BABYMETAL ~新春キツネ祭り~ ライブ レポート

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1.

2015年1月10日。
ここ、さいたまスーパーアリーナでの「LEGEND“2015”~新春キツネ祭り~」を皮切りに、
いよいよBABYMETALの「METAL RESISTANCE EPISODE Ⅲ」が本格的にスタートする。
待ちに待った新たな伝説の幕が、遂に切って落とされるのだ。
気温は低く、時折吹き抜けていく突風は冷たいが、否応なく気分は高揚していく。

 

衝動を抑えるのは困難だった。そりゃそうだろう。
年末から今日までの隆盛がそうさせる。

 

「あわあわドリーマー(仮)」を初披露したSU-METAL聖誕祭から
NHK特集、Mステスーパーライブ出演、伊藤政則氏のメタルゴッドJPときて、
そして、正月気分がようやく抜け始めたころの1月5日の夜に、
新曲にして「METAL RESISTANCE EPISODE Ⅲ」を象徴する曲でもある
「Road of Resistance」のTrailer映像の投下。
さらには、伝説の武道館2DAYSのライブ映像、ライブCDのリリースが立て続けにあったのだ。

 

これで興奮するなというのが無理な話。
10代半ばの娘たちに過度の期待をかけるのは酷というものだが、
これまでに積み重ねてきた実績や、ステージに向かう姿勢や覚悟、
はたまた彼女たちのバックボーンである「さくら学院」で培ってきた、
おおよそ彼女たちの年齢では到底考えられない崇高なプロ意識。
それらを知っている多くのメイトたちは、時折父兄の顔を覗かせつつ、
いったい今日はどんなステージングで魅せてくれるのかとワクワクせずにはいられない。
言わずもがな、僕も同じ心持ちである。

 

序でに言うと、新曲はイギリス時間の昼下がりにアップロードされた。
そしておそらくは海外の代理店を通じてリリースをかけていたのだろう、
公開されるや否や、動画をリンクした似たような記事が、次々に世界各国のHR/HMサイトや
音楽情報サイトから配信され、瞬く間に再生数は増加の一途を辿っていった。
その数、およそ20万/日。
その後にiTunes Storeでダウンロード販売された武道館のライブビデオが、
「赤い夜」も「黒い夜」も数ヶ国で最上位にチャートインしたことは記憶に新しい。
ライブ映像を全面に出した新曲Trailerが販売の後押しをしたことは言うまでもないが、
このことからも、すでにWorld Standardでマーケティング・販売戦略を行っている
BABYMETAL陣営の本気度を感じ取ることができる。

 

そして今回のライブでは、今後の活動の点についても留意しておきたい。

 

日本視点で言えば、昨年の快進撃により今や世界的現象となったように思えるBABYMETALだが、
物議を醸したメタルシーンはともかく、世界の音楽市場、
とりわけロック好きな層への浸透度はまだまだ浅いと思われる。
なにせ世界は広いのだ。
入ってくる情報だけでは計れないし、日本での知名度もまだ高いとは言えない。
だから多くのメイトたちが、
今年は昨年以上のMovementが起きるのではないかと大いなる期待を寄せている。
今はまだアメリカのRock Fes.「Rock on the Range 2015」への参加しか発表されてないが、
本日の公演中に、その他の展開についても何かしら発表があるだろう。
国内のツアーをやりたいというフロント3人のコメントも最近あったと聞くし、
非常に大きな注目点だ。

 

 

 

 

2.

TLによると、どうも徹夜組も出ていたようだ。
そして早朝から、アリーナを一周するほどの長蛇の列ができているらしい。
しかし僕は当初の予定通りに行動することにした。
焦りはあったが、午前中に野暮用があったので仕方がない。

 

最寄駅を出て、午後1時頃に物販エリアへ赴く。
右からぐるりとまわり、アリーナを半周過ぎたあたりの最後尾に並ぶ。
そこでふと、準備のために昨日買ってあった携帯用カイロを
家に忘れてきたことに気づく。間が悪い。
しかしこういった間の悪さには慣れている。

 

小学生の頃、マラソン大会の前日に過剰な走り込みをし、
当日は筋肉痛でまったく実力が出せずにショックを受けたことがあるが、
それに比べれば全然平気だ。

 

