BABYMETAL BEGINS – THE OTHER ONE – ぴあアリーナMM 2日日 ライブレポート

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1.

朝起きると首に少しの痛みを感じた。
昨夜はどうも調子に乗ってヘドバンをしすぎたようだ。
だけどあれは仕方がない。体が勝手に動くのだから。
とくに初披露となった「MAYA」や「Mirror Mirror」のサウンドは極悪すぎて、
どうにも頭を振らずにはいられなかった。
そして今夜はそれらの曲に加え、「Monochrome」も披露されるだろうから、
楽曲のヘヴィさに、また無意識に頭を振ることになるだろう。
翌日に痛みが増すかもしれないが、重低音が支配するBABYMETALのライブで
欲求を抑えることは到底無理な話というものだ。

 

深夜のサッカーや早朝のMLBを見ていたせいで完全に寝不足。
ライブ前はなるべく体調を整えたいところだが、
これもまた欲求に逆らえなかったことによる結果なので致し方なし。
ホテルで適当な仮眠をとってから、開場30分前に現地に到着。
昨日は入場時に混乱していたが、今日は改善されているといいなと切に願う。

 

 

 

やがて開場時刻となり、黒マスクをつけたまま入場。
元々待機できるスペースが狭いのだろう、今日の入場時も若干混雑した。
チケットはA5ブロックの210番台。
昨日のBよりもステージには近いが、一番端のブロックなので、
そこまでステージの様子は詳しくはわからないだろう。
新曲はなるべくダンスまで注視したいところだが、見えないようなら仕方がない。
タイミングを見て、モッシュピットに参加することも検討しようと思う。

 

 

 

持ち物検査とセキュリティチェックをパスし、ほどなくしてブロック内に入場。
前に行くと角度が付きすぎてステージ中央が見えないので、真ん中やや後方に待機。
周囲を見渡すと、今日も中年男性の数が圧倒的に多かった。
女性の姿は数人が目につくほど。
僕の網膜はカップルは認識しない仕様なので残念ながらそれらの数は分からない。
入場時はスペースに余裕があったが、次第にブロック内の密度は高まっていった。

 

SEでサバトン、メガデス、ゴースト、パークウェイ・ドライヴ、
ラムシュタイン、ブリング・ミー・ザ・ホライズンなどの曲が流れている。
トム・モレロがブリング・ミー・ザ・ホライズンをフィーチュアした
「Let’s Get The Party Started」が開場時刻ちょうどくらいに終了するが、
ここではショーは始まらなかった。
そして定刻より10分遅れ、スリップノットの「Psychosocial」が終わった直後に暗転。
刹那、SEの楽曲に合わせて手拍子をするなどしてだいぶ温まっていたメイトたちが
怒号のような凄まじい歓声を上げる。
僕も叫びながら拳を突き上げ、ステージ中央を凝視する。
MOMOMETALが新メンバーとして加入し、今夜が初となる新生BABYMETALのライブ。
スタート時でのこの異様な盛り上がりは、ライブに対する期待の表れに他ならない。
今夜が歴史的なライブになると皆が確信しているからに違いなかった。
さあメイトたちよ、この記念すべきライブを一緒くたになって大いに騒ぎ、
余すことなくとことん味わい尽くそうではないか。

 

 

 

 

2.

セットリスト

01. METAL KINGDOM
02. Road of Resistance
03. いいね!
04. PA PA YA!!
05. Mirror Mirror
06. Light and Darkness
07. KARATE
08. Monochrome
09. METALIZM
10. Distortion
11. Divine Attack – 神撃 –
12. THE ONE
13. BABYMETAL DEATH
14. イジメ、ダメ、ゼッタイ

 

今宵のライブのオープニングを飾ったのは「METAL KINGDOM」。
BABYMETAL復活劇の狼煙を上げるアンセムだ。
1月の幕張のライブでは、SU-METALとMOAMETALの2人だけが玉座に座り、
1つは空席のままだったが、今回はMOMOMETALも含めた3人で登場。
この光景を目にしたメイトたちが次々に歓喜の声を上げる。
特にMOMOMETALがスクリーンに映ると、ひと際大きな歓声が上がった。
そしてメイトたちが“オーオー、オーオオーオー”と合唱する中、
MOMOMETALとMOAMETALが二股の槍を持って左右に展開。
MOMOMETALが下手、MOAMETALが上手に移動すると、
ややあってSU-METALが玉座に座ったまま力強く歌い始めた。

