STUDIO VOICE  グループアイドル・ムーヴメントVol.6 BABYMETAL特集

第6回
あと半年で伝説になるか。
ナパームデス出現以来の衝撃、アイドルとメタルが融合した「BABYMETAL」の対世界戦略取材・文=後藤 勝

2012.10.24 10:00 | MUSIC

賛否両論、毀誉褒貶。評価が割れる斬新さ

新しい何かが出現したときには賛否両論まっぷたつ、という反応を伴う。BABYMETALもその例に漏れない。それはYESであろうとNOであろうと、反応せざるをえないポテンシャルを持っていることの証明でもある。

BABYMETALの仕掛け人である重音部顧問のKOBAMETALは言う。

「どっちかしかないんですよ。いままでも。YouTubeのコメントも含めて、すごく好きか嫌いか、どっちかしか反応がない。個人的にはすごくいいことだと思っています。中途半端になるよりは」

最新シングル「ヘドバンギャー!!」に収録されたPC対応のエクストラトラックMV「BABYMETAL DEATH」の極端な短さが、ギネスブックに世界一短い曲として掲載されているナパームデスの「You Suffer」──演奏時間じつに1秒強──を意識したものであることはたしかだ。映像の終わりに、メンバー三人がギネスブックを読んでいることからもそれはあきらかだろう。つまりBABYMETALをプロデュースした人物は、メタルについてよくわかっている。

純血主義(純メタル主義といえばいいのだろうか?)者の多いメタルリスナーに向かって「アイドルとメタルの融合」を叫べば、反感を買うことはわかっていたはず。多方面から否定的な反応は出る。それでもこのコンセプトを貫くからには相応の覚悟や理由があるにちがいない。

「さくら学院」の部活動として「重音部」が存在することに、ちょっとした違和感を憶えるほど際立つ個性。トイズファクトリーに独自レーベルの重音部RECORDSを打ち立ててのCDリリース。パッケージ、公式ウェブサイト、ステージ、MVの徹底したアートディレクション。MCなしのストイックなライヴ。サウンドメイクの完璧さ。

カットアップ、コラージュ的な楽曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」で登場したBABYMETALも、「ヘドバンギャー!!」ではアイドルとメタルの融合が進み、錬成された境地に辿り着いた感がある。それはナパームデスやカーカスやS.O.Bが、初期の人類最速グラインドコアというコンセプト優先の状態から、より強いダイナミズムを求めてデスメタル化した変化をも思い起こさせる。


『BABYMETAL – ヘドバンギャー!![ Headbangeeeeerrrrr!!!!! ]


「ヘドバンギャー!!」のもたらすインパクトは、何かすごいものが登場したというときのそれであり、彼女らは日本という枠、アイドルという枠を逸脱し始めている。

 

ガールズ・ソウル

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BABYMETAL誕生の経緯

もし80年代に出現していたなら、「フールズメイト」や「DOLL」や「宝島」の読者が食いついていただろう知的でヘヴィでキュートなトリオ、BABYMETAL。彼女らがいかにして生まれたかを訊ねたところ、KOBAMETALの答えは意外なものだった。

「じつは可憐Girl’sが解散したときには、既にBABYMETALの構想があったんですよ」

ユニット名はヘヴィメタルという言葉の響きからヒントを得て出てきた「BABYMETAL」がそのまま採用された。言葉遊びではあるが名称にきっちり「メタル」が組み込まれている。それはKOBAMETALら重音部スタッフの、メタルであることをはっきりさせたいという意志のあらわれだった。

アイドルソングやアニメソングで、ここまでコアでヘヴィなメタルに振りきれたグループはいなかった。メタルとひとことに言ってもそのラウドさはジャンルごとにさまざまだが、BABYMETALは二音下げ、二音半下げにダウンチューンしたエクストリーム系の重低音を基本に据えているから、これは本気だ、と思ったリスナーも多かったはずだ。

しかしいっぽうで、重いリフに絡むポップなメロディ部分を指して「メタルではない」という拒否反応を示す声もある。KOBAMETALは次のように言う。

「ちびっ子たちがメタルをやっているところのかわいさらしさとヘヴィさの融合がコンセプトにある。新しいメタルのスタイルをつくるという目標があったんですよ。ベイビーは赤ちゃんなので、新しいものが生まれると期待して」

