BABYMETAL 横浜アリーナ DAY① ライブ レポート

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※横アリライブレポ②はこちら

 

 

1.

2015年12月12日。
ここ、横浜アリーナでの「-THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY-」を最後に、
9月から続いていた「WORLD TOUR 2015 in JAPAN」が終了する。
また1月の「~新春キツネ祭り~」で触れられて以降、
謎のベールに包まれていた「Trilogy」の全貌が明らかとなり、
そして「METAL RESISTANCE EPISODE Ⅲ」も終焉するのである。
見どころが多い今回のライブ、その内容もさることながら、
来年以降の展開についても非常に気になるところなので、
今回の節目のライブに両日参戦できる喜びを、僕は強く噛み締めないわけにはいかなかった。
なぜなら、本来であれば横アリのライブには参加できないはずだったからである。

 

複数の先行予約はすべて落選だった。
一般発売にいたっては奇跡でも起こらない限り入手は不可能だった。

 

思えば「-THE ONE-」先行でチケットが当選したことは一度もない。
さらにいえば、他の先行も落選続きで国内の小箱のライブは1つも行けていない。
今年参戦した国内単独ライブといえば「新春キツネ祭り」と「巨大天下一メタル武道会」のみ。
だから横アリの先行予約をした際も、微かな期待は抱くとも、ほぼ諦観の極みに達していた。
そして案の定すべて落選した際は「やっぱりな」という思いで脱力したのだった。
ある程度予想はしていたけど、ここまでチケ争奪が激しくなるとは1年前は思ってもいなかった。

 

しかし土壇場になって、前日に売りに出された見切り席の当日券を購入することができ、
幸いにも土曜日の「ACT-Ⅰ」に参戦できる運びとなった。
本当にまさかだった。
今年のこれまでの状況を鑑みると絶対に無理だと思っていたので喜びもひとしおだった。

 

そして日曜日の「ACT-Ⅱ」はというと、前日に急遽参戦が決まった「ACT-Ⅰ」よりも遥か前、
両日落選の憂き目にあい、傷心でいた頃の僕に温かい手を差し伸べてくれた方がいたのだった。
フォロワーのうっちーさんだ。
かなり前の段階で「ACT-Ⅱ」へのお誘いがあり、チケットを1枚譲っていただくこととなった。
そのことに対しては言葉がないほど感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

だけどここで一つ、大きな問題が発生した。
僕は人見知りが激しい。いわゆるコミュ障だ。
実際に会ったことがあるフォロワーさんはまだ1人か2人といったレベル。
うっちーさんとはもちろん初対面だ。
だからライブ当日、うまくうっちーさんと馴染めるかどうかが気掛かりだった。
貴重なチケットを譲ってくれた方に対して絶対に粗相はあってはならない。

 

そこで、と思い、僕はまず、見た目をよくすることから考えた。
外見や身なりで、人々が他人に抱く心象は随分変わるというものだ。
メトロックレポでも触れたとおり、僕はメンズエステ店の会員だ。
数日前、人知れず僕は予約しておいたエステ店のドアを開けたのだった。

 

前回と担当者は違ったが、今回もフェイシャルエステの話を聞いた。
クレンジングとディープクレンジングとの違いについて説明を受ける。
僕は話に耳を傾けながら「なるほどぉ」と相槌を打った。
深くうなずく仕草をところどころで交えながら。

 

だけど内心ではよくわかっていなかった。
でも大丈夫。
とりあえずこういうときはそれなりの表情をしていればいい。
小さい時もそれなりの表情をしていたら、「お、頭の良さそうな坊ちゃんだなあ」と
知らない老人に頭を撫でられたことだってある。
いつも「宮川大助」と「宮川大輔」を混同してしまう、僕なりの処世術だ。
ちなみに「水野真紀」と「水野美紀」の違いについては未だによくわかっていない。

 

専用の椅子に腰掛けると、先ずは顔の表面のケアから始まった。
脱脂綿のような布で僕の顔を丁寧に拭いていく。
ほどなくして2種類のクレンジングが始まった。
蒸しタオルが終わるとフェイスマッサージへと続いていった。

 

