BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN 幕張メッセイベントホール公演初日 ライブ レポート

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1.

2018年10月19日金曜日。
時刻は午後8時。

会社でひとり残業をしている最中に、悲報は突然訪れた。

 

 

BABYMETAL新体制についてのお知らせ……?
えっ、アー写は2人だけ?? まさか――。

 

表題と画像を目にした瞬間、思わず固唾を飲んだ。
新曲「Starlight」のMV公開を今か今かと待ち望んでいた最中だったから、
それまで気分はこの上なく高揚していた。
しかしBABYMETAL公式からのツイートを目に留めた途端に
気持ちは一気に萎え、顔からは血の気がみるみる引いていった。
無意識に心臓が早鐘を打ち始めている。
微かに震える指先でリンクをクリックする。

 

 

 

 

アミューズのHPに書かれている水野由結のコメントに何度も視線を這わす。
嘘だろ? と思考は拒絶反応を示すが、目の前にあるのは紛れもない事実だ。
なんとか冷静さを取り戻しつつ、文言を咀嚼し、行間を読むと、
彼女が長い間抱え込んでいた悩みや葛藤が透けて見え、
僕はなんとも居た堪れない気持ちになった。
読み返すたびに涙が止めどなく溢れてくる。
その後は放心状態のまま会社を後にし、あてもなく街中をフラフラと彷徨った。

 

 

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――2018年10月23日火曜日。
会社を定時で終えると僕はひとり、電車に乗って幕張へ向かった。

 

YUIMETALのBABYMETAL脱退のニュースが発表されたのは4日前。
以来、今も体内の奥底には鉛がずしりと深く沈んでいるような感覚が残っている。
ここ数日の落ち着かない気分が、今日の曇天のように、うすら寒く続いている。
最近の仕事の疲れやストレスも、気持ちをマイナスな方へ導く一端を担っている。

 

4月1日公開の映像で、BABYMETALが突如 ‟概念” へと変わった違和感を覚えてから、
今年のWORLD TOURが始まり、YUIMETALの姿が確認されなかった時から、
いやもっと言えば、昨年から今年にかけての流れの中でとある不安を抱えて以降、
もしかしたらそういうこともあるかもしれないと少しは覚悟をしていたはずなのに、
いざ脱退が発表されると、数日で受け入れるにはあまりにもショックが大きかった。

 

海外のロック・フェスを観に行くきっかけを作ってくれたから、
BABYMETALのYUIMETALには感謝しかない。
だからもちろん彼女の下した決断は尊重するし、
早く体調を戻して元気になって、水野由結の夢が実現することを、
そしてなにより、彼女自身が幸せを掴むことを心から願っている。
だから「悲しませてしまって本当にごめんなさい」と謝らないでと思う。
むしろ「8年間お疲れ様でした。いい夢を見させてくれてありがとう」と伝えたい。
だけど……、それでもなお――。

 

もうYUIMETALがいる3人のBABYMETALのショーを生で観ることは永遠に叶わない。
この受け入れ難い現実だけは、今も僕の頭の中にどんよりした影を落としたままでいる。

 

 

暮れゆく街並みを車窓から眺めながらふと思う。
正直なところ、自分でもここまで大きなダメージを受けるとは思っていなかった。
そもそも僕はラウドでヘビーな楽曲と、SU-METALのクリアなヴォーカルに魅了されて
BABYMETALにハマったのだ。
しかしながら、ライブを観に行く回数を重ねるうちに、
どうにも楽しくて仕方がないといった心境に陥っていった。
人生の中でこんなに楽しいことは他にないといった具合に卒倒した。
その愉悦を享受してくれたのは他でもない、MOAMETALとYUIMETALの2人だった。

 

また、可憐で奥ゆかしいYUIMETALのキャラクターそのものを僕は愛していた。
インタビューでの受け答え、仕草、表情、ほんわかとしたリアクションなど、
微笑ましい素の彼女を垣間見るだけで十分に楽しむことができた。
しかし、これからはそういった楽しみもなくなってしまう。
とにかくもう、BABYMETALの衣装を着た彼女を目にすることは叶わないのだ。

 

僕の心境を表わすようにあたりが暗さを増していく。
思えば、憂愁を孕んだままBABYMETALのライブに向かうのは初めてのこと。
今年の6月には、ドイツ、オランダ、イギリスの3ヵ国で、これまでとは違う
DARK SIDEのライブショーを観ているが、開演前は期待と興奮しかなかった。
なぜならば、その時にはまだYUIMETALの復帰の可能性が残されていたから。
だからこの新しいスタイルのショーを楽しもうと気持ちを切り替えることができた。
そしてなるべく早い段階でYUIMETALが揃ったバージョンも見てみたいと願ったものだ。
だけどその希望はもう、泡となって消えてしまった。

