BABYMETAL ガンズ サポート(SSA)ライブ レポート

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1.

唐突だった。
何の前触れもなく、激しい痛みが心臓を襲った。
これまでに経験したことがない激痛――故に、一気に恐怖に駆られた。
途端に呼吸が苦しくなる。胸に手をやり、中腰の姿勢をとる。
一瞬意識を失ったのはその直後のこと。
気が付けば僕は仰向けで地面の上に倒れていた。

 

少しずつ目を見開いていく。
闇の中にキラキラと輝くものがぼんやりと見える。
小さい頃に見た万華鏡をふと思い出した。
視界の先にあるのは星空だった。

 

周りに人の足が見える。
警戒するように、胡散臭そうに、煩わしそうに、周囲の人間が僕を見下ろしている。
モルモットによる生体実験を観察しているといった按配だ。
背中からひんやりとコンクリートの冷たさが伝わってくる。

 

僕は歯を食いしばって体勢を変える。ごろりとうつ伏せになり、四つん這いになる。
必死になって立ち上がろうとする。はあはあと息を切らす。
胸の痛みは尋常ではない。息を吸うたびに激痛が全身の神経を伝う。
まるで体全体が巨大な心臓になっているような感覚に囚われる。

 

頭の中ではジョン・レノンの「Happy Christmas」がこだましていた。
なぜだかはわからない。知る由もない。
しかしそれは別世界へ誘う暗示なんだろうと無意識に思う。
やがて僕は諦める。生への執着を放棄する。
仰向けの状態のまま呼吸を止め、じっと動かずにいる。

 

薄れゆく意識の中で光が見えた。それは靄の中で無数に点在していた。
そしてその光は、端から順に一定の間隔を保ちながら消えていった。
次第に視野が狭くなり、頭が重くなっていく。
いつのまにやら胸の痛みはきれいさっぱり消えている。

 

なんとなく気持ちが安らいでいく感覚があった。
肺に溜めてあった息を、長く、とても長く、静かにゆっくり吐いていく。
が、刹那、今度は強烈な寒気が襲ってきた。
僕はぶるぶると体を激しく震わせる。
啄木鳥が木をつつくように歯をガタガタ鳴らす。
がばっと顔を上げ、カッと括目する。
眼前では人々が行列を成している。

 

 

物販列だった。

 

時刻を確認すると午前6時45分。
並び始めてから2時間ほどが経過している。
気が付けばすっかりと夜が明けている。

 

どうも知らないあいだに座ったまま微睡んでいたようだ。
もう一度、今度は小さな悪寒が走る。
下半身は随分と冷たくなっている。
僕はのそりと立ち上がり、軽めの屈伸運動をする。

 

まさか自分がこんなに朝早くから並ぶとは思ってもいなかった。
過去のBABYMETALの物販で並んだ最長時間は3時間ほど。
BABYMETALのTシャツは基本、自分が着る分しか買わないから、ドームでも買ったのは一着のみ。
また、最前には行かないから、海外のフリースタンディングのライブでも3時間以上並んだことはない。
それなのに、今日は正午から始まる物販のために、真冬の早朝4時半過ぎから並んでいる。
それもわざわざ前夜に大宮へ移動し、ネカフェで時間を潰し、始発で駆けつけるという入れ込みよう。
それほどまでに今回発売される「FOX CITY」Tシャツはどうしても手に入れたかった。
これまでに発売されたBABYMETALのTシャツの中で一番欲しいと思ったデザインだった。

 

 

 

刻々と時は過ぎ、やがて物販ブースがオープンになる。
その直後、メイトが代わる代わるテントの様子を見に行く。気持ちは分かる。
そして並び始めてから約8時間。遂にそのときが訪れる。
買うときにバックヤードをちらりと見るとそれなりに在庫はあるようだった。
詳しい数字まではわからないが、結果的に横浜アリーナのときの倍くらいの数は用意してあったようだ。

 

 

 

「FOX CITY」Tシャツは予想どおりのカッコ良さだった。
「SILK TOP HAT FOX」Tシャツも直に見るとかなり良い。
この2枚は重宝しないといけないなと思いつつ、その後は少し仮眠を取ることに。
けやき広場の1Fへ降り、テラスの隅で1時間半ほど眠りにつく。
明け方は随分と不吉な夢を見たが、今度はそんなことがないようにと願いながら。

 

 

 

 

2.