 

※画像:音楽ナタリー(以下同)  Photo by Taku Fujii / Takeshi Yao

 

ステージの中央はセットが組まれ高くなっていたが、
その部分はそのまま前にせり出る仕掛けとなっている。
立ち上がったSU-METALが2段ステージの先端まで歩き、
観客に訴えかけるようにクリアな歌声を響かせる。
それにしても爆音だ。特に地響きのような音を立てるドラムがヤバい。
ドラムの位置が上手側なので、より音圧を感じる。
その音に負けずにSU-METALが声を張り、
メイトたちに“奮い立て”とでも言うように力強く歌詞を紡いでいく。
僕は轟音を浴びながら首を振りつつ、SU-METALの歌声に聴き入る。
“ヘヴィサウンド”と“クリアボイス”、対比する素晴らしい“2つの響き”を
初っ端からとことん堪能する。

 

MOMOMETALとMOAMETALの2人も中央に集結。
3人が槍を掲げてメイトたちを扇動する。
メイトたちは大声で“オーオー、オーオオーオー”と連呼。
僕も両手を前へ出し、何度もシンガロングを繰り返す。
その響きに乗せて、SU-METALが力強くも切々と歌い上げていく。
やがて曲が終わると場内のあちこちから大きな歓声が上がった。
しかしその歓声は、鳴り響く法螺貝の音ともに驚嘆の声へと変わっていった。

 

次に披露された曲は「Road of Resistance」。
まさかだった。この曲が2曲目にくるなんて想像すらしていなかった。
“最初から飛ばしていくぞ!”という、BABYMETALからのサインなのだろう。
しかしイントロが始まれば、メイトたちはすぐさま臨戦態勢に。
僕もウォール・オブ・デスの準備へと入る。
そしてSU-METALの合図のもと、一斉に体をぶつけあうメイトたち。
その後はお決まりのサークルモッシュへと続くが、
僕はサークルの真ん中でタオルをずっと振り回し続けた。
メイトたちが屈託のない笑みを浮かべて元気に走り回っている。

 

 

 

BABYMETALの3人は、新しいバトルスーツの衣装を身に纏っている。
ところどころにオーロラペーパーのフリルでも施されているのか、
何色もの照明が反射し、色鮮やかに光り輝いている。
メイトたちは喜びの声を上げながらサークルモッシュで走り回っている。
僕はそれを見守りながら何度もハイタッチを交わす。
ここでもドラムのブラストビートが火を噴き、ギターの速弾きが炸裂。
どうにも堪らない快感が脳内を刺激する。
愉悦を覚えながら周囲ではしゃぎまわるメイトたちの笑顔と、
ステージ上の悠然とした、凛々しい3人の姿を眺めていると、
これこそがBABYMETALのライブだと、心底実感した。
フロアは大量の歓喜の声で溢れかえり、すでに興奮の坩堝と化している。

 

 

 

シンガロングのパートに入ると、
「私たちはここから道なき道を進んでいきます」
SU-METALが途中に声を発した。
「辛いとき、大きな支えになるのは皆さんの存在です。
みんなの声、もっと聞かせてください!」
途端に沸く場内。大勢が声を張り上げSU-METALの訴えに応える。
そこからは演奏なしでのシンガロングが続いたが、
思わず感動で身震いしてしまうほどの迫力があった。
SU-METALは目を瞑り、時折耳に手を当ててメイトの合唱を聞いていたが、
シンガロングが終わる頃には満面の笑みを浮かべて「ありがとう!」と叫んだ。
再び声を上げるメイトたち。
あちこちで怒号のような歓声が飛び交っている。
その後はサークルモッシュを何度か繰り返し、
SU-METLのロングトーン、そしてフォックスサインを掲げて、
大盛り上がりのもと同曲は終了した。
場内には指笛や3人の名を呼ぶ声が溢れ返っている。

 

ライブはすでにクライマックスの様相を呈している。
それほどまでに場内は熱気がこもっている。
まだ2曲が終わっただけだというのに、僕はすでに肩で息をし始めている。
タオルで額の汗を拭い、ペットボトルの水を口に含む。
しかしながら、時間は一息つく暇さえも与えてはくれなかった。
なぜならば“まさか”が続いたからだ。
青い光線とともにユーロビート調の独特のイントロが流れてくると、
歓喜の声を上げていたメイトたちの間から大きなどよめきが起こった。
そしてすぐさま曲に乗りつつ“オイ!”“オイ!”と大声でコールした。
次に披露されたのはなんと、約7年ぶりとなる「いいね!」だった。