これまでの半生すべてをメタルに注ぎ込んできたKOBAMETALにはある考えがあった。子どもがガチンコのメタルに取り組んでも、完全にはめ込むには無理がある。あの三人が屈強な外国人に相対するのは考えにくい。ならば、彼女たちにしかできないメタル、オンリーワンをめざしたほうがいいのではないか。

「ガチなメタルの人からはこんなのメタルじゃない、という批判を受けることは重々承知のうえで始めてはいるんです。BABYMETALはメタル畑とは全然ちがう方向から突然“ヒューン!!”と飛んで来た感じというか……本物志向のメタラーは、下から叩き上がってくる世界が好きなんですよ。おれのほうが速く弾けるとか、音がでかいとか。だから彼ら屈強なメタラーが持っていない、かわいさ、キレッキレのダンス、武器になるそれらを、いかにメタルサウンドと融合させるかがポイントだった」(KOBAMETAL)

初期の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」や「いいね!」はあえてマッシュアップ的なつくりをしていた。ポップでキャッチーでありながらメタルと融合した従来にない音像をつくり出すために、複数の作家から上がってきたAメロ、Bメロ、サビを組み合わせていたのだ。いきなりメタルど真ん中で勝負をしても、受け入れられないのでは意味がない。一本調子でストレートなバンドサウンドになることを回避する狙いがあった。スクリーモ、ピコリーモを感じさせる柔らかいメタルから入り、親しんでもらう。

「最初はキャッチーな楽曲を提示して、こんなのメタルじゃねぇ、と言われて怒られようと思っていました」(KOBAMETAL)

 

独自の音楽性

本来はロックのサブジャンルでありながら、ロック同様に細分化された海のように広大な世界がメタル界だ。BABYMETALは楽曲ごとにテイスト、矛先を替え、メタルのさまざまな魅力を示していく。

まだ音源化されていないライヴ専門ナンバーで、ついに来年1月9日にCDリリースされることになった「イジメ、ダメ、ゼッタイ」はメロスピそのものズバリ。そして7月4日発売の「ヘドバンギャー!!」はV系のイメージからスタートしている。

日本人がつくるメタルサウンドを意識し、ヘドバンとバンギャという日本のリスナーに密接に関係するテーマを掲げた、日本化したメタルナンバー。ここに来てついにBABYMETALは、世界と対峙するキラーチューンを携え、オリジナリティを身にまとったと言える。

KOBAMETALの脳裏から離れないのは、2010年ロラパルーザのメインステージで起きた奇跡の一幕だ。

X JAPANが米国シカゴに上陸したのは陽も高い8月の午後三時。猛暑にもかかわらずロングドレスに革ジャンを着たX JAPANメンバーは場違いに見える。最前列には熱狂的なファンが陣取っているが、V系やメタルに興味のなさそうな人々が大半を占めていた。しかし彼の隣にいたドレッドヘアーの男は、YOSHIKIのツーバスが超高速のリズムを刻むとからだを揺らしてノリはじめ、ついには「X」のサビでXファンとともに「エーックス!」のポーズをとり、跳んだという。日本独自のロックが海を越えた、これは紛れもないエンタテインメントだと、KOBAMETALはえもいわれぬ感動に打ち震えた。自分たちにしかできない武器を携え、質を高めれば、世界で戦えるのだと。

センターでリードヴォーカルを務めるSU-METAL(中元すず香)の声質や歌い方がBABYMETALの独自性をさらに強調している。R&B風の巻き舌でもなければ、アイドルポップスで主流の歌い方でもない。もちろんメタルの発声でもない。むしろ合唱団に近い、ストレートで滑舌のいい伸びやかな発声。

SU-METALはアクターズスクール広島の出身で、小学生時代は期間限定ユニット「可憐Girl’s」のメンバーだった。全員小学生ながら完成されたパフォーマンスが世を驚かせ、Perfumeの妹分とまで呼ばれた可憐Girl’s。その物語はまだつづいていた。残るふたり、武藤彩未、島ゆいかのうち、武藤彩未はSU-METALとともに「さくら学院」へ。この2012年春、SU-METALよりもひと足先にさくら学院を卒業した。

さくら学院自体が学校をコンセプトにした育成機関である以上、卒業して各々が抱く夢に向かって進み始めるのは避けられない。すると気になるのは、来春にSU-METALが卒業した場合、BABYMETALがどうなってしまうかだ。