 

今宵のライブから始まる新体制のショーを、YUIMETALがいなくなったステージを、
僕はどういった心境で眺めればいいのだろう。
YUIMETALはもう戻ってこないという現実は、頭の片隅に追いやって、
無理やり気持ちを切り替えてライブを盛り上げなければならないのだろうか。
これからもBABYMETALを続けていくSU-METALとMOAMETALの気概に応え、
2人をサポートするために。
それとも、ライブが始まればこれまでどおりすぐに夢中になるのだろうか――。

 

なんとか衷情を披瀝したいがどうにも思考がまとまらない。
頭の中でいろんな感情がごちゃ混ぜとなり、ふと視線を上げ、嘆息を吐く。

 

車窓に映る僕の顔は、車内にいる僕の顔を見つめながら、
まるで苦虫を噛み潰したように口をへの字に曲げている。

 

 

 

 

2.

 

やがて電車は最寄り駅に到着した。
時刻は午後6時10分を過ぎたところ。
急ぎ足で会場に着き、同伴者と合流すると、まずは物販ブースへ。
とりいそぎTシャツを2枚、それとキーリングとアンブレラを購入する。

 

 

 

その後はホールの中へ入場。
やはり、ライブが始まれば気持ちを切り替えよう。
そう意に決めながら、スタンド席へ移動する。
記憶が確かであれば、幕張イベントホールでBABYMETALのライブを観るのは、
2014年9月の2DAYS(追加公演の初日のみ参戦)以来、約4年ぶりだ。

 

 

 

席に着き、周囲の様子を窺う。
今宵も中高年の数が多いが、若者の姿もちらほらと目についた。
女性の姿もそれなりにいるようだ。親子連れの姿もある。
見下ろすと、アリーナでは、まるで夜の海のように、
整然とした黒い集団が幾重にもさざ波を立てている。

 

ショーが始まる前から場内は随分とざわついている。
BABYMETALのライブの開演前では、それはいつものことなのだが、
ただ今日ばかりは、期待と不安が入り混じっているような空気も感じられた。
それもそのはず、3人のBABYMETAL以外のショーは日本では初披露なのだから。

 

開演直前にはスタンドの客席もほぼ埋め尽くされている状況となった。
ほどなくして開演となり、GALACTIC EMPIRE がライブを始める。
壮大な楽曲、スターウォーズの「Main Thema」でライブがスタートすると、
次第に場内は熱を帯びていった。
ドラムがキツネサインを掲げて煽るたびに、フロアにいるメイトたちが応えている。
その後も僕はじっくりと彼らの高度な演奏を聴いて楽しんだのだけれど、
もしかしたら退屈さを感じている人もいたのかもしれない。
実際のところ、アリーナと違い、スタンド後方の反応はまばらだった。
インストバンドなので、好き嫌いがあるのは仕方がないことだろう。

 

GALACTIC EMPIRE による約50分ほどのライブが終了する。
インターバルは30分ほどあるだろうか。
だとすると、BABYMETALのライブの開演は8時半前後かもしれない。
そんなことを考えながらまったりしていると、不意に暗転し、
周囲から怒号のような歓声が沸き起こった。
時刻は8時10分を回ったあたり。
遂にきた。
新体制によるBABYMETALのライブがいよいよ始まる。
が、自分でも驚くほどに、一向に気持ちがノッてこない。
腹の底に依然として腑に落ちない感情を蓄えているからなのだろうか。
それとも仕事のストレスによる疲労と倦怠が思考を鈍らせているからなのだろうか。
いずれにせよ、こんな精神状態でBABYMETALのライブに臨むのは初めてのこと。
僕はその場で地蔵のように固まり、ビジョンに映し出されている映像を、
まるで映画のエンドロールでも見ているように努めて冷静な眼で眺めている。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01.IN THE NAME OF
02.Distortion
03.ギミチョコ!!
04.Elevator girl
05.GJ!
06.紅月-アカツキ-
07.Starlight
08.メギツネ
09.KARATE
10.Road of Resistance
11.THE ONE

 

“METAL RESISTANCE EPISODE VII – APOCRYYPHA -”
The CHOSEN SEVEN のオープニング・ストーリー・ムービーが流れる。
ややあって、「IN THE NAME OF」でライブはスタートするが、
ステージに現れた人数を見て困惑する。
神バンドのほかに全部で7人いる。
しかも全員が黒いベールで顔を覆い隠してる。