 

3人が満面の笑みでステージ上で躍動する。
MOMOMETALが「いいね!」を踊っている姿を見るのはこれが初めて。
彼女は何度もアイコンタクトをしながら楽し気に踊っていた。
SU-METALもMOAMETALも、心底楽しいといった具合に振舞っている。
途中、“おまえのものはおれもの!”と、僕は久々に叫ぶ。
そして“いいね!いいね!”と親指を突き出していると、ふと涙に咽ぶ。
懐古・追憶・ノスタルジア――。
気が付けば自然と目頭が熱くなっていた。

 

間奏のラップパートがこれまた懐かしい。
SU-METALの“セイッ、ホー”は相変わらず可愛らしい。
頭の上で“M”の文字を作りながら“エムエム?”と叫んでいたが、
後半ははっきりとは聞き取れなかった。
しかし彼女の楽し気なパフォーマンスを見ているだけで幸せな気分になった。
その後もメイトたちによる“いいね!いいね!”の大合唱。
同曲も大盛り上がりのもと終了したのだった。

 

なんということだろう、究極の楽しい時間が続く。
感情が何度も爆発し、今日のライブは完全にヤバいと興奮状態でいると、
立て続けに「PA PA YA!!」が始まったものだから、
僕は笑みを湛えたまま首に巻いていたタオルを手に取った。
メイトたちはすでに準備OK。
楽しい時間はさらに続く。
SU-METALの“アーユーレディ?”の掛け声を合図に、
“パッパパパヤー!”と声を張りながら所狭しとタオルを振り回す。

 

 

 

ステージの前では火柱があがり、
スクリーンには炎の映像が大きく映し出されている。
フロアでは無数のタオルが振り回され、
まさに“お祭り騒ぎ”といった塩梅だ。
F.HEROのラップに合わせて踊る3人がとても可愛らしく目に映る。
彼女たちはここでもアイコンタクトしながら楽しそうに踊っている。
僕は声が枯れそうになるほど何度も“パッパパパヤー!”と声を張る。
曲が終わると場内には大歓声と拍手が沸き起こった。

 

続いての曲は「Mirror Mirror」。
楽曲の世界観を表したアートワークがビジョンに映る。
ここでようやくメイトたちが落ち着きを取り戻す。
しかし体は動かさずとも、楽曲は凶暴なまでにヘヴィなので、
大勢がボーカルとダンスに耳目を奪われる中、
僕は薄く目を閉じて頭を小刻みに揺らす。
ここでもドラムの爆音がすさまじかった。
ギターのテクニカルな演奏には思わず唸った。

 

ジェントやプログレ要素満載のメタル・チューンの同曲。
それを西の神が水を得た魚のように生き生きと演奏している。
この強烈な音圧を全身で受けながら歌うSU-METALがこれまたすごい。
彼女は常に爆音に負けない張りのあるクリアボイスを場内に響き渡らせていた。
そしてライブは「Light and Darkness」へと続くが、
ここでもSU-METALは力強い歌唱を披露したのだった。

 

シティ・ポップ要素も取り込んだ、光と闇が交差する世界を表した同曲。
スモークとレーザー光線が幻想的な楽曲の世界観を作り上げていく。
その素晴らしい演出の中、SU-METALが滑らかに歌い出す。
MOAMETALとMOMOMETALによるダンスも必見の価値あり。
僕は一瞬たりとも見逃すまいと、直立不動でステージを凝視する。
この曲ばかりはダンスから目が離せない。

 

神バンドによる演奏はここでもタイトかつソリッド。
その重低音に負けずに、SU-METALが声を張る。
これを絶唱と言わずに何と言おう。
メイトたちの手拍子で次第にテンションが上がっていく中、
SU-METALが音程を上げていきながら“アーー”と叫び、
少し溜めてから「毒されていく」と、渾身の歌唱を披露。
その瞬間、わなわなと鳥肌が立った。
幕張の時はもっと滑らかに歌っていたように記憶しているが、
今宵はとても感情任せの気合の入った歌い方だった。
そして曲が終わると、ここでも大歓声が場内を包み込んだ。

 

