めた。話題が購買部のステージに移り、バズーカで飛ばした中身は生徒全員のサイン入りTシャツだと吉田爽葉香が明かすと、間髪入れずに山出愛子が父兄たちに向かって「売らないで」と切願。場内から拍手が起こる。その後ライブは再開し「 I・J・I」を披露。サビに入る前、生徒たちが順番に顔を上げていくシーンはとてもクールで、次第に高まっていく曲展開も相まって鳥肌が立った。続く「 Let’s Dance」では究極ダンスを披露し、観客たちを大いに魅了する。これは見逃せないと、父兄たちの集中力も研ぎ澄まされているのだろう。場内は水を打ったように静まり返り、椅子を使ったキレキレダンスのパフォーマンスが終了するや割れんばかりの大きな拍手が沸き起こった。

 

ピアノ・ヴァージョンの「未来時計」の楽曲をバックに、“ ~中等部3年 歩みの映像~ ” がビジョンに映し出される。2013年度に転入してきた山出愛子があまりにも小さくて愛らしいから、その時ばかりは驚きの声で場内が沸いた。その間、ステージにはピアノがセットされ、ライブが再開されると山出愛子のソロ曲が披露されたのだが、曲はアルバム収録曲の「ふたりことば」ではなく、事務所の先輩、BEGINの上地等(Key)から助言を受けながらこの日のために作ったという新曲「ひらり ひらり」だった。「この5年間でいろいろと歌割り(歌のパート)が変わって、前の人はどういう気持ちで歌っていたのかを考えるようになった」と話し始めた彼女は、改めて「自分の気持ちを自分の言葉で伝えていくシンガー・ソングライターを目指します」と宣言してから、ピアノの弾き語りで美しい歌唱を披露した。彼女曰く、同曲は「自分を大きく成長させてくれた “ さくら学院 ” を思って作りました」とのこと。周りのみんなへの感謝の想いが込められているのだという。

 

 

 

山出愛子のソロ曲が終わると、中等部3年の残り2人がステージに登場。岡田愛は山出愛子の手を取りながら新曲を絶賛。泣きそうになったと感想を伝える。そして3年だけが揃ったところで、3人を時計の針に見立てた「未来時計」を披露することに。山出愛子が「悩んで帰ってくるところはさくら学院。時計の針の矢印の先は違っても、軸の部分は同じ。元軸になるのはさくら学院」と語ってから曲に入ったのが印象的だった。想いを乗せた3人の澄んだ歌声がホール中に響き渡っていく。

 

 

 

その後は歴代の名曲が続いた。「未完成シルエット」では一糸乱れぬダンスを披露。卒業生の3人がそれぞれ好きなポーズを決める。切ないメロディと真っ直ぐな歌唱が大きく感情を揺さぶり、周囲で聞こえる嗚咽の音はだんだんと多くなっていった。余韻を残しながら曲が終わり、生徒たちが袖にハケていく中、生徒会長の山出愛子だけがセンターに残ればそれは「My Graduation Toss」の始まりの合図。ロック調の明るい卒業ソングを12人全員で溌剌と歌う。複雑なダンスルーティンを軽々とこなし、美しいフォーメンションで父兄たちの耳目を惹きつける。

 

