BABYMETAL サマソニ2019大阪 ライブレポート

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1.

空を眺めながら、僕は小走りで宿泊先のホテルから地下鉄の最寄り駅へ向かう。
予報は雨だったが、今は何とか持ちこたえている。
中央線を走る電車に乗り込むと、間違いなく目的地は同じなのだろう、
いかにもフェスへ向かうといった服装をした人たちで車内はごった返している。
そういったすし詰めの状態で車両に揺られていると、ふと2年前のことが想起された。
思えば当時も同じホテル、同じ駅、同じ路線、同じ時間帯だった。
またシチュエーションも同様で、フェスよりも先にモッシュの洗礼を浴びていた。

 

2年前のSUMMER SONIC 2017 OSAKA。
BABYMETALは、OCEAN STAGEのトリ前に出演した。
最後に披露した「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の途中に、
YUIMETALの腰に付けられたイヤモニ用のレシーバーが外れてしまい、
片手でそれを支えつつ、片手の振りのみで踊るという若干のハプニングはあったが、
ライブは終始、大盛り上がりで進行し、
大盛況のもと幕を閉じたのだった。

 

当時、BABYMETALの3人はまだ10代だった。
にもかかわらず、彼女たちはメインステージのトリ前に抜擢された。
その快挙は、それまでに残してきたBABYMETALの実績を考慮すればふつうのことだった。
2014年から始まったワールド・ツアーはすでに4年目を迎え、
またその間、幾つかの海外のロック・アワードで賞を受賞し、
そして海外のロック・フェスには引っ張りだこの状況だったのだから。

 

“あれからもう2年も経っているのか……”としみじみ思う。
歳月人を待たずだなぁと感心していると、やがて電車はコスモスクエア駅へ到着した。
時刻は7時をまわったあたり。
駅舎を出ると、なまり色の世界が視界に飛び込んできた。
僕は曇天を見上げながら、少しばかり唇を噛む。
今年もついにやってきたかという一握りの感慨に耽る。

 

 

 

 

2.

 

当日券を購入してバスを利用するという手段もあったが、
なるべく早く列に並びたいため、今回も会場までの移動はタクシーにした。
ほどなくして開場時刻を迎え、リストバンドを交換し、物販の列に並ぶ。
大いなる試練が待ち受けていたのはこのあとだった。
今日は台風の影響で、開場も物販の開始時刻も遅れていたが、
先にアナウンスのあった11時を過ぎても一向に物販の始まる気配がない。
そればかりか、ステージの設営が間に合わないとのことで、
ナオト・インティライミ、ヤバイTシャツ屋さんなど、
幾つかのアクトが出演キャンセルとなった。
嵐は去ったというのに、なにやら穏やかではない状況だ。

 

 

 

その後ようやく物販が始まり、BABYMETAL、BRING ME THE HORIZON、
THE STRUTSのグッズを購入する。
RED HOT CHILI PEPPERSのグッズも欲しかったが、
かなりの列ができていたので今回は断念。
リストバンドの交換も含めて炎天下の中6時間も並んだので、もう並びたくはなかった。

 

 

 

荷物をクロークに預けると、僕はお昼ごはんのためにフードエリアへ向かった。
時刻は午後14時。まずはお腹を満たす。
さあ、これからライブだ、と思うものの、
OCEAN STAGEとMOUNTAIN STAGEは未だライブはできない状態。
ここにきてようやく、BABYMETALのライブは大丈夫かという不安に駆られた。
その後のアナウンスで、MOUNTAIN STAGEは3組だけライブを行うと知り、安堵する。

 

 

 

とりあえずライブが行われているSONIC STAGEの会場、
おおきにアリーナ舞洲に行くも、入場規制につき中には入れず。
仕方なく、MASSIVE STAGEのある付近まで移動した。
そこではちょうどSUPER BEAVERがライブを始めようとしていた。

 

 

 

16時30分開場のMOUNTAIN STAGEに長蛇の列ができていると知り、
僕はそのままMOUNTAIN STAGEへ向かう。
時刻はもうすぐ16時になろうとしているが、
ちゃんと観たライブは未だなし。
これまでにサマソニは何度も来ているが、今までで一番、過酷な経験となった。

