BABYMETAL 「巨大キツネ祭り in JAPAN」 SSA公演 ライブ レポート

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1.

半年前にも、ここ、さいたまスーパーアリーナでBABYMETALのライブを観た。
しかしそのときは GUNS N’ ROSES のサポートアクトとしての参戦だったので、
同会場で彼女たちの単独ライブを観るのは一昨年の1月以来、約2年半ぶりだった。
そうか。あれからもうそんなに月日が経つのか――。
ふと立ち止まり、見覚えのある場所から巨大な会場を一望していると、
最初はぼんやりと、だけどすぐに鮮明に、当時の記憶が沸々と蘇ってきた。

 

初っ端の「メギツネ」によってもたらされたピットの爆発。
限定ライブ以外で初めてお披露目された新曲「あわだまフィーバー」の熱狂。
吊るされた橋の上で「悪夢の輪舞曲」を熱唱するSU-METALの神々しい姿。
「Road of Resistance」の日本初披露。圧巻だった2万人によるシンガロング――。

 

印象的だったシーンは枚挙に暇がないが、“ 新春キツネ祭り ” を形容するならば、
初のワールドツアーを成功させた後の「凱旋公演」、その表現が的確ではないか。
あのとき、ライブを通して強く感じたのは、メイトたちによる熱烈歓迎ムードだった。
彼女たちのライブをようやく日本で観ることができる。その歓びが凝縮されていた。
今となっては揶揄的に用いられる来日公演、そのニュアンスに近い台詞は、
今思えば、この時のライブからちらほらと使われ始めていたように思う。

 

4月に発表された「5大キツネ祭り in JAPAN」のソールドアウトをうけ、
追加公演として「巨大キツネ祭りin JAPAN」の開催が発表されたのが5月下旬。
その時のリリース文には以下のような言葉が記されていた。
「メタルレジスタンス第5章へと突入する『5大キツネ祭り in JAPAN』では
5色の狐火が舞い踊り、その5色の狐火は『巨大キツネ祭り in JAPAN』へと導かれ、
日本そして海外からも大集結。再びひとつ -THE ONE- になるだろう」

 

 

 

果たして、今夜のライブで「From Dusk Till Dawn」の日本初披露はあるのか。
はたまた新曲のお披露目はあるのか。演出やセットリストはどうなるのか。
彼女たちのライブに対する興味はいつだって尽きない。
東京ドーム公演以来、約1年振りとなるBABYMETALのメタルアリーナショー。
小箱のライブも良いが、大箱のライブも違った趣があって良い。
場外は早くもお祭りムード。ひっきりなしに陽気な声が飛び交っている。
心臓が早鐘を打ち始めているのを自覚しながら僕は静かに大きく息を吐く。

 

 

 

 

2.

 

やがて開場時刻となり、Aゲートから入場する。
席はスタンドの後方なのでステージまでの距離は随分と遠い。
それでも、先のガンズのライブの時と比べるといくらかましだった。
あの時はアリーナの最後方だったから、ステージまでの視界は格段に悪かった。

 

 

 

席に着き、周囲の様子を窺う。
今宵も中高年の数が多い。親子連れの姿もちらほらと目に付く。
女性の姿もそれなりに多いようだが正確な男女比まではわからなかった。
なぜならば僕の網膜はカップルは認識できない仕様になっているからだ。
アリーナは……、うむ、やはり今日も、なんか黒い(大村神風に)

 

ショーが始まる前から、場内は歓喜する雰囲気に包まれている。
開演10分前の頃にはスタンドの客席もほぼ埋め尽くされている状況となった。
アリーナの客の詰め込み具合が随分とぎゅうぎゅうのように感じられるが、
ライブが始まれば圧縮が起こるので、きっとあれくらいで丁度良いのだろう。
ジッと眼下を見据えたまま、あの場所にいられない寂しさを少しばかり胸に抱く。

 

Bring Me the Horizon、Megadeth、Dream Theater、PANTERA、
それから、Judas Priest、DragonForce、Slipknot、Sabaton――。
客入れBGM(SE)でノッテいる客も何人かいた。
そして開演の時間が近づいてくると、SEの曲が終わるごとに大きな歓声が沸いた。
観客、とくにアリーナにいるメイトたちは早くも興奮状態にあるのだろう。
直後、まったく予期していなかったことが目の前で起こった。
なんと IRON MAIDEN の「Fear Of The Dark」が流れた途端、
合唱、そして大きな手拍子がアリーナを中心に沸き起こったのである。
過去にメタリカの曲で大コールはあったが、ここまでの一体感は初めての体験だった。

 

発する声が自然と上擦るほどに、場内は興奮による熱気で溢れ返っている。
BABYMETALを迎える観客たちの準備はとうに整っている。
そうして午後19時10分。遂にその時が訪れる。
不意に客電が落ちると、周囲からは怒号のような歓声が沸き上がった。
僕は急いで席を立ち、ステージ後方を注視する。
巨大なスクリーンに映像が流れ始め、染谷歩のナレーションが場内に響き渡る。
壮大なショーになる予感が脳天を貫き、僕の目頭は早くも熱くなっている。

 

 

 

 

3.