と、そこで、この店の心証を少しでもよくしたいのか、
担当者が笑顔でいろいろな話題を振ってくるようになった。
「夕食はもう済まされましたか?」
彼女が営業スマイルで優しく話しかけてくる。

 

僕は逡巡したのち、とりえあず「ウコンを飲んだ」とボケてみた。
「ジョークで注目の的に」と今朝のテレビ占いにあったからだ。
しかしスベった。かなり寒い。
バカ上司が目玉おやじのモノマネをしたときと同じくらいの寒さだ。

 

だけどこういった逆境には慣れている。
ブラックコーヒーと間違えて墨汁を飲んだことがある僕だ。
若い頃はフレグランス ボディスプレーと間違えて全身に殺虫剤を吹きかけたこともある。
これくらいの試練などどうってことはない。
僕はこういうワイルドで反社会的な一面も持ち合わせているのだ!

 

続けて「このあとは家に帰られるんですか?」と訊かれたので
「UFOを呼ぶためにまっすぐ帰ります」と答えてみた。
結果、思いっきりスベったが僕がスベったんじゃない。
UFOがスベったんだ!

 

「ご趣味はあるんですか?」と訊かれたので
「メガネを探すのび太のマネをすることです」と答えてみた。
結果、思いっきりスベったが僕がスベったんじゃない。
のび太がスベったんだ!

 

この流れで「どんな音楽が好きですか?」と訊かれたので
「ハイスクールララバイ」と答えてみた。
結果、思いっきりスベったが僕がスベったんじゃない。
イモ欽トリオがスベったんだ!

 

マッサージが終わったところでお礼代わりに「なー!」って叫んでやった。
結果、思いっきりスベったが僕がスベったんじゃない。
長江健次がスベったんだ!

 

その後は吸引器具を使って小鼻の穴の汚れなどを吸い取り始めた。
それが終わると保温パックに移り、
最後に保温効果の高い化粧水を顔につけて終了となった。
よし、これでうっちーさんとの対面もバッチリだ。
幾分潤っている頬を指で触りながら僕は満足気に店を出た。
もう少しボケは流行りのものにした方が良かったのかな、と内心で少し反省しながら。

 

 

 

 

そして土曜日。
同じく両日参戦するうっちーさんと開演前に落ち合うことになった。
僕の土曜の参戦が急遽決まったので、
じゃあその日に翌日のチケットの引き渡しをしましょうと話がまとまったからだ。

 

午後14時半に当日券を引き換え、物販列に並ぶ。
約2時間後、ようやく物販ブースに入場したが、
さすがに欲しいと思ってたものはすべてSOLD OUTだった。
取り急ぎコーチジャケットを購入し、アリーナ正面に向かう。

 

 

 

入場するとお祝いの花の列が目に留まった。
「ヘドバン編集部」からの贈花には大きな黒いリボンが付いている。さすがだ。
それを横目に見ながら階段を上り、2階へ。
連絡を取り合い、とある場所で遭遇する。
僕は挙動不審なところを見せないように気をつけながら笑顔でうっちーさんに話しかけた。

 

年齢はあまり変わらないのかもしれない。
だけど穏やかな雰囲気を纏ったとても紳士的なうっちーさんに対し、
僕はJR渋谷駅前のモアイ像のように、顔の彫りが深く、長髪で、
まるで社会不適合者のような風貌をしている。
まったく真逆の風体だった。
しかし会って話している間、うっちーさんの表情に困惑の色は浮かんでないようだった。
どうやらふつうの人と思ってくれたようだ。
そして明日の再会を約束し、それぞれのシートエリアに別れたのだった。

 

開演30分前まで話し込んでいたので、僕は急いでトイレに行ってからホールに入場した。
時刻は午後17時45分。
時折チケットに視線を落としながら自分の席を探して回る。
それにしてもステージが随分近い。

 

 

チケットには「アリーナ E13列 20番」と書かれている。

 

ようやく自分の席を見つけた僕はおもむろに横を一瞥した。
刹那、その場でしばらく固まってしまった。
確かにSSAの「新春キツネ祭り」では見切れ席が200レベルの最前列の神席だったから、
今回も多少期待していたことは否めない。
だがしかし、間近でこの光景を視界に収めたときは、あまりにも近すぎて、
まるで夢でも見ているような錯覚に陥ってしまった。
ぶるぶると首を振り、カッと刮目する。
目線は丁度ステージの高さ。
首を横に向ければ、眼前に巨大ビジョンが設置されてある。