少しして、ストーリームービーが始まる。
映画「マトリックス」でお馴染みの緑の数字や記号がスクリーン上で縦に流れ、
その後画面には「Matrix Resurrections」ならぬ
「METALVERSE Resurrections」の文字が映し出された。
映像内では、“FOX FIELD”なる別次元の世界から
何かが現れようとしていると語られている。
昨晩と同じ映像、そしてその後始まった曲も昨夜と同じ「KARATE」。
下手にBABYMETAL、上手に別のBABYMETALの3人が現れるが、
今回もその3人は戸高美湖と木村咲愛、それに加藤ここなのようだった。
そして昨晩同様、今宵も“セイヤッ”の冒頭の掛け声、
それと1番を、この3人がスクリーム&歌唱したのだった。

 

 

 

昨日見たのと同じではあったものの、今回はステージが近かったので
新たな発見があった。
2番に入ると、2組のBABYMETALは、
ライトが当たると交互に歌ったり踊ったりしていたのだが、
ライトが当たっていない間は、「KARATE」の振り付けをスローで踊っていた。
まるで映画「マトリックス」での象徴的なシーン、
スローモーションで体を反らせながら銃弾を避けた時の動きのように。

 

間奏に入ると、スクリーンに昨夜と同じ映像が映し出された。
それは過去のBABYMETALの「KARATE」の間奏のシーン、
倒れているMOAMTELAとYUIMETALがSU-METALに引っ張り起こされる映像だ。
昨夜と同じように、僕は心を揺さぶられる。
その後はBABYMETALが中央のステージに現れ、
“オオー、オオー、オオー”に合わせて拳を掲げる。
エモーショナルな時間がしばらくの間続く。
曲が終わると場内は大歓声と拍手に包まれた。

 

続く「Monochrome」では、初っ端からドラムの爆音が炸裂。
まるで爆撃機の絨毯攻撃のような轟音がフロアを呑み込んだ。
その中をSU-METALが凛とした表情で情感豊かに歌い出す。
MOAMETALとMOMOMETALのダンスルーティンに目を奪われる。
モノクロのライトによる演出効果もあり、全てが美しい空間に酔いしれる。

 

メイトたちによる“オッオッオー、オーオッオオー”の大合唱の後、
間奏に入ると幕張でのライブと同じように、SU-METALが観客に向かって語りだした。
「この暗い世界を、みんなの光で照らして欲しい」。
続けて“Take your phone up!”と訴えると、
メイトたちはわかってるといった具合に慣れた手つきで
一斉にスマホのライトを点けて掲げた。
場内があっという間に幻想的な世界に包まれる。
その光景を笑顔で見つめながら“アメージング!”と感嘆の声を上げるSU-METAL。
そして彼女は目を閉じてハミングを繰り返した。
“オッオッオー、オーオッオオー”の大合唱がそれの後を追う。
幕張の時は波間に浮かんでいるように目に映った無数の光が、
4階席まであるこの会場では、満点の星空のように光り輝いている。
それはとても神秘的で、ずっと眺めていたい衝動に駆られた。
モノクロームの世界に彩りを与える演出が繰り広げられる中、
SU-METALの渾身の歌唱が続き、同曲も大歓声のもと終了した。

 

 

 

感動的なシーンの余韻が冷めやらぬ中、
次に聞こえてきたのはどこかエキゾチックな声。
続いて「METALIZM」が始まると、僕はジッと3人を凝視する。
ダンスはとても魅惑的で、黄金の映像演出は圧巻。
サイケデリック・トランスのリズムに否応なく体は揺れる。

 

 

 

そして間奏における演奏がこれまた見事。
特にギターのテクニカルな演奏は見入ってしまった。
メイトたちによる手拍子も盛り上がりの一手を担っている。
曲が終わると場内のあちこちから拍手が沸き起こった。

 

ライブはその後「Distortion」へと続いたが、
イントロが始まるとすぐにサークルができ、やがて激しいモッシュが始まった。
僕は大声で“ギバーッ ギバーッ”と何度も叫ぶ。
SU-METALの張りのある力強い歌声がアリーナ全体に響き渡る。
一定のメイトたちが何度もサークルモッシュで走り回っている。
僕は手を挙げ“オーオーオーオー”と叫びつつ、
彼らと何度もハイタッチを交わした。

 

 

 

