BARKS【インタビュー】藤岡幹大、世界をまたぐ神バンドと世界を震わす仮バンド

2016-07-03 14:12:59

既婚で子煩悩、身長158cmで長髪でかわいい顔をしながらも、時にキツネ様が下りて来て神バンドの白塗り小神様として海外のメタルフェスで圧巻のパフォーマンスを繰り広げる、そんなギタリスト藤岡幹大(ふじおかみきお)をご存知だろうか。

にこやかで柔らかい笑顔を見せる藤岡幹大だが、キツネ様がいようといまいと、彼が超絶変態テクニックギタリストであることに変わりはない。音楽の幅広さと教養は日本でも指折りのギタリストであり、変拍子や変態的なリズム・メロディを好み超絶なテクニカルプレイをいとも安々と繰り広げる。

神バンドには第3のギタリストして2013年9月<イナズマロック>から参加し、2015年の<ワールドツア>ーより正規のメンバーとなった彼だが、現在は仮バンドなるこれまた超絶なバンドを結成、驚愕のプレイを見せつけている。神バンドと仮バンドという2つのバンドで常軌を逸するプレイを見せる藤岡幹大とは、どんなギタリストなのか?

──BMETALに参加するようになったいきさつは何ですか?

藤岡幹大:そもそも最初は当て振りバンドだったんですけど、生バンドが付き始めたのが2013年の5月だったと思います。私の所にオーディションの話が来て、それをパスして2013年9月<イナズマロックフェス>から参加することになりました。この時点ではまだ生バンドでのプレイは一部だけで、全部生演奏するのはフェス出演の時だけだったんですけど、2014年から完全生バンドでの演奏体制に変わりました。バンド的な転機は2014年の武道館2daysあたりからですね。この武道館公演では僕は弾いてないんですけど、それ以前のフェスでは、完全当て振りバンドでアイドル枠で出演していたと思います。

──バンドメンバーは入れ替わりが多いんですか?

藤岡幹大:ここ1~2年ぐらいは僕はずっと弾いてますね。2014年ぐらいまではそれぞれのスケジュールによって、大っきい神様、中ぐらいの神様、一番小さい神様の私が軸になりローテーションしてます。それぞれ別のプロジェクトもやってますから、上手にスケジュール組んでという形です。だから最初の頃は、僕が弾くパートがライブごとに違った感じがします。混乱しましたよ、リハで頭振りながら弾いてたら、ずっとユニゾンになっていたみたいな事もありました(笑)。

──海外に行き始めたのはいつ頃からですか?

藤岡幹大:2014年の7月からです。単発のツアーでZEPぐらいのライブハウスを何本かやって、それでイギリスのメタルフェスの<ソニスフィア>に出演したのが、最初の大掛かりな海外ツアーでした。

──生バンドでのパフォーマンスはヨーロッパが最初だったんですね。

藤岡幹大:そうですね、集客はヨーロッパの方があります。多いのはUKとドイツです。特にUKはウェンブリー・O2アリーナでワンマンをやりましたから。

──他にはどんな国でプレイを?

藤岡幹大:国の数で言うと、もの凄い数行ってます。スイス、イタリア、フランス、オランダ…覚えきれてないです。ドイツも広いのでドイツ国内で何ヶ所か行ってますし。

──今春、アメリカのTV番組にも出演していましたよね。

藤岡幹大:アメリカのTVは、作り方が日本の昔っぽい感じがしました。例えばTV番組の構成の仕方なんかも昔の日本っぽいですね。レイトショーに出たんですけど、番組専属の箱バン(生バンド)がいて、ジングル(番組転換時に流れる短い曲)とかも全部生演奏で凄かった。昔ドリフターズとかが生演奏してたTVの時代っていうんですか、そんな感じですよね。そこでは、サウンドチェックの時点で、局のスタッフ達からの扱いが急に良くなったんですよ。

──どういうことですか?