 

 

 

「残り物には福がある」という言葉を、これほど実感したことはなかった。
そわそわしながら開演を待つ。
僕の席は端から2番目だったので、あらかじめ一番端の方に断りを入れる。
「かなりヘドバンをすると思います、あ、すみません、間違いなくかなりしますが、
なるべくご迷惑はかけないように気をつけますので今日はよろしくお願いします」
端の方は大変気さくな方で、笑顔でどうぞどうぞ存分にとおっしゃってくれた。
安堵した僕は首のストレッチをしながら待ち続けた。
とそのとき、不意に暗転し、ついにライブが始まった。
「WORLD TOUR 2015 in JAPAN THE FINAL」
真横のビジョンにムービーが映し出されると館内中から悲鳴のような大歓声が沸き起こった。

 

 

 

 

2.

1日目セトリ

01 新曲 WE ARE THE ONE(仮)
02 ギミチョコ!!
03 いいね!
04 あわだまフィーバー
05 Catch me if you can
06 ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
07 ド・キ・ド・キ☆モーニング
–  神バンド -インストゥルメンタル-
08 紅月 -アカツキ-
09 4の歌
10   新曲 KARATE(仮)
11  チガウ(仮)
12 メギツネ
13 イジメ、ダメ、ゼッタイ
14 ヘドバンギャー!!
15 Road of Resistance

 

まずオープニングムービーで「Trilogy」の概要が語られる。
“メタルレジスタンス第3章「Trilogy」。それは、三辺が重なり合い、我々を奇跡へと導く物語”
ナレーションが始まると会場は早くも興奮の坩堝。
それは、待ち望んだライブが始まったことによって爆発したメイトたちの熱量が起因しているが、
ある程度予想された、今後のライブ会場(三角形の中心)を示唆する映像も一因だった。
“新たな調べがもたらす奇跡によって、我々はTHE ONE(1つ)になるのだ”
ナレーションが終わると聞き覚えのあるメロディーが。
そう、誰もがいつ完全披露されるのかと待ち続けていたあの新曲が1発目から披露されたのである。
初っ端から早くもクライマックス。これには興奮を覚えずにはいられない。
サビのメロディが繰り返されると、歓声は大きなうねりとなって会場全体を揺らし始めた。

 

そしてその歓声はその後さらに大きくなっていった。
それは3人の登場シーンが原因だった。

 

横から見ているとすぐにわかったのだが、三体の巨大なスフィンクス像の上に、
縁が赤く光った、三角錐のゴンドラが現れたのである。
その三角錐のゴンドラの中には黒いマントを身に纏った3人の姿が。
そして3人を乗せたゴンドラはゆっくりとステージへと降下していった。
素晴らしい登場シーンの演出。
3人がステージに降り立つと、背後に控える神々たちは、
まるで天上の世界から降りてきた女神を迎えるように演奏を開始した。
ツインギターの奏でるメロディが観客たちを一段上の熱狂へと導いていった。

 

イントロや間奏が長めのこの曲。
インパクトのある「ララララ~」が仮タイトルとしてメイトたちの間に広がっていたけど、
ライブで披露した後にタイトル名を発表した「Road of Resistance」のときがそうであったように、
歌詞に「WE ARE THE ONE」とあるのでそれがタイトルなのかもしれない。
曲自体はDREAM THEATERのようなプログレテイストな印象で、リフや構成は違うけれど、
「Forsaken」「Another Day」を足してそれをさらに昇華させたような、
頭のてっぺんからつま先まで全身すべてが引き込まれてしまう壮大な楽曲だった。
ONE OK ROCKよろしく、英語と日本語を混ぜたSU-METALの歌唱は大いに聴きごたえがあり、
彼女の特徴でもある「高音のまま突き抜ける伸び」が遺憾なく発揮されている曲である。

 