間奏に入ると、SU-METALが再び「ぴあアリーナMM!」と快活に叫んだ。
“ハウ アー ユー フィーリング トナイツゥ?”
続けて“もっと声出せるよねー?”と観客を煽ると、
メイトたちは一斉に歓声を上げて応えた。
手拍子はしばらく続き、みんなが大声でシンガロング。
曲が終わると場内はやんややんやの歓声に包まれた。

 

続く「Divine Attack – 神撃 -」では、
躍動感を全身で表現したダンスと力強い歌声に、さらに会場が熱を帯び始めた。
MOMOMETALとMOAMETALによるシメントリーなダンスはとても美しい。
SU-METALが自ら付けた歌詞を力強く歌い上げていく。
彼女の魂が宿った歌が、倍音の響きを伴って館内に染み渡っていく。

 

サビの部分に入ると、MOAMETALとMOMOMETALが何度も右手を突き上げた。
メイトたちがそれに倣い、“オーー、オオーー”と声を上げ拳を振りまわす。
ギターもドラムもヘヴィで堪らないが、ベース音の響きが特に心地よかった。
曲が終わると、あちこちから大きな歓声と拍手が沸き起こった。

 

そして次に披露されたのは「THE ONE」。
テクニカルなギター・リフが奏でられる中、黄金のマントを羽織った3人が登場。
そしてSU-METALが力強くも丁寧に歌い始めると、
場内は水を打ったように静まり返った。
白いレーザーライトが楽曲の世界観を作り上げていく。
誰もが幻想的な世界と、彼女の美しき歌声に心酔しているようだった。

 

SU-METALの渾身の歌唱による倍音の響きがとても心地よい。
間奏でのプログレ要素満載の演奏も刺激的だ。
サビに向う解放感がこれまた心地よい。
“僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所 彼方へ”
僕はうっとりしながらSU-METALの歌唱、そして演奏に酔いしれる。
周囲ではほとんどの者がキツネサインを掲げている。
しっとりと優しく会場を包み込むSU-METALの歌声と、
MOAMETALとMOMOMETALの美しいハーモニーに癒され、
僕は得も言われぬ快感に溺れ続ける。
幻想的な世界が繰り広げられたのち、ライブは一旦幕を閉じのだった。

 

ここまでで十分大満足のライブだったが、
昨夜のライブ同様、まだ続きがあるのだろう。
それをわかっているメイトたちが一斉に拍手を始めると、
それは次第に“BABYMETAL”コールの手拍子へと変わっていった。
そして少しの間を置いてから、スクリーンに映像が映し出されたのだが、
聞き覚えのあるナンバーに僕は思わず息を呑んだ。
始まった楽曲は、「BABYMETAL DEATH」のプロローグだった。

 

懐かしい映像がスクリーンに映し出されていくが、
回転している3つの棺桶は赤ではなくクリスタルに変わっている。
そして内容も、以前は“METAL RESISTANCEを始めるにあたり、
3人の少女がキツネ様によって召喚された”といったものだったが、
今回は“METAL RESISTANCE”ではなく“METALVERSE”に置き換わっていた。
“生と死”、“終わりと始まり”といった文言が続き、
“諸君、首の準備はできているか”と煽ってくる。
その懐かしきセリフに自然と気持ちは昂った。
そして、“いよいよMETALVERSEの幕開けだ!”というセリフが響き渡ると、
クリスタルの十字架に磔にされた3人がステージ上に現れた。

 

 

 

まるで速射砲のような怒涛の6連府が轟く。
途中に3人がキツネサインをクロスさせて順番に動き出す。
MOMOMETALを加えたオリジナルバージョンの「BABYMETAL DEATH」を
目撃しただけで胸が熱くなったのだが、“MOMOMETAL DEATH”のたびに
大きな歓声が沸くので、どうにも感情的になった。
僕は目に涙を溜めた状態のまま、
“B!”“A!”“B!”“Y!”と噛み締めるように順に叫んでいった。
正式に3人体制になったことで、ある程度予測はしていたが、
実際にライブで「BABYMETAL DEATH」が披露されると、
感動で胸がいっぱいになった。
僕は涙目のまま“DEATH!DEATH!”と声を張ってジャンプを繰り返した。

 