 

 

 

やがて開場となり、16時35分からMACHINE GUN KELLYがライブを始める。
コルソン・ベイカーの怒涛のラップが炸裂すると、場内は一気に沸いた。
Netflixで放送された、モトリー・クルーの伝記映画
『ザ・ダート: モトリー・クルー自伝』でトミー・リー役を演じたこともあり、
途中に「Shout At The Devil」を披露。自身はドラムを叩いた。
場内は熱気に溢れ、ようやく始まった今年のサマソニに歓喜する。
低音の響きが心地よい。

 

 

 

MACHINE GUN KELLYのライブが終わって少しのインターバルを挟んだ後、
ついに、BRING ME THE HORIZONのライブが始まった。
彼らのライブを観るのは4年ぶりのこと。
ずっと観たいと待ち焦がれていたので、
ダンサーやメンバーがステージに現れただけで万感の思いだった。
視線は無意識にヴォーカルのオリヴァー・サイクスを追っている。

 

 

 

1曲目の「MANTRA」から最後の「Throne」まで、
彼らのライブを心底楽しむ。
途中の「Shadow Moses」では大声を張ってC&Rに参加した。
そのほか、モッシュ、シンガロングと、ライブを存分に堪能したが、
モッシュが思いのほか激しかったので、僕は右手の親指を突き指してしまった。
それからは右手を庇い、左手だけを上げる。
でもそれ以外は――嗚呼、なんて素晴らしい時間だろう。
感極まるたびに、僕は人知れず涙を流していた。

 

感動で胸が打ち震えたBRING ME THE HORIZONのライブが終わると、
僕は余韻に浸りながら少しだけ後方へ移動した。
そうして上手のピットの真ん中あたりで待機した。
おそらくはこのあたりがモッシュピットとなるだろう。
何度か小さく息を吐き、呼吸を整える。
明らかに興奮しすぎだった。
僕は息を吐き続け、高揚した感情を幾ばくか抑え込む。
本当にMOUNTAIN STAGEのトリなんだなぁと、
すっかり暗くなった辺りを見回しながらふと思う。

 

2000年からスタートしたSUMMER SONIC。
最初はステージの数も少なく、MOUNTAIN STAGEが登場したのは2004年から。
そして、過去にMOUNTAIN STAGEのトリを務めた邦楽アーティストはいない。
つまり、BABYMETALが初めて、このポジションを務めることになったのである。
その事実を噛み締めるだけで涙腺が緩みそうになるがライブはこれから。
今宵はいったいどんなステージングで楽しませてくれるのだろう。
僕は期待に胸をときめかせながら、ライブが始まるのを静かに待ち続けたのだった。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01. メギツネ
02. PA PA YA!!
03. ギミチョコ !!
04. 新曲(インストゥルメンタル)
05. Elevator girl
06. Shanti Shanti Shanti
07. ヤバッ!
08. Distortion
09. KARATE
10. ヘドバンギャー!!
11. Road of Resistance

 

“SUMMER SONIC またの名を天下一メタル武道会”
染谷歩によるお馴染みのナレーションでライブが始まる。
“巨大なWALL OF DEATHとなって多くの若者たちをも巻き込んでいくのだ”
1曲目は「メギツネ」。
メイトのオイオイコールと「メギツネ」のイントロをバックにナレーションが続く。
“やさしいキツネ様はこっそり教えてあげるのだ”
“前前前世はこっちじゃないぞ”
途端に周囲で歓声で沸く。
“諸君、首の準備はできているか?”
“もう一度聞く。首の準備はできているか?”
場内は早くも興奮の坩堝。
歓声が歓喜のマシンガンのようにずっと続いている。
“祝20周年! 天下一メタル武道会の幕開けだ!”
果たして3人が登場し、ライブがスタートすると、
まるで地響きのような大歓声が会場全体を包み込んだ。

 