セットリスト

01 BABYMETAL DEATH
02 ド・キ・ド・キ☆モーニング
03 メギツネ
04 ヤバッ!
05 Amore – 蒼星 –
06 4の歌
07 シンコペーション
08 META!メタ太郎
09 イジメ、ダメ、ゼッタイ
10 KARATE
11 ヘドバンギャー!!
12 Road of Resistance
13 THE ONE -English ver.-

 

METAL RESISTANCE 第5章の幕開けとともに、
キツネ様によって解き放たれた、5つのメタルの魂は、
5匹のキツネたちへと憑依して、やがて、5匹のキツネたちは、
The Chosen Fiveの元へと導かれ、この夏、日いずる国で、
5色の狐火が舞い踊ったのだ。
今宵、その5色の狐火は巨大な炎となり、
我々のメタルの魂に火を点けるのだ。

漆黒の闇に鳴り響く、メタルヘッズの咆哮
紅の騎士、メギツネたちの華麗な舞
エルドラドの創世主、子狐たちの息吹
メタルの銀河を彷徨い、世代を超えた永遠の誓い
真の姿を取り戻した 白狐(びゃっこ)たちの不死身の精神

この5色の狐火が集結し、遂に我々は、一つになる時が来たのだ
諸君、首の準備は、できているか?
もう一度聞く。首の準備は、できているか?
巨大キツネ祭りの、幕開けだ――。

 

染谷歩によるこのライブの開幕宣言を聞くと毎回身震いしてしまう。
まさに血沸き肉踊り、一気に臨戦態勢の状態となる。
そしてそれは僕だけではないようで、場内は早くも興奮の坩堝と化している。
己に気合を入れるように、ナレーションの合間には何度も歓声が沸き起こっていた。

 

それから雪崩れ式に、凶悪な「BABYMETAL DEATH」のリフが場内に轟くと、
スタンドを揺るがすほどの、ものすごい声量のオイオイコールが発生した。
遠い観客席に座る人たちもみな総立ちで、ほとんどが手を上げ声を発している。
そして3人がステージ中央に現れると、そのコールは大歓声へと変わっていった。

 

場所が場所だから音圧はそうでもないが、「音」は良かった。
真夏に飲み干すビールのように、リフが五臓六腑にキリリと沁み渡っていく。
それからステージが明るくなると、真っ先に背後のビジョンのデカさに目がいった。
縦長の5つの巨大なLEDスクリーンがステージ後方に設置されている。
刹那、メタリカのソウル公演を思い出した。
あのときも同じような巨大なスクリーンが背後に備え付けられていた。

 

僕はヘビーなリフに合わせて首を振るが、視線はどうしてもビジョンに向いた。
こんなに遠い場所からでもクリアに見えたからだ。
3人の真剣な表情のアップが、真ん中と両端、主に3枚のスクリーンに映り続けている。
SU-METALは顔を上げるたびに余裕を感じさせる表情で場内を見渡している。
真面目な性格を表すように、いつでもYUIMETALは正面を見据えたままだ。
MOAMETALは、嬉しさを隠しきれないといった具合に頬に微笑の影を浮かべている。
三者三様、いつもの表情だった。

 

その後も僕はヘドバンをしながらずっとスクリーンを凝視していた。
そうしてはたと思い出した。
思えば、ガンズも、レッチリも、ステージの背後に巨大なスクリーンを設置していた。
それを眺めながら陶酔し、BABYMETALのライブでもこういうのがあったらいいのにと、
ぼんやりと考えたことも合わせて思い出した。

 

激しく点滅する照明がカオスな雰囲気を形成していく。
やがて極悪サウンドの「BABYMETAL DEATH」が終了する。
観客のノリは上々。すっかりできあがっている。
そして続けざまの次曲は、急転直下、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だった。
このセトリの流れは過去に何度か経験しているが、同曲のイントロが流れた瞬間、
今回も同じようにだらーっと全身が弛緩し、身も心も砕けてしまった。
もうホント勘弁してほしい。この流れは反則だと何度も言っているだろう。
“ DEATH! DEATH!” のツーバスドコドコで出まくった脳内のドーパミンが、
” Ring Ring Ring!” で耳から噴き出しまくっているではないか。