それからは再びMCの時間。開口一番、岡田愛が場内に向けて「盛り上がってくださってありがとうございます」と声を張る。そしてトーク委員長の岡田愛が仕切り、順番に中等部1年生を指名していく。お題は “ 今年印象に残ったライブ ” 。最初に指名された有友緒心は10月9日に東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTで行われた『さくら学院☆2017 ~放課後アンソロジー 紅葉のシャッフル・ナイト~』を挙げ、「可愛いテニス部の服を着れて嬉しかった」と話したのだが、すぐに岡田愛が有友緒心を指し、「つぐはスラっとして足が細くて長いからほんとにミニスカートが似合っていて可愛い」と褒めた。しかしそこで隣からの視線を感じると、同じくテニス部のメンバーだった山出愛子にも「愛子も可愛かったよ」と即座にフォロー。山出愛子は納得したのかどうかはわからないような表情で「う、うん」と小さく頷いていた。次に指名された吉田爽葉香は10月21日、22日に日産スタジアム新横浜公園で開催された『JACK・O・LAND COLLABO SUPER DREAM LIVE』を挙げ、「久しぶりにファッションショーに出演できて嬉しかった」と快活な声を上げた。森萌々穂は昨年6月に幕張メッセで開催された『Amuse Fes』を挙げ、「Perfumeさんとコラボができて嬉しかったし、妹みたいに接してくれていい体験になった」と笑みを溢した。岡田愛も「まさか『Amuse Fes』に出たり、幕張メッセの大きな会場でライブをするとは思ってもいなかったので夢のようだった」と同調した。最後となった藤平華乃の話題もPerfume繋がりで、彼女は2月17日にマイナビBLITZ赤坂で行われた『The Road to Graduation 2017 ~Sakura de Sacas~』を挙げると、「最後にチョコレイト・ディスコをカヴァーできて嬉しかった」と語った。最後は岡田愛が「『ねぇ』もアルバムでカヴァーさせてもらったし、今年一年Perfumeさんにはお世話になりました」と一礼して締めた。

 

その後ライブは再開。続く「FRIENDS」では、山出愛子が父兄たちに一緒にタイトルコールをするように促した。そうして始まった初期の名曲は見どころが多く、ペアで組むシーンは2人の関係性や過去のいろいろな場面を想起させるから何度も涙腺が刺激され、僕はギュッと唇を噛んで潤んだ瞳のままステージ上を凝視した。まだ小等部だった頃の幼い山出愛子と岡田愛の姿が脳裏を過ぎる。数年前に卒業している名コンビの元生徒にも、ふと思いを馳せる。感慨深い同曲が終了すると、岡崎百々子が「最後の曲です。卒業生は自分たちの道を進んでいきます」と力強く曲紹介。本編最後は今年度の代表曲「My Road」だった。キャッチーなメロディが耳に残り、サビのユニゾンが胸を打つ。間奏での揃ったダンス、一途で可憐な姿を眺めていると自然と涙が浮かんでくる。そして——。「悔しくて 大泣きしたって」と始まる大サビでの手拍子が大きなうねりとなって場内を揺るがす。今宵のライブの一つのハイライトだった。やがて同曲が終了すると大きな歓声と拍手がステージ上の12人に注がれた。

 

 

 

 

 

少しの時間をおいて卒業証書授与式が執り行われる。倉本美津留校長から岡崎百々子、岡田愛、山出愛子の順に卒業証書が手渡される。3人とも清々しい表情だ。仲間と別れて卒業するのは寂しいけど、すべてを出し切ったから学院生活に悔いはない、そんなふうに伺えるのだが心境はどうだろうか。その後は在校生を代表して中等部2年の新谷ゆづみが送辞を読み上げる。彼女は生徒の3人が病欠した『さくら学院☆2017 ~放課後アンソロジー 紅葉のシャッフル・ナイト~』や『Amuse Fes』を挙げ、「下級生たちを引っ張っていく温かさやチームをまとめる難しさを学んだ」と涙ながらに語ったが、最後には笑顔を作り、「スーパーレディーを目指して無限のダイアモンドを磨いて」と卒業生たちにエールを送った。中等部2年の中では一番最後に転入してきた彼女が送辞を担当したのは少しばかり意外な気がしたが、しっかりとその役目を果たした。

 

続いては生徒会長の山出愛子による答辞。彼女は答辞を読み上げる前にスタンドマイクを下げたが、もしかしたらこのパターンは3年周期でやってくるのかもしれない。前回は2014年度の菊池最愛が、その前は初代生徒会長の武藤彩未が同じシチュエーションを展開し、父兄の笑いを誘ったことがあった(もっとも本人たちはそれで笑いを取るつもりはなかっただろうが)。そして山出愛子はまず、在校生一人ひとりに温かいメッセージを伝えたのだが、目尻を下げ、後輩に優しく語りかける彼女の姿はとても印象的だった。愛子、成長したなあ、と心から思う。それから彼女はスタッフや職員室の先生方、家族や父兄に対して感謝の言葉を述べ、倉本美津留校長に対しては「さくら学院の校則は卒業生を照らします。校則をしっかりと胸に刻んで進んでいきます」と伝え、担任の森先生には「生徒一人ひとりの個性を拾い上げて伸ばしてくれてありがとうございました」と謝辞を述べた。「私たちの姿が後輩たちの夢や希望に繋がっていったら嬉しいです。今まで本当にありがとうございました」。瞳を輝かせて最後まで堂々と話す彼女の表情には5年分の思いが滲み出ていて、体全体から放たれるオーラには慈愛の光が宿っているようだった。

