BABYMETAL ガンズ サポート(横アリ)ライブ レポート

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1.

BABYMETALの物販は最初から諦めていた。
だから駅へ向かう足取りもゆったりとしたものだった。
お昼過ぎに会社を早退し、最寄駅から新横浜へ向かう。
ライブ会場の地 “ 横浜アリーナ ” に到着したのは午後1時半頃だった。

 

 

 

粛々と物販列に並ぶが、日陰だからかなり寒い。
寒風が容赦なく体温を奪っていく。
まるで飲み会の席で目玉おやじのものまねを披露する上司のようだ。
彼のオヤジギャグはいつだって場の空気を凍らせる。

 

 

 

その後物販が開始され、予定していたガンズのTシャツを数枚買う。
少し気の毒に思ったのは、BMの物販列に並ぶも途中で売り切れとなり、ガンズの物販に回された方々。
たとえば整理券を配るなりして、在庫の数と並んでいる人数を突き合せていれば、
買えない人が無駄に並ぶ必要はなかったように思うから、あまりにも不条理に思えた。
「この魚は捨てるところがないからね」と言いながら真っ先に頭を捨てていた
上司の言動と同じくらいの理不尽さを感じずにはいられなかった。

 

昼食抜きで物販列に並んでいたので、その後は場所を移動して食事をすることに。
食べ終わった後も店内に留まり、冷え切った体を温めるべく、暖を取り続ける。
開場時刻頃に会場へ戻り、今度は入場待機列に並ぶ。
突風が吹くと体感温度は厳しさを増すが、あともう少しだと思うとそれほど苦ではなかった。
BABYMETALのライブを体感できる喜びはいつだって気分をMAXまで高揚させてくれる。

 

 

 

 

2.

 

やがて開場時刻となり入場する。
一昨年12月以来、約1年ぶりの横浜アリーナ。
席はフロアに程近いが、ステージからは随分と遠い。
VIPではなくS席だから、どの場所だろうと文句は言えない。
決められた位置で最大限楽しむ。意に留めるのはそれだけだ。

 

仕事帰りなのだろう、周りの席には中年のスーツ姿の人が多かった。
往年のガンズファンに違いない。
若者や女性客もいることはいるのだが、中年から高年の男性客が一番多く目に留まる。
彼らは「Appetite for Destruction」からのファンたちであることは間違いないように思える。

 

Red Hot Chili Peppers、METALLICAに続く、GUNS N’ ROSESのゲスト参戦。
前座とはいえ、メインアクトがロックの殿堂入りばかりのバンドというのは、
改めて考えると、BABYMETALの認知度が世界的に高まっていると感じる。
ライブバンドとしての評価が、ひとえに音楽業界全体に浸透しつつあるということなのだろう。
どんな状況下にあっても特筆に値するライブパフォーマンスを披露する。
本物のミュージシャンたちは決して彼女たちを色眼鏡で見ていない。

 

開演時刻あたりになると客席はほとんど埋まってきた。
否応なく気分は高まっていく。
不意に暗転し、BABYMETALのライブが始まると、周囲から歓声が上がった。
僕はTシャツ姿になって立ち上がると、ステージにだけ意識を集中したのだった。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01 BABYMETAL DEATH
02 ド・キ・ド・キ☆モーニング
03 Catch me if you can
04 メギツネ
05 KARATE
06 ギミチョコ!!