 

可愛らしいSU-METALの歌声が場内に響く。
彼女の歌唱を耳にし、笑顔になっていく人たちが増えていく。
その後間奏に入り、寝そべっていた3人が起き上がるシーンになるが、
そこでも、巨大なスクリーンが絶大な効力を遺憾なく発揮した。
3人の寝起き顔がビジョンにアップで映るたびにどよめきが起こる。
それほどまでに鮮明で、素材の良さを際立たせる綺麗な映像だった。
だからこそ、ラインアレイスピーカーと若干被るのは少しばかり残念に思った。

 

SU-METALが “ セイッ!” と煽ると観客たちは嬉々として反応する。 “ 今何時? ”
2万人によるフリコピは圧巻。” Ring Ring Ring!” とたくさんの手が揺れている。
隣の男性が大声で “ ちょ待って! ちょ待って!” と歌っているが、
僕からすると、耳元で大声で歌うのは “ ちょ待って ” という思いだった。
だけどそれをひっくるめてのライブ。楽しみ方は人それぞれ自由だ。

 

やがて陽気な「ド・キ・ド・キ☆モーニング」が終わる。
場内の雰囲気は大いなる多幸感に包まれている。
しかしすぐに “ キツネ~キツネ~ ” と流れてきたので、
そこでまたどよめきが起こり、観客たちのボルテージはさらに上がっていった。
次曲はライブの鉄板曲「メギツネ」。
楽しくて仕方がないのか、それともお目当ての曲がきて嬉しいのか、
イントロから小刻みにジャンプをしている人が視界の端に映っている。

 

MOAMETALとYUIMETALの可愛らしい掛け声が場内に響く。 “ それっ! ”
それに合わせて観客総出で声を張り、両手を目いっぱい高く上げる。 “ それっ! ”
「メギツネ」の爆発力はいつだって凄まじい。
今宵もアリーナとスタンドが一つになって見事なまでの一体感を誇示している。
グッと込み上げてくるほどのこの素晴らしき眺めはいつだって筆舌に尽くし難い。

 

僕は “ああ ” と嘆息を吐く。
ヘドバンをせずにはいられないビートの心地良さよ。
続けて “ 嗚呼 ” と吐息を零す。
ビジョンに映し出されるSU-METALの美しさよ。
僕はとことん心酔し、「音」を噛み締めるようにしてヘドバンを続ける。
やがて曲はブレイクダウンへ入り、再びオイオイコールが場内を席巻する。

 

大きな手拍子に乗せてSU-METALが “ SAITAMA! ” と叫ぶ。
みんなに会えて幸せだと流暢な英語で続ける。
その後はいつもの煽り文句。カウントに合わせてジャンプしてと指示する。
そうして彼女の合図の元、再び爆発するメイトたち。
スタンドで大きくジャンプをする人はさすがにいなかったが、
フロアにいる観客たちは、まるで猛烈な時化のようにジャンプを繰り返していた。
俯瞰して見るアリーナの光景は刺激的で、清々しいほどの熱気を解き放っている。

 

やがて大盛況ののちに「メギツネ」が終了する。
残響音だろうか、ドラムのブラストビートがいつまでも耳に残っている。
その後は馴染みのない曲が少しばかり流れ、それはのちに、“ ―タタン、タン ” と、
レゲエのリディムの裏打ちのように変化していき、そしてそのまま神バンドのソロへ。
今までに聴いたことがないリズムに、僕の鼓動は少しずつ波打つ速度を早めている。

 

藤岡神からソロが始まると、なんだこれは、と思わず笑みが漏れた。
終盤は馴染みのフレーズを奏でているが、リズムが新鮮なので聴いていて楽しい。
その後は大村神、BOH神、青山神と順にテクニカルなソロが続き、
再び冒頭の “ ―タタン、タン ” のリズムへと戻っていった。
程なくしてBABYMETALの3人がステージ上に現れ、観客たちに手拍子を促す。
そして曲が不意に転調したかと思えば、
そのまま「ヤバッ!」のイントロへと入っていったものだから、
僕は驚嘆するとともに再び笑みを零し、その場で嬉々としてツーステップを踏んだ。
この新しい神バンドのソロからの曲への入りは今後間違いなくクセになるだろう。

 

思わず体を揺らさずにはいられない楽曲「ヤバッ!」。
巨大なビジョンに映る3人のダンスのシンクロ度がヤバい。
途中に “ ―タタン、タン ” と、YUIMETALとMOAMETALに合わせて手を叩く。
“ 気になっちゃってどうしよう~ ” とSU-METALが唄い出せば僕は激しく首を振る。