 

やがて開場時刻となり入場する。
この会場でBABYMETALを観るのは約2年ぶり。
Aゲートから入場し、所定の扉からアリーナへ降りる。
最後方ブロックの席に着いて前方を眺めるとステージはかなり小さく見えた。

 

 

 

荷物を置き、ぐるりと周囲を見渡す。
今夜はスタジアムモードのはずだが、“ 新春キツネ祭り ” のアリーナモードと変わらない印象を受ける。
たぶん錯覚なのだろうと思いながらそそくさとトイレへ向かう。
そして買ったばかりの「FOX CITY」Tシャツへ着替え、チェック柄のシャツを腰に巻く。
BABYMETALとGUNS N’ ROSESのライブに臨むには、この恰好は最適な組み合わせのように思えた。

 

開演時刻まで2時間あったが、あっという間に時は過ぎていった。
客入れBGMでQueenの楽曲が流れていたから短く感じたのかもしれない。
開演5分前になると、客席はほとんど埋まっている状態となった。
周りのほとんどはガンズファンなのだろう、BABYMETALのTシャツを着た人はまったくいない。
と思った矢先、僕の右隣に座った男性のTシャツはBABYMETALの2016ツアーTEEだった。
あ、メイトだ。
僕は心の中で少しばかり安堵する。

 

4日前の横浜アリーナ公演が始まるまで、GUNS N’ ROSESは好きなバンドだった。
それも随分と昔に。
しかし同公演を観ている途中から、僕はまたGUNS N’ ROSESが大好きになった。
その感情は今ではさらに膨らんでいる。
そして今宵もオープニングアクトを務めるのは我らがBABYMETAL――。

 

この2つのバンドを同時に観る喜びを今一度強く噛み締めながら、僕は開演になるのを待ち続けた。
ひとり笑みを零し、ひたすら待つ。
まるで好きなアニメが始まるのをテレビの前で待つ子供のように。
ややあって名曲「Bohemian Rhapsody」の途中で暗転し、今夜のライブショーがいよいよ始まる。
GUNS N’ ROSESのジャパンツアーにゲスト出演するのも今夜が最後。
まずはBABYMETALをとことん味わってやるぞ!
内心で気勢を上げつつパイプ椅子から立ち上がると、僕は瞳を凝らして前方を凝視したのだった。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01 BABYMETAL DEATH
02 あわだまフィーバー
03 メギツネ
04 ギミチョコ!!
05 KARATE
06 イジメ、ダメ、ゼッタイ

 

定番の「BABYMETAL DEATH」でBABYMETALのライブが始まる。
前方で歓声は起こっていたが、僕の周りはかなり静かだった。
なるほど、これは完全なアウェイだと瞬時に判断する。
しかしそのことは特別問題ではなかった。
これまでにもこういった状況、特に海外のフェスで何度か経験はしている。
重要なのはライブが終わった直後の観客たちの反応だ。

 

怒涛の六連符リフが場内に轟く。
爆音だ。まるで爆撃機の攻撃を受けているかのようだ。
引き締まった音は最高レベル。最後方の床までもが振動している。
僕は気持ちよく頭を揺らしながら周囲を見渡す。
前方では “ オイオイ ” コールが発生しているが、
周辺にいる人たちはみな無言でステージを凝視している。

 

 

 

途中にフードを被った3人が登場してきたが、ほとんど肉眼で捉えることはできなかった。
それは当然だから落胆はしなかったが、モニターも小さいから表情もよく分からなかった。
少しでも床に傾斜があれば、視野や見え方も多少は良くなるのだろうが、
今さらフロアの形状を憂いたところで何の解決にもならない。
僕は音だけでも楽しめるからいいけれど、
できればBABYMETALのライブを初めて観る人には3人のステージングをじっくりと見てもらいたい。
そんな思いに馳せながら、僕はヘドバンの強度を次第に強めていった。

 

やがて同曲は終了したが、周りの客の反応は思っていたよりも少なかった。
歓声で沸いているのはスタンディングエリアからCくらいまでのブロックのようで、
最後方のDブロックでは拍手や歓声はまばらだった。
しかしその代わりといってはなんだが、ざわめく声はそれなりに耳についた。
おそらくは音圧や演奏力に対して驚いているのだろう。
無理もない。初見の人が最初に「BABYMETAL DEATH」を観るとだいたいそんな反応だ。
まずはその異質でヘビーな音に誰もが驚嘆する。
内心で良い兆候だと思いつつ、僕は次曲を待つ。

