BABYMETAL 武道館公演 DOOMSDAY-Ⅵ ライブレポート

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1.

緊急事態宣言が発出されている中で行われる『10 BABYMETAL BUDOKAN』。
DOOMSDAY-Ⅵ公演が開催される朝を迎えても気分は幾分落ち着いていた。
それは今日が休日で、仕事の後に慌てて行く必要がないからなのだが、
DOOMSDAY-Ⅳ公演を観てからまだ3日しか経っていないというのも大きかった。
5日間で4公演を行うチームBABYMETALの方々は気が抜けずに大変だとは思うが、
短い日にちの間隔で最高のショウを再び観覧できるのはこの上ない悦びである。

 

昼過ぎに都内へ向かい、昼食をとってから武道館へ。
九段下の駅を出て坂道を上っている最中だった。
ふと3日前のライブを思い出すと、自然と笑みが零れてきた。
あの美しくて幻想的な世界観は、たとえようがないほど素晴らしかった。
国内ライブで初めて披露された「From Dusk Till Dawn」。
劇的な演出に、ハッと息を呑んで見守ったメイトは数多くいたに違いなかった。
だけど今日はまた別の曲が披露され、それが改めてメイトたちに感動を覚えさせる。
珠玉の楽曲群が揃うBABYMETALのライブショウはいつだって非の打ち所がない。

 

 

 

やがて会場に着き、入場口Aに進む。
ドレスコードのSavior Maskを着用して手荷物検査を通過。
館内に入り、所定の席に移動する。
もともとはチケットは完売で、見に行けないはずだった本公演。
払い戻し分のチケットを後から追加購入した席は1階東のE列だった。
しかも端っこの階段横。運が良い。開けているので見晴らしは最高だ。
上方の360度スクリーンも、8つのラインアレイスピーカーも程よく視界に収まる。
そしてすぐ目の前に、フロア一杯に広がる巨大な八角形のセンターステージがある。
僕はステージの外側のぐるりと回る通路にゆっくりと視線を這わせていく。
そこではたと、点火の儀式を行うドラム缶のようなセットがないことに気付く。
ということは、1曲目はあのドラム缶から火花が飛び散る「IN THE NAME OF」ではなく、
久方ぶりにあの曲が披露されるということか――。
昨夜とセットリストが同じであれば、僕は間違いなくスタートから歓喜するだろう。

 

今宵もSEでBring Me The Horizonの曲が多く流れている。
リンキンパークの曲も同じくらい多かった。
聴いているだけで気分が良い。
次第にテンションが上がってくる。
僕はマスクの下に笑みを湛えたまま、なんとはなしに視線を彷徨わせる。
まもなく定刻なのだろう、2階席はだいぶ人で埋まっている。
果たして開演時刻となり、不意に暗転。
刹那、大きなクラップ音が館内にこだました。
僕はカッと刮目し、目の前のスクリーンを凝視する。
1曲目に対する期待が大きいからだろう、心臓はすでに早鐘を打ち始めている。

 

 

 

 

2.

セットリスト

01. OP(BABYMETAL DEATHアレンジの新曲)
02. イジメ、ダメ、ゼッタイ
03. ギミチョコ!!
04. ド・キ・ド・キ☆モーニング
05. おねだり大作戦
06. 紅月-アカツキ-
07. Distortion
08. PA PA YA!!
09. メギツネ
10. KARATE
11. ヘドバンギャー!!
-ENCORE-
12. THE ONE
13. Road of Resistance

 

スクリーンに骨タイツ姿のKOBAMETALが映し出される。
その後のムービーは3日前と同じ。
「2020年、世界はDYSTOPIAによって破壊された。DYSTOPIAは“メタルの叫び”、
すなわち“我々の声”を奪い、我々に“歌うこと”を禁じたのである――」。
今回の『10 BABYMETAL BUDOKAN』では、キツネ様が超能力によって“メタルの叫び”、
すなわち“我々の声”を再生するとナレーションは続き、
それから、録音された歓声を合図に、スタンドで手拍子や足踏み、
東からぐるりと回るウェーブの予行練習が立て続けに行われた。
その後はコロナの感染予防対策にSavior Mask着用が義務付けられていること、
「寄り道、ダメ、ゼッタイ」、終演後はまっすぐ家に帰ることなどが注意喚起された。