 

軽快なスカのリズムがなんとも心地良い。
一転、サビのパンク調のリズムになると狂ったようにガンガンに頭を振る。
リフやメロディに合わせた照明やレーザービームが彼女たちのステージを彩っている。
一度ビジョンに視線を移してしまったら最後、それからしばらくの間は、
彼女たちの華やかでキレのあるダンスを凝視せずにはいられなくなる。
とりわけ間奏のストップ&ムーブのダンスは必見の価値あり、なのだが、
今回はビジョンの映像に稲妻の閃光のようなエフェクトがかかっていたから、
3人のダンスはさらに激しく、エネルギーに満ち溢れているように感じられ、
僕は間抜けなニヤけ面を晒しつつ、いつもよりも数倍、視覚的に楽しませてもらった。
そうして終始楽しかった「ヤバッ!」はあっという間に終了した。
曲が終わると場内からは割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。

 

場内がざわつく中、「Amore – 蒼星 -」の壮大な前奏曲が流れ始めてくる。
僕は襟を正す思いでステージ上を凝視する。
そしてイントロのあと、SU-METALがいざ “ 愛の言葉 ” と唄い出すと、
体中に電気が流れる感覚を覚えながらジッと耳を澄まし続けた。
決して零すことなく彼女の歌声を思考の懐に詰め込んでいく、そんな心積りで。

 

SU-METALのクリアな歌声が心の中にスッと入ってくる。
そして情感たっぷりの彼女の歌声が心中で無限に増幅していくと、
無意識のうちに僕は感動の涙を流し始めていた。
その後一気にスピードメタルの楽曲が奏で始められると、
僕は目を瞑り、今度は貪るようにしてギターリフを堪能する。
そして堪らなくなり、永遠にそれをやるような心持ちで首を激しく振り始めた。

 

疾走感が堪らなくいい。
ドラムのブラストビートも堪らない。
同曲の見どころの一つ、ベースソロでスウィッチャーが過ちを犯したのは残念だった。
なぜそこでギターを映すんだと内心で声を上げた方は随分いたのではないだろうか。

 

ツインギターの音色が昇天しそうな程に気持ちいい。
一度演奏が止み、SU-METALがステージ上で凛々しく立ち尽くすシーンでは、
場内から大きな歓声が上がり、ところどころで指笛が鳴った。
そこから彼女が、これまた情感たっぷりに歌い上げれば、
僕は得も言われぬ陶酔感を抱き、涙が零れ落ちないように唇をギュッと強く噛んだ。
爆音の中を突き抜けていく歌唱はSU-METALの持ち味、唯一無二の才能ではあるが、
“ 紅き月に照らされて 刹那の夢がまた始まる―― ”、
これほどまでにダイレクトに聴き手の心の中に唄を届かせることができる歌い手を、
SU-METAL以外、僕は知らない。
彼女の「伝えたい」という、強くて純粋な思いが、歌唱の隅々にまで表れている。

 

「Amore – 蒼星 -」が終わると聞こえてきたのは “ シッシーシシシ ” の連続音。
「4の歌」だった。
前曲の余韻に浸っていた空気は一気に霧散し、
場内は瞬く間に陽気な “ よんよんっ!” コールで溢れ返った。
BLACK BABYMETALの2人が登場するとそれだけで大きな歓声が沸いた。

 

何度も大きな “ よんよんっ!” コールが起こり、やがて間奏のレゲエパートに入る。
風に揺れるすすきのように、幸せのシグナルを演者におくるように、
規則正しく、万人の手がゆらゆらと左右に揺れる。
今回は2人の煽りはなかったが、それでも高い熱量は保たれたまま同曲は終了した。
ややあってビジョンには心電図のような映像が流れ始めた。

 

それは ELEVENPLAY の「MOSAIC Ver.1.5」の映像と酷似していた。
そして今回のライブの演出にMIKIKO-METALが絡んでいる証拠でもあった。
心音に紛れ、独特のギターリフの音が次第に大きくなってくると、
次の曲がわかったのだろう、場内からは大きな歓声が沸き起こった。
ここで披露された楽曲は「シンコペーション」。
イントロ前の叫び声が聴く者の感情を激しく揺さぶる。
そしてイントロが始まるなり、再び大きな歓声を上げる観客たち。
ステージから伸びる何本ものレーザービームが観る者の感性を強く刺激する。

 

この曲はなんといってもイントロが抜群にカッコいい。
思わず全身を揺らしてしまうほどに。
SU-METALが唄い始め、YUIMETALとMOAMETALがリズムを取るようにして踊る。
続いて “ スキ キライ スキ ” と歌う2人がビジョンに映ると思わず息を呑んだ。
まだまだ幼気が抜けない2人だが、真剣な表情のときは特段美しい。

