BABYMETAL 海外 ベルリン ライブレポート

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1.

上司への怒りがまだ収まらない僕はそのまま旅を続けた。
翌朝、ICEで一路ベルリンへ。
フランクフルトからベルリンまでは日本でいうと東京から大阪ほどの距離。
しかし日本のそれとはまったく違い、ICEの車窓から見る風景は緑がほとんどだった。
途中に巨大な風車(風力発電)をいくつか見かけたのも大きな相違点だろう。

 

ホテルにチェックインしてから目的地へ向かう。
途中にいくつか観光名所を見てまわり、いざ地下鉄に。
最寄駅を出て、ハーゼンハイデ通りをまっすぐ進むと、
すぐに左手に「Huxleys Neue Welt」が見えてくる。
今宵、BABYMETALのライブが行われるライブハウスだ。
開場までもう2時間を切っているので100Mほどの列ができている。

 

フランクフルトからベルリンへと場所を移し、
2夜連続で行われるBABYMETALの単独ライブ。
思えば2日続けて彼女たちのライブを観るのは初めてのことだ。
ふと周りを見まわすと、日本人欧州人関係なく、昨日見かけた見覚えのある顔がいくつかあった。
疲れなんてなんのその、みな嬉しそうな顔つきで仲間内と談笑している。

 

昨日に比べ天候が曇り空で涼しいので、列に並んでいる人たちのざわつき感がすごい。
ある者は記念写真を、ある者は大きなフラッグに寄せ書きのサインを、
またある者は大きな声を上げながら仲間と語らい合っている。
完璧なフリコピを披露する外国の女性がいれば、観客を煽ってまわる日本人もいる。
ちょっとしたカオスだった。
正直なところ、会場前の外の様子を眺めただけで、
ああ、これはもう昨日のライブを超えるなという予感をひしひしと感じた。
昨日同様、ジョエルやダナが通りに姿を現して撮影を始めるとひときわ大きな歓声が上がった。

 

果たして開場時刻となりホールに入る。
昨日がVIPだったので、今日は一般チケットのままにしていた。
それから、予定どおりにフロアの真ん中、PA卓付近に位置取る。
それでも小箱なのでステージまでは随分近い。

 

周りを見渡してみると、観客の年齢層は今日も幅広いようだった。
初老と思しき男性もいればティーンの女の子の姿もある。
もちろん長髪タトゥーのガチメタラーもたくさんいる。
地元の方だろうか、コスプレ姿の女性の数も多い。
僕の網膜はカップルは認識できない仕様になっているから、残念ながらそれらのry。

 

しかし改めて思う。
欧米人は皆、体がデカい。男女関係なくだ。
本当に何を食ったらそんなにデカくなるのだろう。
きっと会社の飲み会の席で得意としている宴会芸は「一人二人羽織」であるに違いない。

 

昨日と同じように「BABYMETAL」コールが開演時間に起こる。
数分後、暗転するやひときわ大きな歓声が沸き起こる。
「舞姫」の舞台であるここベルリンの地に、三人の少女が華麗に舞い降りる。
異国のデカいメイトたちよ、モッシュする準備は整っているか?
さあ、今宵も共に肩を並べて時間の限り踊り狂おうではないか。

 

 

 

 

2.

セトリ

01 BABYMETAL DEATH  動画① 動画② 動画③
02 いいね!  動画① 動画②
03 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト  動画①
– 神バンド -インストゥルメンタル-  動画① 動画②
04 悪夢の輪舞曲  動画①
05 おねだり大作戦  動画①
06 Catch me if you can  動画① 動画② 動画③ 動画④
07 紅月 -アカツキ-  動画① 動画② 動画③
08 4の歌  動画①
09 メギツネ  動画① 動画②
10 ド・キ・ド・キ☆モーニング  動画①
11 ギミチョコ!!  動画① 動画② 動画③
12 イジメ、ダメ、ゼッタイ  動画① 動画② 動画③
(アンコール)
13 ヘドバンギャー!!  動画① 動画②
14 Road of Resistance  動画① 動画② 動画③ 動画④ 動画⑤

 