その後ゆるやかに列は進み、約2時間後、ようやく順番間近となる。
ATMへ寄ってないことに気づいたのはその時だ。
ヤバい。予算が足りない。どうしよう。
だけど僕はすぐに気持ちを立て直す。

 

中学生の頃、友人から履いているだけでモテると言われたので、
当時人気だったバッシュを1年間履き続けたがまったくモテずに傷ついた。
あれに比べればこんなもの余裕だ。

 

とりあえず有り金でTEE2種、ギミチョコパーカー、戦国WODタオルなどを購入。
締めて2万円のお買い上げ。残金わずか。
少し時間があったので付近を散策。
周囲は既にお祭り前特有の賑やかな空気を醸し出している。

 

今や見慣れた光景になりつつある、コスプレをした女の子たち(10人以上いただろうか)
のプチ撮影会を遠巻きに眺めながらほっこりする。
けやき広場の大道芸を見つめながらほっこりする。
ご当地キャラだろうか、ぬりかべを丸くしたような着ぐるみの歩みの遅さにほっこりする。
露店で買ったジャンボフランクを頬張りながら無意識にぽっこりお腹を手で擦る。

 

そのあたりで、冷え切った体が悲鳴を上げつつあったので、
おそらくは他のメイトたちの目論みと同じ考えでクールジャパンのブースに入場。
しばらくの間暖を取る。

 

その後、あとで必ずATMに寄らねばと思いながら待ち合わせ場所へ移動。
ほどなくして、会社の後輩のK山くんが現れる。
「先輩、お待たせしました」
無邪気に白い歯を見せる後輩に釣られて僕も口元に笑みを湛える。

 

このK山くん。実はBABYMETALの曲を初めて聴いたのはほんの2週間ほど前だ。
誰かと一緒に行こうと思い、とりあえずライブチケットは2枚購入していたのだが、
知り合いにBABYMETALファンは皆無であったため、12月下旬まで誰も誘うことができずにいた。

 

1人参戦も考慮したが、しかし貴重なチケットを無駄にするのは惜しく、
よくミスチルやサザン(年越しライブにも行ったことは当日聞いた)、
たまにアイドルのコンサートにも行っているK山くんにそれとなく声をかけたのだった。
結果、2つ返事でOKをもらった。
現場に歩いて行ける距離に住んでいたことも幸いしたのかもしれない。

 

「ちゃんと聴きこんできたか?」

「急いでCD借りましたからね」

「少しは合いの手覚えた?」

「少しは」

「水とタオルは?」

「持ってます」

「下に黒TEE着てる?」

「はい」

 

僕はギミチョコTEEを下に着こんでいるが、当然ながらK山くんはベビメタTEEを持っていない。
だけどとりあえず黒いTシャツは着ているとのこと。それなら大丈夫だろう。
個人的に、ライブ後にK山くんの感想を聞くのも楽しみの一つである。

 

果たして開場となったので一緒に移動。所定の扉からスタンドに入る。
その際、場所がよくわからなかったので係員に尋ねたところ、
その他の情報についても諸々説明を受ける。
僕はそれなりの表情で頷くが実はよくわかっていない。

 

でも大丈夫。
小さい頃、それなりの顔をして路肩に突っ立っていたら、
知らないおばさんから「賢そうなぼくちゃんですねぇ」と頭を撫でられたことがある。
峰竜太と竜雷太の違いがすぐにはわからない僕なりの処世術だ。

 

ステージはエンドステージだった。
200レベルの後列だったがかなりステージよりなので眺めは良い。
ステージの両脇には小さなアーチ状の橋がせり出している。
上手なので主にMOAMETALがそこを渡って近くまで煽りに来るのだろう。

 

アリーナに目を向ける。
ステージより中央付近に、THE-ONEのロゴを発見。
小さなステージのようだがどうも孤立しているようだ。
あそこの下からせり上がって登場するのだろうか。

 

と、ふと見上げれば、ステージからその中央ステージに伸びるように欄干が確認できた。
なるほど、天井にリフト式の橋が準備されているようだ。
どこかのタイミングであの橋が下りてくるのだろう。
こういったセットの工夫を見つけるのも楽しみの一つだ。