 

「まもなく、史上最大の『10 BABYMETAL BUDOKAN』が始まる。諸君の検討を祈ろう」。
ムービーが終わると、暗闇の中、荘厳な音楽が流れ始め、東・南・西側の3ヵ所、
ステージと外側の通路の間に、3人が磔にされたままの状態でせり上がってきた。
それだけでも驚きを隠せなかったが、スモークとライティングの演出により、
3人がまるで赤い地平線の荒野に漂うようにして佇んでいる光景を目にすると、
その瞬間、僕は驚きを通り越して、非現実の世界へ深く没入した。
余計なことを考える余裕などまったくない。眼前で起こっていることだけに集中する。
過去に見た2回のライブとは違うオープニングにただただ驚愕。
これから一体何が始まるんだと僕は武者震いを覚える。
初っ端からワクワクして胸は踊りっぱなしだ。

 

ウィスパーボイスっぽいデスボイスで「BABTMETAL」と聞こえた直後、
不意に落雷のような轟音が館内に鳴り響いた。
1度、2度、3度、4度……轟音の合間でも「BABTMETAL」と叫ぶ声が聞こえる。
その轟音は、「BABYMETAL DEATH」の6連符をさらに凶悪に長くした感じだったのだが、
途中から「デース! デース!」という叫びが繰り返され、
また聞き覚えのあるギター・リフを耳にしたことで、
ああ、これが「BABYMETAL DEATH」をベースにアレンジした新曲なんだと合点がいく。
それにしてもなんだこのカッコよすぎる曲は……僕は脳が痺れる感覚に酔う。
昨夜のTLで盛り上がっていたオープニング・ナンバーを今まさに体験することができ、
僕の心は急速に満ち足りていった。

 

確かに「BABYMETAL DEATH」っぽいけども、それにプラスして違う魅力が満載の楽曲。
ブルータルで超クールなオープニング曲がアウトロに差し掛かり、舞台が暗転すると、
場内は盛大な拍手に包まれた。
いきなり度肝を抜かれた僕も大きく手を叩いて称賛する。
そしてアウトロがフェードアウトしていくところで次曲、
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が急転直下で始まると、
すぐに録音された歓声が沸き起こり、館内の至る所にライブの臨場感を生んだ。
スポットライトが当てられたセンターステージの真ん中では、
MOAMETALと岡崎百々子が既にスタンバイしていた。
そしてSU-METALのシャウトを合図に、別々の方向へ駆け出してゆく2人。
10個以上はあっただろうか、外側の通路ではパイロの炎が勢いよく噴出している。

 

「夢を見ること、それさえも持てなくて」。SU-METALがクリアな歌声を響かせる。
彼女のすぐ横では、MOAMETALと岡崎百々子が時折笑みを溢しながら躍動している。
ギターもベースもドラムも堪らない。
神バンドのテクニカルな演奏がギュイーンと五臓六腑を刺激する。
僕はマスクの下でギュッと唇を噛み、ヘビィなサウンドを貪り続ける。
視覚的にも大満足。ちょうど目線の高さで観るショウは極上この上ない。

 

SU-METALの喉の調子はすこぶる良いようだ。高音がパワフルかつ、よく伸びている。
僕は刮目したまま、一心不乱にダメジャンプを繰り返す。
間奏からサビへの展開はいつだって鳥肌もの。
ユニゾンではヘドバンせずにはいられない。
それにしても、この爆音の中を突き抜けていくSU-METALの歌唱はどうだ。
これまで何百回も魅了されたから、ヴォーカリストとしての資質に恵まれていることは
十分承知しているけども、今も一曲ごと聴くたびに、感動せずにはいられない。
僕は実質1曲目から愉悦を覚え、全身全霊でヘドバンを続けた。
炎の熱の影響もあったのだろう、曲が終わった頃にはTシャツはかなり汗ばんでいた。

 