 

続いては倉本美津留校長の式辞。彼はまず「今日、東京の桜が満開宣言。きっと桜は君たちのことを祝福して満開になったんだと思います」と祝福し、それからこれまでの卒業式を振り返り、「7年間の中で、今年度の卒業生が一番しっかり先を考えている」と評した。そして卒業生の一人ひとりに励ましの言葉を送ったのだが、岡崎百々子へは「ミュージカル『黒執事』で重要な役柄を堂々と演じたから、卒業後はてっきり女優の道を目指すものと思っていたけど海外留学。可能性の限界を探ろうとしている君は、さくら学院の生徒として素晴らしい選択をした。君は将来、何にでもなれる」とエールを送った。同様に岡田愛には「さくら学院の生徒には、世の中を良い方向に導くオピニオンリーダーになって欲しいと常々思っていて、『スーパーレディーを目指す』という校則を掲げて学んでもらっているが、キャスターが一番それに最適。正義のニュースキャスターになってください。なれるから」と伝え、山出愛子にも「スーパーレディー・シンガー・ソングライターになってください。絶対になれる」と言って強く背中を押した。「未来に向かってこのまま笑いながら頑張っていってくれ。卒業おめでとう!」。卒業生の3人は微笑を湛えたまま校長先生の話に耳を傾けていた。

 

式辞が終わると、「ちょっといいですか」と森先生が遠慮気味に挙手する。卒業証書授与式では恒例となったシーンだ。彼は「毎年言ってるんですけど、面白くなってきたなと思ったらみんな卒業」と話を切り出し、「今年の中3は本当に課外活動が素晴らしく、しかもさくら学院と両立した」と卒業生を褒め称えた。それからは個別に「山出はいつもは優しいが勝負ごとになると怖い。岡田はライブではトーク委員長でうまく仕切るが、『︎FRESH!マンデー』では段取りが悪くてメソメソしている。極めつけは岡崎で、ミュージカルはすごいのに、歌の考古学では肝心の歌詞が飛んだ」とイジったが、それは彼なりの愛情表現。その後は真面目な顔つきで3人に対し、「これから別々の道を進むけれど、外の世界でたくさん失敗しておいで。君たちの成功は放っておいても届く。成功して活躍しているなんてことはイヤでも耳に入ってくるから、七転八倒して『こんな失敗したよ』っていうのを父兄さんに伝えられる、そんな未来が来れば幸せ」と感慨深げに語った。「みんな卒業していくのに、おっさん2人だけはいつまでも残っていくというね……」。最後は少しばかりグダグダになったところもあったが、涙と拍手に包まれた式典が終わると、卒業生の3人は威風堂々の音楽をバックに晴れやかに退場していった。

 

その後、アンコールの1曲目として定番の「旅立ちの日に ~J-MIX 2017~」でライブは再開。吉田爽葉香によるピアノの伴奏に合わせ、生徒たちが美しい合唱を披露する。生徒たちがハイタッチを交わすシーンはいつ見ても感情が揺さぶられる。幸い卒業生の3人は涙で歌詞を飛ばすことはなく、伸びやかな歌声でしっかりと歌い上げた。そして最後はアンセムともいえる、歴代のさくら学院が一番歌い継いできたナンバー「夢に向かって」。山出愛子がマイクを握り、同曲に対する思いを語りながら曲紹介をするが、噛み締めるようにしてゆっくりと言葉を継ぐ様子からは、これが本当に最後なんだ、この曲を歌うともう終わりなんだという、覚悟と悲壮がない交ぜになったような彼女の胸のうちがひしひしと伝わってきて、胸が締め付けられる思いに駆られた。ややあって、12人が弾けるような笑顔で同曲を披露する。歌い踊る彼女たちだけではなく、ステージ全体がキラキラと輝いている。パワフルな歌声を届けたメンバーに、父兄たちはさくら色のフラッグを振って大歓声で応えた。アウトロの最後、旗が綺麗に揃ってビシッと上がり、サッと降りた瞬間、僕の目は感極まった表情を見せた山出愛子の姿を捉える。だけど彼女はすぐに唇を噛んでしっかりと前を見据えた。

