WOMEN’S POWER 20TH Anniversary出演 shibuya O-WEST


TEXT:桂伸也 PHOTO:万年平男

BEEASTでも度々取り上げてきたが、「女性のロックが輝く場所」として、今やメッカとも言える存在となったガールズロックの祭典『WOMEN’S POWER』。昨年ついに誕生20周年という大きな節目を迎えた。
今回は、そんな歴史あるイベント『WOMEN’S POWER』について、1月9日に渋谷O-WESTで開催され、大御所・SHOW-YAとブレイク真っただ中のAldiousDESTROSEらの競演で話題となった「20th Anniversary」の模様をたっぷりレポートしたい。
さらに、20年の歴史を紐解く特別企画として、このイベントの歴史に隠された秘密と、ここから見えてくる「女性のロック」の目指すべき姿について考察してみたいと思う。
hana

20周年記念★特集1 『WOMEN’S POWER 20th Anniversary』レポート

今回はこの日の模様を、ライブ前(一部ライブ後)の、各バンドのコメントと共にお送りしよう。今回は20周年アニバーサリーということもあり、年始早々にもかかわらず多くのガールズロックファンがオープンより集まり、会場は大きく賑わう。そして、時はやって来た。

1.DESTROSE
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昨年のWOMEN’S POWER SPECIAL 2011で新メンバーをお披露目し、新たなステップアップに向けて意気込みも十分なDESTROSE。メンバーは、Marina(Vocal)・Mina(Guitar)・華子(Guitar)・miho(Bass)・Haruna(Support Drums※後に正式メンバーとして加入)。すっかりお馴染みとなった「パイレーツ オブ カリビアン」のテーマによるSEから颯爽と登場したMina、その後に続くメンバー達。オープニングとともに「O-WEST!!頭振れ!!」とMarinaが上げた掛け声で、幸先のよいスタートを切った。改めてその伸びやかで厚みのあるヴォイスと、硬質にメロディを追従していくセンスは、まさにメタルを歌うためのものと感じる。オープニングというプレッシャーなど微塵も感じさせない堂々としたプレーに、彼女らを待っていた観衆も大喜び。フロア前列はギュウギュウのすし詰め状態のまま、苦しさも見せずアクティヴなヘッド・バンギングを連発、モッシュさえ発生しそうな、異様ともいえる盛り上がりを見せた。最強の布陣をそろえ、躍進を誓うDESTROSE。この日のパフォーマンスは、今後の大活躍を予感させた。

2.Aldious

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一昨年のシングルリリースより大きく飛躍、昨年もアルバム、シングルリリース、そしてツアーと大きな話題を振りまいたAldious。メンバーは、Rami(Vocal)・Yoshi(Guitar)・トキ(Guitar)・サワ(Bass)・Aruto(Drums)。「さあ!盛り上がっていきましょう!!」Ramiの第一声から始まる一曲目より、「そんな呼び掛けなど愚問」とばかりに大きな歓声がフロアから上がる。もう言わずもがな、といったステージの華やかさと、厳しいツアーを乗り越えた昨年より得たステージ感より、小慣れた余裕も見える。お立ち台に上がるYoshiトキ、そしてRami。3人がそびえ立つと迫力も十分、そしてサウンドの屋台骨を司るサワArutoのリズムセクションも安定感抜群でさらにフロアのファンを興奮させ、場内は一気にヒートアップする。一気に中盤のバラードまで演奏し、バラードを挟んだ後は彼女らの代表曲「Spirit Black」へ。ここからはノンストップで終始観衆を押しまくり圧倒。大きな波をフロアに巻き起こした。一年、また一年とリリースの度に自身の世界観を広げ、ステップアップしている彼女ら。Aldiousの未来はまだこれから、そう期待させる今宵のステージとなった。
3.BABYMETAL