 

まるで儀式のようなステージングを、多くの観客が目を凝らして見つめ続けている。
フロアでは圧縮が始まっているのだろう。前方にいる人の密度が増している。
そんな中、7人のうちの1人だけがステージを降りてきた。
どうやら彼女がSU-METALのようだ。
僕は次第にリズムに乗り、小刻みに体を揺らす。
やがて「IN THE NAME OF」が終了すると、場内から大きな拍手と歓声が沸き起こった。

 

続いて披露されたのは「Distortion」。
大好きな曲なので弾けたいのだが、初っ端で僕は、またもや面食らってしまう。
ここでようやく7人が文字どおりベールを脱いだわけだが、
ビジョンにアップで映ったのは、目の周りを黒く塗ったSU-METALの表情。
目が悪いので、一瞬ブラックデビルかと思ったのも束の間、
ふとミュージカル「キャッツ」のメイクを想起した。
髪型は、なにやら縄文人のような編み込みをしているように目に映った。
そして他のメンバーも似たようなメイク、髪型で統一していた。

 

曲は続くが、困惑も続いている。
なんだこれは? と眉根を寄せながら僕はステージを眺め続ける。
しかしステージまでは遠く、また体調不良で視界も良好ではないので、
ビジョンを見ても、細かいメイクや衣装はよくわからなかった。
ヴォーカルのSU-METALの周りを6人のダンサーが踊っているが、
よくよく見ると、ダンサーにスポットライトが当たっているのは1人のみのようだ。
ということは、あれがMOAMETALなのだろう。
その後ビジョンがMOAMETALを捉えたことで、ようやく確認することができた。

 

間奏でSU-METALが煽りを入れる。
ビッグ・サークルが観たいと言うと、フロアには6個のサークルが出来上がった。
果たして奇声を発しながらサークルモッシュを続けるメイトたち。
あの場所にいないことに若干の寂しさを覚えつつ、僕はステージに目を向ける。
SU-METALもMOAMETALも、観客を盛り上げようと努めているように目に映る。

 

ライブは「ギミチョコ!!」へと続いていく。
冒頭、MOAMETALが1人で掛け声を出す。
ヨーロッパで生で観たのと同じだ。
ただ違うのは、バックで踊っている人数。
ステージを広く使って踊っているさまは壮観だった。
まるでミュージカルでも観ているような感覚で僕はステージを眺め続けた。

 

4曲目は「Elevator girl」。
ここで2人のダンサーが退場し、計5人のステージングに変わる。
5人によるキレのあるダンスを披露しているようだが、
残念ながらスタンド後方からだと細かい動きまではわからない。
ビジョンを眺めつつ、SU-METALのヴォーカルに集中する。

 

最後のダンス・シーンでは、少しばかり違和感を覚えた。
4人態勢でのショーをオランダのユトレヒトで観ているので、
どうしてもそれと比較してしまう。
後方から順に手を挙げて、そして逆から手を下すシーンでは、
5人よりも4人のときのほうがよりスムーズだったように思う。
1人増えたことが結果的に良かったのかどうかの判断は、
あと何度か生で観ないことには結論は出ないだろう。

 

続いては「GJ!」。
うる覚えだが、MOAMETALとダンサーの編成は、
5月、6月のWORLD TOURと同じだったように思う。
スタンドの後方は、ときに歓声は上がるものの、熱狂的ということはなく、
比較的落ち着いた雰囲気でライブを楽しんでいるようだった。
だから僕もじっくりとビジョンを眺めながらリズムに乗った。
そうして同曲が終了すると、ライブは「紅月-アカツキ-」へと続いていった。

 

ここにきてようやく僕は前のめりの姿勢をとる。
暗闇に浮かぶSU-METALは幻想的で、唄い出せば即、心奪われた。
首の調子が悪いにもかかわらず、我慢できずにヘドバンを始める。
そうしてSU-METALのヴォーカルの凄みを再認識する。
間奏では、すでに見せ場として定着している格闘シーンが見られたが、
遠目ではそれが誰であるのかまではわからなかった。
が、なんとなく先の海外公演と同じ人物だったように思えた。

 

恍惚な表情で「紅月-アカツキ-」の余韻に浸っている最中だった。
今夜のライブで一番楽しみにしていた曲がここできた。
「Starlight」だ。
イントロが始まった瞬間から僕はすでに涙目になっている。
“ Fly ” と声を張るSU-METALのクリアな歌声にうっとりしていると、
魂がどこかに吸い寄せられていくような感覚を味わった。
知らず琴線に触れたのだろう、自然と涙が零れ落ちていった。
そして終盤の美しいコーラスに差し掛かると、僕の感情は大きく揺れ動いたのだった。