 

 

 

2曲目は「あわだまフィーバー」だった。
が、すぐに神バンドが出てきたので、ああ、大阪のパターンかと理解した。
イントロがループし、やがて神バンドがそれぞれ卓越したソロを始める。
続いて3人が “ ハイ! ハイ! ” と元気よく登場してくるが、
前のめりでライブを楽しもうとする観客はまだまだ少なかった。
初めて観るから、未だ様子見なのだろう。
“ 1 2 3 4! ” からの同曲の始まりに歓喜していたのは僕と隣のメイトの方くらいだった。

 

SU-METALの声が会場中に響き渡っている。
ジッとステージを凝視している人の中には、もしかしたら彼女の声量に驚いた方がいたのかもしれない。
僕はガンガンにヘドバンをしつつ、 “ Ah Yeah!” に合わせて大きくジャンプをしてみるが、
飛んでいるのは僕と右の方だけで、周囲の人たちは思わず苦笑してしまうほど見事なまでに地蔵だった。
もちろんあわだまダンスをする人も皆無。遥か前方の客が数人輪っかを作っているのが目に付く程度。
ふと脳裏に、同じような状況だったRED HOT CHILI PEPPERSのグラスゴー公演が思い出された。
あのときもライブの中盤まで周りの観客は比較的おとなしかった。

 

やがて曲が終盤を迎える。
音響バランスもよく、演奏もタイトで、SU-METALの歌声も気持ちよく聴いた。
僕はメイトだから最高に楽しめているが、果たして初見の人たちも少しは楽しんでいるのだろうか。
同曲が終了したときの周りの客の反応が想像よりも希薄だったので、
このときばかりは幾ばくかの不安を抱いた。
だけどライブはまだまだ序盤だと、僕は気持ちを切り替える。
観客たちを魅了する彼女たちのライブパフォーマンスが真価を発揮するのはここからだ。

 

 

 

3曲目にきたのは「メギツネ」。
前奏曲が始まるなり、僕は小躍りしながら声を上げる。
曲が始まれば、ビートに合わせて気持ち良く首を振る。
“ ソレ! ソレ! ソレ! ソレ!”
隣のメイトの方と揃って手を上げ、頑張って大声を張る。

 

やがてブレイクダウンに入り、SU-METALによる煽りが始まる。
反応を示す観客の数は少しずつ増えてきているようだが、まだまだ周囲は温まってはいない。
SU-METALが “ アーユーレディ? ” と煽っても声を出す人は前方の観客に集中していた。
こんなに人はいるのに、メギツネジャンプを飛ぶ人も片手で数える程度。
パイプ椅子が邪魔をしていることを考慮しても、あまりにも淋しい光景だった。
さすがにメギツネの煽りのシーンでは少しは盛り上がるだろうと思っていたけど、
ガンズのライブでは、観客たちによる圧縮はあっても、ジャンプはほとんどないのかもしれない。
だからすぐにはメタルのライブの楽しみ方には順応できないのだろうか、とふと思う。
ただ興味深げにステージは凝視したままなので、もしかしたら照れで自制していることも考えられる。

 

曲が終盤になっても体を揺らす人の数は少なかったが、
曲が終わった直後の歓声はこれまでよりもいくらか上がっていた。
少しずつ彼女たちのライブに引き込まれているのかもしれないけれど、やはりまだ少ない。
そしてライブはそのまま「ギミチョコ!!」へと続いていった。

 

冒頭のタイトルコールのウィスパーがループする。
やがて爆音とともに曲が始まるが、視界に映る光景はこれまでとあまり変わらなかった。
ほとんどの人が見入っているのだろうから、地蔵が決して悪いとは言わないけど、
ロックが好きな人にはBABYMETALの楽曲は刺さると思っていたので肩透かしを食らってしまった。
それともスペースが狭いから、左右の人に遠慮して、体を揺らすことすらしないのだろうか。
ステージが遠すぎるし、人の頭も重なっているから、観ることだけに必死になっているのだろうか。

 

僕自身は、周囲の反応をよそに、終始ヘドバンや手拍子をして盛り上がった。
それには周りも盛り上げようとする意図も多少は含まれていたのだけれど、
周囲の観客たちはずっと静観を決め込んだままだった。
それは曲の終盤になっても変わらなかった。
終わった後の歓声も、前曲の終わりの時とさほど変化はないように感じられた。