 

途中、SU-METALの歌声がフラットしてしまう。
音程が少し外れる箇所もあり、サビも随分と苦しそうだった。
けれど間奏明けは持ち直し、その後は見事に修正してみせた。
やはりこの曲は前節を食っていくピッチが速く、しかも踊りながらなので、
さすがのSU-METALでも完全にマスターするのは難しいのかもしれない。

 

“ この世界から 舞い飛んでゆけ 揺れて 揺れて 空へ ”
SU-METALがブリッジを歌うと気分が一気に高揚していく。
そして―― “ Fly ” 。
思い切り手を上に伸ばすと、脳内の快楽物質が小爆発を起こすような感覚に陥り、
僕はその場で強烈な陶酔感に襲われた。最高に気持ちの良い瞬間だった。
それからサビに入るとまた体を揺らし、僕は同曲を余すことなく堪能する。
そしてこれまたカッコいいアウトロが終了すると、
場内は大満足といったような空気で満たされ、大きな拍手が沸き起こったのだった。

 

ノンストップで続くBABYMETALのいつものライブ。
一瞬たりとも見逃してはならないという思いが強く働き、ずっと集中力が持続している。
少ししてから披露された次の曲は「META!メタ太郎」。
“ ドドンド、ドン ” と響くドラムのあとに、観客たちが “ META!” と大声を張る。

 

やがて3人が美しいユニゾンで歌い出す。
その後はどこか懐かしさを覚えるフォークメタルの楽曲を耳にしながら、
“ M! E! T! A!” と大声で叫ぶ。
「META!メタ太郎」はいつ聴いても気分が楽しくなるのだが、
ご多分に漏れず今回も、僕は弛緩した表情でビジョンを眺めながら口ずさんでいた。
そして同曲はその後、密かに待ち望んでいたシーンへと進んでいった。

 

この規模での合唱だから、それは東京ドームの再現に他ならなかった。
イヤモニを外したSU-METALが “ エブリバディ、シンギン ” と叫ぶと、
直後、観客たちの“ オーオーオーオー ” の大合唱がスタンド中を揺るがした。
僕は拳を握り締め、この瞬間を心に刻み付ける思いで周囲を見渡しながら声を張る。
統率されたシンガロングに気を良くしたのだろう、
歌い始める前にフッと幸せそうな笑みを零したSU-METALの表情が印象的だった。
そんな彼女の様子を見て嬉しくなったのはきっと僕だけではないはずだ。

 

壮大なメタル行進曲と化していた「META!メタ太郎」がやがて終わりを告げる。
場内には、まさにお祭りといった感じの賑やかな雰囲気が漂っている。
しかしすぐに「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の映像が流れ始めてきたので空気は一変し、
気が付けばアリーナには複数のサークルが出来上がっていた。
そしてSU-METALの咆哮に合わせ、フロアのあちこちで激しいWODが繰り広げられた。
僕は高い位置から指を咥えてその様子を眺め続ける。

 

イントロのツインギターの音色が骨身に染みる。
今宵も美しいハーモニーを奏でている。
僕は大型ビジョンを見据えたまま、激しいドラムのリズムに合わせて首を振る。
パイロの炎が立ち上がる中、SU-METALが渾身の歌唱を披露し、
YUIMETALとMOAMETALが可愛らしくポーズを決め、合いの手を挟む。
その後の万を超す一斉ダメジャンプは、それはそれは壮観な光景だった。

 

この曲はリズム隊がいつだって完璧で、だから生で聴くと間違いなく陶酔する。
その後も僕は小刻みにヘドバンを続け、間奏のギターソロを聴きながら目を細める。
SU-METALの歌声は力強く、YUIMETALとMOAMETALの声もよく出ている。
繰り返し赤から青に変わるステージのライティングも見事。
ほんの一瞬も見逃すことなく、僕は耳目で同曲を味わい尽くす。
大サビのユニゾンの演奏で首を振り、最後の締めのポーズで拳を突き上げる。

 

演奏がタイトで締まっているから、同曲が終わった時の感動もひとしおだった。
僕は大いなる余韻に浸りつつ、ふと視線を落とし、時刻を確認する。
もしかしたら本編の最後の曲なのかな、と思ったからだった。
だけどすぐに次曲が始まり、ノンストップのライブであることを再確認する。
聞こえてくるのは、とある曲の美しいアウトロ――「KARATE」だった。
ギターの刻み音が次第に大きくなっていくと場内からは拍手が沸き起こった。

 