 

“Wherever we are, we’ll be with you.”
(私たちはどこにいても、あなたと一緒にいる)

“We’ll never forget shining starlight.”
(私たちは輝く星の光を決して忘れない)

“Wherever you are, you live in my heart.”
(あなたがどこにいても、あなたは私の心にいる)

“We’ll never forget shooting star”
(私たちは流れ星を決して忘れない)

 

 

まるで天に祈るような心持ちで口ずさむ。

“Wherever you are, you live in my heart.”
(あなたがどこにいても、あなたは私の心にいる)

天空の小さな神に届けとばかりに合唱する。

“We’ll never forget shining star”
私たちは輝く星を決して忘れない。

 

 

スタンド後方から観ていても圧巻のステージングだった。
SU-METALの生歌、MOAMETALのコーラス、そして輪になるフォーメーション。
この楽曲は間違いなく新たなアンセムとなるだろう。
もしかしたらメイトたちは、聴くたびに激動の2018年を振り返るかもしれない。

 

絢爛豪華の美しい演目によって場内はクライマックスを迎えている。
そんな中、聞こえてくるのは、キツネ、キツネを繰り返すフレーズ。
「Starlight」によって生まれた興奮が冷めやらぬ中、
続いて披露されたのは「メギツネ」。
観客たちの熱狂具合がすさまじい。最初からずっとフロアは大盛り上がり。
気持ちよく唄いすぎてしまったのか、
SU-METALの ‟なめたらいかんぜよ” のセリフが少し遅れてしまったが、
お祭り騒ぎといった喧噪を終始生み出しながら、あっという間に同曲は終了した。

 

そのままライブは「KARATE」へと続いていくが、
大勢で踊るシーンを眺めていると、次第に気分は落ち着いていった。
大好きな楽曲なので自然と上体は揺れるが、
YUIMETAL不在の現実を否応なく突き付けられ、どうにも集中できなかった。
間奏のシーンで、誰の助けもなく7人それぞれが起き上がっていく様を、僕は傍観する。
これが新体制のBABYMETALなんだと改めて認識する。

 

続いての曲は「Road of Resistance」。
フロアにはすでにいくつものサークルが出来上がっている。
そうして曲が始まれば、フロアのいたるところでWODが発生。
そのままなし崩し的にサークルモッシュへと移行する。
ステージ上では7人が迫力あるパフォーマンスを披露している。

 

やがて間奏となり、シンガロングが始まる。
が、スタンド後方の観客たちは、キツネサインこそ掲げるものの、
大きな声を出して歌っている人はごくわずかだった。
位置的にある程度仕方がない面はあるが、それにしても声が小さい。
フロアの声はこんなに場内を震わせているというのに。
そうして同曲が終わると、久々の“We are BABYMETAL”のC&Rが始まった。
周囲のメイトたちが楽し気に“BABYMETAL!”とレスポンスしている。

 

少しの間を挟み、「THE ONE」が始まる。
SU-METALが「- Unfinished ver. -」をしっとりと力強く、そして伸びやかに歌う。
毎度のことながら、SU-METALの倍音の響きが心地良い。
心が浄化していく感覚を味わいつつ、僕は彼女の美声に酔いしれる。
やがて転調を迎え、神バンドが力強く演奏を始める。
幻想的な世界が広がり、全員の視線がステージに釘付けとなる。
アリーナでは“ララララー”の大合唱が起きている。
荘厳な雰囲気を保ちつつ、やがて同曲は終了した。

 

時計を見ると9時10分。
あっという間の1時間だった。
途中にムービーが流れることもなかったので、本当にあっという間だった。
そうしてふと気になったのが、ライブが終わった後の状況。
2015年の横アリや、昨年のたまアリの巨大キツネ祭りなど、
過去にスタンドの後方で観戦したことは何度かあったが、
いずれも終わった直後の熱気はすさまじかった。
だが今日に限れば、熱量はほとんど感じられなかった。
そのかわり、あたりに漂う空気には、
「これが新体制か」「なるほどね」といったざわつきが混じっているように感じられた。

 

 

 

 

4.