恐縮ながら、フランクフルトに続き、1曲ごとのレポートは今回も割愛させていただく。
ライブ全体を通しての海外勢の様子を中心にお伝えしようと思う。
また会場内の雰囲気は上記インスタ動画リンクで感じ取っていただければ幸いです。
※今回はPeriscopeの配信がほぼフルタイム? であったらしいですね。
僕もホテルに戻ってアーカイブを観ましたが、音がすばらしかったです。
こちらの生配信を観た方は会場の雰囲気や臨場感はある程度感じられたかと思います。

 

 

ベルリンでのライブは、日本を発つ前から中団か後方で観ようと決めていた。
やはりせっかく海外に行くので、地元のメイトたちの様子を具に観察したかったからだ。
そして彼らの熱狂ぶりを知り得るには、やはり彼らの中に入っていくしかないだろう。
欧州人の中心に身を置くことでいろいろなことを体感できるはずだ。

 

「BABYMETAL DEATH」が始まると、視界にいる人たちはみな、
一斉に両手をあげて音にノり始めた。
しかし左右を確認したところ、腕は下げたまま小刻みに首を動かしているだけの人も多かった。
最初から爆発的にノるのではなく、まずはじっくり観てからといった人が多いように感じられた。

 

「BABYMETAL DEATH」の間奏あたりから徐々にモッシュが激しさを増していき、
続く「いいね!」や「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」ではすでに活気を呈していた。
周りにいた地元の多くの女性たちも、体を動かすモーションが次第に大きくなっていった。
じわりじわりと会場全体が盛り上がっていく様子を肌で感じられるようになってきた。

 

それはおそらく、生で観た衝撃が彼らの脳を刺激したからなんだと思う。
歌よし、ダンスよし、サウンドよし、そしてルックスは最大限によしとくれば、
否応にももっと近くで観たい、感じたいと思うようになるのだろう。
周りの人たちが次々に大きな歓声を上げ始めていく様子も目に留めることができた。

 

それにしてもドイツ人のモッシュは激しい。
まさに肉弾戦だ。
ヘドバン1つとっても大層な動きで、予想の範疇を軽く超えた衝撃だった。
あんなの、僕がやったら、すぐに首の骨が折れるのではないか。
そう思わせるほどの半端ない強い振りだった。
どうもドイツ人は体格がいいだけではなく骨の強度も高いようだ。

 

曲が進むにつれて会場全体が次第に盛り上がっていった。
最初の方こそ周囲には若干の空間があったのだけれど、
やはりドイツ人も生のBABYMETALの3人はしっかり見たいと思っているようで、
全体が少しずつ前に圧縮し始めていた。
ちなみに下記の画像は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のときの、僕から見た左右の画像だけど、
後方にいた観客はいつの間に全体的に前に移動していて密度が増していたのだった。

 

※右側

 

※左側

 

 

僕はスマホで撮影しながら、ときにモッシュに参加して暴れ、
ときに絶叫して歌いながらヘドバンし、力の限り音にノって踊りまくった。
実は昨日はフランクフルトのライブの高揚感と時差ボケの影響で一睡もできていなかったのだが、
そんなことは些細なことだと思えるほど、ずっとハイなテンションでただただ騒ぎまくった。
とにかくもう、デカい奴らに負けてなるものかと、必死になって全身を酷使した。
しかし悲しいかな、僕はドイツ人に触れただけで何度も弾き飛ばされてはよろけた。
だから終盤になるともうヘロヘロの状態となっていた。

 

それは現地の人たちも同じだったようで、
盛り上がりは一定の熱量を保ちながらさらにじわじわ高まっていって
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のところで一度ピークを迎えたのだが、
肩で息を切らす者、明らかに疲れの色を見せて動かずに休憩している者、
果てはモッシュピットから脱落して後方に身を移す者も出始めたのだけれど、
一貫していたのはどの人の顔にも笑みが満ち溢れていたことだった。
みながみな、抑えがたい幸福の吐息を吐き出しているような表情をしていた。

 