この後の展開に少し時間を要するのだろうか、
ここで早くも録音された“BABYMETALコール”が館内に響いてきた。
ややあって、次にきたのは「ギミチョコ!!」。
人気曲の連続披露にテンションはさらに上がる。
光の演出も豪華絢爛。無数に伸びるレーザー光線がステージングをさらに彩る。
その煌びやかなステージ上では、3人が一糸乱れぬダンスを披露。
近くで見る3人の動きはとてもシャープでエレガントだった。
無駄な動きがないから、「あたたたたー!」のコミカルなダンスにも品が感じられた。

 

間奏に入ると、3人は別々の方向へ移動。
満面の笑顔でキツネサインを掲げて何度も観客を扇動する。
「武道館! 後ろまでちゃーんと見えてるよー!」。
SU-METALが嬉々として叫ぶと、観客が起こすクラップ音はさらに激しさを増した。
また、クライマックスでのライティングがこれまた見事。
無数に伸びている赤いレーザー光線が天井の中央に集約していく様は壮観だった。
曲が終わると、録音された歓声が館内にこだまし、大きな拍手が沸き起こったが、
すぐさま「ド・キ・ド・キ☆モーニング」が始まったので拍手はしばらくの間続いた。

 

センターステージは、中央部分が可動式のステージなっていて、
曲ごとに上がったり下がったりしているのだが、
その可動式のステージの床一面、そしてそのステージの側面、
さらにはセンターステージそのものの側面と、
その外側の通路の側面にも映像が絶えず流れるので、視覚的にも堪能でき、
またショウとしての完成度をより高める機能を果たしていた。
その効果は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でも十分に発揮されていて、
METAL RESISTANCE第1章の魔法陣の絵柄が映像として終始映し出されている。
その光景は、否応にも2014年のドラマチックな武道館2DAYS公演を想起させた。

 

そのような映像も楽しみつつ、ステージ上でキュートに振舞う3人の姿を凝視する。
笑顔満載のパフォーマンスについ、こちらも笑顔になる。
この曲では可愛らしい歌い方に変えているSU-METALだが、彼女自身、
それを楽しんでいるのだろう、いつも以上に強弱にメリハリをつけて歌っている。
周りでは多くの者が「リンッリンッリンッ!」とフリコピしている。
僕も終始ノリノリになって、この楽曲が持つ底抜けの明るさを堪能する。
曲が終わると歓声が沸いたが、それが録音されたものであるという感覚は薄れつつある。

 

間髪入れずにストーリー・ムービーが始まる。
「昔々、その昔、十段下の駅を降りた坂道の先に、
大きなメタルの果樹園“ぶどうかん”があった」。
観客がスクリーンを注視する中、染谷歩によるナレーションが続く。
「今年もぶどうが食べたいよと、駄々をこねる子ぎつねたち」。
ビジョンに4匹の子ぎつねが映し出されると拍手が沸き起こった。
そうしてムービー後に始まった曲は、かなり久々に披露される「おねだり大作戦」。
ステージ中央にはMOAMETAL一人がスタンバイしているが、
曲が始まるとすぐさま外側の通路に、マスクを付けた4人の子ぎつねが現われた。
彼女たちは赤いチュチュ スカートを履き、上着は骨パーカーでフードを被っている。
そして首にはタオルをかけているのだが、その姿は2014年当時、
「おねだり大作戦」を披露するBLACK BABYMETALの姿そのものだった。

 

なんという贅沢なショウなのだろう。
もう披露されることはないだろうと半ば諦めかけていた楽曲が
再び披露されただけでも嬉しい誤算であるのに、
以前のSISTER BORNのように、子ぎつねたちがバックダンサーとなって、
大人になったMOAMETALの周りを、当時の幼いMOAMETALのような陽気な無邪気さを、
可愛い暴力を惜しみなく発揮して、この優れたラップメタルをさらに昇華している。
歌詞がスクリーンに流れる演出も効果的。
「だって女の子だもん」から始まる途中の台詞は、
4人の子ぎつねの声を吹き込んだものなのだろうか。
そんなことを考えながら、僕は縦ノリと横ノリのリズムを交互に味わう。
スクリーンに映し出された一人の子ぎつねの、目元すっきりな表情から察するに、
さくら学院の佐藤愛桜のように思えたのだが、実際のところはどうだろうか。
それにしても、大人になっても変わらない、いやむしろ増大している
MOAMETALの可愛さといったら、言葉では表現できないほどの破壊力。
「わたし、パパのお嫁さんになるんだ」でやられたメイトは数多くいたに違いない。
また、4人の子ぎつねに笑顔で寄り添う、お姉さんとなった彼女の姿も印象的だった。