視界に広がる無数のキツネサイン。
風になびく稲穂のように、大量の腕が揺れている。
メイトたちは教祖を崇拝するかのごとく大声で“DEATH!DEATH!”と叫んでいる。
その光景はあまりにも懐かしかった。
まるで宗教の儀式を執り行うかのような「BABYMETAL DEATH」の一体感。
キツネサインをしたまま腕をクロスさせて“DEATH!DEATH!”と叫ぶ行為は、
晴れてモシュッシュメイトになるための、
必ず経験しなくてはならない一つの通過儀礼のように思える。
終盤、僕は、一心不乱に怒涛の“DEATH!DEATH!”コールに没頭した。
そしてライブは「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と続き、クライマックスを迎えた。

 

疾走感のあるギター・リフに続き、SU-METALが“アー!”と咆哮すると、
メイトたちが一斉にウォール・オブ・デスを始める。
僕はまたサークルの中央で何度もタオルを回し続けながら、
美しいツインギターの演奏に心酔する。
SU-METALが力強い歌唱を披露、MOMOMETALとMOAMETALがステージで躍動する。
凄まじいドラムのブラストビートによる轟音が地を這って襲ってくる。
僕はどうにも堪らなくなって、何度もヘドバンを繰り返す。
そして笑顔で合いの手を入れ、周りの者たちと一緒になってダメジャンプを飛んだ。

 

パイロの炎が上がる中、力強いパフォーマンスは続く。
間奏のセリフのシーンで、3人と一緒に親指を立てるポーズを決めるのはマスト。
曲が再開するとサークルモッシュがバースト。
メイトたちが歓喜の声を上げながらぐるぐると走り回る。
僕はテクニカルな演奏とSU-METALの力強い歌唱に酔いしれながら、
ステージ上で輝くBABYMETALの3人を見つめる。
SU-METALとMOAMETALが、ライブをするのが好きで好きで堪らないといった具合に、
楽しそうに、それでいて完璧なパフォーマンスを披露するのは毎回目にするが、
今日のライブから正式メンバーとして参加しているMOMOMETALは終始、
サポートで参加している時よりもひときわ輝いて見えた。
僕は心から彼女を歓迎し、そして2人に勝るとも劣らない、
キレキレのダンスパフォーマンスを堪能した。

 

曲が終わると大歓声。
そこから恒例の“ウィーアー?”“BABYMETAL”コールへと移る。
最後は大きな花火が鳴って今宵のライブは大盛り上がりで終了。
最新が最高のライブと毎回言われるBABYMETALのライブだが、
まさに“過去一”と呼べるような、圧巻のライブパフォーマンスだった。
僕は興奮状態のままスクリーンを凝視する。
間もなくしてエンディングムービーが流れ始めた。

 

映像では、“METAL RESISTANCE”は終わり、
これからは“METALVERSE”を舞台にした旅が始まると告げられた。
また、ワールドツアーは、サバトンとのヨーロッパツアーのあとは
アジアとオーストラリアでのワンマンライブ、
そしてアメリカにも向かうことや、
日本の夏フェス(後日サマソニ出演発表)に参加すること、
そして2024年日本でのツアー・ファイナルもアナウンスされた。
また、最後には、「THE ONE ID (NFT)」や「THE ONE Discord」といった
新サービスに関する情報も発表され、終幕を迎えたのだった。
僕は満足げに口元を緩めると、余韻に浸りながらフロアから退出した。

 

 

 

 

3.

外は昨晩よりも冷え込んでいる。
半袖の僕は小走りでホテルへ向かう。
道中、今宵のライブを振り返る。
今なお、感動で胸がいっぱいだ。

 

昨夜の「BLACK NIGHT」、そして今夜の「CLEAR NIGHT」の2日間で、
「THE OTHER ONE」は完結した。
復元計画をやり遂げた新生BABYMETALは、今後は新たな舞台へと突き進んでいく。
10章にも及ぶ壮大な“METAL RESISTANCE”の物語が終わり、
その代わりとなる次の物語は、いったいどういった内容になるのだろう。
数ヵ月前まではそんなことを思案していたが、
今後は“METALVERSE”を舞台とした物語が進んでいくのだという。
その“METALVERSE”に第1章や2章があるのかどうかは定かではないが、
今後リリースされるであろう4thアルバムのタイトルはわかったような気がした。
2ndのタイトルからも、なんとなく予測できた。

 

今夜のライブについて思いを馳せるが、見どころが満載のライブだったので、
一気には語り尽くせない。
とにかくサウンドは終始爆音で、音圧は強烈だった。
また、上手側の最前ブロックだったので、
とりわけドラムの重低音で全身が何度も振動した。
途中に何度か心臓がびっくりしたこともあった。
それほどまでに強力だった。
そして上手のギターの神の演奏にも何度も痺れた。
変拍子も、速弾きもお手のもの。
彼は難しいリフをさすがのテクニックで華麗に弾いていた。