3人の女性たちはというと、大量の汗は掻いてはいるが、今日も調子は良いようだった。
SU-METALの歌声は観客たちの心を震わせ、
MOAMETALとYUIMETALのダンスと表現力は観客たちの心を鷲掴みにしていた。
そして「ギミチョコ!!」のコール&レスポンスでは「シンギン!」「サンキュー!」を披露し、
観客たちからひときわ高い歓声と喝采を浴びていた。

 

神バンドの奏でる演奏もラウドながら非常に引き締まっていて、
3人の歌やダンスとのシンクロ度も高いレベルにあった。
今宵も完璧なステージングだったときっぱりと言える。
それは終演後の観客たちの熱狂渦巻く様子、万雷の拍手や大歓声、
あちこちから何度も起こる「BABYMETAL」コールが示している。
どの観客たちも大満足している様子が窺えた。

 

結局のところ今日はどれくらいの人が集まったのだろうかと、
終演後僕は考えた。
キャパシティは確か1700か1800だったと記憶していたが、
それはおそらく2階席も含めてのことなんだろうが、今日は2階席に人はいなかった。
(1階左側の小さなスタンドは人で埋まっていた)
だとすると、今日詰めかけた観客は1200~1300といったところなのかもしれない。

 

終演後、一人余韻に浸っていたところで今日も横から声をかけられた。
ドイツ人と思しきその彼は、スマホを手にピクチャーピクチャーと言っていた。
えっ、まいったな、しょうがないな、と僕はポーズを決めようとするのだけれど、
案の定彼は僕を撮影する気など毛頭なく、これで自分を撮ってくれと言っていた。
だから僕はステージのバックドロップを背景に彼の写真を2枚ほど撮ってあげた。
彼はそのあと笑顔で僕に何度も礼を言うと出入り口方面へ向かっていった。

 

そういえばと思い、僕はそれから少しばかり周囲を探してみたのだが、
残念ながらニコに遭遇することは叶わなかった。
彼はフランクフルトだけの参戦だったのかもしれない。
坊主頭で白いTシャツを着た、まるで海兵隊のような凛々しい姿だったニコ。
思えば彼の瞳はキラキラ輝いていて、表情からは人の良さそうな性格が滲み出ていた。
彼に嘘の日本語を教えたことを、僕は少しばかり後悔し始めている。
願わくば、たまたま彼に接した日本の方が優しく訂正してくれるといいのだけれど。

 

会場の外では日本で見慣れた光景が続いている。
みながみな、今日のライブを振り返って熱く語らっている。
これは異国の地に来て初めて得た感情だが、その情景を眺めていると、
BABYMETALはどうだった? やっぱりすごかっただろう、そんな具合に、
なぜだかとても誇らしい気持ちになった。
厳ついドイツ人たちの笑顔を胸に刻み、僕は大いに甘心しながら会場を後にした。
今夜のライブのあの熱狂と一体感は、間違いなく終生忘れることはできないだろう。

 

 

 

 

3.

僕は地下鉄に乗り、改めてこの2日を考える。
2晩のライブを振り返って印象に残ったのは、それはドイツ人のライブ観覧の姿勢だろうか。
思えばそれは、ライブ前、ひいてはこの国に来た当初から抱いていた印象だった。

 

よくドイツ人と日本人は似ている点が多いときく。
まじめ、勤勉、きれい好き、親切、こまかい、規則正しく時間に正確、それらは共通点とのこと。
なるほど事前にネットで情報を得ていたとおり、彼らには若干のシンパシーを感じることがあった。
列に並んでいるときの様子や彼らの言動からそれは少なからず感じ取ることができた。
慣れている人はぜんぜんそうでもないのだが、一見とてもシャイな人が多かったようで、
彼らはこちら(日本人のBABYMETAL TEEを着た僕)を見て何か言いたげな素振りを見せたり、
キツネサインを掲げそうになったりはするのだけれど、
はにかんだまま口元に笑みを湛えるだけで結局はジッとしている人が多い印象を受けた。
生真面目な人が多いということなのかもしれない。

 