 

開演までまだ時間があるが、周りはすでに黒い集団と化していた。
それじゃあこっちもとりあえず準備だけしておくか。
僕はK山くんに上着を脱ぐよう促す。
しかしここで思わぬ誤算が発生。
まさに青天の霹靂だ。
2人は戦闘服である黒いTシャツ姿……になるはずだったのに、
しかし僕の視界に飛び込んできたのは、
目も眩むような鮮やかな赤橙色のTシャツを着たK山くんの姿だった。

 

黒い中に紅一点。
否が応にも目立つ。
おい、なんじゃそりゃ!?
お、おまえはスイミーか。
ス、スイミーの逆バージョンかっ!

 

さすがに僕は動揺する。
「ちょ、おまえ、それ、黒じゃない」
震え声で指差す。

「え? でも先輩、言いましたよね?」

「いや、黒TEE着て来いって……」

 

そこまで言いかけたところで僕は目を剥き息を飲む。
なんとK山くんが着ているのは、もも○ロクローバーZのTシャツだったからだ。

 

「ちょっ、ちょちょちょ、待って。おまっ、それ、も○クロ」

「そうですよ。なんでBABYMETALのライブで○もクロTEEなんだろうって」

「それ、こっちの台詞」

「だって先輩が電話で『上、ももク○TEE』って言うから」

「なっ!? おまえ、おれ、おまっ、おまーぇ、おれぇ?」

「そう。先輩です」

「言ってないって」

「言いましたって」

 

僕は眉根を寄せて記憶を辿る。
そんなこと言うはずもないが、
何か相手を勘違いさせるそれらしいことでも言ったのかもしれない。
もしかして会話の流れのなかで「上も黒な」とか……。ううむ、覚えてない。
そういえば黒TEE着て来いって言った後、「ああ、それならちょうど1枚持ってます」と
返事をしたK山くんの声は妙に明るかった気はするが……。

 

ともかく、言った言わないの水掛け論を続けたところで仕方がないので、
僕は買ったばかりの「戦国WOD」TEEを差し出し、早くこれに着替えろと促す。
彼は以前の僕との会話の途中から、黒TEE=クロTEE、すなわちもも○ロTEEと
勝手に解釈していたらしい。
Tシャツを受け取って歩き出すK山くんの背中を呆然と見つめながら、
ああ、そうだったと、僕はあることを思い出す。

 

おかしいと思ったことはすぐに言ってもらいたいところだが、
「実はニコラス・ケイジとモト冬樹は兄弟なんだ」と言えば素直に信じるほど、
昔からK山くんはかなり天然なところがあった。
仮に彼がマックの店員だとしてハンバーガーを10個注文しても
「店内でお召し上がりですか?」と普通に訊ねてくるだろう。
「いえ、テイクアウトで」と言っても「えっ、テレクラで?」と返してくるに違いない。

 

それにしても、まさかももいろクローバー○のTシャツを着てくるなんてまったくの予想外だ。
とんだハプニングだ。
「新春キツネ祭り」に来て早々、キツネにつままれる心境になろうとはなんとも皮肉な話だ。

 

気を取り直し、再度スタンドを見渡す。
中高年の数が多い。間違いなくロックバンド全盛の頃に青春時代を過ごした方々だろう。
親子連れの姿もちらほら見かける。
僕の網膜はカップルは認識できない仕様になっているから、残念ながらそれらの数は分からない。
先行販売が功を奏したのだろう、開場前は外国人メイトの姿もいくつか目に留まったが、
あいにく僕の席の周りでは見当たらなかった。どこかのブロックに固まっているのだろうか。
アリーナは……、うむ、やはり今日も、なんか黒い(笑)

 

客入れBGMでノッている客も多かった。
既に真下のアリーナAではモッシュも発生している。
Metallicaの「Master of Puppets」が流れると会場が一際盛り上がった。
がしかし、最初の Master! Master! と叫ぶ直前に「LIVE DAM」のCMに切り替わってしまった。
肩透かしを食らった格好だ。あれ、わざとでしょ? わざとと言ってよ、運営。

 