SU-METALが軽やかに「メギツネ」を歌い上げる。
のどの調子は良いようだ。
MOAMETALが笑顔で溌溂と踊っている。
今回のサポートダンサーは鞘師里保だった。
最初からニコニコしてキレ味鋭いダンスを披露している。
ピットでは早くも激しいモッシュが発生。
誰もが笑顔で今この時を楽しんでいる。

 

「メギツネ」の後に続くのはお祭りソングの「PA PA YA!!」
怒涛の展開に、場内のボルテージはさらにヒートアップ。
視界が捉えるすべての範囲でタオルが回っている。
“パッパッパッパッパッパパパヤー!”
メイトたちのコールも大きい。
誰もがその場で体を揺らして心底楽しんでいる。
そうして大盛況のもと同曲は終了した。

 

続けざまに「ギミチョコ !!」が始まる。
再びピットでは激しいモッシュが始まる。
SU-METALの笑顔がとてもキュートだ。
MOAMETALも鞘師里保もニコニコしながら踊っている。
言わずもがなメイトたちも笑顔で体を揺らしている。

 

インストゥルメンタルの曲が終わると、次に披露されたのは「Elevator girl」。
バックのビジョンにエフェクトのかかった映像が映る。
単独ライブでもあった、まるで3人がエレベーターに乗っているかのような映像だ。
3人による綺麗にシンクロしたダンスに魅了される。
SU-METALの高音が心地よい。
この楽曲はライブで見るたびにどんどん惹き込まれているように感じる。
大人になったBABYMETALを生で感じ取れるからなのかもしれない。

 

次はお待ちかね、「Shanti Shanti Shanti」。
指先の動きまで意識した、綺麗に揃ったダンス・ルーティンは見事。
ここでも3人によるダンスに魅了される。
サビでは縦ノリ不可避。激しくヘドバンする。
SU-METALの歌唱は圧巻だった。
僕はひと時も目を離さずにステージ上を凝視した。

 

続いて「ヤバッ!」が始まる。
裏拍の手拍子の音が大きい。
ここでも、エフェクトのかかった映像がビジョンに映し出される。
3人の体から稲妻が迸っているような映像だ。
同曲のサビも縦ノリ不可避。
僕は狂ったようにヘドバンを続けた。

 

続く曲は「Distortion」。
曲が始まるなり激しいモッシュが始まる。
サークルモッシュも頻繁に発生している。
多くのメイトが笑顔でハイタッチを交わしている。

 

熱狂したままライブは「KARATE」へと続く。
ただでさえエモーショナルな曲なのに、
“Wow Wow Wow”と叫ぶメイトたちの声が大きいから思わず感極まる。
僕の周囲では、間奏で倒れる人はいないようだった。
だから今回は誰も引っ張り起すことはなかった。
SU-METALの力強い歌声が夜空に響き渡っている。

 

それにしても、ライトアップされた中で踊る3人の姿はとても美しい。
MOAMETALも鞘師里保も歓びを表現しながら飛び跳ねている。
そしてSU-METALの佇まい、歌唱は今夜も完璧だ。
ポニーテールはあれほど激しく揺れているのに歌声のトーンは一切揺るがない。
僕は目を閉じて、全身で浴びるようにして最後の渾身のロングトーンを聴いた。
脳幹が痺れる感覚がする。最高に気持ちの良い瞬間だ。

 

次に披露された曲は「ヘドバンギャー!!」。
不穏なイントロが鳴り響くと場内が沸いた。
“こいや!”の掛け声が凄まじい。
ビジョンに映るSU-METALの眼光が鋭い。同曲ではいつもそう。
間奏に入ると、僕はその場ですぐにしゃがみ込んだ。
周りにいる何人かが追随し、揃って土下座ヘドバンを繰り返す。
だけど途中で僕は起き上がり、ステージを凝視した。
MOAMETALと鞘師里保がスモークガンを発射したからだった。
スタンドマイクを掲げて中央でクールに仁王立ちするSU-METALとは裏腹に、
2人とも笑顔で白い噴煙を巻き散らしているが、
とりわけ鞘師里保の無邪気な笑顔が印象的だった。