 

 

 

すべての演目が終わると、在校生が順番に卒業生へメッセージを送る。感情がこみ上げた森萌々穂は何度も言葉に詰まるも最後は「最高の先輩でした」と言って締めた。日髙麻鈴はしっかりとした口調で3人に感謝を伝え、新谷ゆづみは涙ながらに「転入式がついこのまえのよう。3人が卒業して不安だけど中2の3人で頑張るね」と言葉を振り絞った。小等部5年の田中美空は終始泣きながら今にも消え入りそうな声でなんとか最後まで言葉を繫ぎ、吉田爽葉香は涙を堪えながらしっかりと3人に祝いと感謝の言葉を伝えた。KYGメンバーである藤平華乃は同メンバーの岡崎百々子に対して「本当は留学してほしくないけど、百々子の選んだ道だから応援するし、何かあったら駆けつけるから!」と明るく伝え、同じくKYGメンバーの麻生真彩は岡崎百々子に対し、「百々子とは『FRIENDS』で長い期間ペアだったし、一緒にいる時間が長くて、転入式の紹介も一緒で、12歳サポーターズも一緒で、KYGも一緒で、全部一緒だったのに、唯一違うのは、学年でした」と寂しい心境を吐露した。終演の時間が迫る中、有友緒心は涙を懸命に堪えながら言葉を振り絞って3人に謝辞を伝え、もう一人の小等部八木美樹は「こそこそ教えてくれてありがとう」と個別に 岡田愛 岡崎百々子にお礼を言った。おそらくは「全体練習の後にできなかったところを自分にだけこっそりと教えてくれてありがとう」といったようなことを言いたかったのだろう。誰もが小等部のときはうまく言葉をまとめられなかった。だから大様に甘受し、小さな彼女の今後の成長の過程を見守っていきたいと思う。

 

そして最後は、卒業生の3人ともが短いながらもしっかりとあいさつ。岡崎百々子は「さくら学院の絆は誰にも壊せない。卒業後は留学するので、みんなにはだいぶ長い時間会えなくなるけど、今までありがとう。父兄の皆さんに恩返しできるようなスーパーレディーになります」とコメント。岡田愛は「4年間、なんの取り柄もない私を応援してくださった父兄さん、本当に本当にありがとうございました。さくら学院生でいれてよかったです」、山出愛子は「父兄の皆さんに支えられてここまで成長することができました。こんなにあったかいメンバーがいてくれたから私は成長できたと思っているし、お互いにお互いを高めあえる2017年度が作れたんじゃないかなと思います」と清々しい表情を見せた。それから3人はマイクを通さず地声で「ありがとうございました!」と叫び、深々とお辞儀をしてからステージを去っていった。刹那、あちこちから「おめでとう!」の声が飛ぶ。絶叫のように名前を呼ぶ声もする。最後まで笑顔を見せて清らかに旅立っていく彼女たちに向けられた万雷の拍手はしばらくの間止むことはなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

3.

人の波に流されながら外に出る。帰りの電車に揺られながら今宵の卒業公演を振り返る。ライブ中、特に卒業証書授与式の最中は生徒たちに感情移入して何度も泣いてしまったが、全体的には明るい卒業公演だったという印象だ。それはきっと倉本美津留校長が式辞の冒頭で述べたとおり、今年度の卒業生はしっかりと先のことを考えていると自分も思っていたからなのだろう。3人とも課外活動に励みながら、山出愛子はシンガー・ソングライターを、岡田愛はキャスターを、そして岡崎百々子は海外留学と、それぞれ明確に目標を見つけて臨んだ卒業式だったから、ほとんど湿っぽくはならず、むしろ新たな旅立ちを総出で祝うような温かい雰囲気に包まれていたように思う。きっとライブが終了した舞台裏では生徒たちは輪になって大泣きしているのだろうが。