 

曲が終わると館内は大きな歓声(録音)と拍手に包まれた。
そしてその陽気な雑音とも言うべき音が鳴りやまないうちに、
スクリーンには再びストーリー・ムービーが流れ始めた。
「その昔、メタルの魂を守るため、自らの命と引き換えに戦った、紅の戦士がいた」。
ドラマチックな音楽をバックに、染谷歩のナレーションが続くが、
“紅”のワードで次の曲がわかったメイトたちの心中は穏やかではない。
遂にくる、という逸る気持ちが、否応なく興奮を高めていく。
「この世に光を取り戻すため、再び紅の戦士が、聖地武道館へ舞い降りる――」。
ムービーが終わった途端に沸く、地鳴りのような歓声(録音)と拍手。
満を持して披露されるのは、ピアノの旋律で始まるバージョンではない、
ギターのアルペジオ奏法から始まる懐かしい「紅月-アカツキ-」だった。
赤いライトに照らされてステージ中央に佇むSU-METALの姿が神々しく目に映る。

 

「幾千もの夜を超えて 生き続ける愛があるから」。
クリアな声でSU-METALが歌い出すと僕は直立不動のまま彼女を凝視した。
堪らない。ゾクゾクする。なんという素晴らしき歌い出し。
高音を抑えつつも力強い、SU-METALの成熟した歌唱にすぐさま心奪われる。
それから黄金のマントを翻し、SU-METALが「紅月だー!」と叫ぶと、
パイロの炎が勢いよく何度も噴射し、館内のボルテージは一気に上昇した。
僕は夢中になって首を振りながら、目の前にいるドラムの神の演奏を注視する。
ふと左に目をやると、大村神もヘドバンしながら演奏していた。
それに感化された僕のヘドバンに熱が入る。
ああ、ドラムのブラストビートも堪らなくいい。
僕は眉間を寄せて、この神曲を余すことなく堪能する。
そしてこのあとに、僕は何度も驚きを味わうこととなる。

 

その驚きは間奏に入ってから突如襲ってきた。
なんとMETAL RESISTANCE第7章、DARK SIDE時のライブに登場していた
丸山未那子と佃井皆美の2人が、当時のコスチュームのまま東西からステージに現れ、
これまた当時のライブで披露したバトル・シーンによる振り付けを披露したのだった。
2人の渾身のパフォーマンスを、無数の赤いレーザー光線が美しく劇的に彩る。
ちなみに佃井皆美の後ろ回し蹴りは、おそらく当時の最高回数と同じ6回転。
ふと脳裏に、数年前にマッスルシスターズが放った輝きが想起された。
2人の格闘シーンを再び見ることができるとは思ってもいなかったから、
2人が登場しただけで十分満足だったが、僕はさらなる驚きをこの後すぐに体験する。

 

間奏後、SU-METALの渾身の歌唱にうっとりしながら聴き惚れている時だった。
まるでライブでの「Amore – 蒼星 -」のそれと同じように、
ドラマチックな演出として、途中で演奏がパタリと止んだ。
ハッとした僕は動きを止め、暗転したステージを凝視する。
録音された歓声が沸き、観客が拍手を続ける中、赤いライトがSU-METALを照らす。
彼女はそこからピアノの伴奏のみで半ばア・カペラのようにしっとりと
歌い始めたのだが、抒情的な歌唱は胸に刺さり、否応にも琴線に触れた。
僕は涙を流しながら、この情景が半永久的に続けばいいのにという心持ちで、
カッと目を見開いたまま、彼女の絢爛華麗なステージングを凝視し続ける。
パイロの炎、それと美しいライティングが幻想的な世界を創出する中、
SU-METALが最後まで情感たっぷりに歌い上げると、震えるほどの感動が全身を襲った。

 