ステージの上はすっかり掃けてしまい、綺麗に整理される間に、キュートなヴォイスの前説が流れる。小中学生メタルユニットとして話題の、BABYMETALの登場だ。まだメディアへの露出も少ない上に、この日のラインナップの中では異色の存在だけに、メタル・ファン達の注目も大きかったようだ。流れてくるポップなメロディとハーモニーに重なる、荒々しいディストーション・ギターとドラムのサウンドは、メタル・ファンに強くアピールし、フロアの大きな反応を呼び起こした。オペラ曲のSEから静かに現れたBABYMETALの3人。メンバーは、SU-METALYUIMETALMOAMETAL。メロイックサインならぬキツネサインから繰り出すポーズの数々に、フロアのファン達はノックアウト。重低音のオケとポップなヴォーカルのバランスが絶妙。「アイスクリーモ」という詞が指し示す、甘さと辛さの絶妙なミスマッチが、メタルとダンス、そして歌で表現される。異色とはいえ、そのエンターティナーぶりは本格的。この日は20分、3曲のステージだったが、また新たなファン層を獲得したのは間違いない。彼女らがよい意味で既成概念を打ち破り、新しいへヴィ・メタルの楽しみ方を提唱してくれたのは明らかだ。

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写真提供:重音部RECORDS

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◆公式サイト
http://www.babymetal.jp/
◆セットリスト:
M01. ~ド・キ・ド・キ☆モーニング~
M02. いいね!
M03. イジメ、ダメ、ゼッタイ

4.Be-B
この日の顔ぶれからは、ある意味先述のBABYMETALよりも更に異色の存在だったかもしれない、アコースティック・ギター一本で、ステージ横のサブステージに現れたBe-B。だが、平素「Hard Rock流し」と形容されるそのヴォイスと、力強いギターのストロークとのマッチングはインパクト十分。歌と詞を合わせて聴かせるという意味では、この日一番の印象をフロアに与えたようだ。「今日は何でこんな所(サブステージ)立っているかわかります?SHOW-YAさんが転換をやってるからですよ!」そんな冗談っぽいトークからも、彼女が自分をアピールする術をよく知った、貫禄のようなものを感じる。あれほどまでに暴れまわっていたフロアも静まり、その演奏中はじっと彼女の歌に聴き入るファン達。快活でアクティヴに生きる女性の、胸の内をストレートに出したその歌は、この日の「女のミュージシャンのためのイベント」という意味合いを、ある意味一番深く浮き彫りにしたともいえる。

5.SHOW-YA
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そしてこの日のトリを務めたのは、ウーマンズ・ロックの女王こと、SHOW-YA。メンバーは、寺田恵子(Vocal)、五十嵐”sun-go”美貴(Guitar)、中村美紀(Keyboard)、仙波さとみ(Bass)、角田”mittan”美喜(Drums)。日本ガールズロック界の歴史では、象徴の一つと言えるほどに大きな存在だ。今回のイベントについても、彼女らのステージは、ファンにとって大きな注目の一つだったに違いない。LED ZEPPELINの「移民の歌」をSEに登場するメンバー達。心からステージを楽しんでいるような寺田恵子の表情には、長きに渡り、まさにガールズ、ウーマンズ達の強さを象徴し、時には支えてきた貫禄すら感じられる。「野郎が多いね!そりゃそうだ、綺麗どころが多いもの!最後まで楽しんでってね!!」スタートを目いっぱい盛り上げながら、その中でも美しさの中に潜む危険な香りすら見せる。ライブというアクティヴさの中でも、そのアーティストとしての完成度、そして女性特有の美しさと危険性という、それぞれの面を強く表現したステージ。どれか一つの面で秀でた存在はいるかもしれない。が、彼女らはそのすべてに強い魅力を感じさせる。彼女らは唯一無二の存在であるということが証明されるかのごとく、激しく躍動するフロアのファン達。その緊張感は絶えることなく、代表曲「限界LOVER」まで続き、フロアとの「御唱和10連発」によるエンディングによって盛大に括られた。

6.セッション

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まだこれでは終われないとばかりに、盛大なアンコールにこたえるように、締め括りとしてステージに戻ってきたのはSHOW-YAの面々。先程のステージのアンコールかと思いきや、なんとDESTROSEAldiousBe-Bと、メンバーを一堂に集める。そしてガールズバンドの象徴とも言えるThe Runawaysの代表曲「Cherry Bomb」をセッションにて熱唱。女性の強さを前面に出した迫力のセッションで、改めて「女の力」を誇示した。

hana

20周年記念★特集2 『WOMEN’S POWER』の歴史

前半のレポートに続き、この後編では、『WOMEN’S POWER』誕生の秘話、そしてここから見えるガールズバンドの時代的傾向を紐解いてみよう。