 

マシンガンのような「BABYMETAL DEATH」の六連符リフが場内に轟く。
フードを被った3人がステージに姿を現すや早速メイトたちが色めき立つ。
今夜も前座のライブだから、初めてBABYMETALのライブを観る人の数は多かったけれど、
関東圏の会場ということもあってメイトがある程度集結しているのだろう、
地蔵の人よりも手を上げて声を張る人の方が自然と目立つから、
初っ端からアリーナは随分と熱気に溢れ返っている印象を受けた。
イギリスで観たRHCPの時とは状況がまるで違う。
ただスタンドは今回もステージをジッと凝視している人の割合が多いようだ。

 

爆音に刺激を受けて堪らなくなった僕は、その場で激しくヘドバンを繰り出す。
それを少しばかり続けただけで脳内は強烈な陶酔感を生み出す。
やはりライブで聴く「BABYMETAL DEATH」はいつだって最高だ。
渇いた喉に冷水を流し込むように、頭を揺らしながらヘビーなリフを貪り続けた。
同曲が終了したときには至る所で歓声や拍手が上がっていた。

 

 

 

続く曲は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だった。
フロントの3人が笑顔で楽しげに躍動する。
もしかしたら1曲目の「BABYMETAL DEATH」とのギャップに驚いているのかもしれない。
微動だにせずにステージやモニターを凝視している人が視界に多く映っている。

 

SU-METALのヴォーカルは今宵も素晴らしい。
YUIMETALとMOAMETALも調子は良さそうだ。動きがシャープに見える。
歌メロがあまりにもポップでキャッチ―だから初見の人たちのノリはイマイチかな、と思ったけれど、
それは場内が暗いから単に判別しにくいだけであって、よく見ると、
「リンッリンッリンッ!」に反応して頭を揺らしている人はそれなりにいるようだ。
そして曲が終わるとここでも歓声や拍手が沸き起こったのだった。

 

ライトが消え、フロントの3人が一旦ステージをハケる。
代わりに神バンドの面々がお立ち台に上がる。次曲は「Catch me if you can」。
Leda神が「Sweet Child O’ Mine」のリフを奏でると周りのガンズファンからも歓声が上がった。
テクニックには自信があるのだろう、初見の瀧田神がBOH神と同じように高速タッピングを披露する。

 

 

 

青山神のソロプレイ中、マイクが彼女たちの誰かの声を拾った。
それは小さなハプニングだったからあまり気にはならなかった。
“ 早い、早い ” と聞こえたその声の主は、声質からSU-METALのように思えたけれど、
果たして2人に声を掛ける際、わざわざ口元にマイクを持っていくだろうか。
やや疑問は残ったが、とくに問題ではないので僕は引き続きライブに没頭する。

 

少ししてから、BABYMETALの3人が小躍りしながらステージに現れる。
アリーナをざっと見渡したところ、一緒に “ ハイ! ハイ! ” と手を上げている観客は
半分近くいるようだった。やはりかなりのメイトが来場しているのだろう。
3人の “ 1 2 3 4 ” の合図とともに僕はまたヘドバンを繰り出す。
ギターのザクザク音があまりにも心地良い。
そして途中に煽りを挟むことなく、楽しげな同曲はやがて終了したのだが、
彼女たちのライブに引き込まれている観客の数は幾分増しているようだった。
とある初見と思しき人は口元に笑みを湛え、拍手をしながら快活な声を上げていた。

 

 

 

曲はそのまま「メギツネ」へと続く。
僕はここでも渾身のヘドバンをかます。
途中の煽りでSU-METALが “ 手を叩いて ” と叫ぶと観客の多くが反応を示した。
メギツネジャンプをする人はそれほどでもなかったが、場内はかなりの盛り上がりを見せている。

 

前座のライブとしては十分すぎる反応だろうと思う。
地蔵のままの人も、だいたいが、熱心にステージを眺めているように見受けられた。
こうやって初見の人たちの耳目を集めることができるのは、単純にライブが秀でているからだろう。
初見でいきなりダンスに目を奪われる人は少ないかもしれないが、
タイトな演奏や力強いヴォーカルは、決して無視はできない高いクオリティを具えている。

 

 

 

曲が終了すると、やはりここでも大きな歓声が上がった。
会場中がお祭りムードというわけにはいかなかったが、ある程度活況は呈している。
そしてライブはそのまま「KARATE」へと続いていく。
僕は目を閉じてギターの刻み音に身を委ねる。