珠玉のBABYMETALの楽曲群の中でも、この「紅月-アカツキ-」はやはり別格。
ライブで披露されると常に魂は揺さぶられ、自然と涙を流してしまうからだ。
美しいメロディと疾走感、それに孤高の世界観を描く詞世界が相まって、
必ずや観る者、聴く者に強烈なインパクトを与える出色の名曲「紅月-アカツキ-」。
しかし今宵のライブでは、ただでさえ素晴らしいその「紅月-アカツキ-」が、
さらにグレードアップされて披露されたのだから、感情はもうぐちゃぐちゃ、
筆舌に尽くし難い感動を味わうこととなった。
この日披露された「紅月-アカツキ-」は絶対に映像化して残すべき。
まさに今目撃した観客の中には、僕と同じようにそう願った者がいたに違いない。

 

ここからはアッパー・チューンが続く。
大いなる余韻に浸っている中、「Distortion」が始まる。
イントロが始まるや、感動に打ち震えていた胸にスイッチが入る。
僕はヘドバンしながらすぐさまリズムにのる。
内心で「Give up! Give up!」「Stop the power」と繰り返す。
SU-METALの力強い歌声が心を揺さぶる。
MOAMETALと岡崎百々子のダンスは今宵もキレキレ。
場所が近いから、その切れ味具合がつぶさにわかる。
「武道館!」、間奏でSU-METALが笑顔で叫んだ。「Everybody clap your hands!」。
僕は最後まで“wow wow wow wow”と手も振って体を揺らし続けた。

 

「このセカイがこわれてもー!」。
渾身のSU-METALのロングトーンで「Distortion」が劇的に幕を閉じると、
続けざまに「PA PA YA!!」が披露された。
僕はすぐにタオルを手にし、そしてそれを肩の高さで振り回す。
ステージとスタンドの間からは幾つもの花火が噴射している。
目線以上に到達しているので、その火花はゆうに3Mはあったかもしれない。
火花はやがてパイロの炎にとってかわり、ステージを文字通りさらに熱く演出する。
スクリーンにも炎の模様が絶えず流れているので、舞台は灼熱の世界と化している。
僕は炎の熱を全身で受けながら懸命にタオルを振り回す。
ステージ上では疲れ知らずの3人が、満面の笑みで躍動し続けている。

 

「騒げ! 騒げ! 騒げ! YO! PA PA YA BOYS」。
SU-METALの弾むような力強い歌声が館内に響く。
MOAMETALと岡崎百々子は絶えず激しく踊っているが、シンクロ具合はほぼ完璧。
常に笑顔も絶やさないので、観ているこちらも自然と楽しくなってくる。
F.HEROのラップが炸裂する間奏のダンス・シーンも絶妙にして鮮やか。
3人、特にSU-METALが可愛らしく踊る姿はいつだって僕を笑顔にさせる。
やがて曲が終わると、館内には録音された大歓声が流れた。
そしてその声がかき消される前に、「キツネ~、キツネ~」と次曲が始まった。

 

大勢の観客がキツネサインを何度も上げ下げする。
館内には録音された“オイ!オイ!コール”が響いている。
やがて「メギツネ」のイントロが始まると、歓声やコールはぴたりと止んだが、
曲が始まると一転して館内はあっという間にお祭り騒ぎ。
多くの者が“ソレッ! ソレッ!”の掛け声に合わせて手を振り上げる。
僕もジャンプを繰り返し、ドラムのリズムにあわせて夢中になってヘドバンを続けた。

 

ライブにおける「メギツネ」の破壊力は今宵も健在。
“ノリ”という観点で言えば、BABYMETALの楽曲群の中で抜きんでている。
ステージ中央で、3人が凛として踊るシーンも妖艶にして優雅。
自信に満ち溢れた堂々とした振舞いで終始会場を支配している。
クラップ音が鳴り響く間奏では、SU-METALが大声で「武道館!」と叫んだ。
そして3日前のライブと同様に、観客にビッグ・ウェーブを起こすように促した。
その後はカウント3を合図に、恒例の“メギツネジャンプ”へ。
底抜けに楽しいライブは、会場全体の熱量を高めたまま終盤へ突入した。

 

続いて披露されたのは人気曲の「KARATE」。
モノクロを基調にしたライティングがステージングを美しく彩る。
SU-METALの力強い歌声が館内に響く。
僕はグルーヴを感じながら全身を揺らす。
「ひたすら セイヤ ソイヤ 戦うんだ 拳をもっと 心をもっと」。
前向きな歌詞が胸を打ち、ギュッと唇を噛み締める。
「悲しくなって 立ち上がれなくなっても」。
僕はリズムに乗って体を揺らしながら内心で大声で叫ぶ。“あー、押忍! 押忍!”