しかしそこは歴戦の兵といったところか、半ばやけくそぎみに、
「LIVE DAM」のCMに出てきたBABYMETALのライブ映像に合わせて、
アリーナの何人かがダメジャンプで飛んでいたのは可笑しかった。
それからDragonForceの「Through The Fire And Flames」や
Judas Priestの「Painkiller」などが流れ、フロアはもう十分なほどに暖まっていった。
旗を持って会場をぐるりと廻りながら煽り続けたBABYBONEたちの働きも忘れてはならない。

 

MOAMETALは舞台の袖からこの光景を見ているだろうか。
ふとそんなことを考えていると突然暗転、から~の、悲鳴とも怒号とも取れる大歓声。

 

さあ、まさに今、『時は来た』。
新たな「METAL RESISTANCE」の幕開けだ。

 

 

 

 

3.

以下セトリ

00 ムービー(紙芝居)
01 メギツネ
02 いいね!
03 新曲~あわあわ(仮)
04 紅月-アカツキ-
05 おねだり大作戦
06 Catch me if you can
07 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
08 4の歌(武道館ver)
- 神バンドソロ
09 悪夢の輪舞曲
10 ヘドバンギャー!!
11 ギミチョコ!!
12 イジメ、ダメ、ゼッタイ

ENCORE
13 BABYMETAL DEATH
14 ド・キ・ド・キ☆モーニング
15 Road of Resistance

 

先ず、2014年のワールドツアー中心のムービーが流れる。
そしてその後のBABYMETALの登場シーンがいきなり素晴らしかった。

 

武道館ライブでの最後に、棺桶の中に入って異国の地へ旅立っていく演出があったが、
今度は逆に、海外での武者修行を終えて日本へ戻って来て、棺桶の中から現れる演出だった。
そしてセンターの橋が早くもリフトダウン。
3人がそのまま橋を進み、小さなセンターステージで「メギツネ」がスタート。
轟音が鳴り響く。凄まじい。ステージ脇の巨大スピーカーからの音圧がヤバい。
会場全体がいきなりオーバーヒート。渇望が爆発した瞬間だ。

 

レーザー光線が眩い「いいね!」に続き、新曲の「あわあわ(仮)」が始まる。
なるほど、こういう振り付けだったのか!
SU-METALまでが輪っかを作って踊っている。3人ともとにかく可愛い。
そして間奏のリフは思っていたより重く、非常に喜ばしい。

 

「紅月-アカツキ-」のイントロが流れ出す。
若きカリスマ、SU-METALが唄い始める。
今日もまた不特定多数の多くの人に語りかけるように、想いを乗せて力強く声を張る。
天性の美声を持つ女神が巨大な空間を支配する時間がしばらく続く。

 

BBMの「おねだり大作戦」で横揺れ・縦揺れを存分に満喫したあとに続くのは
「Catch me if you can」。ここまでノンストップ。
神バンドのソロパートがいつもと違う。変えてきたのがまた嬉しい。
ベースの神のスラップ奏法に痺れる。ドラムの迫力が尋常ではない。

 

「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のあとの「4の歌」は期待どおり武道館verだった。
ああ、嬉しい。そして楽しい。最初からずっと嬉しい楽しいの繰り返しだ。
何度も「よんっ! よんっ!」と叫ぶ。
しかしなんという破壊力。鼓膜がちょっと変になりそうだ。
ああっ、2人がすぐ近くにまで!
僕は満面の笑みでさらに叫ぶ。「よんっ! よんっ!」

 

続いて神バンドのソロが始まる。
4人の神とも気合が入りまくりだ。
それからまたSU-METALのソロ曲へ。
センターの橋がリフトダウンし、「悪夢の輪舞曲」が始まった。

 

再びSU-METALが巨大な空間を支配する。
曲の後半部分は、橋が少し浮き上がった状態で唄い始めた。
欄干から伸びるライトが眩しい。SU-METALが神々しく見える。
その刹那、僕はとても奇妙な感覚に囚われる。

 

それはとても不思議な感覚だった。
イメージを例えるなら、西遊記のはなしに出てくる金角・銀角の銀角が持っている
ひょうたんに吸われるような感じだろうか。
何かはわからないが、その何かの中に、頭の先からすーっと吸い込まれていくような感覚が
しばらく続いたのである。

 