間奏の途中に転調があり、MOAMETALとYUIMETALがきれいにコーラスをハモる。
後半に入ると盛り上がっていく楽曲編成には体が自然とぞくぞく反応してしまう。

 

“僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所 彼方へ”

 

圧倒的な歌唱で巨大な空間を支配する。
力強いSU-METALの歌声に魂が吸い取られていく。

 

ああ、これだ、これなんだよ。
僕はボロボロと涙をこぼしながら打ち震える。
久しぶりの感覚だった。
新春キツネ祭りレポで記した、「悪夢の輪舞曲」を聴いたときに感じた、
あの“何かの中に、頭の先からすーっと吸い込まれていくような感覚”がしばらく続いた。
あんぐりと口を開けたまま、僕は半ば放心状態でステージを見つめ続けた。

 

「ララララ~」とSU-METALが力強く声を張る。
「ララララ~」が脳内で勝手にリフレインされる。
「WE ARE THE ONE」「ONLY ONE」「YOU ARE THE ONE」
同じフレーズが繰り返されるが、このあたりの記憶はほとんどない。
ただ涙がとめどなく溢れ出てくるだけで、僕は完全に心酔しきっていた。
大サビでは早くもSU-METALが煽りを入れてくる。「シンギン!」
そしてちらほらと自信なさげに合唱するメイトたち。
「ララララ~ ララ~ラ ラララララ~」

 

新曲でいきなり煽られたことには多少の戸惑いがあったが、
叙情的で壮大なメロディに魂は早くも抜き取られ、
否応なく呆けたように唖然と見入ってしまうほかなかった。
自然と目頭は熱くなり、何度も嗚咽が漏れた。
「ああ、なんて素晴らしいんだ」
僕は早くも感嘆の声を上げずにはいられない。
ギターの「泣き」がもっと強調されればさらに身が打ち震えるのになと思いながら。

 

昇天しそうなほどに気分が高まったあとに続く曲は「ギミチョコ!!」。
しかしいつもと何かが違う。
おそらくは着ていたマントを脱いで次曲への準備を整えるための時間稼ぎだったのだろうが、
まるでSkrillexのような始まりは瞬く間に観衆たちを熱狂の渦に引き込んだ。
最初のノイズ部分が何度もループされ、時折「GIVE ME」コールが挟まれる。
そして準備を整えた3人がライトアップされると歓声はひときわ大きくなった。

 

「ギミチョコ!!」の破壊力はいつだって凄まじい。
ちらりとピットに目を向けると、どこもかしこも激しく踊り狂っていた。
「おまえらもっと声出せるだろうが!」「スクリーム!」と煽りに煽るSU-METAL。
そして最後のコール&レスポンスは3人揃って「やるときゃやるぞ!」
ステージごとに工夫を凝らすコールには感嘆するほかない。
そして猛烈な熱量を保ったまま、曲は「いいね!」「あわだまフィーバー」と続いていった。

 

この3曲の並びは「OZZFEST JAPAN 2015」と同じだった。
Dance Tune Numberが3曲も続けば、観客たちは否応なしに熱狂するしかないだろう。
今回も「あわだまフィーバー」でSU-METALが「シンギン!」「もっと!」と煽っていた。
思惑通りに彼女たちは序盤から会場を支配することに成功した。

 

フロントの3人がいったんハケると、お待ちかね、神バンドの出番だ。
「Catch me if you can」の前奏を4人の神がそれぞれ超絶ソロパートで務める。
ピットエリアのあちこちで早くもサークルモッシュが発生。
僕は凶悪なリフに頭をガンガンに揺らしながらひたすら楽しむことに没頭した。

 

曲は「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」「ド・キ・ド・キ☆モーニング」と続く。
彼女たちの魅せるダンスを存分に堪能してもらうためなのだろうか、
いつもより多めにステージが明るくライトアップされる。
とくに「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のブレイクダウンパートは大変見応えがあった。

 

そして3人が再びステージをハケると、
神バンドによるINSTRUMENTALが演奏された。
しかもNEWバージョンだ。
僕はギターの神とベースの神の奏でる旋律に乗せて体を大きく揺らす。
4人のソロは甲乙付け難いほどそれぞれ素晴らしかったのだけれど、
初見のISAO神の8弦ギターによる早弾きライトハンドには感銘を覚えずにいられなかった。