 

 

※公式ツイッターより

 

間奏の、SU-METALが2人を助け起こすシーンでは、スクリーンに、
過去の様々なライブ映像の同様のシーンが映し出されている。
その中には、2017年にユニットを脱退したYUIMETALの姿も。
この流れている映像が、ステージングをさらにエモくしている。
そして最後のサビを迎えると、モノクロカラーは一転、
爆発とともに明るい光がステージに降り注ぎ、なんとも清々しい気分に。
開放感とともに訪れる感動を胸に、僕は最後のロングトーンに酔いしれる。
真剣な表情で絶唱するSU-METALの姿が目映い。
僕は無意識に手を伸ばし、涙交じりの眼で彼女の唄い終える姿を見届ける。

 

録音された大歓声が起こり、感動が胸中に渦巻く中、
続いて「ヘドバンギャー!!」が始まる。
落雷音交じりの不穏なイントロが館内の空気をがらりと変える。
SU-METALがクリアな歌声で「伝説の 黒髪を」と歌い始める。
録音された掛け声の「ヴォイ!」は大音量。轟音となって館内に響き渡る。
僕はテンポの良いヘビィなサウンドに没頭し、小気味の良いヘドバンを続ける。
SU-METALは毅然としたままだが、MOAMETALと岡崎百々子は楽し気に踊っている。

 

間奏に入ると、ステージの床は、みるみるうちに白煙に覆われたた。
“ヘドバン! ヘドバン!”コールが館内に鳴り響く中、
MOAMETALと岡崎百々子が東西に移動し、観客に折り畳みヘドバンを要求した。
それに嬉々として呼応するメイトたち。
僕も前後左右に倣い、折り畳みヘドバンを続ける。
扇動する2人は時折満面の笑みを浮かべているが、
ステージ中央でスタンドマイクを掲げるSU-METALだけは厳しい目つきのまま。
この対比は、この楽曲のライブにおけるひとつのハイライトと言えるだろう。
赤・青・白と光る無数のレーザー光線がここでもステージングを彩っているが、
舞台照明が赤色灯のように赤く回転するのはこの曲が初めてだった。
曲が終わると、館内は大きな拍手と録音された歓声に覆われた。
その後は手拍子が自発的に発生し、録音された“BABYMETALコール”へと続いた。

 

間もなくして始まったアンコールの1曲目は今夜も「THE ONE」。
降下していた円形のスクリーンが上がると、中から金と黒のローブ姿の3人が登場した。
そして壮大なメロディが奏でられ、SU-METALが美しくしっとりと歌い始めると、
僕は恍惚な表情を浮かべたまま彼女の歌声に深く傾倒した。
「僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所へ」。
SU-METALの倍音の響きに、僕の背筋はゾクゾクしっぱなしだが、
間奏のエモーショナルなギター・サウンドがさらにグッと胸に刺さるから、
僕は音像に全身を委ねながら快楽に溺れ続けた。
そしてその快楽はやがてクライマックスへ。
SU-METALが「かなたへ」と歌い上げ、ギターが段階的に“ギューン”と奏でると、
僕はまるで昇天したかのように放心状態に陥った。
目からはまた自然と涙が零れ落ちている。

 

曲の終盤、3人は通路まで出ると、等間隔でキツネサインを掲げ、
観客に向かって“ララララ~”とシンガロングを促した。
当然声を出すことはできないので、観客はキツネサインを何度も揺らして応じる。
MOAMETAL、SU-METAL、岡崎百々子の順に、東のスタンド前に歩いて来たが、
3人ともが爽やかに、とても清々しい笑顔を見せていたのが印象的だった。
特にMOAMETALが見せた慈愛に満ちた微笑みには心が浄化された。
そしてそのMOAMETALはいつものように蜘蛛手にレスポンスしていたから、
途中、手を振るMOAMETALと目が合った!、モアちゃんがレスくれた!、と、
そんな風に思ったメイトは数多くいたのではないだろうか。
観客に大いなる幸福感を覚えさせて、やがて壮大な楽曲「THE ONE」は終了した。