しかし突然、瞬間的に、それまで曖昧模湖だった意識が、今度は確かな核心に触れた。

 

ああ、そうだ、そうなんだよ。
彼女の声色を全身で体感しながら、僕は改めて認識する。

 

そうなのだ。
やはり僕はこのSU-METALの声に魅了され、飽きることなく、
1日と空けずに毎日アルバムを聴き続けているのだ。
もちろん楽曲のクオリティの高さもそれの一因ではあるけれど、
ああ、SU-METALの歌声のなんと素晴らしいことよ。
ほとんどビブラートを使わないから、クリアなハイトーンボイスが
心の奥にまでSU-と沁み入ってくるではないか。なんとも言えぬ心地良さ。
館内放送から流れてくる「フィガロの結婚」にじっと耳を澄ます囚人状態の僕。
“歌姫”や“メタルクイーン”といった形容が、彼女にはもう安っぽくすら感じられてしまう。

 

なぜここまでゆかしく思うのか。
胸が締め付けられそうな思慕や寂寥といった情が沸々と湧いてくるのはなぜなのか。
僕には理由がわからない。
しかし彼女の美声に包まれた空間にふわふわと身を委ねていれば、
答えなんてもうどうだってよくなる。
ただただ3拍子のリズムに乗って頭を揺らしておけばそれでよい。
筆舌に尽くし難い感銘を覚えながら、僕は、
「この時が永遠に続けばよいのに」と心の中で願い続けた。

 

それからもノンストップのライブは続き、
「ヘドバンギャー!!」「ギミチョコ!!」と畳みかけてくる。
アリーナは常にカオス状態。
サークルは全曲通して発生していたような気がする。

 

やはりBABYMETALのライブは戦いだ。
彼女たちが戦い続けるなら、僕たちもとことん戦い続けるまでだ。
枯れるまで声を張ろう。体が動かなくなるまで全身を揺らそう。
彼女たちへのリスペクトを胸に抱きながら。

 

「イジメ、ダメ、ゼッタイ 」ではアリーナの至る所でWODが発生。
ダメジャンプでは会場全体が一つとなって飛びまくる。
結局、彼女たちはほぼノンストップでやり切った。
ここまでの曲数は12。本当にこれが人間の成せる業なのだろうか。
激しく踊り唄い続ける彼女たちには、ありとあらゆる称賛の言葉を贈っても全然足りない。

 

ENCOREでは例の「We Want More!」が発生。

 

ENCORE1発目の「BABYMETAL DEATH」がこれまた激しい。
そして急転直下、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」へ続く。
もうホント勘弁してほしい。
この流れは反則だろう。
「DEATH! DEATH!」のドラムドコドコで出まくった脳内のドーパミンが、
「Ring Ring Ring!」で耳から噴き出しまくっているではないか。

 

そして最後に「Road of Resistance」。
冒頭のムービーには「戦国WOD」の文字が浮かんでいる。

 

それにしてもだ、事前にタオルで確認したけど、
メタルの重鎮たちを戦国武将の絵に落とし込むこのセンスはいかにもベビメタらしい。
こんなシャレ、ベビメタ以外では通用しないだろう。
だけど、ちょっとこれはやり過ぎたんじゃない?
ちょっとやりすぎたかなってボソッと言ってよ、KOBAMETAL。

 

曲はダウンロードしたものを繰り返し聴いてはいたけど、
当然ながら、やはり生で観るものは別物、別格だった。
3人のダンスもずっと見ていたいし、神々の超絶プレイもずっと見ていたかった。
そしてSing-alongのパートでは、想像以上に心が打ち震えた。

 

2万人による大合唱は圧巻の一言。
途中から観客が先走ってしまったのは興奮によるものに他ならない。
全員酔いしれていたのだから仕方がないことである。
ライブは演者と観客が一体となって作り上げていくものだが、
すべてのオーディエンスが素晴らしい。
とにかく最高に感動した瞬間だった。
そしてこの瞬間が今宵のクライマックスであったことは、
誰の目に見ても明らかだったのではないだろうか。

 

しかしながら、今夜のライブの僕の中でのハイライトは、
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の冒頭だった。

 