 

神バンドのINSTRUMENTALに続いたのはSU-METALのソロ曲「紅月 -アカツキ-」。
進化を続ける彼女の歌声にはいつだって言葉がないほどの感動を覚える。
間奏のツインギターがいつものように涙腺を刺激する。
後半は狂ったように激しくヘドバンするのはいつものことだ。
目を瞑り、ビートに合わせてヘドバンする脳に、SU-METALの透き通る歌声が染み込んでくる。
ああ、堪らない。最高だ。
脳幹が痺れる感覚がする。
僕は深いトランス状態に陥っていった。

 

が、次のBLACK BABYMETALの「4の歌」で、ふたたび僕は覚醒する。
大きな声で「上手~! おっきい声出せよ~」と煽るMOAMETAL。
「横アリ~、全力で声出していくぞ~」と続くYUIMETAL。
その後も「みんなの全力ってそんなもんか~」と煽り続ける2人。
観客たちは彼女たちの煽りに負けないように腹の底から声を出し続けた。「よんっよんっ!」

 

これまでのライブでの煽りは「もっと声出してよ~」「そんなんじゃ全然足りないよ~」
といった比較的柔らかい口調だったのに対し、今回の2人は、
SU-METALと同じように、タメ口の命令口調へと変化していた。
メイトたちとの距離感がぐっと近づいたように思えてただただ嬉しい。
その後もメイトたちに強制的に連呼させる「よんっ! よんっ!」コール。
2人に煽られ騒ぐ行為はとにかくもう楽しくて仕方がない。

 

そして「4の歌」が終わるとおもむろにビジョンにムービーが流れ始めた。
“君には聞こえるだろうか。命をかけて戦う魂の叫び声を”
そのナレーションの直後、どこからどう見ても松岡修造でしかない映像が流れると、
会場の至る所からやんややんやの歓声と笑い声が上がった。
それから、“新たな調べ”に沸きに沸く観客たち。
イントロが始まると、3人が同じポーズでキメる。
そして空手の正拳突きのような振りからスタート。
歌の第一声はYUIMETALとMOAMETALの掛け声だった。
「セイヤッ! セッセッセッセイヤッ!」
「ソイヤッ! ソッソッソッソイヤッ!」

 

「あたたたたた ずっきゅん! わたたたたた どっきゅん!」なみのこのそっ閉じ感。
だけどまったく心配することはない。なぜならそれはいわゆる「良い兆候」であるからだ。
その証拠に、曲が進むにつれ、会場全体は次第に盛り上がっていった。
そうさせたのは、魂を揺さぶるようなSU-METALの力強い歌声だった。

 

“ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ  拳をもっと心をもっと”
“全部全部研ぎ澄まして ウォウォ~ウォウォ~ウォウォ~”

 

いつまでの心に残るサビのメロディ。自然と脳内でループされる。
初めて聴くとすぐには難しいが、ライブを重ねるごとにメイトたちが
「ウォウォ~」のところを声を揃えて叫べるようになれば、
あのBRING ME THE HORIZONのライブのように、
より会場全体の一体感が生まれるのではないだろうか。
初めて聴いたこの曲から僕はそういった印象を受けた。
ライブで披露されるごとにパフォーマンスの精度は上がっていくだろうから、
いつの日かそういった光景が見れるのをわくわくしながら待ちたいと思う。

 

そして「Road of Resistance」が道なき道を進む覚悟を唄った曲ならば、
この新曲「KARATE(仮)」は、たとえ倒れても何度も立ち上がって戦い続けていく、
自分たちを鼓舞する曲であるように思う。
間奏の3人の演劇(それぞれが手を掴んで起き上がる振り)からもそれは窺い知れたのだが、
そこは個人的には涙なしには見られない感動的なシーンだった。
それにしてもYUIMETALとMOAMETALの「押忍! 押忍!」コールが愛くるしくて仕方がない。

 

続く曲は、これまた比較的新しい曲である「チガウ(仮)」
スカのリズムに乗って躍動するように踊る3人のダンスの切れ味はまさに三位一体。
フリコピしている人たちが多かったのは印象的だった。
披露された回数はまだ少ないのに、かなりの人たちが一緒になって踊っている。
そしてその熱狂はそのまま次曲「メギツネ」へと続いていった。