 

愉悦に浸る中、最後に披露されたのは「Road of Resistance」。
録音された“wow wow”のシンガロングが館内に鳴り響く中、
3人がフラッグを手に、東・南・西に凛とした姿で登場する。
岡崎百々子とMOAMETALは丁寧にステージ下のスタッフにフラッグを手渡していたが、
SU-METALだけは、今回も正面を見据えたままフラッグを下に投げ渡していた。
その姿はあまりにも凛々しい。
それから、間髪入れずにWODを指示する仕草をするSU-METAL。
表情は相変わらずクールなままだ。
曲が始まると、通路側から巨大なパイロの炎が何度も噴出。
疾走感溢れる怒涛のギター・リフ、そしてドラムのブラストビートと相まって、
館内は今日イチの盛り上がりを見せている。

 

SU-METALのパワフルな歌唱が館内に響く。
「It the time!」のたびに、僕は拳を突き上げる。
間奏でギター・ソロが始まると、今度はエア・ギターをかます。
最高に気持ちの良い瞬間だ。
そしてシンガロングのパートでは、今宵もまたSU-METALが畏まって挨拶を始めた。
「この、一瞬一瞬が、私たちにとって、宝物のような時間です」。
続けて「皆さん、今日は来てくれてありがとう!」と声を張り上げると、
館内には大きな拍手がこだました。
SU-METALは北側のスタンドに向かって、
ポニーテールの毛先が床に着きそうになるほどの深いお辞儀をしている。
南東方面では同じように、MOAMETALも深々とお辞儀をしているが、
南西にいる岡崎百々子だけは、笑顔で観客に向かって手を振り続けていた。
あくまでもサポートダンサーとしての立ち位置をわきまえた所作なのだろう。

 

やがて曲はクライマックスへ。
ダイナミックかつドラマチックに展開する中、SU-METALが渾身の歌唱を続ける。
「そう 僕らの未来 On the way――」。
そしてその後にSU-METALは「武道館!」と渾身のシャウトをかましたが、
その時の表情は達成感に満ち溢れていてとても美しかった。
「燃える アツいハート 僕らの Resistance」。
SU-METALの最後のロングトーンが気持ちよく館内に響き渡る。
曲が終わると観客は彼女たちに称賛の拍手をおくり続けた。

 

その後はすぐに恒例のコール&レスポンスへ。
声は出せないので、“We are?”の後は大きくキツネサインを掲げた。
ふと北西のBOH神を注視していると、彼は昨夜のTLで目にしたとおりに背面弾き、
そして通路にベースを寝かせて、それを力強く指差すパフォーマンスをしてから、
まるで琴のような弾き方を披露した。
それでパフォーマンスは終わりかなと思いながら見続けていたら、
彼は床を支点にしてベースをおもむろに立てかけると、
なんと近くまでやってきた3人にベースを弾くように促したのだった。
すると、岡崎百々子、MOAMETAL、SU-METALが、それぞれ笑顔で順番に弦を弾いた。
これは予期せぬ嬉しいサプライズ。
ほっこりした幸せな濃い時間を、演者とメイトたちが共有する。
最後はSU-METALが銅鑼を鳴らして花火が爆発し、ライブは大盛況のもと終了となった。
今宵は『10 BABYMETAL BUDOKAN』DOOMSDAY-Ⅳ公演なので、
銅鑼の絵柄はMETAL RESISTANCE第6章の魔法陣の絵柄だった。

 

 

※公式ツイッターより

 

 

 

 

3.