きっと昨夜も「赤い夜」を観たからだ。
物販で並んでいる間、ずっとライブCDを聴いていたせいだ。
だって2人の煽りが、途中から1人になるのがはっきりと確認できるのだから。
重なっていた「ヘドバン! ヘドバン!」のコールが急に1人だけの声になるのだ。
そのたびに内心で「ここで落ちたのか……」と呟いてしまう。
刹那的に武道館のあの場面が蘇る。
SU-METALの咆哮に合わせ、ステージの端から走り出すYUIMETALの姿を捉えた瞬間、
僕は顔中を歪ませ、無意識に大声で喚き叫んでいた。

 

「おおおおおーっ! いけーっ! YUIMETAL!」

 

目から熱いものが滴り落ちる。
グッと歯を食いしばり、拳を突き上げ、あらん限りの声を張る。

 

「いくんだ! いっけー、YUIMETAL!」

 

キツネ様は言った。
記録された映像をインターネットで観るのではなく、生で観て聴いて、
心と体で感じ、未来の自分のために記憶せよと。

 

だから僕は、それまでは目を見開き、
一瞬たりとも見逃すまいと3人の勇姿を凝視し続けていたのだけれど、
だけど、だけどもう、無理だった。そのときだけは限界のMAX値を超えた。
たぶん曲の半分は見ていない。
俯き、嗚咽を堪え、何度も目頭に浮かんでくる涙を拭った。
Dom Lawson氏が1億の価値があると絶賛したサビのメロディが僕の脳を刺激し続ける中で。

 

 

 

 

4.

濃密なライブが終わり、K山くんと外に出る。
やはりまだまだ余韻を楽しみたいのだろう。
至る所で、立ち止まって仲間内と談笑しているメイトたちの姿が多くあった。
この世で一番の極上の幸福感を得た。皆そんな顔だ。

 

しかし中には、小指を立て「私はコレで、会社を辞めました」という台詞が似合いそうなほど、
ひどく落ち込んだ様子で地面にぐったりと座り込んでいるメイトの姿も。
おそらくはアリーナにいた人か。
ライブで全力を出して精根尽き果てたのだろう。

 

だけど少し体力が回復すれば、そんな彼も至福の表情を浮かべるに違いない。
BABYMETALを知り、BABYMETALを体感した人は、
BABYMETALを知らない人よりも豊かな人生を送っている。
言い過ぎだろうか?
熱くなりすぎて客観的な考察が欠落していると指摘されるだろうか?
いや、そんなことはないだろう。
これを読んでくれているメイトの貴君らはきっと諸手を挙げて賛同するはずだ。

 

「BABYMETALってすごいですね。感動しました。もっと早く知っておけばよかったです」
K山くんが目を輝かせて言った。

「そうだろうそうだろう」
僕の目尻は自然と下がる。

「先輩の感想は?」

「感想? そうだな、感想は、スゴイです。Amazing。Awesome。Dead」

「なんで英語なんですか」

「さあ。Only the FOX GOD knows」

 

僕はにやりとし、そのまま歩き出す。
よし、K山くんがこんなにも喜んでくれたのだ、
そのうち他の同僚にもBABYMETALの話を切り出してみるか。
これも「METAL RESISTANCE」の一環だ。
そう心に誓い、家路につく。
K山くんは地元なので、キツネサインをしながら途中で別れる。

 

「また一緒に行きましょうね、先輩!」
「See You~」

 

 

 

駅までの道すがら、僕は今夜の出来事を振り返る。
半端じゃなかった音圧のせいだと思う。
「ギミチョコ!!」のコール&レスポンスあたりから耳がバカになったようで、
今もまだおかしいままだ。
そのせいか、最後の方の何曲かでハウリングが発生していたように感じられた。
僕は指先で鼓膜を刺激しながらBABYMETALについて考える。

 

BABYMETALはライブバンドである。
それも日本最高峰クラスのライブバンド。
その考えは今夜のライブでより強固となった。
そしてシンプルかつ効果的な演出が加味され、
彼女たちのステージは壮大なスペクタクルへと変貌する。

 

そして、BABYMETALを評するうえで一番の根幹となる部分は、
やはりSU-METALの存在感と安定感ではないだろうか。

 