 

「メギツネ」による会場全体の一体感はいつだって素晴らしい。
それは箱が大きくなってもかわらない。むしろ迫力が増す。
僕も負けじと「ソレッ ソレッ ソレッ ソレッ」と大声を張った。
そしてサビのビートに合わせて激しくヘドバンを繰り返した。
もちろん扇風機ヘドバンのところは、僕も同じように頭を大きく回転させた。

 

「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の冒頭ムービーが始まり、ちらりと視線をピットに向けると、
3つのブロックそれぞれですでに複数のサークルができあがっていた。
SU-METALが咆哮し、YUIMETALとMOAMETALがステージの端から走り出す。
それにしても炎が熱い。スピーカーも近いから耳もかなり痛い。
しかしそれはステージ上の3人が過酷な状況にいることを物語っているのだ。
改めて僕は感服し、ステージ上の凄まじいパフォーマンスを見やる。
全身全霊をかけてジャンプすることで彼女たちに対する畏敬の念を示す。

 

壮大なサビのメロディによってもたらされた興奮が冷めやらないうちに、
次曲「ヘドバンギャー!!」が始まった。
わかってはいたが、やはりこのままノンストップでいくようだ。
この怒涛の曲の連続は、すっかり慣れているとはいえ、やはり驚異的だ。
彼女たちが戦い続けるなら僕たちメイトはそれに追従するほかない。
ステージ上で輝く7人へのリスペクトを胸に抱きながら。

 

「ヘドバン! ヘドバン!」の狂騒が続く。
間奏のギターソロで熱はさらに燃え上がる。
曲が終わるとすかさずビジョンには「戦国WOD」のムービー。
世界中のメイトたちを従えて道なき道を進む、「Road of Resistance」の始まりだ。

 

「1! 2! 3! 4!」を合図に、3つのブロックで同時発生するWall of Death。
3人が馬乗りダンスを始めるとピットのメイトたちはそのままサークルモッシュを始める。
僕は狂ったビートに合わせてひたすら激しくヘドバンを繰り返す。
SU-METALの歌声に乗せられて盛り上がっていくシーンでは拳を突き上げずにはいられない。

 

「METAL RESISTANCE EPISODE Ⅲ」を象徴する曲である「Road of Resistance」。
その歌詞のとおり、彼女たちはこの1年間、自分たちを信じ、道なき道を突き進んできた。
そして彼女たちが示すとおり、答えはいつだってここにある。

 

“記録された映像をインターネットで観るのではなく、生で観て聴いて
心と体で感じ、未来の自分のために記憶せよ”

 

ロンドンで「Road of Resistance」が初めてライブで披露された際、
冒頭ムービーで上記のようなことが語られていたが、
彼女たちが見せる渾身のライブパフォーマンスを目に焼き付けずに、
どうして自分の人生の価値を証明することができよう。
BABYMETALの激しい「音」と「歌」と「ダンス」が集積されたこの曲は、
あまりにもリアルなBABYMETALを体感するにはもってこいだ。
そして誰もが、このようなパフォーマンスを見せてくれる彼女たちに恭敬の念を抱くのだが、
それはおそらく概念上の「音楽」そのものに対する情熱や敬意と同じ感情ではないだろうか。

 

「SEE! YOU!」

 

すべてのセットリストを終えて彼女たちが舞台裏にハケる。
そしてビジョンには次なる予告が映し出されたのだけれど、
結局すべては明日発表されるというオチだった。
いいだろう。こうなったらとことん焦らされてやる。
とっておきの楽しみは明日の夜まで持ち越しだ。

 

※終演直後のアリーナの様子

 

 

 

 

3.