 

大満足のもと、会場の外に出る。
今宵のライブがこんなにも感動するとは思っていなかった。
やはりBABYMETALのライブは最新が最強。
その謳い文句に嘘偽りはなし。
僕は最寄り駅へ向かいながら、今夜のライブを振り返る。

 

見どころはたくさんあったが、やはりハイライトは初披露されたオープニング、
それと久々に披露された「おねだり大作戦」と「紅月-アカツキ-」だろう。
特に後者の2曲は演出面に工夫が見られたのでとても新鮮だった。
オープニングを飾った、あの「BABYMETAL DEATH」をアレンジした新曲も、
フル・バージョンがあるよに思うから、ぜひとも音源を手にしたい。
その前に、3月のライブで再び目にすることができるのを期待したいと思う。

 

『10 BABYMETAL BUDOKAN』公演は今回で3度目だったが、
運よく1階の前列で、見晴らしが良い席で観覧することができたから、
ライブの全貌を初めて把握することができた。
そして演出面の多彩さ、細かさを、つぶさに観察することもできた。
舞台に設置されてある照明の数はざっと100以上。
そのほかにもスモークやパイロの炎が噴出する装置も均等に数多く設置されていた。
また、スタンドの1階・2階にもレーザー光線が伸びる装置が配置されていて、
楽曲ごとに、ステージングを麗しく彩っていた。
これほどまでのライティングで見せるライブはそうそうないのではないかと思う。
また曲ごとで、ライトが何色にも変わっていくのも良い仕掛けだった。

 

センターステージで全方位に平等で魅せる、圧倒的なライブ。
目線の高さでずっと見ていたから、たまに3人はまるで立体的な丸い空間の中で
パフォーマンスしているように見受けられた。
そして頭上のラインアレイスピーカーからは凶悪なサンドが絶えず降り注いでくる。
規模は大きいが、1階席から近くで観た今宵のライブはまさに“ライブハウス武道館”
と形容したくなるほど、ギュッと凝縮された素晴らしいショウだったように思う。
観客の視線が360度中央に集中していたから、そんな風に錯覚したのかもしれないが。

 

 

 

『10 BABYMETAL BUDOKAN』公演は折り返しを過ぎ、いよいよ残りは4公演。
チケットは未だ3月1公演、4月1公演の2公演分しか確保できていないが、
今のところ2公演ずつでセットリストが変わっているので、
なんとか最低限のチケットは確保できているという見方もできる。
緊急事態宣言が予定どおりに3月7日で解除されるのであれば、
残りの4公演はすべて観に行きたいのだが、それは抽選運に任せるほかない。
それにしても、今宵、これだけのライブを見せてくれたのだから、
次のライブへの期待値は否応にも上がった。
きっとまた違う曲を、
観客がアッと驚くようなサプライズ的な演出とともに披露してくるだろう。
早くも来月のライブが待ち遠しくなってくる。
僕は来月のライブ参戦と、
今夜のライブがディレイ・ビューイングで上映されるのを秘かに期待して、
口元に笑みを湛えたまま帰りの電車に揺られ続けた。

 

 

 

 

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2 件のコメント

  • 今回のDOOMSDAY-Ⅵのレポートを楽しみにしていました。DOOMSDAY-Ⅳ のFrom Dusk Till Dawnもかなりびっくり
    しましたがやっぱり今回のOP(BABYMETAL DEATH), おねだり大作戦, 紅月の方が驚きを感じました。
    もう、3人の新体制が固まるまではお蔵入りと思っていましたので。やはりチームBABYMETALはコロナ禍の中でも
    最高の演出を考えていたのですね。今後のDOOMSDAYが益々目が離せなくなりました。また、ディレイビューイングやって
    くれないかなと思います。(前回のディレイビューイングは中々よかったので)しかし、みんなのツイッターの感想やブログ見るたびに思うんですよね。なぜ自分はここにいないんだろうと。今回は行くことはできませんがTERIさんのレポートを一番の楽しみにしていますので頑張ってください。

  • >ひろさん
    コメントありがとうございました。
    前回の「From Dusk Till Dawn」、そして今回のOP(BABYMETAL DEATHアレンジ)、「おねだり大作戦」、「紅月の方」と、
    10周年にふさわしい内容(10年を網羅)のライブを行ってくれているので嬉しい限りです。
    ディレイ・ビューイングは全国のファンのためにもぜひ、開催してほしいところですね。
    現状、行きたくてもいけない方も多くいると思いますので、なんとか早くコロナ禍が落ち着くのを祈るばかりですよ。

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