また、ドイツ人は新しいモノには億劫で、基本的に未知のモノに対しては消極的なんだそうだ。
これはヘドバン・スピンオフ「世界のメタルVS俺たちのメタル」内の、
BABYMETALミュンヘン事変のレポートで阿刀氏も少し触れていたけど、
やはりそういった保守的な性格や気質が影響していたのかもしれない。
確かにこの2日間のライブをとおしても、
バカ騒ぎしているのは中団から前方のメイトに限られているようで、
後方で観ていた人たちはみな、おそらくは初見の方々なのだろう、
傍から見ると放心状態のように目に映るのだが、
しかし真剣な眼差しでステージを食い入るように眺めていた。
目の前の溢れ出ている情報を猛スピードで頭で処理しているといった具合に。
しかしそれは少数で、多くの人は体を揺らし、時に連れと談笑しながらビール片手に楽しんでいた。
結局のところ、単独ライブでは、ドイツも日本も熱量にさほど変化はないと感じられた。

 

ではフェスではどうだろう。
ヘドバンのレポにあったように、なかなかうまくいかないときが今後もあるかもしれない。

 

しかしながら、これはあくまでも個人的な憶測なのだが、KOBAMETALは、
ジャーマンメタルの伝統もあるドイツは、長期的な戦略を描いているのではないだろうか。

 

世界の音楽市場規模(卸ベース)はイギリスとほぼ並んで世界3位のドイツ。
(ちなみに1位はアメリカ、2位は日本で、その2国で半分のシェアを占める)
パッケージの売上は1位の日本と僅差の2位。
その背景には、日本でいうところのACCSよりも権威ある著作権管理団体であるGEMAが、
徹底的な監視・管理体制を敷いている(YOUTUBEの半分以上が観られなくなったのも、
2009年にGEMAとYouTubeが契約更新の条件で揉めたから)ことがあるのだが、
逆にいえば、お堅いドイツ人のそういった弛まぬ努力が効を奏して違法物を極力排除し、
正規のパッケージの売り上げに大いに貢献していると言えよう。
きちんと流通に乗せて変な売り方はせず、ちゃんと違法物は厳しく取り締まる法律もあるから、
ヨーロッパの販路を担うレーベルをドイツの会社にしたように思う。

 

だから来年以降もドイツのフェスには出続け、
地道に認知度を高めていこうという狙いがKOBAMETALにはあるのかもしれない。
ヴァッケン・オープン・エアへの出演はさすがに厳しいだろうなと思っていたけれど、
イギリスではとうとうウェンブリー・アリーナで単独ライブをやるところまできたのだ、
もしかしたらもしかするかもしれない。

 

とまあ、凡人がいろいろ足りない頭でせいぜい考えたところで、
ドイツのフェスで身をもって肌で感じたフロントの3人娘がこのまま黙っているわけはなく、
そもそもMOAMETALはドイツ大好き人間であるのだから、
きっとリベンジの思いも胸に早々ドイツも陥落させてくれるだろう。
アウェイだからこそ激しく燃える、それがBABYMETALの側面でもあるのだから。

 

夏でも朝晩の気温が激しいといわれるベルリン。
日中はあんなに暑かったのに、夜吹く風は随分涼しく感じられる。
しかし蒸し蒸ししていないのでなんとも心地よい。

 

ドイツよ、ありがとう! ドイツ人よ、ありがとう!
僕は胸の中で大いに叫び、帰りに立ち寄ったアレクサンダー広場を後にした。

 

ベルリンといえば「ベルリンの壁」がすぐに思い出されるだろう。
東西冷戦の象徴であったその「壁」は、今から26年前の1989年に市民の手によって破壊された。
「壁の破壊」といえば、BABYMETALもその音楽性によって多様な壁を壊している。
メタルの常識・価値観、音楽のジャンルの枠組み、言語、人種、世代……etc.
キツネ様のお告げのもと、メタルで世界を再び1つにするというMETAL RESISTANCEの物語は、
彼女たちが世界へ打って出た昨年から空想と現実の壁をも壊してしまった。
今や世界中を巻き込み、現在進行形で進むBABYMETALのREAL METAL RESISTANCE。
それはドイツの2大都市に確かな足跡を残し、次なる目的地を捉えてドーバー海峡を渡っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

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