藤岡幹大:「マイクで音を録るのじゃなくて、ラインで録ってくれって」話したんです。「え?」みたいな反応だったんですけど、スタジオに行ったら既にマイクがセッティングされてたんで、「マイクはダミーですか?」って訊いたら「これで録る」と。ステージも狭かったから「音がかぶりまくって音が悪くなるから、ラインで録った方が良い」ってこっちから言ったんです。そしたらサウンドチェックの途中から色々やってくれるようになって、急に扱いが変わった。終ってからも現場はメッチャ盛り上がってました。スタッフの人も皆凄く良かったって言ってくれました。

──BMETALでの活動をきっかけにまわりの環境に変化はありましたか?

藤岡幹大:海外まで観に来てくれている人もいますね。また入り待ち/出待ちはどこの国でもあります。バスとかもバレていると思います。

──白塗りはしていないからわからない気もするんですが。

藤岡幹大:ええ、キツネ様が下りて来てないですから、普通の小さなおじさんです(笑)。でも握手して時間がある時は写真を一緒に撮ったりする事もあります。素顔は全員バレてます。

──ブラジルではベストアーティスト・ベストインストルメンタル賞でランキングされていたり、メタルファンからはバンドに対しても高い評価を得ていますからね。

藤岡幹大:入り待ち/出待ちで、そういうのは感じますよね。ウェンブリー・アリーナでは、物販会場やアリーナでいい席を取るために前日から並んでいたみたいです。

──そもそも白塗りというのはどういう経緯で?

藤岡幹大:あれは本番の時間が近付いてくると、キツネの神様が憑依してああなるんです。

──毎回デザインが違いますよね。特にBOHさんの頭は凄い。

藤岡幹大:そうですね、キツネの神様がイタズラしている感はありますよね。神様のおふざけというか。BOHさんの頭をみればいつのライブか分かりますよ。年始一発目は「迎春」でしたから。

──海外フェスでは、海外ミュージシャンとの交流もあるんですか?

藤岡幹大:アンスラックスのメンバーに逢いました。あとビリー・シーン。BOHさんはビリー・シーンが大好きですからメッチャテンション上がってたましたよ。ペダル(エフェクター)もビリーと同じのを使用してるので、彼にとってビリーはアイドルだと思います。10年くらいまえにキコ・ルーレイロとフェスで一緒になったことがあって、この前久しぶりに逢えると思ってたんですけど、バンドごとにテントが別で、メガデスのテントに入る勇気がなくて逢えなかったのが残念でした。キコとはまたタイミングがあえば何か一緒に演りたいですね。

──藤岡さんのギターヒーローって誰なんですか?

藤岡幹大:僕のアイドルはポール・ギルバートですね。それでMI(音楽アカデミー:Musicians Institute)に入りましたから。イベントなんかでも一緒に弾かしてもらった事もありますよ。ジェフ・ベックとかも好きです。実はイングヴェイ・マルムスティーンとかも好きなんです。普通にライブも行きますし<ラウドパーク>でも生で観ました。イングヴェイモデルのギターもまだ家にあると思います。実はテクニカル・フュージョン系の人からはあまり影響は受けてないんです。

──意外にメタルもなんですね。

藤岡幹大:同じとこで勝負してもそれはオリジナルに勝てないですから、それぞれをかいつまんで自分のオリジナル性を出してます。そもそもJ-POPが好きで、その後ポール・ギルバートとか知ってハードロックとかイングヴェイを聴き、同時にスティーヴ・ヴァイやドリームシアターなど、ヤングギター系に行きました。フュージョンっぽいのではスコット・ヘンダーソンも好きですよ。彼も結構変態的な音楽センスを持ってますからね。

──そういう意味では、BMETALは藤岡さんのルーツに戻ったという感じで?

藤岡幹大:そうですね、全然苦手意識はないです。

──ステージでの機材は全部日本から持って行っているんですか?

藤岡幹大:ギターは二人ともケンパーを使ってます。ラックタイプなんですが、これはUSBでデータをそのまま持ち込めるんです。これひとつあれば全部できるのでUSBだけ持って行って、現地でケンパーを2台ずつ、サブを含め計4台借りて、USBのデータを移して使っています。ギターは2本だけ持って行きます。足元も純正のペダルとチューナー/ボリュームペダルぐらいなので荷物はそんなに多くないですね。最初の頃は、生アンプを鳴らして、ギターもチューニングごとに変えてましたけど。

──他のメンバーはどうですか?