 

そんな轟音だったせいか、今夜のSU-METALはサウンドに負けまいと、
いつも以上に声を張り上げながら歌っている印象を受けた。
それは幕張でも披露した「Monochrome」と「Light and Darkness」の2曲で、
顕著に表れていた。
今宵は本当に極悪でヘヴィなサウンドだったから、
そういう歌い方をせざるを得なかったのかもしれない。
それでも彼女の歌声には最初から最後までずっと心酔しっぱなしだった。

 

MOAMETALは、ダンススキルが随分と向上しているように目に映った。
彼女が雑誌で語っていた“ヒット”の動きを取り入れているからかもしれなかった。
華奢な体でシャープに踊る姿は美しく、
また少しばかり妖艶さも加味されて、大人のダンサーになったことが窺えた。
それでいて子供っぽい無邪気な一面は失われておらず、
満面の笑みで煽られれば、メイトたちは素直に従うほかない。
今宵も随分と広い範囲で、観客の視線に対して笑顔で蜘蛛手にレスポンスしていた。

 

そして、正式なメンバーとなったMOMOMETAL。
おそらくライブ前は、少なからず緊張もあったんだと思う。
やはりサポートと正式なメンバーとでは、
メイトたちからの“見られ方”“意識の向けられ方”が変わってくるからだ。
しかしながら、ずっとサポートメンバーで海外ツアーにも帯同していただけあって、
彼女の振る舞いやダンスルーティンは、寸分の狂いもなかった。
それよりも、全身からは自信が漲り、いつも以上に輝いて見えた。
SU-METALとMOAMETALとの掛け合いやコンビネーションも問題なかった。
そもそも彼女も、SU-METALやMOAMETALと同じく元さくら学院。
年齢に差があり、在籍期間が2人と被っていなくても、
さくら学院の“絆”は強固なのだ。
3人は一心同体となり、今後さらなる経験を積んでより“絆”を深めていくのだろう。

 

BABYMETALのアリーナ・ショーは、ステージング自体が様式美である。
ストーリームービーが流れた瞬間、観客たちは非現実的な世界へと誘われる。
また、明滅する照明やレーザー光線は観る者に強い没入感をもたらし、
やがては理性よりも本能を優先させ、自ずと騒ぎたくなる衝動に駆らせてしまう。
パイロの熱や噴出するスモークも人々の情動の表出を促してくる。
それらの演出に完璧なパフォーマンスが加わると、熱中して我を忘れる。
今夜はライブ定番の「メギツネ」や「ギミチョコ!!」が披露されなかったが、
それに気が付かないほどに、夢中になってショーにのめり込んでいた。

 

今宵のライブで改めて思ったのは、BABYMEYALのライブの世界観のすごさ。
セットはディテールにまでこだわって徹底的に作り込まれ、
完璧に練られた神話のようなストーリーが展開されていくから、没入感が半端ない。
それでいてライブパフォーマンスは進化し続けているのだから、
これで魅了されないはずがない。
BABYMETALのことをよく知らない人でも、彼女たちのライブを一目見れば、
これは“ただごとではない”と肌で感じるのではないだろうか。

 

声出しが解禁され、完全に戻ってきたBABYMETALのライブ。
とりわけ今夜は、正式メンバーが3人になった新生BABYMETALでの初のライブ、
そして「いいね!」と「BABYMETAL DEATH」が復活したこともあって、
いつも以上に声援や歓声が大きかった。
また、終始爆音だったので、今宵もライブハウスならではの臨場感を、
アリーナ規模で感じることができた。
最高のショーは、演者と観客が呼応し、協力し合って築き上げていくものだが、
今宵は完璧な空間を作り上げることができたのではないだろうか。
SU-METAL、MOAMETAL、そしてMOMOMETAL。
ライブを終えた直後の3人の、満足げで清々しい笑顔から察するに、
それは達成されと断言できる。
なぜならばフロア一面には、メイトたちの抑えがたい幸福の吐息が
そこら中いっぱいに休みなく溢れ返っていたのだから。

 

 

 

 

お客さんの声があって、私たちのライブは成立する
――SU-META(METAL HAMMER JAPAN Vol.13より)

 

 

 

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