 

それから僕は会場を後にし、帰路に着いた。
電車に揺られながら今夜のライブを振り返る。
おそらく今までで一番、感情移入できないライブだった。
しかしそれは決してライブのデキと比例するものではない。

 

メイクや衣装などは、おそらくグラフィック・ノベルの世界観を表わしているのだろう。
そしてそれら ‟The CHOSEN SEVEN” の世界観が好きか嫌いかはともかく、
今宵のライブパフォーマンス自体は大変素晴らしいものだった。
MOAMETALは自分の役割に徹し、プロのダンススキルを披露していたし、
他の5人のダンサーもシンクロしたパフォーマンスで観客を魅了した。
そして神バンドの演奏は今宵もタイトだったし、
SU-METALのヴォーカルも安定していて余裕で会場を支配していた。
とりわけ情感たっぷりに「Starlight」を歌い上げた時には心が何度も打ち震えた。

 

確かに「MOAMETALがわかりにくい」、「神バンドがあまりフォーカスされない」など、
ちょっと残念だなぁと思う個所もあるにはあった。
けれど、いまいち感情移入ができなかったのは別の理由で、
まず、体調が万全ではなかったことが挙げられる。
次に、場所がスタンド後方で、ステージがよく見えなかったこともそうだ。
それから最後に、ライブ中にYUIMETALの不在を感じてしまったことが原因だ。
その瞬間だけは、まるでロボットのように感情の起伏がないまま眺めていた。

 

ただおそらくは、今後観に行く予定である28日の「DARK NIGHT CARNIVAL」、
それと来週の神戸の2DAYはピットでの参戦なので、
今日の何倍もライブショーにのめり込むことになるだろう。
そして僕の場合はもう少し時間がかかりそうだが、
いずれは ‟BABYMETAL” と ‟水野由結” を別々で考えられるようになるだろう。
また、3人による ‟これまでのBABYMETAL” を楽しんできた人が、
‟これからのBABYMETAL” を楽しめるのかどうかは、
今回の新体制によるショーを受け入れられるかどうかに依るのだろう。
もっとも、 ‟The CHOSEN SEVEN” の世界観がこれから先も続くのかどうかは
キツネ様のみぞ知るところなのだが。

 

 

 

今一度YUIMETALについて思考を巡らす。
主観や憶測が大いに混じるが、ご容赦いただきたい。
少し長くなるので、興味のない方はスルーでお願いします。

 

たぶん、海外含め、BABYMETALのライブを多く観すぎてしまったから、
今回の脱退で、僕はこれほどまでにショックを受けたように思う。
なぜならば海外公演では、3人の絆を特に強く感じることができたし、
なによりYUIMETALの誕生日に行われた昨年6月のチュラビスタ公演では、
YUIMETALが水野由結に戻って喜んでいる姿を目の当たりにしたから、
こういう良いこともあるから、海外ツアーも楽しいと思ってくれていると勝手に信じきった。
だから余計に、あれから少ししか経っていないのに、なぜこんなに短い期間で
脱退しなければならくなったのかと頭を悩ませてしまった。
ここまで大きく飛躍してきたのに、ここで辞めたら勿体ないと思ってしまった。
しかしそれもこれも、勝手に彼女に期待を寄せてしまった僕自身が悪かったのだ。
YUIMETAL、いや水野由結に対して、僕は誠心誠意、懺悔をしたい心境だ。

 

水野由結も、そして菊地最愛も、
BABYMETALの活動は楽しいと思ってはいただろうが、
それが本当にやりたいことではなかったことは昔から知っていた。

 

中学3年当時、彼女たちは、「Logirl」の第1回目の放送の中で、
BABYMETALは、さくら学院を知ってもらうための ‟武器” だと話していた。
そしてさくら学院卒業後は ‟何をやればいいのかわからない” と口を揃えていた。
2人ともに、これまでは、‟さくら学院がすべてだったから” という理由でだ。

 

しかし中学卒業後は、2人とも、BABYMETALの活動は続けることになっていた。
もしかしたら2人ともが、高校を卒業するまでは部活感覚で楽しみながら
BABYMETALを続けようと思っていたのかもしれない。
「世界中の人たちにBABYMETALを知ってもらいたい」というコメントもあったが、
それはあくまでもBABYMETALの活動をしている間での目標だったのだろう。
そうして年月が過ぎ、高校3年となり、高校卒業後の進路を真剣に考えた結果、
MOAMETALはもう少しBABYMETALを続けていく決断をし、
YUIMETALは中学卒業時の夢(おそらくは女優)を追いかける決断をした。
しかし、これだけ大きくなってしまったBABYMETALを脱退することは容易ではなく、
何度も協議を重ね、慰留や折衝の末に、この時期での発表となってしまった。
もしかしたらこれらのストレスから、水野由結は体調を崩したのかもしれない。
あくまでもすべて憶測の話だけれど――。