 

やがて間奏に入り、SU-METALによるコール&レスポンスが始まる。
声が若干疲れているように聞こえたが、その後のフェイクでそうじゃないと思い知る。
彼女が “ ウォウォ、ウォウォ、ウォウォ~ ” と声を張り、大きな会場を支配する。
前座のアクトとか関係なく、誰もがステージ上の歌姫に意識を集中させている。

 

思わず僕は “ ああ ” と感嘆の声を漏らす。
彼女の歌声は毎日聴いているが、このシーンはライブでしか味わえないから格別だ。
エブリバディジャンプの後はいよいよクライマックスへ。
最後のロングトーンが場内に響くと、これまで以上の陶酔感に僕は襲われた。
あまりの気持ちよさにその場で卒倒してしまいそうになるほどに。

 

 

 

周囲が未だざわつく中、ラストの「ギミチョコ!!」が始まる。
ふと気が付けば、終始地蔵だった眼下の男性がリズムに乗って踊り始めていた。
僕は少しばかり口角を上げて、悔いが残らないようにヘドバンを続ける。
場の空気はこれまでで一番温まってきているように感じる。

 

やがて曲が終わり、3人が恒例の “ We are BABYMETAL ” コールで締める。
場内から大きな拍手と歓声が沸き起こる。
メイトからすると30分強の時間はあまりにも短いが、こればかりは致し方なし。
なにせ日本でライブが観れることが稀なアクトなのだから、
前座だろうが観に行けるときに観に行かないとのちのち後悔してしまうことになる。
そうして個人的には大満足のもと、彼女たちのライブは終了した。
願わくば初見の多くの人たちが、今夜をきっかけに彼女たちに興味を抱いてくれればいいのだけれど。
ふとそんなことを思いながら僕は静かに着席する。

 

 

 

その後は約40分のインターバルを挟み、GUNS N’ ROSESのライブが始まる。
「It’s So Easy」、「Mr. Brownstone」と「Appetite for Destruction」の曲でスタートし、
「Chinese Democracy」、「Welcome to the Jungle」へと続いていく。
僕は不思議な感覚を抱いたまま彼らのライブに没頭する。

 

 

 

ステージ中央にアクセル・ローズ、その左右にダフ・マッケイガンとスラッシュが並んでいる。
直接この目で見ているのに、眼前の光景はまるで夢のように思える。
そんな嬉しい戸惑いを覚えながら僕は引き続きライブに熱中する。
「Live And Let Die」(カヴァー曲)、「Rocket Queen」と往年の名曲が続く。

 

 

 

彼らのライブに見入っていると自然と涙が込み上げてきた。
ダフやスラッシュが最高なのはわかっていたから、それに今さら驚くことはなかったけれど、
初めて生で聴くアクセルのヴォーカルが予想以上に良すぎて、それが涙腺を刺激していた。
「Welcome to the Jungle」を豪儀に歌い上げた直後、
「どうだ、まだまだ俺は歌えるだろう?」とでも言いたげなドヤ顔を目にしたときには、
ふと脳裏に、でっぷりとした体つきの上司の顔が浮かんで微妙な気持ちにもなったりしたが、
ライブが進むにつれ、魂の籠ったアクセルのハイトーンヴォイスに僕は魅了されていったのだった。
そして「This I Love」を聴き終えた後には、僕は深くアクセルに心酔しきっていた。

 

その後も彼らのライブは大きな盛り上がりを見せ、スラッシュのギター中心のセッションから
「Sweet Child O’ Mine」が始まると、場内はひときわ大きな歓声に包まれた。
“ Don’t ya think that you Need somebody ” “ Don’t ya think that you Need someone ”
「November Rain」の終盤では、若い頃を思い出しながら一緒になって大声で歌う。
結局彼らはアンコールを含めて26曲を披露した。
僕は感激のあまり、その場で万歳をしたまま何度も大きく飛び跳ねる。
ステージに横一列に並ぶ彼らに対する称賛の拍手はしばらく止むことはなかったのだった。

 

 

 

 

4.