 

「自分を大きく成長させてくれた “ さくら学院 ” を思って作りました」
「悩んで帰ってくるところはさくら学院」
「時計の針の矢印の先は違っても、軸の部分は同じ。元軸になるのはさくら学院」
「さくら学院の校則は卒業生を照らします。校則をしっかりと胸に刻んで進んでいきます」

 

印象に残った山出愛子の言葉を思い返すと、3年前に書いた卒業式レポをはたと思い出した。そのレポの文末で、卒業生に対する送る言葉として、僕は親鸞の『浄土和讃』のなかにある言葉「畢竟依を帰命せよ」をもじり、「さくら学院を帰命せよ」、つまりは「さくら学院を本当に依るべき究極の依り所として生きなさい」と記した。そういえば森先生も式典の最後で卒業生に向けて「たくさん失敗してきなさい」と言ったあと、「失敗を笑って話してオレも爆笑して、父兄さんとも笑いあうホームをオレは守りたい」と続けていた。やはり彼もさくら学院をそう捉えているのだろう。ふと何かにつまずいたとき、在校生にとっても卒業生にとっても、さくら学院という存在が心の拠り所となるのは間違いない。それだけ濃い時間を過ごしているのだから。というわけで、最後は恐縮ながら前回の卒業式レポと同じ文面で締めさせていただくことにする。この先どんなに辛いことがあっても、どんな試練が待ち構えていようとも、さくら学院で過ごした日々や仲間のことを思えばどんなに高い壁だって乗り越えていける。“さくら学院”という究極の拠り所を心に、3人はこれからも胸を張って自分が信じる「My Road」を突き進んでゆけ。

 

 

 

 

 

 

 

※本レポの簡易版です。こちらも合わせてどうぞ。

さくら学院、満開の桜のように笑顔の花咲いた“2017年度卒業式” – CDJournal ニュース
 アルバム『さくら学院 2017年度 〜My Road〜を3月3日にリリースしたさくら学院が、3月24日(土)に東京・中野サンプラザホールにて“2017年度卒業……

 

※短いですが、アルバムレビューも書かさせていただきました。

 

 

 

 

 

8 件のコメント

  • また、涙腺崩壊です。3/24の会場がありありと目の奥に浮かんできました。
    ありがとうこざいます。

  • 素晴らしいレポありがとうございます。
    あの卒業式の一瞬一瞬が思い出されまた涙が溢れてしまいました。
    3人の卒業生の未来が楽しみです。

    ひとつだけ、美樹ちゃんがコソコソ教えてくれてありがとうって言ったのは百々子に対してですよ。

  • 素晴らしいレポだと思います。
    ただ、こそこそ教えてくれたのは、百々子だと記憶しています。

  • koitaro_metalさん
    コメントありがとうございます。
    少しでもあの日の情景が目に浮かんだのであれば幸いですよ。
    読んでいただいてありがとうございました。

  • パンプキン百々太郎さん
    コメントありがとうございます。
    毎年思いますが、旅立っていく卒業生はみんな幸せになってほしいですね。
    最後のご指摘、ありがとうございます。
    正直、めぐかももこか記憶があいまいでした。謹んで訂正いたします。

  • 牛子牛男さん
    コメントありがとうございます。
    他の方からもご指摘いただきました。
    失礼いたしました。
    訂正の上お詫びいたします。
    読んでいただいてありがとうございました。

  • 2015のベビーメタル発見からついにここまで辿り着いたものです。レポを見させていただき、自分が森先生やTERIさんに近い感情を抱いていることに気付きました。来年度から転入式から追いかけてと行きたいと思いました。一人新規が増えますが、どうかご容赦ください。

  • 匿名さん
    コメントありがとうございます。
    僕もBABYMETALから入ったクチですが、一度さくら学院の魅力に憑りつかれると、
    その後は放っておけなくなり(生徒個々の成長がやはり気になります)、
    定期的にライブに足を運ぶようになりましたね。
    父兄としての活動、満喫してください~v

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