 

立て続けに「KARATE」が始まる。
僕は大きく体を揺らしながらリズムに乗る。
周りがとても静かだから、サウンドやヴォーカルがとても心地良く感じられる。
皮肉な話ではあるけれど、まずは自分がとことん楽しむことを優先する。

 

やがてブリッジに入り、再びSU-METALの煽りが始まる。
彼女が手を上げてと訴えると、前の方にいる観客は少しばかり反応していた。
やがて “ エブリバディジャンプ ” とSU-METALが声を張るが、ここでもジャンプをする人は数える程度。
ずっと手を上げて盛り上がっている人が前方に何人かいるが、彼らはおそらくメイトなのだろう。

 

無理に言い訳をするつもりはないが、単純に狭いからなんだと思う。
パイプ椅子に空間を遮られているから、前後左右にスペースはあまりない。
だから最初からその狭い場所で「体を大きく揺らす」「飛ぶ」という選択肢はなかったのかもしれない。
そんなふうに思ったのは「KARATE」が終わったときだった。
曲中は静かだったが、拍手や歓声を上げる人の数はここにきてだいぶ増えてきている印象を抱いた。
スペースがもう少し広ければ、彼らは楽曲に乗って体を揺らしたいと思っていたのかもしれなかった。

 

 

 

そしてライブはいよいよ最後の曲に。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が始まると、僕は嬉々として頭を揺らす。
ビートがあまりにも気持ちいい。
SU-METALのクリアで力強い歌声がこんなに遠くまではっきりと届いてくる。

 

周囲の人たちは終始ステージを凝視しているといった様子だったが、
その集中度はこれまでの曲よりも増しているように感じられた。
誰もが一心にステージを眺め、演奏やヴォーカルに聴き入っているようだった。
数は少ないが、ダメジャンプで飛んでいる人を視界の遥か先で捉える。

 

今宵の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の演奏も完璧に近い出来だった。
特にドラムのブラストビートは最後方の床をずっと振るわせ続けていた。
僕は途中にエアギターをかましたり、ヘドバンをしたりして大いに悦に入る。
こんなに広い会場であっても彼女たちのパフォーマンスは終始際立っている。

 

曲はやがてブリッジから終盤へ。
周囲でダメジャンプを跳ぶ人は最後までいなかったが、ステージに熱中しているのは感じ取れる。
そして曲が終わると、彼女たちが恒例の “ We are BABYMETAL ” コールで締める。
最後の挨拶では今日イチの歓声が沸く。
結局彼女たちは、6曲すべてでパーフェクトなパフォーマンスを披露した。
持っている力は十分に発揮したように思う。
ステージからはあまりにも遠く、視界も厳しい状況の中で彼女たちのライブを観たが、
個人的には、音が良かったのでそういったマイナス要素はほとんど気にはならなかった。
短い時間なのにかなりの体力を消耗するほどに、僕は首を振り続けてライブを満喫したのだった。

 

照明が灯り、メインアクトのライブまでインターバルが置かれる。
周りの人のざわつく声がひっきりなしに聞こえてくる。
やはり遠くてステージはあまり見えなかったせいか、彼女たちのパフォーマンスに関する声はなく、
「音がエグかった」「演奏が凄かった」「ヴォーカルが上手かった」といった感想を耳にした。
左隣の中年のご夫婦が顔を見合わせながら「もう2曲くらい聴きたかったね」と喋っている。
僕は口元に薄い笑みを浮かべると、おもむろにトイレ休憩で席を立った。

 

それから約1時間ほどが経過した頃だった。
6時半過ぎに、Queenの「Bohemian Rhapsody」が流れてきたところで、
GUNS N’ ROSESのライブが始まる予感が急速に高まってきた。会場がざわつき始める。
ややあって暗転し、彼らのライブショーが幕を開けると、周囲から大きな歓声が沸いた。
僕も負けじと大声を出しながらバンドメンバーの登場を待ち望んだ。

 