 

 

 

水野由結としての夢――。
彼女が最後に残したコメントの言葉が胸に刺さる。

 

繰り返しになるが、BABYMETALの活動が自分のやりたいことではないことを、
僕は知っていた。
だけどBABYMETALの活動をずっと見守り続けていたいと思っていたから、
そのことは考えないようにしていた。
世界で活躍する日本人アーティストを追いかけたいと願って、
10代の可憐な少女の本心に向き合おうとしなかったのだ。
それどころか、BABYMETALで世界を回ってさくら学院の名を広めつつ、
世界を知ることで、もっとBABYMETALの活動自体を好んでやってくれないかと、
そして心からBABYMETALを楽しみながら、可能な限り長く続けてくれないかと、
秘かに期待し続けて彼女たちの活動を追い、言動を注視していた。

 

「BABYMETALで世界を繋ぐ架け橋になりたい。音楽を通じて世界を一つにしたい」

だからMOAMETALがMTVのインタビューでそう答えたときにはものすごく喜んだし、
これでもっとBABYMETALの活動に力を入れ、長く続けてくれないかと願った。
そしてYUIMETALも――。

 

YUIMETAL「毎年思ってることなんですけど、ライブを重ねていくごとに、
どんどんBABYMETALというものを手放せなくなるというか。
ほんとに好きなんだなって感じることが増えてるんですよ。
3人はもちろんなんですけど、スタッフさんとかお客さんも含めての
団結力がどんどん高まっていくところが好きで。
3人だけじゃなくて、BABYMETAL全体のチームワーク度もすごく高まってるなって、
いつも以上に感じました」
――『ROCKIN’ON JAPAN』2017年2月号のインタビューより抜粋

 

YUIMETALのこのインタビューを読んで、
彼女もずっとBABYMETALを続けてくれるものだと信じていた。
そして2017年のアミューズ株主総会では、畠中社長から、
「現時点で二人(水野と菊地)は高校生であり、スケジュールに制約がある。
今後の方針は春からプランニングを始めている。
2ndCDの米国での数字は話題になったほどには高くなく、
レーベル変更を含めて検討中」といった話があったので、
2人が高校を卒業してからがBABYMETALの本当の勝負だと思っていた。
日本語で歌う日本人アーティストが、世界でどこまで上り詰めることができるのか――。

 

だけどそれらすべての考えは、僕のひとりよがりに過ぎなかった。
世界を股にかけてもっと活躍してほしいと願う周りの声が、
BABYMETALは高校卒業までと決めていた水野由結に過度なプレッシャーを与え、
悩ませていたとしたら、僕はとても罪作りな人間だ。胸が痛む。

 

 

 

世の中は諸行無常だなぁと痛感しつつ、
今はただ、水野由結の健康の回復と、
水野由結の夢が実現することを心から祈るばかり。

 

世界の舞台で活躍した貴女の雄姿を、
舞踏の天使が魅せた麗しきパフォーマンスを、
そしてひとたび微笑むと、世界から争いがひとつなくなるような、
そんな貴女の純粋無垢な笑顔を、僕はずっと忘れない。

 

YUIMETALに思慕の念を抱き、
YUIMETALがいたBABYMETALの追憶に耽る日々――。

この状況はもうしばらく続くだろうが、
自分にけじめをつけるには、それは致し方ないことだ。

 

3人のBABYMETALが築き上げてきた栄光はこれからも燦然と輝く。
そして水野由結が完全復活を遂げて新たな道を進むところを、
新生BABYMETALが、これからも道なき道を進んで行く様を
僕は同時進行で見届けていく。

 

 

 

 

 

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26 件のコメント

  • >匿名様
    読んでいただいてありがとうございました m(_ _)m

  • 感動しました
    自分の中では、娘なような感覚だったので、スーユイモアのBABYMETALは見れなくなるのは、残念ですが無理やり納得?してます、でも寂しいですよね(´・ω・`)
    なので新BABYMETALはこれからもがんばってほしいし、ユイメタルの元気な姿がいつか見れることを、期待してます

  • 同じく泣けました。すげー分かります。自分はダークサイド終わったら、また「kawaii」要素が存分に戻ってるステージを待ち望んでいます。
    彼女たちが微笑むと、世界の争いの一つくらいは消えていく感じ、本当にしてましたよね。

