デジタル時代にリアルの魅力―― 音楽の未来と価値とは

カフェで流れるBGM。「なんだろう、いい曲だな」。スマホのアプリで曲名チェックして、すぐ購入もできる――。音楽配信サービス、YouTube、ライブ人気にアナログレコードの復権。音楽を楽しむ環境は変化を続けている。私たちにとって、音楽ってなんだろう。音楽の未来とは? 業界の最前線を走る4人と考える。

(ライター・牧野容子/Yahoo!ニュース編集部)

 

<人間のアナログ的な欲求は普遍的だ>

KOBAMETAL BABYMETALプロデューサー

KOBAMETAL:音楽プロデューサー。2010年にメタルダンスユニットBABYMETALを結成。今年4月に世界同時発売したセカンドアルバム『METAL RESISTANCE』は坂本九以来、53年ぶりの日本人によるビルボードトップ40入り、全英アルバムチャートで日本人最高位の15位を記録。9月19日、20日には東京ドームワンマンライブ2DAYSを開催する(写真 ©amuse)

 

「メタル」は世界共通の音楽

BABYMETALは、2014年に、レディー・ガガの世界ツアー(LADY GAGA’S art RAVE: the ARTPOP ball)のアメリカ5公演ではオープニングアクトをつとめさせていただきました。世界有数の音楽フェスであるイギリスのソニスフィア・フェスでは、メタル界の重鎮アイアン・メイデンやメタリカと共演させていただき、初めての海外フェスで観客の心を掴むことができた。BABYMETALの歌はすべて歌詞が日本語なのですが、2016年に世界同時発売したセカンドアルバムは、全米ビルボードでトップ40に入ることができました。

海外戦略をどのように狙って仕掛けたか、ですか? BABYMETALという名前にはポップの側面とメタルの側面をミックスした「新しいメタルの誕生」という意味があるのですが、僕自身はすごくニッチなゾーンを狙ったというつもりはないんです。むしろ、これまでの日本のシーンよりも、「大きな市場」を視野に入れた試みでした。というのは、メタルという音楽は、「世界共通」なんですね。世界各地にご当地メタルのようなアーティストがいたり、毎年いろんな場所でメタル・フェスティバルが開催されて、世界中から面白いバンドやファンが集まって盛り上がって、ということを年中やっている……。僕自身は、昔からメタルが大好きで、その世界に馴染んでいたということもあって、そういう巨大なコミュニティの中へ、という意識は最初からもっていました。

ただ、僕たちのプロジェクトはいきなり大きな予算を投入できるような恵まれた環境ではなかったので、とにかく知恵を絞って、やれることをやるしかなかった。2011年のインディーズ・デビューの際に、YouTubeに映像をアップしてみたのも、そうした工夫の一つでした。ライブに来てくれるお客さんとは違ったダイレクトな反応を知りたいと思って、とにかくアップしてみようとやってみた。その結果、海外の反応は僕の予想をはるかに超えたものでした。

「人と人とのコミュニケーション」が新たな価値を生む

音楽をより多くの人に聴いてもらうというスピード感やスケール感は、圧倒的に進化しています。それはYouTubeのおかげだと思います。アップロードしたら瞬時に世界中で音楽が聴けるわけですから。

一方で、音楽業界はこの数年間でCDなどのパッケージは売れなくなりましたね。ダウンロード有料配信や、音楽聞き放題サービスだって、まだまだCDの売上をカバーするようなものにはなっていない。ここからは目をそらしちゃいけないと思っているんです。YouTubeで満足してCDを買わない人が多くなっている。ユーザーにとっては手軽になって接しやすくなりましたが、クリエイトする側、業界やアーティストにとっては、今までパッケージで得られていた価値がどんどん下がっているということ。

だから作り手側は、新しい価値を作り直さなくてはいけないのかもしれません。今、アーティストを含む音楽業界は、改めてライブの価値を重視する方向へと変化しています。でも、YouTubeで曲を聴いてもらって、それがSNSで拡散されることによってライブの動員が増えて、という話にはなかなかならない。「人はどうしてライブに行きたいと思うのか?」という根っこの部分を改めて考え直さなければ、と感じています。

BABYMETALのメンバーは、左からYUIMETAL、SU-METAL、MOAMETALの3人。今年12月に行なわれるRED HOT CHILI PEPPERSのUKツアーのスペシャルゲストとして出演が決定している(写真 ©amuse)

BABYMETALの場合は、とにかく、楽しいと思えるもの、かっこいいと思えるものを追求して作ってきました。そこはまったく妥協せずに、徹底的に作り込んできて。それに対してBABYMETALに関わるチームも応えてくれた。

ファンの方々は、BABYMETALの音楽やパフォーマンスを通して、BABYMETALのビジョンとか、アーティストの思いに共感してくれたから、ライブに足を運んで、グッズを手にとってくれるのではと思っています。そういう意味では、SNSでも届かないものは届かないし、届くものは届く。少なくとも、SNSで音楽や映像のデータだけ拡散したところで新しい価値は作り出せないんです。

今はデジタル全盛の時代ですが、その一方で興味があるものに対して「もっと生で見てみたい」「本当にすごいのかどうか自分の目で確かめたい」という人間のアナログ的な欲求は普遍的で変わらないと思います。その人たちが国や言葉や世代の壁を超えて、ライブに足を運び、音楽に還元してくれる。それはつまり、「デジタルデータのやり取り」を、ひと回りさせて「人と人とのコミュニケーション」にまで戻せたアーティストだけが新たな価値を生み出せる、ということなのかもしれません。