セットリストは横浜アリーナ公演と同じような流れだった。
一曲目の「It’s So Easy」でフロアのボルテージは一気に上がり、
「Mr. Brownstone」「Chinese Democracy」と熱狂は続いていく。
Welcome to the Jungle」では観客と一緒になって大声で歌い、
アレンジが変わった「Better」でも、僕は声を張り上げるようにしてサビを歌う。
ライブはその後も「Estranged」「Rocket Queen」と続いていくが、
アクセルの声の調子は今宵も抜群だった。
特に「Live And Let Die」を豪儀に歌い上げ、最後に中央でポーズを決めたときには、
僕は感極まって、今夜のライブで最初の涙を零してしまった。
スラッシュも、リチャードも、フランクも、バンドメンバー全員が輝いて見える。
その中でもMisfitsの「Attitude」を歌うダフ・マッケイガンの佇まいは華やかでロックしていた。

 

その後も熱狂的なライブは続き、「This I Love」「Civil War」と畳みかけてゆく。
スラッシュが「The Godfather」のメロディを奏でると、今夜も僕は目を閉じて音に全身を委ねる。
そして続けざまに「Sweet Child O’ Mine」のリフが奏でられると、会場中から大きな歓声が沸いた。
僕は嬉々として同曲も歌い、心底彼らのライブを堪能した。

 

それから少しして、今夜のハイライトが訪れる。
November Rain」の際のスマホの光は、否応にもBABYMETALの東京ドーム公演を想起させた。
あの日の感動が沸々と蘇ってくる。スラッシュの弾くギターの音色が骨身に沁みる。
“ Knock, knock, knockin’ on heaven’s door ” “ Knock, knock, knockin’ on heaven’s door ”
その後の「Knockin’ On Heaven’s Door」では、何度も大合唱が起こった。
そして最後に「Nightrain」を披露して彼らのライブは大盛況のもと終了した。

 

少しばかりの “ GUNS N’ ROSES ” チャントを挟み、すぐにアンコールが始まる。
The Rolling StonesやThe Whoのカヴァーを披露し、場内を再び熱狂させる。
個人的には、「Angie」でのアクセルの口笛に感銘を受けた。
そしてラストの「Paradise City」では、悔いを残さないように大声で一緒になって歌った。
そうして全27曲を披露し、稀代のロックバンドの眩いライブショーは大盛り上がりで閉幕したのだった。

 

大きな感動の波が胸中を渦巻いている。
最後にメンバーが揃って挨拶をしたときには、僕は止めどなく涙を流し続けていた。
アクセルがダフとスラッシュの肩を抱いている姿は得も言われぬ光景だ。
腹の底から、僕は “ ありがとう、GUNS N’ ROSES! ” と叫ぶ。
次に彼らのライブを観る機会があるならば絶対にVIPチケットを購入しよう。
そう強く思い、後ろ髪を引かれる思いで、僕は会場を後にした。

 

 

 

 

4.

最寄り駅から上りの電車に駆け込む。
電車に揺られながら僕は今夜のライブを振り返る。
前座のBABYMETALは、その洗練されたライブパフォーマンスで観客たちを圧倒した。
あの広いさいたまスーパーアリーナの会場を完全に支配していた。
もしも今夜のライブが彼女たちの単独ライブであったならば、
2年前の “ 新春キツネ祭り ” のあの熱狂的なライブをも軽く凌駕していたことだと思う。

 

彼女たちのライブについては、生で観た他のメイトの方々も大体が同じ感想を抱いたことだと思う。
音響が良く、リズム隊の奏でる演奏はタイトでありながら激しく、この上なくヘビーで、
SU-METALのヴォーカルは今宵も絶好調で、会場の隅々にまでクリアボイスは行き届いていた。
MOAMETALとYUIMETALも、アリーナの最後方からではダンスのキレ具合はよくわからなかったが、
モニターで見た限りでは、普段どおりに楽しみながら観客たちを煽り続けているように窺えた。
おそらくは初見のガンズファンの人たちも、多くが彼女たちのライブに感銘を受けたことだと思う。
なるほどこれがBABYMETALか。確かにライブパフォーマンスは一見の価値があるといった具合に。

 

しかしながら、いくら彼女たちのライブパフォーマンスが際立っていて最高だったとしても、
今夜は前座のライブなのだから、会場全体の盛り上がり具合と混同するのはよろしくない。
たまたまTLでSSAはホームだったというのを目にしたが、そう断言したい気持ちもわかるが、
それはスタンディングの熱狂具合だけをフォーカスした話であろうと思う。
アリーナの最後方から観た僕の感想はまったくの逆で、
久しぶりにアウェイの環境を味わったというのは嘘偽りのない本音だ。
会場が広くなればなるほど、前座のライブはアウェイ感が増すのだなというのを今夜僕は思い知った。