  • 最後まで拝見させていただきました。
    神戸参戦しますが、なんとも言えない気持ちで今日までモヤモヤしてました。
    しかしteriさんのブログを読んで目から鱗が落ちた思いです。ありがとうございました。
    新生BABYMETAL、しかと目に焼いてきたいとおもいます。

  • 父兄からこの道に入りました。
    私は昨夜、シート席からステージを見ていました。
    もやもやと抱えた気持ちを、うまく表現が出来ませんでしたが、
    おっしゃった感想がまさに…です。
    胸のつかえが取れました。

  • 私も23日の幕張に参戦した者の一人です
    正直言って、あまり楽しめませんでした
    YUIMETALがいないだけでなく、私の好きだったBABYMETALが
    「見る影もない」有様でした
    私もTERIさん同様、体調も完全でなく、直近に身内の不幸があったりと精神面でも落ち込んでいる状態での参戦でした
    ライブがつまらなかったのは、決してBABYMETALが悪いのではなく自分の問題だったのかとも思います
    私も28日のチケットを持っていましたがすでに処分しました
    このBABYMETALなら生で見なくてもいいやと思ったからです
    これからは少し距離を置いてBABYMETALの行く末を見守りたいと思います
    場違いな書き込み、すみませんでした

  • ヤバい。職場で読んで、仕事中に泣きそうになっちゃった。
    YUIMETALに対しては、概ね同じ気持ちDEATH

  • >OZYAMETAL様
    何事も変化が大きいと、受け入れるのには時間がかかりますもんね。
    僕も同じく新生BABYMETALには頑張ってほしいですし、水野由結の元気な姿が見れるのを心待ちにしています。

  • >あき様
    コメントありがとうございます。
    あの3人は本当に奇跡のユニットだったんだなぁと改めて述懐しますね。
    彼女たちの楽しそうな笑顔を見ることで本当に心が洗われました。
    ダークサイドのあとにも期待したいですね。

  • >MASA様
    コメントありがとうございます。
    みなさんいろいろ思いを抱え込んでいるんでしょうけど、
    しっかりと新生BABYMETALのライブを生で観ると、
    いろいろと気持ちも変わるかもしれません。神戸公演、楽しんできてください~

  • >yab様
    父兄は特に感情移入しているでしょうから、ショックも大きいですよね。
    しばらくもやもやするのは致し方なし。
    少しずつ現実を受け入れていかないといけないなぁと自分は思った次第です。

  • >匿名様
    これだけ変化が大きいと、距離を置いてみるのも手かもしれませんね。
    体調がよくなって、またライブに行きたいという気持ちになれば、
    また参戦という流れでいいんじゃないでしょうか。
    あと、最後は謝る必要はないですよ。
    今回の件では、みなさんいろいろな感情をお持ちでしょうから。

  • >GAKUGAKU-METAL様
    コメントありがとうございます。
    YUIMETALは、水野由結としての夢を追うことに対して葛藤したでしょうね。
    早く元気になって、いつか夢を実現してほしいです。

  • 幕張でYUIちゃん復帰を期待していたし、同時に諦めてもいました。
    公式の発表は、ついに来るときが来たかという感じで特に驚きませんでした。
    昨年12月の広島。それから年が明けても復帰しないのは、ただ事では無いと思ってました。
    とにかく今は一日も早く健康を回復して欲しい。それだけです。

    幕張2日目に行きました。
    終わりの紙芝居は今後の体制を示唆しているように感じました。
    今後もライブを観に行きたいという気持ちは残りましたが、
    2人+ダンサーの体制はもういいかなというのが率直な感想です。

  • いつもTERIさんのブログ楽しく拝見させてもらってます。
    私はゆいちゃんが本当にやりたい事があるなら病気を理由に辞めたりしないと思う。
    だから本当に大変な病気を抱えているのだなと私は素直に思っています。私はいずれ皆んなの前にどんな形であれ帰ってくるよ宣言として捉えました。
    私個人の意見ですが、私は逆にかわいいの要素にあまり興味ありません。私には、もいもいと同じ歳の娘が居ますが、あの時あんなに可愛かったのにね⁈言いますとぶん殴られますw
    彼女達には彼女達の時間軸があり、これからもっと困難や試練が生きる上でも否応無しに降りかかります。その度に振り返らず前に進む生き様が私にはすげー!の一言なのです。取っ散らかる事もあるでしょう。上手くいかない事の方が多い世の中で BABYMETALは凄く頑張ってる方だと私は思います。ゆいちゃんを含めすぅちゃんもあちゃんが素敵な時間を大切な人達と過ごす事を切に願い、応援し続けるだけです。

  • ものすごく共感しました。
    心の底からゆいちゃんの幸せを祈っております!