 

観客たちの熱量は衰えることなく、ライブは最後の「Road of Resistance」へ。
眼前で激しいWALL OF DEATHが繰り広げられる。
同曲中、サークルモッシュは何度も発生。
メイトたちの歓喜の奇声が周囲でひっきりなしに起こっている。
途中のシンガロングの声も大きい。
回っている人たちはみな屈託のない笑みを浮かべている。
そうして終始大盛況のもと、BABYMETALのライブは終了した。
終わった直後、Tシャツは大量の汗を吸ってかなり重くなっていた。
ふと気づけば、あのパンダくんが今宵もライブに参戦していた。

 

 

 

 

 

4.

 

BABYMETALのライブが終わると、僕は興奮状態のまま足早にOCEAN STAGEへ向かった。
そして幸いにも、RED HOT CHILI PEPPERSのライブを最初から楽しむことができた。
「Can’t Stop」、「Dark Necessities」、「Snow(Hey Oh)」などが披露され、
「Californication」や「By The Way」では大合唱が沸き起こった。
彼らのライブを観るのはBABYMETALがゲストを務めた2016年以来、約3年ぶりだったが、
今宵のグルーヴも最高で、満足のいくライブを享受できた。
若い頃の熱量は維持しつつ、大人の熟したライブ・パフォーマンスだった。
そして今回もまた、ギターのジョシュ・クリングホッファーは、
BABYMETALのTシャツを着てステージに臨んでいた。
その様子を見ただけでとても幸せな気分になった
僕は大満足のもと、OCEAN STAGEを後にした。

 

 

 

帰路に着きながら、僕は今日一日を振り返った。
最初の感想は「今年の大阪も暑かった!」。
次に思ったのが「今年のサマソニも面白かった!」。
結局のところ、5時間で観たアクトは4組だけだったが、非常に満足した一日だった。
僕はひととおり今日一日の記憶を辿ってから、改めてBABYMETALのライブを思い返した。

 

フェスにおけるBABYMETALのライブで一番楽しいと思うのは、
やはり巨大なサークルを作ってからのWOD、サークルモッシュに興じることだと思う。
僕はそれには半分参加し、あとの半分はヘドバンをするといった塩梅だが、
ライブハウスと規模が違うから、感じられる一体感は遥かに濃い。
夜の帳に覆われた中でライブが行われたのは2017年のサマソニ以来だと思うが、
ライトアップされた彼女たちのステージングはとてもキラキラと輝いていた。

 

神バンドは大村神、BOH神、青山神、Leda神という最強の布陣だった。
演奏は今宵もタイトだったが、音響はまずまずといった感じだった。
もう少し音圧があってもよかったかなとライブ終了後に思ったが、
これだけソリッドなメタルサウンドを完璧に演奏してくれるのだ、贅沢は言えない。

 

3人の様子はというと、終始楽しんでいる、そんな印象を抱いた。
特に鞘師里保はずっとニコニコしていたような印象しか残っていない。
パイロの炎には驚いた様子を浮かべていたが、
もう随分とBABYMETALのライブに慣れてきたのだろう、ある程度余裕も感じられた。
おそらくは海外ツアーではメインのサポート・ダンサーを務めるはずなので、
海外でも存分に楽しんで踊ってツアーを満喫してもらいたいと思う。

 

設営に時間がかかる中、BABYMETALのライブが本日行われたのは運が良かった。
そして明日は早朝に東京へ移動し、またBABYMETALの楽しいライブを観ることができる。
そう思うだけで胸がわくわくする。
僕は口元に笑みを湛えたまま帰りの電車に揺られ続けた。
BRING ME THE HORIZON、BABYMETAL、そしてRED HOT CHILI PEPPERS。
大好きな3つのアクトを続けて見られたこの幸福感はまさに筆舌に尽くしがたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2 件のコメント

  • とても素晴らしいレポでした。東京のも楽しみにしてます♪

  • >匿名さん
    コメントありがとうございます!
    東京のレポはまた時間があるときにでも書こうと思います。

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