 

結局のところ、エリアごとでのメイトの比率によって、盛り上がり具合は違ったのだと思う。
先の横浜アリーナ公演は、ゲスト参戦が発表された後にチケットが販売開始となったから、
アリーナにおけるメイトの占有率は半数近くにまで及んでいた。
事実、BABYMETALのライブ中は、アリーナは半ばホームのような盛り上がりを見せていた。
単純に今夜のライブは、全体的なメイトの比率が横浜アリーナのときよりもかなり低かったのだろう。
仮に1500人くらいのメイトが今夜のライブに駆けつけていたのだとしても、
キャパ的に2万5千人から3万人はガンズのファンたちで埋め尽くされている状況だったのだ。
だからメイトたちの所感は、場所によっていろいろとばらつきがあるのではないだろうか。

 

また、僕がアウェイと感じた大きな理由は、やはりライブを観た位置に依るところが大きい。
おそらくバックスタンドで観た人の方が、豆粒とはいえステージ全体を俯瞰して観ることができるから、
アリーナの最後方ブロックにいた人たちよりも彼女たちのライブの素晴らしさは伝わったことだと思う。
一番アウェイに陥りやすい場所、それが今夜僕がいた、アリーナ最後方のD7ブロックだった。
とはいえ、最後の2曲あたりでは、随分とライブに引き込まれているようには窺えたし、
ライブが終了した後のざわつき具合はプラスの感情によるものだったので、
もしかしたら僕の周りにいた観客たちの何割かは今後BABYMETALに興味を抱いてくれるかもしれない。

 

GUNS N’ ROSESのライブに関していえば、それはもう圧巻のパフォーマンスだった。
ヴォーカルのアクセル・ローズは、刺さるようなハイトーンヴォイスから、
ディープな低音ヴォイスまで、曲によって様々な声色を使い分けていた。
ロックを地で体現しているのが彼であり、GUNS N’ ROSESは過去最高のロックバンドだった。

 

思うに、25年前よりも、ライブパフォーマンスの質は上がっているのだと思う。
彼らの若い頃のライブは映像でしか観たことがないからあくまでも推測に過ぎないが、
今回観た2度のライブは、曲ごとに観客たちを楽しませる工夫に富んでいた。
ステージ奥の大型ビジョンでは、曲ごとに感動的な演出を行っており、
アンコールではプロジェクションマッピングも活用して観客たちをよりライブに引き込んでいた。
これほどまでの盛大なライブエンターテインメントショーを見せてくれるなんて、
会場に足を運ぶまではまったく想像していなかった。

 

また初期の楽曲群の完成度が高い上に、楽器の演奏レベルもまったく錆びついていないから、
ダフとスラッシュが加わっただけでこれほどまでにガンズのライブは昇華するのだろう。
3人が生み出すシナジー効果は計り知れないほどに大きかった。
途中のスラッシュとリチャードによるギターセッションも素晴らしく、
アクセルのピアノとスラッシュのセッションからの「November Rain」には鳥肌が立った。
セットリストによるライブの流れの生み出し方も秀逸で、
ライブを一つの盛大なエンターテインメントショーとしてまとめる力には感服するほかなかった。
ずっと観続けていたいと思うほど、僕は全曲とおして彼らのライブに魅了されっぱなしだった。

 

彼らが遺してきた作品、特に発売から約30年が経過した「Appetite for Destruction」は、
個人的には、現在でも確実に通用する作品だと思っている。
あれこそはまさにロック史上最高のデビュー・アルバムなのだと思う。

 

やがて駅に着き、自宅に向かう。
今夜は前座だったから淡白なものだったが、
BABYMETALのライブショーも、今夜のGUNS N’ ROSESのショーに勝るとも劣らない。
彼女たちが披露した東京ドーム公演もまた、一つの盛大なエンターテインメントショーを成していた。
早くまたあのようなショーが観たいと思いながら僕は家路を急ぐ。
そしていつの日か、SU-METALとアクセル・ローズが同じ舞台に上がることを夢見る。
人並み外れた2人のロックヴォーカリストによる共演はさぞかし胸が躍ることだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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