KOBAMETALが骸骨の顔でマスキングされたポーカーフェイスで語る。

「どうなるんでしょうねぇ〜。みんなちょっと最近ざわざわしだしていますけれども……。とりあえずは眼の前にあるものに全力で取り組んでいくしかない。まずはワンマンライヴ。11月には海外で初めてライヴがあります。本人たちもそういうことに挑戦したいとがんばってきていたので、いまは一つひとつ実現していくことにやりがいを感じているところです」

さくら学院を離れて単独グループとしての活動継続か。メンバー交替か。部活動ごと終了か……。

いずれにしろ、残り半年というタイムリミットがあるにもかかわらず、日々成長して経験を積み重ね、目前の目標をクリアしつづける、そんな冒険を、彼女らが生きていることはまちがいない。

BABYとMETALのはざまで

「メタルが好きかどうかはわからないですけど、興味はあるみたいです。ぼくはあえて押し付けたりはしていないので。『興味があるんだったらベヒーモスを調べてみるといいんじゃない』とか言っていますけど。自分なりに咀嚼して、みんなのなかのメタルとは何かを決めればいいんじゃないかな、という話はしました」(KOBAMETAL)

メンバーに何をやらせるか、特に制限は設けていない。しかしこれはアミューズという事務所の端正さも関係するのか、崇高なイメージでいてほしい、という線引きがあるようだ。

SU-METAL、YUIMETAL(水野由結)、MOAMETAL(菊地最愛)。三人のパフォーマンスには本人たちが「神が降臨している」と言うとおり、何かが憑いたかのような迫力がある。それでいてかわいさを保つ、このバランスが絶妙だ。

MCはしないが、降臨していた神が抜けたあとにはしゃべり出す。激しいダンスはするが、ダイブはしない。握手会のような日常的接触をセールスポイントにするわけでもない。

あるのは独特のゴシックな世界観と圧倒的なパフォーマンスだけだ。

KOBAMETALはBABYMETALの方向性についてこう語る。

「他のアイドルと同じことをやって話題になるよりは、彼女たちにしかできない「オンリーワン」のパフォーマンスや世界観を伸ばしていってあげたほうがいい。そのほうが、日本だけでなく、ぼくは海外の方にも気にしてもらえるんじゃないかなと。

たまに街でふとすれ違ったときに『おおっ!?なんだ!?』と思うちょっと変わった人がいるじゃないですか。ぼくはあれがエンターテイメントの根っこのひとつだと思っていて」

KOBAMETALがアイドルに目を向けるようになったきっかけはPerfumeだった。オーディエンスの動きがラウド系のライヴのようで、その熱さに、文字どおり開眼させられたという。そうしたインパクトを与えられる可能性がBABYMETALには拡がっている。

その時点でいちばんラウドな音が、時間の経過とともに耳が慣れてスタンダード化していくのがメタルの世界だ。メタリカは様式美全盛の80年代当時は特異なバンド扱いだったが、いまや名作を遺した古典グループの扱いを受けている。

もし登場時に怒られることがのちに成功するメタルバンドのセオリーなのであれば、BABYMETALはいいスタートを切っている。Facebookに残されたコメントは90%が外国人であり、YouTubeとともに、ありがたい批判の声が多分に含まれている。もちろん賞賛も。これからその声が大きくなってくるのだろうか?

無限の可能性を秘めたBABYMETALは、しかし2013年の春にどうなっているかわからない。目撃できる瞬間はいましかないかもしれない。流行に追随していると言われようと、いま観て、聴くしかないだろう。現在進行形のドキュメントを。

 

 

□ 2013年1月9日シングルCD「イジメ、ダメ、ゼッタイ」リリース
CD+DVDの初回限定盤三種(TFCC-89404、TFCC-89405、TFCC-89406)¥1,800、CDのみ通常盤(TFCC-89407)¥1,200。デビュー以前からライヴで披露していた人気の「ガチメタル」ナンバーで、CD化希望の声が高まっていた。このほどその期待に応え、満を持しての登場となった

□ 2012年12月20日 BABYMETALワンマンライブ「I、D、Z〜LEGEND “D” SU-METAL聖誕祭」@赤坂BLITZ

□ 2012年11月10日「Anime Festival Asia Singapore 2012」
出演:BABYMETAL、FLOW、fripSide、栗林みな実、LiSA、May’n、m.o.v.e、Sea☆A、Sphere、T.M.Revolution(アルファベット順)
イベントオフィシャルサイト:http://animefestival.asia/afa12/i_love_anisong.html

□ BABYMETALオフィシャルサイト:http://www.babymetal.jp/