  • >B様
    コメントありがとうございます。
    2人+ダンサーの体制はThe CHOSEN SEVENの時だけなのか、
    それとも今後のベースになるのか、今はまだ判断しかねますよね。
    個人的には、いろいろスタイルを変えて挑戦してほしいなとは思っていますけど、
    あまりにも3人のときのBABYMETALが奇跡のユニットだったので、
    どう変えれば正解なのはわからず、様子を見ながら追いかけていくといった感じでいます。

  • >ねこ梅樽様
    コメントありがとうございます。
    おっしゃっていること、わかります。
    その時その時の状況が、その都度、彼女たちを輝かせていたように思いますね。
    水野由結の復帰を待ちわびつつ、これからもBABYMETALは見守っていきます。

  • >匿名様
    コメントありがとうございます。
    自分も同じく心の底から水野由結の幸せを願っております。

  • 本当は、ドーム以降のゆいちゃんの異変に、YMYの皆様が気が付いていたのかもしれません。何かしらの悩みと不安定さを感じ取っていました。特にリボンが緩んだとき、マイクの発信機が落ちた時にすぅちゃんに向けた仕草に、それを強く感じ、そんな事無い大丈夫だと考えを消し去った事を思い出したました。ゆいちゃんには、何の力になれない存在ですが、ゆいちゃんのおかげで、私の魂は救われました。本当に感謝です。私も幕張初日に参戦し、TERI様のブログにあまりにも共感してしまい、コメントを残させていただきました。

  • >昼休みにTERI様のブログを読み目から汗だく様
    コメントありがとうございます。
    マイクの発信機の件は、昨年のサマソニ大阪のことですかね。違ってたらすみません。
    幕張に初日はまだYUIショックが強く残っていたので、気持ちがすっきりしない状態での参戦でした。
    だからこんな内容になってしまいました。
    ただ2回目、それもピットでライブを観れば、また気持ちも変わってくるんだろうと思います。
    なんとか水野由結としての夢を実現してほしいですよね。

  • はじめまして
    最後まで読ませていただきました。そして大変共感しました!私も初日、スタンド観戦では、まさにTERIさんと同じ気持ちでした。
    幸いにも幕張二日目はPITで参戦したのですが、そこにはモヤモヤは一切無く、ずっとこれからも応援したいと、そんな気持ちになりました。
    なので神戸でのPIT参戦後は、同じような気持ちになると思ってます!ぜひ確かめてきてください!

  • >AMATARO-METAL様
    コメントありがとうございます。
    初日もピットならまだ楽しめたように思いますが、
    YUIMETALのことを完全に受け入れるのには少し時間が必要でした。
    次はPITでの参戦ですので、前回よりも楽しめるとは思います。
    ありがとうございました。

  • ベビメタよお前もかって感じです。というのもKalafinaという3人組が今年4月にメンバー1人が脱退し事実上の解散。実はAFAインドネシア2013でベビメタと共演。衣装デザイナーが同じという共通点もあります。残る3人組といえば先輩のPerfumeだけど彼女たちには何もないといいのだが。
    さてゆいはといえば、彼女はさくら学院卒業後から心の葛藤が始まっていたのでは。自分の夢と事務所期待の星としてのベビメタでの活動の板挟み。心にストレスがたまりやがて体にも影響を及ぼすという最悪のパターン。さ学時代はその活動自体が夢の一部でもあったから充実してたと思うがベビメタ1本となるとね。個人活動が許されていたなら彼女はまだ脱退することもなく続いていたのではと思ってしまう。
    残されたもあはどうなんでしょうか?彼女の場合は、ベビメタへの熱意が感じられていただけに相棒を失った失意の中でダークサイドツアーを続けている姿は何というか尊敬するしかない。
    すーさんは大丈夫。彼女には歌えるステージがある限り不屈の魂を持ち続けていくでしょう。

  • >くろめたる様
    Kalafinaですか。僕はあまり知らないんですけど、会社の女の子がすごく落ち込んでいた(1人脱退→ほぼ解散状態)のを覚えています。
    喪失感が半端ないと言っていましたね。きっと今の僕が同じ心境なんだと思います。
    しばらくは真相はわからないままなんでしょうけど、YUIMETAL脱退に関しては、
    いつかというか、何十年先でもかまわないんですけど、そのうち本当のところを知りたいですね。
    高校生の頃から芝居のレッスンに通っていたそうですし。
    3人の絆の強さはわかっているので、それぞれが別の道に進んでも刺激しあってさらに進んでいってほしいですよ。

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