会場を後にすると僕は最寄駅まで急ぐ。
電車に揺られながら今夜のライブを振り返る。
BABYMETALの3人と神バンドは今夜も鉄壁なパフォーマンスを披露した。
とりわけフロントの3人は、横浜アリーナのステージは横に広いから、
いつも以上に弾けて駆け回っている印象を受けた。

 

また3人は、日本の会場ということもあって、随分とリラックスしているように見受けられた。
そして僕は終始感じたのだが、おそらく3人もアウェイ感はほとんど感じなかったのではないだろうか。
披露したすべての曲において、反応する観客の数は半数近くはいたから、
半ばホームのような感覚でライブを心底楽しんでいるように目に映った。
週末のさいたまスーパーアリーナにもメイトは多く駆けつけるだろうから、
きっとそこでも似たような状況が生まれるように思う。

 

今回のGUNS N’ ROSESのサポートアクトは、直接メンバーからオファーを受けたわけではなく、
興行主のクリエイティブマンから、チケットの売れ行きを期待されて出演依頼がきたのだろうが、
ゲスト参戦のきっかけはどうであれ、スタジアムバンドのライブから得るものはたくさんあるはずで、
特にSU-METALは、アクセルのあの熱唱から大きな刺激を受けたように思う。
そしてひょっとしたらだが、ロックの一時代を築いた彼らに大きなシンパシーを感じたかもしれない。
なぜならば彼女には、隠しきれないロックの魂が宿っているのがたまに垣間見れるから。
とりわけRob Halfordとのコラボのときに、ダンスを考えないでいいときに、それは如実に表れていた。

 

個人的には、今夜のBABYMETALのライブも心底満喫したのだが、
メインアクトのGUNS N’ ROSESのライブにより大きく引き込まれたことは自分でも驚きだった。
おそらくは、若干かかっていたバイアスが良い意味で裏切られたからなんだと思う。
来場する前まで、「昔の名前で出ています」的なノリでツアーを回っているんじゃないかと
少しばかり邪な考えを持って勘繰っていた自分を叱り飛ばしたい心境だ。

 

GUNS N’ ROSESの曲を主に聴いていたのは学生の頃だった。
そして一番聴いたのはデビューアルバム「Appetite for Destruction」だった。
プロモーションは「Use Your Illusion I」「Use Your Illusion II」の方が盛大だったように思うが、
同アルバムは、最初こそ繰り返して聴いたが、途中からは好きな曲だけをスキップして
聴いていたように、うっすらとだが記憶している。
そしてスラッシュが脱退したその頃から、彼らの音楽はほとんど聴かないようになっていた。

 

もしGUNS N’ ROSESが、今のメンバーのまま日本のフェスに出演したら、
もっと若いファン層を取り込んでいけるのではないか。そんな気がする。
実際に生で観ないとあの凄さは体感できない。
それほど彼らのライブはエネルギッシュで、年齢や年数の空白を感じさせることはなかった。
GUNS N’ ROSESが “ 現在進行形 ” のバンドとして活動し、素晴らしい光景をたくさん見せてくれる。
そんな彼らとBABYMETALのライブを、セットでもう一度観れる。
ああ、もう、週末が来るのが今から待ち遠しくて仕方がない。

 

やがて最寄駅に着き、僕は家路を急ぐ。
ふと脳裏でアクセルのハイトーンヴォイスがこだまする。
と同時に、体形やドヤ顔が似ている上司の顔も思い浮かんだ。

 

もしアクセルが、あのハイトーンで、一言日本語を叫ぶとしたら、きっとこの台詞がお似合いだろう。
そんな機会があるとしたら、是非とも彼には、大声で「おい、鬼太郎!」と叫んでほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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