ものすごいものを観た。
端的に表すとその一言しか出てこない、すさまじいライブだった。
僕は多幸感に包まれながら会場を後にした。
やはりBABYMETALの世界観は大箱でその威力を発揮する。

 

そもそも今日のライブに参戦できたのはほとんど奇跡のようなものだったのに、
それに輪をかけて席までが神席だったので、これまでに参戦したライブで一番といっていいほど、
とても心に残った印象的なライブだった。
このような神懸かり的な最高のライブを観れたことは本当に幸いだった。

 

駅までの道すがら、僕は今夜のライブを振り返る。
スピーカーが近かったせいだろう、今もまだ耳の奥で曲がリピート再生されている。

 

全体をとおして非の打ちどころのないライブだったが、
一番触れなければならないのはやはり新曲の2曲だろう。
とくに1曲目で披露された「WE ARE THE ONE(仮)」は僕にとっては神曲だった。
あの1曲をフルで聴けただけで今回のライブに参戦した価値はあった。

 

思えば新曲の歌詞にも「僕ら」という言葉がふんだんに使われていた。
“僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所へ”

 

BABYMETALは常々、自分たちのファンも含めてBABYMETALなんだと公言していた。
そしていつしかファンのことは「THE ONE」へと言い換えられていった。
ターニングポイントは「Road of Resistance」を初披露したとき。
“僕らのResistance”と歌ったO2 Academy Brixtonでの熱い夜だ。

 

SU-METALが声を大にして「僕ら」と歌うだけで自然と目頭が熱くなってくる。
それは、これまでに誰も見たことがない世界へ一緒に進んで行こうよと
メイトたちに語りかけてくれているように思えるからだ。
神バンドも含めたチームBABYMETALとメイトたちはもう、一蓮托生ということなのだろう。
“僕らの声 僕らの夢 僕らのあの場所へ”
繰り返し聴いてもこのフレーズには身震いせずにはいられない。

 

そしてもう1つの新曲「KARATE(仮)」についても触れたい。
文中ですでに指摘したが、キャッチーなサビのメロディに合わせて
観客たちが一斉に拳を突き上げながら「ウォウォ~ウォウォ~」と合唱することは、
願望として今後も抱きつづけたいと思う。
そして思い返してみてふと思ったのだが、
もしかしたらこの曲は最初から海外ウケを狙って作ったのかもしれない。
これまでにも3人から、海外のファンは一緒に歌うことが多いといった発言があったが、
海外のライブ会場ではそれはスタンダードであるので、
なるべく一緒に歌えるパートを増やしたのではないだろうか。
少し深読みした感は否めないが、個人的にはそんなふうに思っている。

 

あとは舞台演出についても触れなければならないだろう。
キツネ面をした3体の巨大スフィンクス像にも驚いたが、
キツネ面の目からレーザー、口から白煙が噴出していたのも目を見張る演出効果だった。
三角錐のゴンドラ含め、これぞBABYMETALといった世界観を堪能することができた。

 

BABYMETALのライブはいつも最新が最高だ。
それは、記憶が上書きされていくことによってもたらされる心証に依る部分もあるが、
日々鍛錬を積んだ結果、彼女たちのパフォーマンスの質も向上しているから、
そのように体感するのだろう。
そしてそこに神バンドの演奏までが回を重ねるごとにシンクロしていくのだから、
最新が最高という結果に至るのは必然であるように思う。

 

明日の最終公演を楽しみにしながら電車に乗車する。
車窓の外に目を向け、僕は含み笑いを浮かべる。
ふと「Road of Resistance」のsing-alongを思い出したからだ。
あのときはそうせざるを得ない心境だった。

 

BABYMETALのライブでは、僕は通常、3人のメタルネームを叫ぶ。
SU-METAL! MOAMETAL! YUIMETAL! といった具合に。
しかしsing-alongのところでYUIMETALが目の前までやってきたときに、
僕は彼女のあまりの可愛さから思わず、「ゆいちゃん、かわいい!」と絶叫してしまった。
これまでにも最前付近で見たことはあったが、本名を叫んだことは一度としてなかった。
きっと今夜のライブがあまりにも素晴らしすぎて、
最高に酔いしれていたから、つい名前で呼んでしまったのだろう。
自然と口からついて出た、本能による叫びは、制御することは不可能だ。

 

明日は遠いスタンド席だから、さすがに「ゆいちゃん!」って叫ぶことはないだろうな。

 

確証のない自信を胸に、僕は電車に揺られて帰途についた。
言葉では言い表せない多幸感に包まれながら。

 

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