YUIMETALとMOAMETALに合わせて “ セイヤセイヤ ” と歌う人が多い。
彼女たちに合わせて “ オス! ” と叫ぶ人はもっといた。
SU-METALの力強い歌声にうっとりし、体を大きくグラインドさせる。
なんとも言えない心地良さに全身が包まれていく。

 

サビに入ると体の揺れは自然と大きくなっていく。
大声で “ ウォーウォ、ウォーウォ、ウォーウォ ” と叫ぶのはマスト。
ビジョンに映る3人に、再びエフェクトがかかる。
突きを繰り出す各々の腕には炎が宿り、文字どおり熱い演出効果を生んでいる。

 

間奏に入り、倒れ込んだ3人がビジョンに映り出されるが、
すべてがあまりにも美しいので、ずっとスクリーンの映像に見入っていた。
3人が肩を寄せて歩くシーンを見つめていると自然と唇がわなわなと震えた。
今回は “ エブリバディジャンプ ” の掛け声はなかったが、
アリーナはもちろん、スタンドでもジャンプを繰り返す人は多数いた。

 

やがて同曲が終了すると、おそらく今日イチの歓声が沸いた。
BABYMETALの楽曲の中で一番エモいから、大きく感情が揺さぶられるのだろう。
歓声がまだ続く中、聞こえてくるのは不穏なストリングスの音色。
「ヘドバンギャー!!」だとわかったときの観客の反応は凄かった。
視界に映っている多くの人がベビーヘドバンをキメている。

 

“ こいや!” の掛け声がこれまた凄まじい。
サビの “ ヴォイ!” の掛け声もかなりデカかった。
僕は激しくヘドバンを繰り返し、SU-METALの力強い歌声を胸に刻む。
そして彼女が “ ヘドバンギャー!” とシャウトすると同時に大きく拳を突き上げた。

 

“ みんなー、楽しんでる?”
間奏に入ると、YUIMETALが可愛らしい声で観客を煽ってきた。
予定調和といった具合に、間髪入れずにMOAMETALが続く。
“ ぜーんぜんっ、聞こえないよ?”

 

その後は久々にスモークガンの演出を挟み、長めのヘドバンコールが続いた。
視界の端では、アリーナで土下座ヘドバンをしている人たちを捉えている。
最近は披露することが少なくなってきた同曲だが、僕は大好きなので、
“ キ・エ・ロ! ” と大声で叫びつつ、最後までヘドバンを続けた。
そして大盛り上がりのもと終了し、場内から大きな歓声が沸いたのだが、
すぐにまた不穏な法螺貝と陣太鼓の音色が聞こえてきたので、
その歓声は勢いを取り戻し、次第に大きくなっていったのだった。

 

フラッグを持った3人にスポットライトが当たる。
直後、美しいギターオーケストレーションが奏でられると、
僕はうっとりしながらステージとフロアを交互に見る。
サークルは全部で7つくらいある。
内訳はAブロックが3つ、BブロックとCブロックが2つずつだった。

 

カウントを合図に、やがてWODが始まる。
フロアに負けじとスタンドも大いに盛り上がっている。
僕は高速ドラムに合わせてずっと首を振り、それから、SU-METALの歌唱を味わう。
“ Is the time!” と叫んでジャンプし、“ Resistance ” と一緒になって歌う。
絶えず脳幹が痺れるような感覚を味わい、僕はまた昇天しそうになる。

 

やはり生で聴く「Road of Resistance」はいつだって最高だ。
まったく隙がない。歌にダンス、はたまた楽曲にも、一切の緩みがない。
そして曲はそのままシンガロングへと続いていくのだが、
2年半前の映像がふと、脳内でフラッシュバックした。
あのとき、シンガロングを促す3人の表情や声は随分と初々しく目に映ったが、
しかし今宵はどうだ、3人ともが堂々としていて、巨大な空間を完全に支配し、
2万を超える荒れ狂うメイトたちを、完璧に掌握しきっている。
それどころか、何度も世界を回ってきた彼女たちにはもはや貫禄すら感じられる。
その大いなる違いに、彼女たちの成長度合いを感じずにはいられなかった。

 

シンガロングが終わった直後のSU-METALの嬉しそうな表情にまた、ほっこりする。
だけど彼女は生粋のリードヴォーカル。
新春キツネ祭りと同じように、サビ前で今回も “ かかってこいよ! ” と絶叫した。
刹那、メイトたちが気焔の炎を立ち上げ、大声で“ Resistance! ” と声を張る。
そうして盛況のもと、今宵も完璧だった「Road of Resistance」は終了した。

 