むろん、BABYMETALにハマる理由は千差万別で、
何を目的にライブに足を運ぶのかも十人十色だろう。
五臓六腑に沁み渡る神バンドの高度な演奏を欲する人もいれば、
とにかく可愛いBLACK BABYMETALを観たいからという人もいるだろう。
楽しくモッシュッシュッがしたいからという人もいるかもしれない。

 

けれど、その上で僕の見解を恐縮ながら述べさせていただくと、
やはりSU-METALの存在感と安定感。これに尽きる。

 

張りのある声で、しかも驚愕なことにあれだけ踊りながら、
正確に音程を取って完璧にメロディを歌い上げていく。
ちゃんとイヤモニでヴォーカルの声を拾っていることが前提の話ではあるけれど、
だから神バンドの演奏のピッチが乱れることはほとんどないし、
YUIMETALとMOAMETALも、安心して自分のやるべきことのみに集中できている。

 

月並みな表現だが、神バンドという強靭な根っこが地を這い、
SU-METALという太くて強固な幹が、SU-と太陽に向かって、
「さあ、私にすべて任せなさい」といったふうに凛と聳え立ち、
YUIMETALとMOAMETALが愛くるしいダンスという大輪の華を咲かせている。

 

もう一度言う。SU-METALの存在感と安定感。
それこそがBABYMETALの最大にして唯一無二の強みだと思う。

 

良い歌はたまに聴いてみたくなるけれど、
良い楽曲は何度でも聴いてみたい衝動に駆られる。
それがメタルの爆音で、そこにSU-METALの美声が乗っていれば、
僕は時間の許す限りずっと聴き続けていたい。

 

僭越ながら、某氏の有名なフレーズを引用させていただくならば、
僕は「食う、寝る、SU-METALの歌声を聴く」を3大欲求として捉えたい。

 

今後のスケジュールについては6月の幕張のみだった。
字がよく見えなかったが、国際展示場ホールであるならば行くかどうか迷う。
あそこの音響はよかったと思ったためしがないからだ。
でもきっとチケットの先行予約には応募するだろう。

 

5月にはアメリカを中心にワールドツアーをやるのかな?
これもよくわからなかったが、そんなような英文が表示されていたように思う。
箱が決まれば、「Rock on the Range」に合わせたスケジュールが発表されるのだろうか。
詳細は後報を待つしかない。

 

Sonisphereのメインステージに立って6万人のオーディエンスを魅了し、
既に日本のロック史に金字塔を打ち立てたBABYMETALではあるが、
また新たな伝説が生まれるのがそう遠くない未来ということだけわかればよい。
BABYMETALの進撃は止まらないのだから。

 

Rockの象徴はエレキギター、片やPOPはメロディラインとヴォーカルの技量に依存する。
その2つを、現時点での極致で兼ね備えたBABYMETALは、もはや向かうところ敵なし。
さらに彼女たちにはメタルにダンスという斬新かつ強力な武器があり、
しかもまだまだ成長の余地があるのだ。
この先いったいBABYMETALは、どれほどまでの高みに到達するのだろうか。
それは想像を絶する領域であることは間違いない。
今年もまたBABYMETALをずっと追えることに、心から感謝したいと思う。

 

 

最寄駅に着き、電車の時間を確かめる。
ええと、Suicaの残金はないから切符を購入……。
財布の中身を確認した時だった。
ATMにまだ寄ってないことに気づく。ショックだ。
しかしこういったことには慣れている。

 

高校生の頃、ヘアスプレーと間違えて殺虫剤を頭におもいきりふりかけ、
気分を害し、ひどく落ち込んだことがある。
あ、あの時に比べれば……。

 

足がよろけそうになるのをなんとか堪えながら顔を上げる。
都合よく切符売り場の真横にATMがあったのでホッと胸を撫で下ろす、のも束の間、
ああっ、忘れてたと、今度はK山くんからまだチケット代金を受け取ってないことに気づく。
当日支払いの予定だった。

 

大学生の頃、「私できちゃったみたい」と突然女の子に言われてうろたえるも、
あとになってその女の子とはキスしかしていないことに気づいたことがある……。

 

そう。僕はいつだって遅れて気づく。
なぜなら――、ぼく、知ってる知ってる!
昔から間の悪い男だからだ。

 

 

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