藤岡幹大:BOHさんは、自分が普段使っているアンプと同じ物を現地で調達しています。が、実際にはリクエストしていた物と違う物が来たり(笑)。でも「それがどうした」的な感じで、結局それで演奏しないといけない状態です。

──大きなハプニングは?

藤岡幹大:BMETALと並行してAimerのサポートもやっているんですけど、日本のフェスだとダブルヘッダーになる事が結構あるんです。ケンパーはデータバンク(音色ファイルデータ)を切り替えるだけなので楽なんですけど、万が一ミスってAimerの時にキツネ様のサウンドを呼び出すとえらいことになってしまうでしょうね。

──(笑)

藤岡幹大:この前ヨーロッパでケンパーを借りた時、消し忘れていたみたいで某超大物メタルバンドのデータが残ってたんです。曲名も全部書かれ20音色ぐらい入っていたんで、試してみました(笑)。今のエンジニアが去年までモーターヘッドをやっていた方なんで、どれくらい違いがあるか、その間の新たなサウンドを開発したりもしてね。

──モーターヘッドの話も?

藤岡幹大:モーターヘッドではマイクで録ってどういうバランスで鳴らすとか、そんな話をします。スネアとキックがどういうバランスが良いかとか、同期(打ち込み)が多い現場だとどうした方が良いとか。

──ツアーも、大きな問題はなさそうですね。

藤岡幹大:ケンパーはドイツのアンプなのでヨーロッパでは大丈夫なんですけど、場所によっては3台しかないから借りられない事があったりします。そういう場合は日本から1台だけ持って行くことになります。トラブルは雨くらいですね。フェス中に雨が降ってきてボリュームペダルがショートして音が鳴らなくなったとかありますけど、バンドは基本的に大きなトラブルはないです。バスのトラブルはしょっちゅうだけど(笑)。いきなり「キュリュキュリュキュリュー」って中のベルトが外れたり。

──バスの中ってどうなっているんですか?

藤岡幹大:バンドバスは2階建てになっていて、1階にも2階にもリビングと簡単な調理器具があってトイレも付いています。1台のバスで16人分のベッドがあります。でもベッド自体は狭くて起き上がると頭ガンって打ちます。2週間が限界かな…。移動が多いんですけど、フリーな日は地元の楽器屋に行きます。「おまえキツネのメンバーだろ?」って言われたこともありますよ。

──海外は満喫できていますか?

藤岡幹大:オフと言っても1~2日あるかないかなので、ホテルに着いたら洗濯から始まります。フェス現場のシャワールームには、そのままパンツとか脱ぎ捨ててありますよ。多分誰か有名な人が着てた下着だと思うんですけど、多分捨てるつもりで履いてきているんだと思います。それほどツアー中の洗濯は大変ですね。

──ツアー中の食事はどうですか?

藤岡幹大:ケータリングはハンバーガーやピザとかが多いですね。炊飯器が欲しいですよ(笑)。フランスのケータリングはおいしくないし。いつも美味しいのはドイツかな。イギリスも言う程ヤバくはなかった。でも、たまに凄い食べ物が出て来ます。気を使って味噌汁を出してくれるんですけど、ダシがなくてコンソメを使った味噌汁モドキとか(笑)。でもパリでお弁当屋さんが凄く美味しい日本食を持って来てくれたのは嬉しかった。ツアーは体力勝負なので食べ物はやっぱり重要ですね。

──BMETALのライブですが、オーディエンスの反応は海外と日本で違いはありますか?

藤岡幹大:アメリカのフェスでは、どう出ていいのか混乱してるような反応がありました。最終的には皆ノリノリになるんですけど。最初<ソニスフィア>に行った時は、完全に様子を見ている感はありましたね。

──ワンセットどれくらい演るんですか?