終わった途端、僕は大きく息を吐く。
と同時に、全身の筋肉を弛緩させた。
なぜならばライブは終了したと思ったからだった。
だけどすぐに異変に気づく。
いや、異変ではなく、単純な自分の勘違いに気付いた。
ライブはまだ続いていて、最後に「THE ONE -English ver.-」が披露された。

 

1分ほどのインターバルを挟んでから、「THE ONE」の壮大な前奏曲が流れてきた。
暗闇の空間に伸びる幾つものレーザー光線が眩く、そして美しい。
同じく美しいギターオーケストレーションが響く中、3人は中央でじっと佇んでいる。
イントロが終わると3人はフードを脱ぎ、そしてSU-METALがしっとりと歌い始めた。
僕はまるで夢でも見ているような心持ちで、この美しいショーを眺め続けている。

 

「THE ONE」のすごいところは、この曲1つだけでショーを成り立たせることができる、
そんなふうに思ってしまうほどの、素晴らしい楽曲構成&演奏にある、ように思う。
が、SU-METALのクリアで伸びやかな歌唱があることが前提の話だから、
やはり彼女なしでは、この曲が名曲になることはないのだろう。
また、YUIMETALとMOAMETALの美しいコーラスが交差するのも堪らない。
僕はただただうっとりしながら、幻想的な世界を醸し出すステージを見つめ続けた。

 

間奏の転調から気分がさらに盛り上がっていく。
そしてブリッジでSU-METALが “ Far away ” と歌い上げた直後、
連続するギターの歪み音に僕は身悶えするほどの興奮を覚え、
また昇天しそうになる。
もう何度目なのかはわからない。ここも最高に気持ちの良い瞬間だ。

 

やがて曲は大サビを迎え、“ ララララー ” の大合唱が続く。
身に纏っている銀の衣装同様、3人の表情もキラキラと輝いている。
そうして最後は大きな花火が爆発し、大盛況のもと、今宵のライブは終了した。
場内のあちこちから大きな歓声が沸き、拍手は止まることを知らなかった。
それは最後の告知映像が始まるまでずっと続いたのだった。

 

5色の狐火が一つとなり、巨大な炎となって漆黒の闇を照らした夜、
METAL RESISTANCE 第5章の全ての扉が開くのだ。
5枚すべての扉が開いた時、METAL RESISTANCE 第5章の終幕と共に、
キツネ様の新たなお告げの全貌が明らかになる。

それは、聖なる人が、聖なる神へと生まれ変わるイニシエーション(洗礼の儀)。
5色の狐火の中から、ひときわ眩い閃光を放ち、
来たるべき運命へと導かれた鋼鉄(メタル)の魂は、
ついに、あの聖地へと降臨するのだ。

その昔、三つ目の狐の顔を持つ預言者(PROPHET OF FOX GOD)は言った。
第三の目(THE FOX EYE)から放たれる光が、世界を照らす時、
新たな時代(NEW ERA)が到来するのだ。
イニシエーション(洗礼の儀)は、選ばれし勇者たち、THE ONEと共に、
あの聖地で執り行われるのだ。
METAL RESISTANCE 第6章 -外典-
2017年 今年最初で最後のTHE ONE限定イベント -洗礼の儀- 開催!
すべてのお告げは、METAL RESISTANCE 第5章の終幕と共に訪れる。

 

 

 

 

 

4.

 

終演後、照明が点ると、僕は今さらながら人の多さに驚嘆する。
さいたまスーパーアリーナのキャパを考えれば当たり前の話なのだが、
未だ10代の3人が、これだけの観客を前にしても一切臆することなく、
軽々とステージをこなすものだから、どうにも感覚が麻痺しているようだ。
今日の一体感の伴ったライブを鑑みるに、
彼女たちにとってこの箱のサイズはもう小さいのかもしれない。

 

それから僕は会場を後にし、帰路に着いた。
今宵も大満足のライブだった。
耳をつんざく歓声と、数多のキツネサインが、残響、残像となって未だ脳裏にある。
演者と観客の双方がぶつかり合い、最高な夜を、互いに享受した。

 

3人の様子について思い返してみる。
先月末の大阪銀キツネ祭りでは、終始ニコニコしていたYUIMETALだったが、
今宵はYUIMETALを演じることにより真剣になっているようで、
笑顔はいつもより2割減で、クールな表情でダンスを踊っているように見受けられた。
もしかしたら会場の大きさが、彼女が持つプロ意識を刺激したのかもしれなかった。

 

一方、MOAMETALは、いつもどおり笑顔満載だった。
ビジョンでしか彼女の表情を捉えることはできなかったが、
まるで聖母のような、慈愛に満ちた微笑みを何度も確認することができた。
全体的に、これまでよりも余裕を感じさせるパフォーマンスだったように思う。