藤岡幹大:最近は徐々に長くなってきて、1時間ぐらいはやってます。短くて40分ぐらいかな。基本MCもないですから、立て続けに曲を演奏するので、その勢いにオーディエンスがのまれて盛り上がって来る感じですね。ウォール・オブ・デスとかやったらライブ中止という事になっているにも関わらず、正直ほぼ毎回起きています。

──完全なメタルバンドですね。

藤岡幹大:完全なメタルバンドです。ステージには近付けないようになっているのでステージに上ってくる人はいないですけどね。日本のライブでも同じ現象は起きていますが、海外の方が規模が大きいような気がします。お客さんは日本も海外も男の人の方が多いですけど、日本は徐々に女の人のお客さんも増えている感じがします。なんだかんだ言って日本のツアーの方がいいですけどね。ご飯は美味しいし、気が楽だし。

──海外だと気が張りますか?

藤岡幹大:ドイツのツアーの時にも、現地スタッフと合流して「乾杯!」って一瞬立ち上がって座ったら、その瞬間にカメラマンのバッグが盗まれるという事件が起きました。本当の一瞬の出来事なんですけど、そういうのが毎回何かしらあるんです。PAや照明、卓も何かしらのトラブルがありますね。オーダーと違う機材が来たり、壊れてたり、ボロかったり。初日は全ての機材を組んでちゃんと動くかチェックするところから始まるんです。

──ところで、BOHさん(B)と一緒に“仮バンド”というバンドも活動していますが、これのきっかけは?

藤岡幹大:BOHさんとはキツネ様現場で知り合ったのですが、セッションでジャズっぽい曲とかフュージョンを演っちゃうのがこの3人だったんです。前田さんは元々ずっとBLUEMANをやっていたドラマーなんですが、彼もたまにBMETALに参加するんです。それでやろうという流れになりました。

──神バンド=仮バンド、という感じですか?

藤岡幹大:そうですね。仮バンドのメンバーはMikio Fujioka(G)、BOH(B)、Yuya Maeta(Dr)です。

──メタルを演っている神バンドから、何故ジャズ・フュージョンを?キング・クリムゾンやジェフ・ベック、ハービー・ハンコックのカバーも行っているようですが。

藤岡幹大:元々前田さんが「ゆるい感じでセッションやりませんか?」って話をしてきたんですよね。それでここの3人はこういうジャンルが好きなのでじゃあBOHさんも入ってもらおう的な流れになって1年ぐらい前から始めたんです。最初はオリジナルを作る気も無く、やりたい曲を好きなようにやろうと。ライブは3回ぐらいやりましたけど、一番最初からライブがもの凄く楽しかったので、もっとちゃんとやろうって感じになったんですね。そこから「どうせやるなら音源も出そうよ」って感じの流れになってきて、年内にはレコーディングを終らせてリリースしたいと思ってます。年明け一発目にお披露目ライブ&ツアーかな。

──どんな音楽になりそうですか?

藤岡幹大:基本は小難しいテクニカル系で、そこに色んなジャンルのゲストを招こうという。勿論ゲストによって音楽性が少し変わる感じでジャズ~フュージョン~ジェント…と、色んな音楽性が入ると思います。だいたいBOHさんのフレーズに僕がコードを付ける形で曲作りをしています。今3曲ぐらい仕上がったところかな。

──アルバムの完成が楽しみですね。

藤岡幹大:「何じゃこれ!」なアルバムを作ろうという構想です。小難しいテクニカル系を基本にやりたい事をやるというのが目標です。ジェントを2曲ぐらい入れて、何拍子かも分からない様なクソ難しい曲を2曲ぐらい、ポップなバラード、あと個々のメンバーをフィーチュアした曲があってもいいかな。仮バンドはテクニカルインストバンドで、ライブはゲストによってジャンルが変わるという。ジャンル的にはフュージョン/ジャズの分野に入るのかな。

──神バンドとのギャップは大きそうですね。仮バンドで世界に羽ばたく予定もあるんでしょうか?

藤岡幹大:前田さんは行きたいみたいですね。チャンスがあればぜひ。

取材・文:Sayaka Shiomi