 

最後にSU-METALだが、彼女の存在感は今夜も圧倒的だった。
持ち前の安定感は少しばかり欠けていたかもしれないが、
2DAYS公演においては、だいたい彼女は2日目の方が調子が良くなる傾向にある。
だから明日の公演では、今日は80点だった出来が満点になることだろう。

 

神バンドの演奏は、今回も非の打ちどころがなく、非常にタイトだった。
個人的には、BABYMETALは、7ピースのライブバンドだと思っているのだけれど、
その考えに異を唱えられても、BABYMETALの3人と神バンドの4人は、
ロック界において最もエンターテインするライブアクトの一つである事実は変わらない。
今夜のライブと同等かそれ以上のものを見せ続ける事が出来るのであれば、
BABYMETALはさらなる高みへと登っていくことだろう。
仮にこのグループは造り上げられたものであると皮肉られても、
しかしその事によって、ライブで得られる純粋な楽しい気持ちが減じることはない。

 

今度は今夜の舞台セットを思い返してみる。
シンプルだったが、各曲ごとの照明・ライティングは見事、それに尽きた。
あれほどまでにメロディやリズム、はたまたリフに合わせて照明が点滅すれば、
それは観客たちに、VR映像を見た時のような深い没入感を与えたことだろう。
天井から吊るされていた巨大な3つの十字架も効果的な演出を発揮していた。

 

VR映像? と僕は小首を傾げる。
なるほどBABYMETALのライブショーは、ダンスがあるから立体的な空間を形成する。
たとえばふつうのバンドであれば、演者はほとんど横にしか動かないから、
もっと平面に捉えることだろう。
だけどBABYMETALは、ダンスフォーメンションがあるから、
視覚的に、より立体的にライブを愉しむことができる。
だから他のアクトのライブの時以上に、没入感のような陶酔感を抱くのかもしれない。

 

2年近く前の横浜アリーナ公演では、IRON MAIDEN の舞台セットを模して、
キツネ面の3体の巨大なスフィンクス像を組み込んでいたが、
その後、ロック界のレジェンドたちのサポートアクトを数多く経験するなかで、
大きな舞台セットを組むよりも、観客目線で考えれば、
大きなLEDスクリーンがあった方が断然良いという結論に達したのではないだろうか。
まるでメタリカのような今夜のセットを観て、そういった思考に落ち着いた。

 

帰りの電車に揺られながら、それにしても、と僕は吐息を吐く。
今夜のライブは、演者の魅力を余すことなく観客たちに伝えるといった内容だった。
ガンズも現在進行中のワールドツアーでは、
どの会場でも巨大なLEDスクリーンを設置して、
曲によってはプロジェクションマッピングも駆使したりしている。
まだ彼らが若かった頃には実現不可能だった演出方法だ。
そのように、昔と違い、今のライブは、よりエンターテインメントと化した。
そしてそういったライブエンタテインメントの先頭付近をBABYMETALは走っている。
とはいえ、今後のライブでは、間違いなくさらなる進化を遂げていくことだろう。
今観終わったばかりだというのに、次のライブがもう待ち遠しくて仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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4 件のコメント

  • 仕事で外出先からの帰りに読ませていただきました。ライブの感動がヨミガエッテ来て涙が溢れそう✨✨✨✨✨
    感動溢れるレポありがとうございました

  • junjunmetalさん
    コメントありがとうございます。
    読んでいただいて、少しでもライブの情景が思い浮かんだ、思い出されたのであれば幸いです。
    書いてよかったと思えますね。また宜しくお願い致します。

  • 詳細なレポートありがとうございます。
    当日のことが思い起こされました・・・とは言ってもドーパミンの大量放出のせいか記憶が曖昧でした。
    それを補って頂いて感謝の言葉しかないです。
    私はアリーナのCだったので、殆どステージを直接観ることが出来ず・・・LEDは上半分くらいは見えましたが。
    まだ10代の3人があの会場を掌握しているというのは本当に凄いことですね。
    因みに翌日はteriさんと同じくスタンドでした。

  • shukunmetal さん
    このたびはコメントいただき、ありがとうございます。
    アリーナのCだと、ステージの様子ははおろか、モニターも見えたり見えなかったりですよね。僕も1月のガンズの時がそうでした。
    いくらアリーナモードとはいえ、SSAのキャパは相当なものですけど、今回のライブを観て、「ああ、彼女たちにはもうこのくらいのサイズは余裕なんだな」と思った次第です。ドームの後に3人とも通過点と言っていたので、3人とも今後の目標設定は高いんでしょうね~

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